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・桔梗屋利兵エ(ききょうやりへい)について
桔梗屋利兵エ

 桔梗屋利兵エ。言わずと知れた幕府御用達米問屋(その他なんでもあつかっているはずだが、義満がそういっていたことがある)である。当然、実在しないと思われるが、同名の商人がいなかったという証拠もまた、無い。

 娘「弥生」の誕生日に安国寺の小坊主を向かえて祝宴を開いたり、我慢大会をしたり、安国寺との親交?が最も深い商人である。もちろん和尚さんへのお布施や贈り物(喜捨)も欠かさない。安国寺へ持ってくる商人は彼くらいしかいない。黙念さん曰く、「贈り物さえしていれば極楽へいけると思っている」らしい。信心深い点は諸所見られる。たたりなんかもこわがっていたりする。
 そんな信心深い桔梗屋でも、平気で悪事を働く。秀念に、和尚が所蔵する秘密の「とんち箱」を盗んでこさせたり、街の人を困らせたり、使用人に無茶をいいつけたり、悪事には枚挙にいとまがない。将軍さまから打ち首刑を言い渡されそうになることも日常茶飯事である。よく考えたら恐ろしいアニメである。(新右エ門も切腹しかけるし。)外国人がみたら、なかなか刺激的に移るかもしれない。

 また彼には、一休さんをやっつけるのを最大の喜びとしている節がある。利益を度外視することが往々にして見受けられる。真に利益を求めるガチガチの商人ならば、負けると損する(一休さん相手なのでほぼ100%負ける)とんち勝負などはやらないのだ。商行為それ自体、リスクを負うものであるので、商人としてはリスクを意に介さないのかもしれないが、確実に負ける投機行動に金を出すのは、バブル銀行と同じ愚かさをもつものとも言えるのではないか。

そんな彼、桔梗屋利兵エの悪事の原点は、実は、第27話 「桔梗屋さん と 思い出ばなし」にあったのだ。
 桔梗屋は、実は彼が無一文から一代で築いたもので、利兵エの起業家としての才能を偲ばせる。しかし、それにはある恩人のおかげもあった。戦乱で両親とすべての財産を失った少年利兵エは、ひとり、京へ働き口をさがしに向かっていた。その道中、はらぺこのあまり、孔子の「渇しても盗泉の水は飲まず」など毛頭ない利兵エは、露天商の卵を盗む。卵屋はおこって追いかけ、少年利兵エはあっけなく捕まるのだ。
 「ごめんなさい。ごめんなさい。」
 あやまる利兵エを不憫に思った卵屋は、利兵エにその盗んだゆで卵を幾つか食べさせるのであった。そして励まされた利兵エは、京で丁稚奉公をして、死に物狂いで働いた。そして一代にしてかような身代(しんだい)を築き上げたのだ。・・・そしてある日、金持ちになった利兵エは京の橋のたもとに恩人がこじきをしているのを見つけるのだが・・・。

 桔梗屋は最近では、もぐらたたき屋さんでアルバイトをしているともっぱらのウワサである。

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