すばらしい! 安易な解決策を持ち出すことなく、悲恋としてきっちり描いた作品となりました。それも例えばロミオとジュリエットのように大仰な展開ではなく、じわじわと染み出してくるような悲恋。エマが転げだしたオレンジに気をとられて、ウィリアムとすれ違うのに気がつかないという演出は、ほんとうまい。いったいどういう終わり方になるんだろうとずっと思いながら見てましたが、そのシーンで「ああ…」と思いました。
ちなみに、オレンジの花言葉には「花嫁の心」という意味があるそうな…。
エマとウィリアムだけではなく、周囲のキャラも魅力的でした。
例えばアル。「相手を思いやるからこそ、踏み出せねぇってこともあるからな」という彼のセリフは重みがあります。
直接には語られていないものの、彼はずっとケリーのことを想い続けていたわけで、それも一つの愛の形なのかもしれません。
ケリーとエマの出会いの場面も、らしくてよかった。 現時点では「教育の力」は社会制度の壁を突き破るまではいきませんでしたが、
端正な文字で書かれたウィリアムへの置き手紙はある意味でその象徴ではあります。
当サイトで応援していたエレノア嬢(エマさん、ごめん(^^;))。初めての社交パーティで知り合った殿方にのぼせてしまったという面はありましたが、ずっと想い続け、ありえない噂(エマさんのこと)に傷つきながらも、「待っていますから」。ウィリアムにみなまで言わせなかった。
「今日じゃなくても、明日じゃなくても、それでも構いませんから」 …いい女性ではないですか。そんな彼女をおいてエマさんの下へ走るウィリアム。ほんと酷い男だ(笑)。
そして我らがヴィヴィたん(笑)。前々回、エマさんにビシビシ言っちゃった彼女、さすがに後味の悪さを感じているようです。
ジョーンズ家の人々は、文字通り決定打を繰り出してしまったパパさんも含め、決して悪い人たちではなく、
(この手の作品によくいる)鼻持ちならない貴族様でもなかった(ま、実際、上流階級層とはいえ爵位持ちではないわけだが)。
そのあたりも作品としての後味は悪くなく、それがまた悲恋を深めていると言えるでしょう。
ラストのスズランは、いろいろな解釈ができると思います。「幸せが戻ってくる」という花言葉で、どんな「幸せ」かは受け取り方しだい、
いつか二人が幸せになれるでもいいでしょうし、それぞれが幸せになれる日が来るでもよいでしょう。そういった余韻を持たせる終わり方でした。
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