当社の業務で使用している用語を解説しています.
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アセッサーAssessor
新製品のマーケットシェアの推定システム.当社の予測システムは,文献をもとに独自に開発したものであるので,アセッサーそのものではないが,模擬店実験やチップゲームなど,文献に従って実施するようになっている.「B-02マーケットシェア予測システム」解説書.「B-03マーケットシェア予測システム」 結果のまとめ方.「C002総合的マーケットシェア予測システム」 セミナーテキストとして構成された解説書.時系列要素も含んでいるのでアセッサーとは異なったものになっている.
ALSCAL(アルスカル、alternating least squares scaling)
個人差を分析できるMDSのプログラム.解法としては,ノンメトリック処理として単調回帰法と重み付き距離の解法として交互最小2乗法を用いている.実用上の応用例はあまり多くない.(高根著「多次元尺度法」東大出版参照).→MDS(エムディーエス),単調回帰法,交互最小2乗法などの用語参照.
鞍点saddle point
1つの変数の場合の2次関数は,幾何学的には放物線を表現する(y=a(x-b)2+n)が,2つの変数の場合の2次関数(
y=a(x1-b)2+c(x2-d)2+n)では,定数a,cの符号によって,関数の描く幾何学的な形が異なる(外部展開法の項目参照).応用する場合には,関数の表現する形自体が重要な意味を持つ.2つの次元の2次の項の係数(a,c)がプラスとマイナスの組合せになったとき,幾何学的には鞍の形の曲面を描く.外部展開法(external
unfolding method)において,最適値(嗜好点)を求めるとき,2つの次元の片方は最嗜好点,片方は非嗜好点になることがあるが,これは,次元のウェイトがプラスとマイナスになるときであり,嗜好傾向のモデルが鞍の形になることになる.平面上で嗜好が高い場所が2カ所あり,しかも最適な嗜好点が設定された平面の外側にあるとき,2次曲線モデルによって記述すると鞍点モデルが当てはまる.実際に多くの個人の最適点を求めるような場合には、鞍点を想定したモデルは利用しづらいので、最適点を1点にするモデルを使うことが多い.嗜好傾向に関数形を適用するのとは別に,嗜好の密度関数(分布)を想定したモデルもある.この場合の双峰型モデルは図のようになる.
閾値(いきち)threshold,limen
「絶対閾」(absolute threshold)は刺激の存在が分かる強度.「弁別閾」difference
limenは刺激の違いが分かる刺激強度のこと.小さい音が始めて聞こえる強度,明るさ,重さなど,感覚の絶対閾を測定することができる.弁別閾を測定するとき,同一の刺激であっても同じように感じたり異なって感じたりすることがあるので,統制できない要因によって刺激や反応が一定ではなく正規分布すると仮定している.多数の繰り返し実験によって,正規分布の平均と分散を推定し,閾値を定義することが,古くから行われている.恒常法参照.心理物理測定法参照.
椅子の形態イメージの分析
3相因子分析を椅子の形態評価と評価の個人差の問題に応用した例.整理番号E021参照(原著論文がある).
イスのQDA
椅子の座り心地についての評価方法.およそ30項目の評価尺度と,分析法,結果の表現法,実験順序の決め方および適用例.イスの座り心地の官能検査法.評定法のよる評価.イスのQDA.「C-02データ分析入門」5000円に簡単な適用例がある。「J-15椅子の評価法」参照.
一元配置分散分析
ある測定値を職業のような分類要因についての差をみるとき1要因の分散分析を用いる.データの分散(偏差2乗和)を各職業ごとのバラツキと職業間のバラツキに分けて,職業間のバラツキが偶然誤差以上の大きさになっているかを調べる.確率はF分布を用いる.同じ被験者がすべての刺激について評価している場合には,2要因の分散分析を適用した方が検出力が高まる.1要因の平均値の差の検定には「M-16平均値表計算システム」を用いる.多重比較検定(フィッシャーのLSD)も同時に計算できる.「A-65分散分析法」は、分散分析法のが全般的な解説.「A-63分散分析における多重比較」は多重比較の意味の解説.
1次元マッピング
数値を1次元の数直線上に位置付ける.2次元のマッピングマッピング表現に対して1次元のマッピングと言える.「A-03ポジショニングシステム」解説書.「M-08ポジショニングシステム」マニュアル.
1相因子行列 (one-mode factor matrix)
3相因子分析法の概念の中で,1つの相のみを因子化した得点行列.通常の因子分析の因子得点と同じであるが,3相因子分析の場合には積和行列を分析する.「A-70 3相因子分析法」は、3相因子分析法の解説書.
一対比較法paired comparison method
一対(2つ)の刺激を比較して相対的に評価する手続きによって対象の嗜好度などを測定する方法.微妙な差異を評価するのに適している.回答率に対してプロビットモデル(正規分布の割合)を適用するサーストンの方法、ロジットモデルを適用するブラッドレー・テリーの方法、評定法を適用するシェッフェの方法、持ち点を配分して比率を直接測定する恒常和一対比較法(チップゲームの一対比較法)、比率に指数分布関数モデルを適用する選択行動型一対比較法(君山2009の方法)などがある。
勝ち負け、製品の比較結果などでは、ロジットやプロビットよりも選択行動型一対比較法が適していると考えられる(君山2009「心理測定の基礎と調査での応用」参照)。
それぞれ、他の方法とは異なった特徴を持っているので、使い分けることが有効である。
一般化決定係数generalized coefficient of determinant
正準相関分析、多変量回帰分析、多変量分散分析など、多変量の目的変数と多変量の説明変数の関係を表した一つの指標。正準相関係数の2乗(関連度行列の固有値)を加算して、ランクで割った数値。1変量の重相関係数の2乗(決定係数)を主成分分析の多次元の寄与率のように、自然な形で一般化したもの。次のような特徴がある。
@目的変数群を特異値分解(主成分分析)して、直交軸を求め、別々に重回帰分析を適用したときの、決定係数の合計値の割合になる。
A目的変数群の固有値は、全変数の分散の合計を直交次元に配分することになるので、全分散の次元ごとの説明率を意味している。したがって、固有値の大きさを調整しているが、基本的に、目的変数間の相関関係を考慮していないので(相関を持った目的変数の分散が全部反映されている)、説明率(一般化決定係数)がやや小さめになると思われる(一般的な全分散は、相関関係を考慮すると固有値の合計より小さめになる)。
多変量の分散は、一般化決定係数のような固有値の加算系では定義できないと考えて、多変量正規分布を想定して、目的変数間の共分散行列(相関行列)の行列式を一般的な分散として、説明できる大きさを定義するウィルクスのΛやベクトル相関係数などがある。ウィルクスのΛや行列式(一般化分散)は、通常の分散のように、ベクトル分解でないので、指数型分布の尤度に関係した対数線形な演算が中心になる(比や掛け算が中心)。
一般化特異値分解
正準相関分析、多変量回帰分析、多変量分散分析、重判別分析、数量化2類、コレスポンデンス分析などの多変数間の関連を取り扱う方法は、一般化固有値問題に帰着する。一般化固有値問題は、以下の式のように、分散共分散行列(相関行列)の平方根行列による変換によって、通常の固有値問題として解くことができる。通常の固有値問題に対応して特異値分解があるように、一般化固有値問題について一般化特異値分解が提案されている。分散共分散行列の平方根行列による変換は、多変量の標準化操作にあたるもので、単なる計算上の問題だけでなく、コレスポンデンス分析にみられるように、それ変換自体に有効な意味がある(多変量回帰分析の項参照)。以下の式は、特に分散共分散行列について、一般化特異値分解を説明している。
イディオスカル(IDIOSCAL)
個人差を考慮したMDSモデルのノンメトリックプログラム。ノンメトリック、MDSなど参照。
イボークトセット(evoked set)
想起集合と訳される.たとえば,シェアを推定するときに評価対象として考慮する競合製品などはイボークトセットと言われる.推定値はイボークトセットの中で推定される.ほとんどすべての競合製品を含んでいれば測定されたマインドシェアはそのまま市場に適用できるが,全体をカバーしていないときには,何らかの変換が必要となる.
イメージ指数法(当社の調査結果の表現法名)
当社のイメージ測定法の名前。イメージ測定項目の該当率を求めて、それをイメージ指数という。100点満点になっている。異なった領域の対象についても比較することができる。「J-17イメージの測定法 因子分析とコレスポンデンス分析」5000円。参照。
イメージ操作によるマインドシェア予測
イメージ得点を上下させることによる複数製品のマインドシェアのシミュレーションシステム。調査によって、競合する製品のイメージを測定し、現在のシェア(ロジット変換)や調査による購入意向、嗜好度測定結果などを外的基準にして、ウェイトを推定する。その後は、予測方程式によって嗜好度やシェアを予測する。嗜好度は、合計を100になるような制約を入れておいて解くか、推定値を絶対値変換してからシェアの形に変換する。絶対値変換にはベキ関数が用いられる。「B-16 イメージ操作によるマインドシェアの予測システム」。
因果関係と相関関係
因果は人間の言語の意味(構成概念,仮説)に属する問題で、直接測定することができないので,操作的に定義すると,時間的前後(原因が前,結果が後),時間間隔が短いこと,他の現象の同時的生起の有無など,確実に定義することが難しい.因果の概念自体は,観察できる様々な現象から,有効で便利なものとして構成されたのであるが,自明のことして,使われている.これに対して、相関関係は、対応するデータの共変動的変化として,意味とは別に定義されているので、因果関係とは本質的に異なった概念である.しかし、我々が持っている問題は、因果のような意味のある概念のレベルで提出されるので、一般的には,「因果関係があれば、適当な条件の下で、相関関係が観察されるはずである」(仮説)と考えて、相関関係を観察するという手続きによって因果関係を検証することが行われる.したがって,厳密には,因果関係が直接に証明されたのではなく,仮説が否定されないという意味で因果関係を認めるということになる.多くの応用場面では,因果は,時間の概念ほどではないにしても,極めて安定していて有効な概念の1つと言える.
因子数の決定法
因子分析をする場合、有効な因子数を決定することが難しい場合がある。因子の構造が明確な場合はデータによる因子空間の検証と予測のための分析になるが、多くの場合、因子数が前もって分からない場合が多い。主成分分析をして、次元の寄与率の推移をグラフにして(スクリープロット,固有値の減少傾向の凸凹を表わした図)、急に減少する前までの次元を想定し、それ以降は誤差としたり、固有値が1以上の次元を因子数にしたりすることがある。固有値の急激な変化をカイ2乗検定によって調べることもできる。しかし、実際のデータにおいて因子数がほとんど予想できなくて,測定項目も十分に網羅されていない場合、因子の内容よりもデータを要約する目的を重視する場合など、さまざまなケースがある。因子分析はデータの要約には極めて便利な方法なので、恒常的な因子の抽出にはあまりこだわらないで、応用的に最も便利に使える因子を用いたいという要請が多い。様々なケースの因子分析と因子数の分析結果を見ると、データ全体の示す意味が把握できたという確信が得られるようになる。そのような試行錯誤的な作業から、最も使い易くデータの一部分を強調したような偏りのない因子分析結果を用いるようにすることが重要な作業になり、必然的に、試行錯誤的な因子決定を行うようになってしまう。「A-50因子分析法」は因子分析の解説書.
因子分析factor analysis
本来,行動の原因となる潜在的な因子を探す方法であり,知能因子などはその典型である。しかし、多くの応用ケースでは,因子そのものを厳密に行動の原因と考えないで,多数の測定項目を比較的少数の群に分類して,評価対象の全体像を落ち度なく分かりやすく把握するために用いている.このような利用法では,評価対象(回答者本人が評価対象である場合もある)の得点を求めて,評価対象の違いを検討することが目的であるので,要約された得点(因子得点)を求めることが因子分析であると把握されている.空間的位置として評価対象を表現することが多いので,主成分分析,あるいは数量化3類,コレスポンデンス分析などと,解析上似ている点もあるが,応用上の特徴はかなり異なっている.相関係数を分析すると,測定尺度(項目)の原点を後で決めるので、空間の方向のみが意味を持つことになる.データの積和行列を分析すると,原点が意味をもち,変数ベクトルの長さも意味があるので,因子分析の意味がやや異なってくる.「A-50因子分析法」は因子分析の解説書.「M-10因子分析のプログラム」はプログラム解説書.
因子分析法は上記のような行動の原因となる因子を求めるための方法であるが,データ分析操作としては,複数のテスト(測定値のゼロ点や単位が共通しているとは限らない)の相関係数行列から,@変数間に共通する因子に規定される測定値の分散(共通因子空間ベクトルの長さ)に制限を与えず,A因子軸の方向に制限がなく,B幾つの因子があるのかが分らない,という前提から,変数の空間的な位値を求めることになる.数的操作としては,逆に上記3つの条件を満たしていないと計算できないので,因子が存在すれば,演繹的現象的に,相関係数はデータのようになるはずだ,という仮説演繹的に思考して,試行錯誤的に解くことになる.たとえば,5因子が存在するとしたら,6因子を想定すると,1因子当たりのデータ記述の情報量が格段に減少するはずである.5因子であると分れば,5因子を想定して,相関係数行列を最も良く説明できる変数の空間的位置を決めれば,共通性(共通因子空間の変数ベクトル)も決まる(反復法の主因子法や最尤推定法など).空間的には,座標軸は任意であるので,5因子を表現する軸(因子軸)を探せばよい(変数ベクトルがまとまっている方向を探すこと,軸の回転).因子が明確に存在すれば,どのような手続きをとっても,だいたい同じような因子が抽出できるはずである.実際のデータでは,@概念的には存在が想定されるが測定データの情報があるかないか分らないこと,A多数のデータの一部分のサンプルのみに存在することが想定され,全サンプルに共通していない因子があること,B因子が潜在的な原因というよりも,環境状況によって共通して見られる表面的で変化しやすい行動傾向を捉えること,などのために,明確な因子を規定しにくい.したがって,データを要約するというような意味で因子分析を利用すると,相関係数自体にも誤差を想定した,分散分析的(主成分分析的,最小次元近似的)な因子分析法が,現象を最も自然に捉え,相関係数の凸凹を多次元的に把握するために,便利な方法といえる.その後で,独自性因子を想定した因子分析モデルを適用することも可能であるが,相関係数に誤差があると考えると,独自性の考え方のよって,大きく異なった結果を導く可能性がある.このことからも,妥当な因子の大きさを求めると言う前に,因子が見えるか見えないかを分散分析的に検討することが必要である.もし,因子がありそうなときには,上記の因子の特徴(行動傾向の中身)を考慮して,測定時点において,ゼロ点,単位,項目の独立性などを配慮して設計する必要がある.このことによって,推定法の影響を小さく抑えた応用的に有効な因子が抽出できる.
因子分析と主成分分析の違い
主成分分析(principal component analysis)は,互いに相関を持つ多数の変数を,独立した少数の次元(主成分)によって表現したいときに用いる.製品特徴を多数の評価項目によって評価したとき,主成分分析をすると,だいたい2次元や3次元で表現できることがあり,主要な評価軸が少数であることを示唆している.意味のある次元が少ない場合(データ全体が2次元で近似できる場合など)や第1主成分(1次元目)が応用上重要な意味がある場合などでは、主成分がそのまま使われるが、多くの場合、主成分分析では意味のある次元にはならない.したがって、主成分分析によって次元構造が明らかになった後,そのまま,軸の直交回転や斜交回転をすると,結果が利用しやすくなる.軸の回転などの操作は主成分分析ではなく,因子分析と言える.因子分析法は,意味のある因子を求める操作全体を指すが,共通因子と独自性を想定した因子分析モデルを解く方法として表現することができる.主成分分析によって求められた空間も因子を求めるという意味では,因子分析の一つであると言えるが,主成分分析の場合,主成分を求めた時点で相関係数にも誤差を仮定することになるので,はじめから共通性を仮定して相関行列を分析する因子分析とは,解析上は異なっている.調査などの多変数から因子を探す目的のためには,測定尺度自体に誤差があると考えて,分析結果から共通因子空間の相関行列(内積行列)が推定されるという主成分分析と軸の回転は,変数間の相互関係が自然に理解でき,相関係数が大きくなくても,変数間の相対的なまとまりが理解できるので,有効に使える方法である.
INDSCAL(インドゥスカル,individual differential scaling)
個人差を考慮したMDSのプログラム.類似度行列が個人ごとに測定されたような2相3元データの分析法.すべての個人に共通した刺激布置を求め,次元に対するウェイトの大小で個人差を表す.解法は正準分解法(Canonical decomposition)と呼ばれる方法で一種の交互最小2乗法である.「A-69個人差を考慮した多次元尺度構成法」 個人差分析法の一つにINDSCALが収録されている.「M-22INDSCAL」はプログラム解説であるが、現在ウィンドウズ版以前のベーシック形式になっている.「A-01 MDS・多変量解析カタログ」,「E-012多数の因子構造の比較分析」などに適用例がある.
ウェイトバック集計
調査対象の基本的な属性が母集団の構成比と異なった場合,同じ構成比にする方法として,個人データにウェイトを与えて集計することが行われる.特定の商品の所有率などの推定値を求めるとき,性別や年齢などの内訳に偏りがあると,単純に全体の推定値を計算すると,偏りが生じるので,それぞれに異なったウェイトを与えて,全体の構成が母集団に近くなるようにしてから,推定値を求める.計算上は,1サンプルの度数を1ではなくて,ウェイト値を用いる.多変量解析などのほとんどの分析法についても,ウェイトを付けた分析が可能であるが,統計的仮説検定の時には自由度は変わらないので注意が必要である.
VBA(ヴイ・ビー・エー,visual basic for application)
おもに,Microsoft Excelのマクロとして使用されるビジュアルベーシック.Word,Access,PowerPointなどのソフトウェアでも使えるようになっている.当社の分析法は,そのほとんどがエクセルマクロのVBAで書かれている.
ウィスキーのブランドイメージ
報告書の題名.「E003 ブランドイメージの分析」.3相因子分析を用いて分析した事例.(原著論文がある.1983年)
AIC(エー・アイ・シー,Akaike's infomation criterion)→情報量基準AIC
AID(エー・アイ・ディー,automatic interaction detector)
目的変数(購入意向の強さなど)について,年齢,性別,特定の考え方など,影響力の大きい要因によって,群を分けていく.最終的に,購入意向の高い群と,低い群とに分かれる.データの形式は,分散分析や数量化1類などと同じ.例えば,30代の女性のみに大きく作用して,他の群にはあまり作用しないような要因があるとき,驚くほど明確にその部分を抽出できることがある.多変量解析では,全体のデータを元にして寄与率を求めるので,部分的な効果を抽出することが難しい.このような一見見えにくい交互作用(部分的な効果)を自動的に検出できることが,この方法の特徴である.方法の名前もこのことを表現している.
比較的厳密に定義された独立変数(カテゴリー変数)の効果を丹念に調べる場合(物理的特性と嗜好との関係など)に適している.終了の基準値を比較的あまくすると,専門家が条件を限った場合について経験的に理解していることなどが抽出できることがよくある.消費者行動の個人属性を分析すると,ターゲットとなる群を抽出することができる.要因が性別,年代別,などのカテゴリカル変数である場合には,分散分析をくり返す計算法になり,連続変量の場合には,相関係数と平均による2分割の方法がよい.目的変数が連続量でない場合には,χ2検定を利用した分析や,分散分析による平均2分割法などがある.目的変数が多変量の場合には,単変量を単純に繰り返しても分析が可能であるし,因子を目的変数にしても分析することができる.その場合,数量化2類分析や判別分析を個々の群に繰り返して適用するするのと同じになる.「A-19
AID」(ターゲット分析)が解説書.「M-49 AIDの計算プログラム」は作図付きプログラム.図は,判別型(目的変数が群,100%分類)のAIDの例であるが,回帰型のAIDと計算法は同じで,データの形が異なる.
AIDを用いたイメージタイプ(クラスター)判定法
6カテゴリー(クラスター)の場合、26/2-1=31の組み合わせがあるので、31の01変数を目的変数にして、判定に使う項目のAID分析を行うと、自動的に判定図が作成できる。多変数の目的変数は、1変数と同じ操作を繰り返す。下の図の場合、AIDによる群は25群(5%有意性の収束基準)になり、目的変数は6群であるので、収束後クロス表を作って、対応する群を決める(最も多い群に決める)。
交互作用が主効果より大きい場合など、最適な解に到達する保証はないが、試行錯誤的に変数を変えてみても、ほとんどの場合、適中率は一定になる。
SMC(エス・エム・シー,square multiple correlation)
因子分析をするときの共通性(相関行列などの分析行列の対角要素)の推定法.SMCの意味は,重相関係数の2乗.相関行列の場合,対角要素は1になるが,これは,変数ベクトルの長さを表し,統計的には分散を表す.したがって,相関係数行列は,長さ1のベクトルのすべての組み合わせの内積(ベクトルの射影)を表している.ところで,因子分析モデルでは,変数ベクトルは,共通性と言われる因子空間を構成する部分と独自性と呼ばれるその変数のみが関与する部分とに分けている.したがって,因子分析では,得られた相関係数は,長さが1よりも小さい共通性で表される2つのベクトルの内積(積和)と考えている.主成分分析の場合は,各変数ベクトルの分散がそのまま使われるので,データより小さな次元で近似された主成分空間の寄与率(説明率)は,全変数分散に対する割合で表現することができるが,因子分析の場合には,全分散が未知である全変数の共通性の合計値になっているため,寄与率や説明率は,共通性を推定しなければ,計算することができない.また,共通性が決まらないと(ベクトルの長さが決まらないと),測定された相関係数(ベクトルの内積)によって表現されるベクトル間の関係(互いの角度)が決まらない.したがって,共通因子空間の大きさ(分散)や次元も定まらない.このようなことから,妥当な共通性を決めることが因子分析の問題の一つになっている.SMCは,一つの変数に対して他の全部の変数からの重回帰分析の説明率(重相関係数の2乗,決定係数)を共通性の推定値にする方法である.因子分析は,変数間の関連する部分(共変動する部分)の分析であり,重相関係数の2乗が,その変数が他の変数と確実に共変動する部分の大きさを表すので(重相関はその目的で求められる数値),誤差がないときの共通性の下限を表すと言える(下の図は2変数の場合,相関係数が固定されたときの時の共通性の範囲を表している).SMCのほか,共通性を推定する方法として,同一の列の相関係数の最大値を用いる場合,主成分分析によって決められる誤差を独自性にする場合などがあるが,多くの因子分析では固有値を解いた結果の共通性を用いて反復近似させる方法をとっている.弊社の因子分析法では,どの方法でも選択できるようになっているが,指定しない場合には,共通性は推定せずに主成分分析(特異値分解)をして,共通性や独自性を問題にするときには,因子負荷量の2乗和を共通性とし,共通空間で説明できない部分を独自性とするという方法をとっている.知能研究とは違って,市場調査データなどでは,因子分析モデルによって変数間の位置関係を変化させるより,最初に,変数ベクトルの位置関係と,共通因子空間と誤差との関係を明確に知る必要があるので,そのような方法を採っている.
エッカート・ヤング分解(Eckert&Young decomposition)
測定されたデータ行列を互いに直交した列要素の得点と行要素の得点に変換する方法.行列Fを,F=UΛW’(UとWは固有ベクトル行列,Λは対角要素に固有値の平方根が入り、他の要素が0の行列)の形に分解すること.応用上は、測定された変数ベクトルを直交軸の座標値として理解することや、成分(直交軸)に分解することとして解釈できる。分散の最大化(相関や内積の最大化),誤差の最小化を条件にした分析法では,少数次元の近似が、固有値の大きいものから順に使えばよいので、多くの多変量解析の基本的な解析法になっている。計算は、固有値と固有ベクトル(スペクトル分解)を求めることになる。2元表の場合、行と列の固有値(次元)が一致するので(双対性)、行列を行と列の固有ベクトルを用いて表現することができる。特異値分解と言われることが多い。
F表・F分布
統計的仮説検定のときに用いる確率分布.2つの独立したχ2分布(カイ2乗分布)をする変量の比の分布がF分布として定義される.おもに分散分析のときの検定に用いられる.分散分析では,実験をする段階で,ランダムな変動の大きさ(誤差の分散)が分るように計画し,目的とする要因の条件(水準)の違いによる分散を,誤差分散と比較して,偶然とは考えられないくらい大きい場合,要因の効果があったと結論する.この場合,要因の分散はカイ2乗分布をし,誤差の分散もカイ2乗分布をすると仮定できるので,比を取って大きさを比較する.カイ2乗分布の比はF分布するので,F分布の確率が偶然とは思えないほど珍しい場合,要因効果が偶然ではないと判定する.
MDS(エム・ディー・エス,Multi-dimensional scaling)→多次元尺度構成法.
AHP(エー・エッチ・ピー,階層分析,analytic hierarchical process)
いくつかの要因を階層的に組み合わせることによって,対象の持つユーティリティーを推定する方法.要因の水準の得点は,それぞれ重要度を一対比較によって測定することが行われている.一対比較の結果の評定値は,倍数として測定される.したがって,逆の評価は逆数になる.評定値を倍数の測定値と解釈することは、AHPの特徴である。一対比較の測定値の処理方法には、多数の評価者の選択割合から尺度値を求めるサーストンの方法やブラッドレーの方法、評定値をそのまま差とするシェッフェの方法、左右に数量を配分する恒常和法などがある。AHPでは,一対比較で測定された行列の主成分(第1固有ベクトル)を用いるが,恒常和法の幾何平均と同じ結果になる.複数の要因を別々に測定するために要因間の相関関係を除去できないので,推定値に誤差を生じる可能性がある.
オッズ(odds)
オッズは,賭けの当たる率と当たらない率との比(odds=p/(1-p))で表わされる.当たり可能性を1より大きいか小さいかで表現できるので,実際の場面では確率よりも使い易いことが多い.対数をとったものは,対数オッズ(ロジット)と呼ばれ,賭けの場面に限らず,事象の出現率の指標としてよく用いられる.対数をとるのは,0%や100%の付近を拡大し,基本的に現象によく適合するから用いられるのであるが,出現度数が二項分布をする場合の自然母数(正規分布の平均値のようなパラメータ)とロジットが一致することから,対数オッズ(ロジット)が現象によく合うことは,その根拠を持っていると思われる.(対数オッズ参照)
オッズ比
2つのオッズの比.オッズが危険度を表わすとすると,2つの危険度の相対的な大きさを表わす.オッズ比は分母が,非該当数であるオッズの比であり,分母に全体の度数を用いた(出現割合)相対危険度の概念が別にある.通常の確率は,起こり得るすべての事象のうち,問題にしている事象の割合によってを表すが,賭をする場合,当たる可能性が高ければ賭けて,はずれる可能性が高ければ賭けない,というように考えるので,はずれる確率に対して当たる確率の比を計算すれば,1より大きければ当たりの可能性が高く,1より小さければはずれる可能性が高くなり,使いやすくなる.実際上,当たる確率が1に近くなると,かなり大きな度合で掛けるので,単なる比率では,その傾向を表現できない.比率は,全体の大きさに対する該当する対象の大きさの割合であるが,大きさを対数変換することが人間のイメージに良く合うならば,比率は,全体度数の対数と該当度数の対数の差によって表現できる.さらに,当たりの率とはずれの率をイメージ的に比較することは,当たりの対数表現(全体度数との対数上の差)とはずれの対数表現の差をとればよいことになる.オッズの対数をとった対数オッズは,上記のような行動モデルの表現として理解できる.ロジスティック関数も同じような解釈ができる.対数オッズは,割合のロジスティック関数表現に一致することなど,統計的に重要な概念となっている.
オフィスの快適性因子
実験によってオフィスのサンプルを様々な側面から評価した結果から,要因のウェイトを推定しておき,要因を変化させたときの評価得点を推定するというオフィスを評価するシミュレーションシステム.人間の評価の仕方を数理モデルによって代用するので,一度パラメータ(ウェイト)を入力しておけば,様々なオフィスについて、シミュレーターが評価することができる.「J-16オフィスの評価シミュレーションシステム」解説書.
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