remove
powerd by nog twitter

★★       条 文 の 解 説        ★★

建物の区分所有等に関する法律

(この解説においては、略称:区分所有法 と言う)

第1章 建物の区分所有 第1節 総則

◎はじめに 
第一条 建物の区分所有  
第二条 定義
第三条 区分所有者の団体
第四条 共用部分
第五条 規約による建物の敷地
第六条 区分所有者の権利義務
第七条 先取特権
第八条 特定承継人の責任
第九条 物の設置又は保存の瑕疵に関する推定
第十条 区分所有権売渡請求権

T-a.第1条(総則 建物の区分所有)から 第3条(区分所有者の団体)まで

マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。 

試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。

条文を勉強することが、合格への道です。

前へ前へ次へ次へ

凡例:各条文は、黒字にて表示。解説は条文の下に緑字にて表示
はじめに
 ★解説にあたって
 区分所有法に限らず、憲法から始まり法律を勉強するに当たっての基本は条文を読み、何が規定されているかを知ることにあります。
 しかし、条文は1つの例示であることを理解してください。
 また、法は万能ではありません。
 現実の社会での適用にあたっては、条文の中から合理性を導き出す作業が必要とされます。
 条文を参考にして、各々のマンションで住み良い環境をつくることです。
 
 この解説が、貴方の判断基準の1つの参考となり、見解を持つ助けになれば幸いです。
★区分所有法 立法の趣旨  ― 解説に入る前に ―

民法で規定できない建物が出てきた − 一物一権主義の例外 ー
 本来、民法で定める所有権は物に対する全面的な支配権(これは物権と呼ばれます)で、所有権の目的・対象となる土地や建物(不動産)は1個の物であることが必要とされます。(一物一権主義)
そして、所有権に基づき、各所有者は他の人に関係なく、自己の意志で自由に家や土地を売却したり、貸したりまた抵当にいれるなどの処分ができます。
所有者は建物全体を自由に使用し、改造も可能です。(得喪および変更)
この考えは、一つの建物(家)が、イコール=一つの棟であることを前提にしています。

 この一物一権主義をもう少し細かく説明しますと、1つの物に対しては、1つの所有権しか存在しないし、逆にみますと、「複数の物の総体の上には1つの所有権は存在しない」ことを前提として、民法は構成されています。

 しかしながら、中高層マンションの出現により1個の建物である、一棟のマンション内には、室を中心にした複数の所有者(=所有権)が存在し、また、一つの建物内の出入り口や廊下や階段等を所有者を含めて、他の人も使用することから、今までのように、ある特定の所有者が、自分が持っている所有権の行使として、自分の室の壁に勝手に穴をあけてその穴が隣室まで及んだり、自分の室の前の廊下に物置を作り、他の人の通行の妨げになるなど、自己の権利を行使すると他の人の所有権に影響を与える状況が出現しました。

 そこで、マンションでは民法の建物についての所有権の理論を変更(制限の方が多い)した考えを取り入れる必要性が出てきました。
その必要性の検討から、各自が建物での所有権を区分(区分け)して持つ内容の「
区分所有権」を考え出しました。
この区分所有権は、1つの物の一部に対して所有権(物権です)を認めるという
民法にはない、特別な法律上の構成をとっています。
区分所有権の創設は、所有権といいながら民法の所有権を大幅に変更したものです。

★土地の所有形態も今までの民法と異なる
 また、1つの建物が、複数の人の権利を有していることにより、建物が建っている土地(敷地)の処分にも制限を加える必要が生まれました。
そこで、マンションの敷地に対して新しく考え出された概念が「
敷地利用権」です。

★共同生活の規則=ルールが必要
 さらに、多くの人々が1つの建物内に生活する実態から、居住者全員が守る規則を定める必要性もあります。

 ところで多くの所有権者が関係することを民法では「共有」と呼んでいます。(参照:民法第249条〜)
民法で規定する多数の人が1つの物を持つ「共有関係」での
処分行為は、全員の合意(同意とも)が基本です。(参照:民法第251条)
しかし、全員が合意して賛成することは、経験上、実社会では実現が不可能に近く、困難であるため、区分所有法では、
民法の全員の合意を緩和し、共同生活のルールを「多数決の理論」を取り入れて決めることにしました。

マンションにおける建物・敷地・共同生活でのルールの特異性が、民法の特別法(民法に優先する法律)として区分所有法が制定されている理由です。

民法と区分所有法(特別法)との優先順位
  
民法は、私人の法律関係について規定する一般法です。
これに対して区分所有法は、
民法での私人間の法律関係の内、区分所有されている建物と土地をめぐる法律関係を定めた特別法です。
 法律の決まりとして、「特別法は一般法に優先します」。
これは、区分所有法に規定があれば、区分所有法が適用され、区分所有法に定めがない場合には、
民法が適用されるということです。

 区分所有法の特異性は、民法で定める「共有関係」と「土地と建物の一体性」について規定し、共同生活での規則を定めています。

 民法と区分所有法の適用で、大きな相違点となるのは、共有関係です。
 共有関係における区分所有法と
民法の適用の大きな違いは「多数決」でできるのか、それとも「全員の合意」が必要となるのかです。
 区分所有法の適用となれば、そこでは過半数や3/4以上または4/5以上(建替え)などの多数決で決めることができますが、
民法の適用となると「全員の合意」が必要となる点です。 

これらを踏まえ、以下に解説しています、区分所有法の条文により、徐々に明確になると思いますが、この区分所有法の勉強での注意点は、

1. 建物が専有部分と共用部分に分かれていること
2. 建物の専有部分と敷地の処分が一体化されていること
3. 多くの人が住む建物の利害関係を管理面でいかに調整するか

 です。

 

*なお、区分所有法では「マンション」という言葉は出てきませんが、この解説では、既存のイメージに基づいて使用しています。
 イメージとは、法律の解説においては曖昧な表現と思いますが、
  概要としては、1つの建物の中に、複数の室があり、そこに複数の人が暮らしているものです。
 区分所有法を勉強し始めた初心者にとっては、この方が分かり易いと思いますので、解説の当初はこのマンションを使用しています。

 なお、マンション管理士・管理業務主任者を定めた「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」では、マンションが法律用語として定義されていますので、参考にしてください。

<参考>マンションの管理の適正化の推進に関する法律第2条 (定義) 
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
   一  マンション 次に掲げるものをいう。

     イ 二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設
     ロ 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内にあるイに掲げる建物を含む数棟の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地及び附属施設

   この、マンション管理適正化法の要件としては、
    @2人以上の区分所有者 がいて、 
    A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい 
    です。

   注意:マンション管理適正化法では、2人以上の区分所有者がいて、1つは居住用の専有部分であれば、同法のマンションに該当しますが、区分所有法では、特に居住用に限らず、店舗や事務所も該当することに、注意が必要です。


↑このページトップへ←区分所有法トップへ

第一章 建物の区分所有
第一節 総則
 
(建物の区分所有)
第一条
 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。
過去出題 マンション管理士 H18年、H15年、H14年
管理業務主任者 H20年、H16年、H13年

★まず、この「超解説 区分所有法」の解説のやり方を説明します。

  上記のように、各条文を示します。

 そして、下の「過去出題」の欄は、過去に「マンション管理士試験」または、「管理業務主任者試験」で出題があった場合、「H18年」などのように記入しています。
 「H18年」は、平成18年を指し、上の第1条の場合、「マンション管理士試験」で、平成18年、平成15年、平成14年に出題があったことを示します。

 この、「過去出題」で記入されている年数の多さで、重要度が分かります。

 解説の文書は、条文の下にあります。


★普通の一戸建住戸なら1つの建物に対して1つの建物の所有権があるが、マンションには一棟内に多数の建物(室)の所有権が壁・床・天井を隔てて存在する。そこでこの法律=区分所有法ができた。
 基本的には、民法で定める「所有権」の制限と考えるといいでしょう。

★まず、区分所有法での対象となるマンションやビルの建物部分を定義する。

  民法で規定されている占有権や抵当権など各種権利の1つとして重要な権利である所有権の対象となっている物に、不動産の
  ・土地 と
  ・建物 があります。
 そこで、区分所有法では、まず、「建物」について条文が始まっています。

所有権の目的とすることができる...この規定により、民法第206条以下に規定される「所有権」と同じ扱いをうけることになる。しかし、「できる」であり、法律上当然にはならない。

★区分所有とは...今後明らかになっていきますが、一個の物(建物)の一部分だけを分けて所有することです。
             民法の所有権での基礎となるのは、土地と建物(不動産)の権利関係です。
             民法の特別法である区分所有法も、所有について、この土地と建物の権利関係を規定していきます。
             そこで、最初に「建物」の権利関係から入っています。

民法では、所有権を以下のように定め、所有者は建物や土地を、他人の了解がなくても、個人で自由に使用でき、貸すことも、売ることもできます。

<参照>
民法 第206条 (所有権の内容);
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

民法 第207条 (土地所有権の範囲);
土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。

★区分所有権が認められる要件

 それでは、区分所有法の条文を見ていきましょう。

区分所有法第一条 
一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。

 まず、第1条でもともと存在している民法で定める「所有権」の目的とすることができるとして関連を付けています。
でも、そのためには、要件が必要です。

 この区分所有権の目的とするための要件は、1棟の建物の部分が、独立して...2つの面で独立していることが必要と解釈されています。

   @構造上の独立性...壁・扉・床・天井などで遮断されていること。店舗のように正面がシャッターやガラスで遮断されていてもいい。ふすまや障子で仕切られているのは部屋の区切りでここには入らない。

   A利用上の独立性...独立して@住居、A店舗、B事務所又はC倉庫、Dその他建物などに使え、住居なら風呂・トイレなどの設備も存在して、隣室を通らなくても直接外部にでられるようになっていること。
             トイレや浴室は単独では区分所有権の目的にはなりません。
             
             独立して、出入り口があることは重要です。
             その他建物としての用途には、医院や教室なども考えられます。

            住居専用のマンションだけでなく、店舗や事務所のあるビルも区分所有法の対象になる。

  (注:過去の試験問題などをやっていくと、今後説明します「標準管理規約」が住居専用の規約である関係もあり、区分所有法が対象としているのは居住専用だけと思うようになるので注意のこと。
 店舗や事務所なども、この条件を満たせば、区分所有権の目的として該当する。)

 ◎「建物としての用途に供されるもの」に限られるので、「廊下、階段室、エレベーター室」のようなものは、後で出てくる「共用部分」となり、区分所有権の対象にはなりえないと規定している。

 ◎ 最初は、定義関係の条文はその意図が分からない。定義している関係の条文(1条から5条まで)を読み、何を目的としているのかの概略を掴み、また戻ってくると、少しは理解しやすいかも。

 区分所有法が目的としている、「建物の権利と土地の権利をどうしたら、分離処分させないことができるか」の苦労の定義です。

★区分所有建物の成立要件

 第1条は建物が区分所有される要件(区分所有建物の成立要件)を規定しています。この条文によれば、それには

  @構造上区分されていること

  A独立して利用できることが要件とされます。

  これを一般に@構造上の独立性、A利用上の独立性 と称しています。

 区分所有建物であるためには、その建物の建築材料や、また建物の大小、区分所有者の数は問われません。マンション(居住用)に限らず、店舗だけが入っているビル、事務所だけのビル、そして、倉庫なども入っています。
その建物は、木造でも鉄筋コンクリート造でもかまいません。

★しかし、この要件は、余り厳格なものではありません。
 例えば、1番目の要件の「構造上の独立性」については、店舗のように三方が壁で正面がシャッターやガラスで区切ることが可能な一角でも、区分所有権の対象になります。

  2番目の要件の「利用上の独立性」を満たすには、「直接外部に通じる出入り口があるか、どうか」は重要な判断基準となっています。

★区分所有法の適用が開始されるのは。
 では、いつからこの区分所有法の適用が開始されのかといいますと、建物が完成して、後からでてきます「専有部分」についての「表示登記」がなされたときからとされています。
 区分所有法の適用の開始にあたり、区分所有者の数には影響されません。


★構造上の独立性と利用上の独立性について

  後でも出てきますが、@構造上の独立性 と A利用上の独立性 を持つ建物部分は、区分所有権の目的となり「専有部分」となるわけですが、この「専有部分」と建物での「専有部分以外の部分=共用部分」との区切りが実に難しいのです。

 「専有部分」と「共用部分」との区分においては、@構造上の独立性 と A利用上の独立性 の内、A利用上の独立性 が中心になってきています。


★今後の解説の展開として、各所に過去の問題を「設問」の形で載せています。
 最初は、当然のことながら、答えは不明と思いますが、記憶の整理にしてください。

  いきなり、試験問題ですが、基本となる「専有部分」「共用部分」の区分の明確化、また「法律上当然」は、必ず出題されますので、あとで戻ってきてください。また、何度も確認しておいてください。


{設問}1棟の建物に構造上区分され、独立して住居としての用途に供することができる数個の部分がある場合の区分所有権の成否及びその内容に関する次の記述のうち、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。(平成15年マンション管理士 問1)

1 この数個の部分は、法律上当然に専有部分となる。

答え:誤り。 区分所有法で、「専有部分」とは、区分所有権の目的となり得る建物の部分をいう(2条3項)。そして、専有部分となりえても、規約によって共用部分とすることもできる(4条2項)。よって、1棟の建物に構造上区分され、独立して住居としての用途に供することができる数個の部分は、すべてが法律上当然(そのまま当然に、なにもしなくても法律の定めによって)に専有部分となるものではない。規約で専有部分も共用部分に変更できることもある。例えば、建物内にある管理人室、集会室など専有部分となりうるものでも、規約で共用部分にすることができる。(この設問は、今後説明します「専有部分」と「規約共用部分」を理解する必要があります。)

2 この数個の部分は、その一つが法律上当然に共用部分となることはない。

答え:正しい。区分所有法での建物は、必ず @専有部分か、A共用部分 のどちらかになる。
そして、共用部分は、ア.法定共用部分(廊下・階段室など)と、イ.規約共用部分に分かれる。
設問の独立して住居の用途に供することができる「数個の部分」は、本来なら専有部分であり、共用部分にするには、 区分所有法第4条第2項本文が、「第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。」 と定めている。この数個の部分は、なにもしなければ(規約で定めなければ)、専有部分であり、その一つが法律上当然に共用部分となることはない。共用部分とするためには規約で共用部分と定めなければならない。

3 この数個の部分には、法律上当然には各別に1個の区分所有権が成立する。

答え:誤り。専有部分とすることができる部分について、当然に各別に1個の区分所有権が成立するとする規定は、区分所有法にはない。 数個の専有部分がある場合でも、その専有部分の全部を1人で所有する場合は、数個をあわせて、1棟の建物全体で、1個の所有権とみることも可能である。各別に1個の区分所有権が法律上当然に成立しないこともある。 数個をあわせて1個の専有部分とすることができる場合がある。

4 この数個の部分の区分所有者の数は、法律上当然に2以上となる。

答え:誤り。専有部分とすることができる部分について、その区分所有者の数が、当然に2以上であるとする規定は、区分所有法にない。まだ分譲していないマンションのように、全ての専有部分を分譲業者一人(1社)で所有する場合は、区分所有者の数は1となる。一人でも複数の区分建物を所有することができる。

正解:2 (この設問は、専有部分とは何か、区分所有者の数とは等を聞いています。基本でありながら、全体をとらえてないとかなり難しい。)

↑このページトップへ←区分所有法トップへ

(定義)
第二条
1項 この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
過去出題 マンション管理士 H19年、H18年、H15年、H13年
管理業務主任者 H19年、

<参照>区分所有法第4条;(共用部分)
1項 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。

2項  第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

「区分所有権」とは...建物の専有部分(単独所有できる部分)を目的とした「所有権」のこと。 これで、民法とは異なる「所有権」が設定されたことになる。

  <参考>民法での所有権:所有権とは、物を完全に支配し、利用することのできる物権の一種。
        物権には、所有権のほかにも、占有権、地上権、留置権、抵当権など10種あり、一定の物についての権利をいいます。
        物権と債権との違いは、物権は、物に対する直接の支配権で相手の行為を必要としないで、行うことができる点です。

        一方、債権とは、人に対して一定の給付の請求をする内容の権利です。

◎法律の構成

★定義条項とは

 区分所有法にしろ、建築基準法や都市計画法にしろ各種の法律は、いろいろな条項で一定の事項を繰り返し規定(表現)することがあるため、使用する言葉が何を表しているかの定義が必要です。

 そこで、新しい法律には、条文の始めの部分に「定義」がありますが、民法では原則の事柄は、規定がないことがあります。

 区分所有法では、第2条がその定義条項となり各用語の定義をしています。

 定義条項は、立法者がこの後に規定する条文に対する解釈の疑義を生まないために、こう定めるというものですから、違うとか、おかしいとか、疑問を持たないで、そういうものであると理解・記憶することです。
 でも、うしろで記述される第4条を読ないと、区分所有権が分からないのは、変な構成ですけど。

「区分所有権」はあくまでも「建物」が目的
  土地に関する権利と、建物に関する権利は民法と同じように、別々です。
  「土地」の方の権利は敷地利用権で定義します参照 第22条:分離処分の禁止
  ただ条文を読んでいくと、いつのまにか、建物の規定か土地の規定かの区別がつかなくなります。出題もそのあたりを狙っていますので、注意してください。

<参照>
共用部分 第4条 (共用部分)

第四条  数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2  第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

は除かれる。(ここは、第4条まで読んでまた、戻ってくると理解し易い。)

*区分所有権とは
 この第2条1項の定義条項によれば、第1条で規定した建物の部分(これを次の3項で「専有部分」と定義しています。)を目的とする所有権、すなわち建物の専有部分に対する所有権を「区分所有権」とよぶことにしたと云うことです。

★新しい所有権の創設 -区分所有権-

 区分所有権も民法で定められた「所有権」の一種です。
第1条の建物の数個の部分も不動産ですから、区分所有権も通常の不動産の所有権に変わりがありません。
従って、その権利関係の処分行為である得喪変更は一般の物権と同じように当事者間では意思表示により効力を生じ、それを第三者に対抗するには登記が必要なことに変りはありませんが、特に区分所有権と定義したのは単に目的物が物の一部(建物の一部)であるという特殊事情よりも、次の2項の区分所有者を定義する前提として必要だったものと思われます。

 しかし、元々の民法で定める「所有権」と「区分所有権」を比べると、「区分所有権」はその実態面では、絶対性や排他性が弱められているなどの制限が多く、多数決を取り入れているなどから「所有権」と云うよりは「専用使用権」だという説もあります。

↑このページトップへ←区分所有法トップへ

第二条

2項  この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

*「区分所有者」とは...1棟の建物の「専有部分」を区分で所有している者。 平たく言うとマンションの室の持主。法人でも自然人でも可能。また、店舗、事務所も含み居住用だけに限らないことに注意。

 当初は、ここも何を言っているのか分からないと思います。これも、定義ですからそうなんだという認識でかまいません。

 区分所有者は、第2条1項から2項により、「区分所有権を有する者」であり、またあとの3項ででてきます「専有部分」の所有者である者ですが、専有部分が4項に規定する廊下や階段などの「共用部分」がなければ物理的にも機能的にも存在し得ないことから、必然的にマンション生活で共用部分の共同持主である他の区分所有者との関係が生じること、また自分の専有部分の利用も他の人の専有部分に対する影響を考慮せざるを得ないため、通常の所有権の権能である目的物を自由に使用収益するということに何らかの団体的な制約を設ける必要があるため、ここで民法とは違うと認識させるために定義の必要性があり、区分所有者とはなにかを定義しています。

 この、民法で定められた、一般の所有権を制約することは、区分所有法という民法の特別法を制定する理由でもあります。

★ここでは、区分所有者の定義をしているだけです。
 区分所有権(専有部分)を複数の区分所有者で有する、いわゆる「共有」の扱いは、民法やこの区分所有法での適用があります。

↑このページトップへ←区分所有法トップへ

第二条

3項  この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。

過去出題 マンション管理士 H19年、H18年、
管理業務主任者 H13年

「専有部分」とは...各区分所有者が自由に使っていい建物の自分の持ち物。マンションの各室内や、ビルなら店舗・事務所。対応する言葉として同じ建物での廊下や階段の「共用部分」がある。(4項参照)
              マンションにおいて、単独で所有できる建物の一部分。この「専有部分」の権利がマンションでは中心になる。

 ◎「建物としての用途に供されるもの」に限られるので、「廊下、階段室、エレベーター室」のようなもの(共用部分という)は、専有部分にはなりえない。

★ここも、定義ですので、区分所有権の目的になるとかならないとかを含めてとりあえず「専有部分」とは、こういうものだと理解してください。

★専有部分は、本3項で、前の第2条1項で定義された「区分所有権」の目的となる建物の部分と定義されます。
  区分所有者は、一戸建の家の所有者と同じように、自分の建物の「専有部分」を原則として、自由に売買したり、担保に入れたり、貸すなどの使用・収益・処分行為ができますが、他の区分所有者を害する権利行使に対しては、制限が規定されています。


★区分所有権の目的となり得る建物の部分=専有部分
  第1条で規定される、
  「一棟の建物のうち
   @構造上区分され(構造上の独立性)
   A独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができる(利用上の独立性)
   数個の建物の部分が専有部分です。

↑このページトップへ←区分所有法トップへ

第二条
4項  この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
過去出題 マンション管理士 H19年、H18年、H16年、H15年、
管理業務主任者 H14年、

共用部分とは...まだ、あくまでも建物の部分での言葉です。土地については、定義がでてきません。
             建物の中で
              ◎廊下や階段など「専有部分以外の部分」であり、さらに、この共用部分には
                @「専有部分でない建物の附属の物」(電気の配線、ガス・水道の配管、エレベーターなど)
                A「専有部分になりえるが、規約でみんなの物とする附属の建物」(集会室、物置、倉庫など)
               がある。

★「共用部分」とか後で出てくる「共有」の言葉の使い分けに注意。

  共有を使用すると:民法で規定する「共有」の適用を受けるため、マンションでは法律上「共用部分」の概念を設定した。なお、共有とは、1個の所有権を複数の人で所有すること。

<参照>
共有:民法第249条〜 準共有(所有権以外の財産権を複数の人で持つとき):民法第264条

★ここもあくまでも建物が目的。建物においては専有部分以外は必ず「共用部分」となる。 また、当初は、専有部分以外の共用部分は土地にも及ぶと誤解し易いので注意のこと。

 ◎この条文により、区分所有法では、区分所有されている「建物」は

     1.専有部分(単独所有部分) か 

     2.共用部分(みんなで使う部分) のどちらかに属する。

★なお、共用部分には @法定共用部分 A規約共用部分がある。「専有部分」に対応する。専有部分以外の建物の部分。

  @法定共用部分...第2条4項前半に明示されている、「共用部分」とは、「専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物」である。
 具体的には、通常、建物の躯体、支柱、外壁、屋根、廊下、階段室、エレベーター室など。外部から見ても、構造上、使用上、法律上当然に居住者みんなが使う場所や構造物は共用部分となる。

   ◎建物の附属物...建物に附属して、効用上その建物と不可分の関係にあるもの。― 法定共用部分 ―
    外部にある電気の配線、ガス・水道の主配管、その建物全体で使うようになっている貯水槽、冷暖房設備、消防設備、昇降機設備、テレビ受信設備など。
    これらは、法律上当然に共用部分となる。
    ただし、一般的に専有部分内にある電気の配線やガス・水道の配管は専有部分に含まれる。
    雑排水、水道の「本管=メインパイプ」も法律上当然に共用部分になる。しかし、「枝管」は本管と連続して室内に入るため、どこまでが、共用部分か専有部分かは議論が有る。<参照>第4条1項

  A規約共用部分...第2条4項後半に規定される、「第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物」である。
   それは、その用途・性質から、専有部分となりえるが、区分所有者達が規約で決めれば共用部分に変更できる。
   その建物の部分は、もともとは他の人(外部の人)が見て、マンションの一室かどうか分からないものであるため規約で明文化する必要がある。

   例えば、集会室、管理事務室などは、「専有部分」のように、独立した出入り口を備え住むことができる構造もある。その為に規約で「共用部分ですよ」と決める必要がある。<参照>第4条2項。このような建物の部分は”法律上当然”には共用部分にはならない。

   ◎附属の建物...区分所有建物に対して従物的な関係にあるもの(別棟の集会所、物置、倉庫、車庫など)は、法律上当然には共用部分にはならない。規約で共用部分にできることに注意。

<参照>共用部分 第4条 (共用部分)

第四条  数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。

2  第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

★まとめ:1棟の建物は、必ず@専有部分か A共用部分のどちらかに分けられる。
      共用部分というと、法定共用分だけでなく、規約共用部分を含むことに注意。

建物 @専有部分 @構造上、
A利用上の独立性があること
住居、店舗、事務所、倉庫など 住居に限らないことに注意
A共用部分 @法定共用部分 廊下、階段室、エレベーター室など 法律上当然
A規約共用部分 本来は専有部分、物置、管理人室、集会室など 登記をすれば、第三者に対抗できる。

★「専有」と「共用」という表現について
 ところで、区分所有法をはじめて読む人は「専有部分」や「共用部分」という表現に戸惑うでしょう。
これは発音してみると、専有(せんゆう)でも占有(せんゆう)と同じ発音であり、法律が文章の世界で規定されていることがわかります。

 「専」と「共」、「有」と「用」という文字は、それを組み合わせることで、「専有」/「専用」、「共有」/「共用」ができます。

 この4つの語は「専有」は特定の者の「所有」を、「専用」は特定の者の「使用」を、「共有」は複数の者の「所有」を、「共用」は複数の者の「使用」をそれぞれ意味すると考えてよいでしょう。

 そこでこの語の相互の関係を考えてみますと、「専有部分」が「専用部分」であることは当然ですが、専用に使用できる「専用部分」は、例えば、ベランダ・バルコニー等のように、「共用部分」としたものを専用的に使用する場合がありますので、当然に「専有部分」であるとは限りません。
  また同様に、「共用部分」が「共有部分」であることは当然ですが、「専有部分」の共有の場合のように「共有部分」が当然に「共用部分」であるとは限りません。
 このような関係から、建物の一定部分を正確に定義する必要があるため、1棟の建物のうち区分所有権の目的たる建物の部分を「専有部分」といい、専有部分以外の建物の部分を「共用部分」と定義しました。

★共用部分の例
 4項により専有部分のある1棟の建物のうち専有部分を除いた残りの部分、例えば、エントランス、廊下、エレベーター・ホールや屋上、外壁等を共用部分といいますが、建物には建物本体のみならず、居住者の生活に必要な電気・ガス・空調・給排水設備などが附属しています。
これも附属物として(専有部分の附属物を除いたものが)共用部分となります。

★専有部分と共用部分の境界はどこか −区分が難しい−

 まず、簡単に条文の説明として、専有部分と共用部分を説明しましたが、この2つの区分は実務上は非常に難しいのです。

 例えば、専有部分(各室)に入っていくガスの配管や電気の配線等は、まず、ガス供給企業や電気会社などの外部から建物全体に対して大きな配管や配線(本管=メインパイプとか本線と呼ばれます)がなされ、それから各室に枝分かれ(枝管とか枝線と呼ばれます)をしていきます。
 この場合、通常、物理的に本管も別れた枝管も、1つの管(クダ)や線として連続したものであり、途中で区切られていませんから、これらについてどこまでが共用部分でどこからが専有部分になるかは多くの論争があります。

 常識的には、本管と枝管などの結点部分で分岐しているため、ここが責任分界点と思われますが、法律的にはその材質の物理的性質にはよらず専有部分と共用部分の接線で分けられます。

 この専有部分と共用部分との境界を、建物で考えた場合、物理的に一体の壁の中心で専有部分の範囲を分ける「壁芯説」と同様の考え方です。尤も、この点は法律の条文で明確には決まっておりませんから物理的な接点で分けるという規約上の合意をしておけばそこが専有部分と共用部分の責任分界点となります。

★附属の建物
 共用部分の定義で残るのは第4条第2項の規定により共用部分とされた附属の建物です。

 (注意:「附属の建物」と「建物の附属物」は、似たような言い方ですが、意味が違います。「建物の附属物」は、専有部分に属さない電気の配線やエレベーターで、これらは、当然に共用部分(法定共用部分)です。)

 附属の建物とは、マンション本体とは別棟として建てられた集会室・車庫・倉庫・水道ポンプ室・下水道処理室等の本体建物に付随する建物をいいます。
これらは主たる建物から一応独立した建物ですから当然には共用部分とはなりませんが、規約で共用部分とすることができます。


  なお、車庫は、その構造も各種あり、共用部分との判断が一概にはできませんが、下級審の判例では、専有部分と認められた例がかなりあります。

★規約共用部分とすべき場合
 規約で共用部分とした場合としない場合の違いは、適用される法律が民法か区分所有法かの違いとなって現れます。

 規約で共用部分とした場合は区分所有法が適用されますからその扱いは他の共用部分と同じですが、規約で共用部分としない場合は民法が適用されます。
 民法の適用となりますと、その施設の保存行為は単独で、管理行為は持分の過半数で、変更行為は全員の合意で行い、各自の持分は全て登記され持分の処分や分割請求も自由となります。(参照 民法第249条以下)
 従って、附属の建物の性格、用途にもよりますが、他の共用部分と同じようなマンションの全員が共同利用する施設である場合は規約で共用部分とするべきでしょう。

 特に、管理人室はその設備上からも、明らかに法定共用部分でない場合には、規約共用部分として、登記をして、法律上の争いを防ぐべきです。(現実には、小さなマンションや古いマンションでは、登記はしていません。)

★管理人室(管理事務所)が専有部分か共用部分かの判断
 管理人室(管理事務所)はその構造上、専有部分か共用部分かについては、争いが多く裁判でも判断が分かれています。
 その判断の要素となるのは、
  @居室が大部分を占めるのか、あるいは単なる休憩室なのか
  A独立的な出入り口があるか
  B共用設備(消防設備、警報装置など)に簡単な補修工事を施せば、全体として居住専用の室にできるか、今のままでも居住専用として使えるか
 です。

★バルコニー(ベランダ)
  バルコニー(ベランダ)については、相互に非常の際の避難路として使われる場合があるため、共用部分ではありますが、法定共用部分かまた規約で定めて共用部分にすべきかの争いがあります。

★ピロティも争いが多い
 通常、1階部分の柱と柱に囲まれた建物内の空間を「ピロティ」と呼びますが、ここを駐車場などにしている場合に専有部分か共用部分かの争いがあります。
 ピロティは居住者の集会や避難通路として使われるなら、法定共用部分と考えられます。


★「標準管理規約」について

 区分所有法に基づき、国土交通省が各マンションの「管理規約」の雛形としています「マンション標準管理規約(以下「標準管理規約」という)」があります。
マンション管理に対する指針として、昭和57年から、関係団体に活用するよう通達され、何度かの改正を経て、現在のは、平成16年に公表されました。
なお、「規約」を設定するかどうかは、そのマンションの区分所有者が自由にできるものであり、法律での強制ではありません。
しかし、現在では、多くのマンションの分譲時に、この国土交通省作成の「標準管理規約」に則った規約がマンション分譲会社により作成され、各マンションの「管理規約」として、採用されています。

そして、この「標準管理規約」には、
      @1つの棟を想定した「単棟型」、
      A複数の棟からなる「団地型」
      B下に店があり、上が住戸の場合の「複合用途型」 の3種類があります。
    マンション管理における内容が、区分所有法より細かく、実例として定められていますので、初めてマンション管理に接する人には用語などの理解の参考になります。

 その標準管理規約(単棟型)によりますと、上に述べた専有部分と共用部分の区分が明確でないのをうけ、専有部分と共用部分の具体的な範囲を、以下のように明記してます。
 建物の各部分( エレベーターホールとエレベーター室の違い、床スラブ、屋上テラスなど)が読んだだけで、ピンと来ない人は、建物の構造を勉強しておいてください。

<参考>「標準管理規約(単棟型)」第7条:(専有部分の範囲)
第7条 対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸とする。

  2. 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。
   一  天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
   二  玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
   三  窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。

  3. 第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。

★標準管理規約には、必要に応じて「コメント」が付記されていて、これにより立法者の意図が具体的に分かります。

第7条関係コメント
@ 専有部分として倉庫又は車庫を設けるときは、「倉庫番号を付した倉庫」又は「車庫番号を付した車庫」を加える。また、すべての住戸に倉庫又は車庫が附属しているのではない場合は、管理組合と特定の者との使用契約により使用させることとする。

A 利用制限を付すべき部分及び複数の住戸によって利用される部分を共用部分とし、その他の部分を専有部分とした。
この区分は必ずしも費用の負担関係と連動するものではない

利用制限の具体的内容は、建物の部位によって異なるが、外観を構成する部分については加工等外観を変更する行為を禁止し、主要構造部については構造的変更を禁止する趣旨である。

B 第1項は、区分所有権の対象となる専有部分を住戸部分に限定したが、この境界について疑義を生じることが多いので第2項で限界を明らかにしたものである。

C 雨戸又は網戸がある場合は、第2項第三号に追加する。

(第3項関係)
D 「専有部分の専用に供される」か否かは、設備機能に着目して決定する。

<参考>「標準管理規約(単棟型)」第8条:(共用部分の範囲)
第8条 対象物件のうち共用部分の範囲は、別表第2に掲げるとおりとする。

<参考>「標準管理規約(単棟型)」第8条、「別表第2」の共用部分の範囲

1. 玄関ホール、
   廊下、
   階段、
   エレベーターホール、
   エレベーター室、
   電気室、
   機械室、
   パイプスペース(PS)、
   メーターボックス(MB)(給湯器ボイラー等の設備を除く。)、
   内外壁、
   界壁、
   床スラブ、
   基礎部分、
   バルコニー、ベランダ
   屋上テラス、
   車庫等
   専有部分に属さない「建物の部分」

2. エレベーター設備、
  電気設備、
   給排水衛生設備、
   ガス配管設備、
   火災警報設備、
   インターネット通信設備、
   ケーブルテレビ設備、
   オートロック設備、
   宅配ボックス、
   避雷設備、
   塔屋、
   集合郵便受箱、
   配線配管(給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管)等
   専有部分に属さない「建物の附属物」


3. 管理事務室
   管理用倉庫、
   集会室及び
   それらの附属物

(注)ベランダ(またはバルコニー)について
  ベランダ(バルコニー)はその構造上、専用部分に附属しているため、専有部分か、また非常時の避難路としての役割から法定共用部分と解するか争いがあるが、標準管理規約では、共用部分としています。
 そして、区分所有者に「専用使用権」を認めて、使わせることにしています。(専用使用権については、後述

<参考>「標準管理規約(単棟型)」第8条、「別表第2」:別表第2関係コメント
@ ここでいう共用部分には、規約共用部分のみならず、法定共用部分も含む
A 管理事務室等は、区分所有法上は専有部分の対象となるものであるが、区分所有者の共通の利益のために設置されるものであるから、これを規約により共用部分とすることとしたものである。
B 一部の区分所有者のみの共有とする共用部分があれば、その旨も記載する。


★ここで、整理が必要です。

  区分所有法の適用を受ける建物には、1.専有部分と 2.共用部分 があるということ。

         また、共用部分には、1.法定共用部分と 2.規約共用部分 があるということ。

          これらは、あくまでも、「建物」についてで、「土地」については、これからの規定となります。

         今後出てくる、「規約敷地」と「規約共用部分」との違いを明確にしておいてください。


{設問-1}区分所有建物に関する次の記述のうち、区分所有法及び判例によれば、最も適切なものはどれか。

1 区分所有建物の専有部分といえるためには、当該部分と外部との出入りが他の専有部分を通らずに直接に可能であることが必要である。

答え:適切である。(区分所有法第1条)
一棟の建物に構造上区分された数個の部分で、(注:@構造上の独立性)
独立して住居、店舗、事務所、倉庫その他建物としての用途に供することができる(注:A利用上の独立性)ものがあるときは、その各部分は、この法律に定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができるものとする。」
設問にあるように、区分所有建物の専有部分といえるためには、当該部分と外部との出入りが他の専有部分を通らずに直接に可能であることが必要である。(判例:最高裁昭和44年7月25日)

2 区分所有建物の専有部分は、建物の構成部分である隔壁等により他の専有部分又は共用部分と遮断され、周囲のすべてが完全に遮蔽されていることが必要である。

答え:適切ではない。三方が壁で、前面がシャッターである駐車場の場合、シャッターは「周囲のすべてが完全に遮断されている」とは言えないが、専有部分であるとされた判例がある。
専有部分の用途に則した構造上の独立性が確保されていればよいものとされている。設問の「周囲のすべてが完全に遮蔽されていることが必要である。」は、必ずしも求められていない。

3 区分所有建物の建物部分に、他の区分所有者の共用に供される設備が設置されている場合は、その共用設備が当該建物部分のごく小部分を占めているにとどまるときであっても、当該建物部分は、専有部分として区分所有権の目的となることはない。

答え:適切ではない。駐車場にメーター等、区分所有者の共用に属する設備がある駐車場が、その共用設備がごく一部で駐車場としての使用に支障がないとして、専有部分とされた判例がある。
設問の「共用設備が当該建物部分のごく小部分を占めているにとどまるときであっても、当該建物部分は、専有部分として区分所有権の目的となることはない。」とすることは必ずしも妥当とは言えない。

4 バルコニーやベランダは、構造上及び利用上の独立性が認められるから、専有部分として区分所有権の目的となる。

答え:適切ではない。バルコニーやベランダは、避難経路として、区分所有者に共用される必要があり、利用上の独立性が確保されない。また、外部に通じる廊下等に接しておらず他の専有部分を通らなければならないことから、構造上の独立性も確保されていない。したがって、区分所有権の目的となる専有部分として必要な要件を満たしていない。法定共用部分と解された例もある(最高裁昭和50年4月10日)
設問の「バルコニーやベランダは、構造上及び利用上の独立性が認められるから、専有部分として区分所有権の目的となる。」とあるのは、適切ではない。

正解:1 (この設問は、判例として重要です。)


{設問-2}次の記述は正しいか。{平成15年マンション管理士 問2}
構造上区分所有者の共用に供されるべき建物の部分は、専有部分ではなく、法定共用部分である。

答え:正しい。区分所有法第2条4項の規定によれば、
構造上区分所有者の共用に供されるべき建物の部分は、専有部分ではなく、法定共用部分である。

↑このページトップへ←区分所有法トップへ

第二条

5項  この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。

過去出題 マンション管理士 H21年、H15年、H13年、
管理業務主任者 H19年、

★今までの定義は「建物」についてで、この第2条5項は「土地」についての定義です。

<参照>区分所有法第5条1項:(規約による建物の敷地) ;
 区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。

「建物の敷地」とは...マンションの建物の敷地は、この定義により
             @法律上当然(「法定敷地」呼ばれる)として、他から見ても分かる、その土地の上に現実にマンションが建っている1筆の土地でも、数筆にまたがっていてもかまいません)の土地、と
             A第5条1項で規定される(こちらは、「規約敷地」と呼ばれる)、その土地の上にマンションは建っていないが規約を定めて、マンションと共に管理・使用することにした土地、を合わせたもの。

     ここも、実体が後で出てくる第5条を読まないと、分からないとは、変な構成だけど、仕方ない。

★参考:「規約敷地」(第5条1項で規定)...その土地の上には、現実にはマンションが建っていないけど、規約を定めてマンションと一体的に管理や使用することにした土地。

      例えば、庭・広場・駐車場・テニスコートなどそのマンションで管理・使用する土地。

      その土地は、マンションから離れていても(マンションに隣接していなくても)いい。登記が別筆になっている土地。


★建物(マンション)の敷地

 マンションの敷地(底地ということもあります)には、@法定敷地とA規約敷地があります。

1.法定敷地
  5項は建物の敷地を定義しています。
  前半の「
建物が所在する土地」、つまりその土地の上に建物(マンション・ビル))が所在する土地を建物の敷地としています。この条文に該当する土地は、区分所有者の意思とは無関係に法律上当然に建物の敷地(法定敷地)となります。

 これはマンションの水平投影下の土地をいいその土地の地番がここでいう建物の所在地となります。
この法定敷地となるには、広大な1筆の土地(地番)の1部にしか建物がない時でもかまいませんし、建物は1棟でも複数の棟が建っていてもかまいません。また、複数の筆の土地(地番)の上に、1棟がまたがって建っていてもかまいません。この場合には、その数筆の土地全部が法定敷地となります。



2.規約敷地
  また、「建物の敷地」は、本5項後半の「第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。」とあります。
 これは、例えば、そのマンションに附属した公園・遊園地・駐車場等、事実上マンションと一体として利用されていても、土地の地番が異なり且つそれがマンションの建物の水平投影下にない場合(地上にマンションが建っていない場合)には、当然には区分所有法上の建物の敷地とはなりません。
 それでは、区分所有法の定める、後述の専有部分と敷地利用権の分離処分禁止(第22条)の効果が及ばないこととなります。
 これでは、管理上面倒であるため、規約を設けて、「建物の敷地」にすることができようにしました。
 この土地は、法律上当然には「建物の敷地」ではないため、「規約での敷地(
規約敷地)」と呼ばれます。

★法定敷地と規約敷地を同じ建物の敷地とするメリット

 今後明らかになりますが、区分所有法の目的は、マンションの室(専有部分)の権利とマンションが建っている土地の権利(敷地利用権)を一体化して、専有部分を中心に共に権利の移動をさせることです。
 しかし、この目的である専有部分と敷地利用権の分離処分禁止(第22条)の効果が及ばない土地(敷地)があると、折角区分所有法で建物と敷地を一体とした権利を創造したのに、不都合となりますから、それなら規約で建物の敷地と規定することにより区分所有法上の建物の敷地として、法定敷地も規約敷地も全部同じ権利関係に入るようにしたものです。

★規約敷地はあくまでも、「土地の権利」を前提として規定したものです。管理とは違うものです。たとえば、駐車場の管理は「専有部分に属さない建物の施設」として、「共用部分等」として管理されます。


★「規約」の重要性に注意してください。
  この部分の解説だけでも、建物での「
規約共用部分」とか、土地の「規約敷地」とか「規約」が出ています。
  何となく区分所有法では、「規約」がこれからもキーワードになりそうだと分かれば、理解が早いですよ。


↑このページトップへ←区分所有法トップへ

第二条
6項 この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。
過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 H14年、

敷地利用権とは...マンションが建っている土地の利用権。所有権以外もある(地上権、賃借権、またほとんどないが使用貸借権でも可能。)。民法で規定していない概念の創設。

   これらの権利を複数の区分所有者で共有(所有権の時に使う法律上の言葉)または準共有(所有権以外で共有の時の言葉。地上権、賃借権では準共有となる)する。

 <参照>
建物の権利と土地の権利の分離処分の禁止 第22条。

★因みに、民法で規定される、所有権、地上権、賃借権とは、

 <参照>
所有権民法 第206条〜、
  所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

地上権(物権)民法 第265条〜、
  地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。

賃借権(債権)民法 第601条〜 
  賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
         

 また、民法での、共有、準共有の違いは、

共有(所有権の時):民法 第249条〜 
準共有(所有権以外の時):民法 第264条

★どうして、「敷地利用権」を定義(創設)する必要があるのか。(民法の処分規定を制限する)

 民法では、土地と建物を別個の不動産と規定し、土地と建物は各々が別の権利を持っています。
そこで、建物を所有するためには建物に対する権利の他、建物のために土地を使用する権利(所有権、地上権など)も必要となります。
  また、土地の権利と建物の権利は別々に処分(売買、賃貸など)が可能です。この結果、土地の所有者と建物の所有者が異なる場合も多くあります。

  マンションにおいても、できれば民法と同じように、土地の権利と建物の権利を別々に扱いたいのですが、戸建と異なり1棟に複数の人の権利が存在しています。
民法の所有権に基づいた権利行使として、土地と建物の権利が別々に売買されると、土地(敷地)は持っているが、マンションの室(専有部分)は持っていない人や、マンションの室は持っていても、土地の権利は持っていない人が表れてしまい、これらの権利者が自己の権利を処分すると、マンションの1室だけを取り壊すことができるなど権利関係が入り乱れるだけでなく、他の人に対する影響なども発生します。

 そこで、 マンションでは、建物と土地の権利が共に動く(一体化)方法をとる権利を創設しました。
それが、区分所有法第2条6項の
「敷地利用権」の規定です。

  区分所有法第2条6項では、このマンションにおける建物所有に必要な土地に対する権利を敷地利用権と定義し、民法で定める、一般の土地に対する権利とは別の概念を定義しました。
 これは、建物に対する
民法の所有権を制限して「区分所有権」としたのと同じように、マンションでの土地と建物の処分制限をするための、民法にはない新しい定義です。

 ただし、6項は、敷地利用権を「専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。 」とだけ定め、 敷地利用権自体の権利の性質・発生原因・効果その他権利の創設に関する必要事項に何ら触れるところがありませんから、この6項は新たな権利を創設した規定ではなく建物を所有するための土地に対する権利の総称であると理解されます。

 そうすると敷地利用権の種類は、@所有権、A地上権、B賃借権(地上権、賃借権を総称して借地権といいます。参照:借地借家法;第2条1号)、C使用借権(現実にはありえません。)の4種類をいうことになります。

★敷地利用権となると、土地だけの権利の移転や担保の登記ができない制限を受ける(原則)

 あとで、また説明をしますが、建物の専有部分とその専有部分に係わる土地の権利(敷地利用権)は、原則として分離処分の禁止(第22条)となり、 敷地利用権が不動産登記簿で「敷地権」として登記 されると、その後は、土地の権利の移転の登記やその敷地権を目的とする担保の登記はできなくなります。(ただし、規約で認めたり、敷地利用権発生前の登記原因は可能です。)

 これは、土地の敷地利用権も、建物の共用部分に対する権利と同じように、共同的権利として扱われることを意味しています。

<参照>不動産登記法第73条2項(敷地権付き区分建物に関する登記等)

第七十三条
2項 第四十六条の規定により敷地権である旨の登記をした土地には、
敷地権の移転の登記又は敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。
ただし、当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は敷地権についての仮登記若しくは質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。

3項 敷地権付き区分建物には、当該建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記又は当該建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない
ただし、当該建物の敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は当該建物のみの所有権についての仮登記若しくは当該建物のみを目的とする質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。

↑このページトップへ←区分所有法トップへ

(区分所有者の団体)

第三条
 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。
過去出題 マンション管理士 H21年、H19年、H18年、H17年、H16年、H14年、H13年
管理業務主任者 H21年、

団体を構成する...法律上当然に自動的に団体ができる(任意ではない)設立の手続きもいらないが、このままでは法人格はない。「管理組合法人」になるには別途登記が必要で、第47条以下の規定がある。

    また区分所有者(マンション購入者)全員が強制的に参加する。参加を嫌とはいえない。また区分所有者である限り脱退もできない。(逆に、除名処分もないわけです。)

    団体の構成員には賃借人(占有者)は入らない。区分所有者(マンションの持ち主)だけで構成される。

    この「団体」は、区分所有法第3条では呼び名の規定がないが、通常「管理組合」と呼ばれる。そして、各区分所有者は「組合員」と呼ばれる。(法人なら「管理組合法人」の呼び名がある。)

できる...この団体は、当然にできるが、集会、規約、管理者を置くことは、絶対しなくてはならないものではない。強制ではなく、置いてもいい。任意である。ただし、規約を決めたり、管理者を設置すると、この区分所有法の適用を受ける。

(注:この条文の読み方;「団体を構成し」で完結する。団体の構成はされる。言葉の「できる」は集会...」にかかるだけ。)

★マンションには多くの人が生活をしているので

1.集会を開く...多くのことは、居住者(区分所有者)が集まって決めなさい、ということ。(詳細は第35条以下)
2.規約を定めろ...多くの居住者が住む以上、団体としてのルール(規約)がないと統一できないという、発想。(詳細は第30条以下)
  *特に管理組合法人にしなくても、規約は作成していい。しかし、規約の作成は、法律上の義務・強制ではなく、任意である。(詳細は第25条以下)
   古い小さなマンションでは、規約もなく管理者もいないことが多い。
3.管理者にやらせてもいい...本当は、区分所有者が各自責任をもって、マンションの維持・管理をすべきだが、多忙な人もいるだろうから、誰かに任せてもいい。
   *管理者は管理人(管理員)のおじさん、おばさんとは、当然異なる。

  *;マンションの「管理者」と「管理人」は違う...管理者は区分所有法上の規定ですが、管理人(管理員ともいう)はマンションの受付や清掃を行い、管理組合や管理会社に雇われた人です。
  ただし、管理会社が管理者になっていることはあります。

 

 

★マンションの管理は本来、区分所有者全員が参加して行うべきだが、それが困難なときは特定の者(管理者)に任せることができる。

  マンションではこの「規約」(一般には「管理規約」と呼ばれています)が中心になる
  規約は、多くの項目は勝手に決めていいが、多数の持ち主に影響する項目 (重大な変更、規約の変更、組合としての登記、大規模な復旧、建替えなど)は、区分所有法に従うこと。


★規約について

   参考:国土交通省が定めた「マンション標準管理規約」が雛形として存在し、多くのマンションの規約はこれに基づき新規分譲時に、分譲会社が作成しています。
(注:出題の対象ですので、この 「マンション標準管理規約」は、必ず、読んでください。 

  「マンション標準管理規約」には、
    @単棟型、 
    A団地型、
    B複合用途型 の3種があり、必要に応じて使われます。
  この解説のなかでは、標準管理規約(単棟型)」を中心に使用しています。
 (以下「標準管理規約」という)

  その標準管理規約(単棟型)での、組合員(=区分所有者)の規定は具体的です。
  マンションを購入したら(区分所有者となります)組合員になり、マンションを売却したら、組合員の資格を失います。
  この方が、分かりやすいですね。

<参考>標準管理規約(単棟型)30条:(組合員の資格)
第30条 組合員の資格は、区分所有者となったときに取得し、区分所有者でなくなったときに喪失する

<参考>標準管理規約(単棟型)31条:(届出義務)
第31条 新たに組合員の資格を取得し又は喪失した者は、直ちにその旨を書面により管理組合に届け出なければならない。

第31条関係コメント
届出書の様式は、次のとおりとする。

   届出書

平成  年  月  日
○○マンション管理組合
理事長○○○○ 殿
    ○○マンションにおける区分所有権の取得及び喪失について、下記のとおり届け出ます。

  記
1 対象住戸 ○○号室
2 区分所有権を取得した者 氏名
3 区分所有権を喪失した者 氏名 : 住所(移転先)
4 区分所有権の変動の年月日 平成  年  月  日
5 区分所有権の変動の原因


「一部共用部分」:一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分

 この規定も、当初は分かり難い表現です。文章は明らかでないのに「明らか」と使っているのかと、突っ込める条文です。
 
★全体と一部の捉え方
  具体的には、1棟のマンションで下が店舗、上が住居用の構造となっており、店舗部分には従業員専用入り口があり、その出入り口は、住居の人は明らかに利用しない部分は、「一部共用部分」となります。
 この場合「一部共用部分」は、まとめてそのマンションが管理してもいいし、別の店舗部分だけの管理体制にしてもいい。(参照:第16条:一部共用部分の管理、第30条2項:規約事項、第31条2項:規約の設定・変更・廃止)

 明らかにとは、その構造上や使用形態から、一部の人だけしか利用できないことが明確ということですが、多くの場合明確ではありません。
 そして、使用・利用が一部の区分所有者だけかどうか「
明らかでない場合」には、全体の「共用部分」となりますから注意してください。
(出題者は、このあたりの設問が好きです。)

 なお、この場合の一部の区分所有者は同時に、1棟の区分所有者の団体の構成員でもあることにも注意してください。

<参照> 管理組合法人:第47条〜


区分所有者の団体とは法的にあいまいだけど 

★その前に − なぜ、団体だとか、法人が問題となるのか? −
  もともと、法律的な関係で権利と義務の能力を持つのは、
(ひと=自然人)だけでしたが、近代では、自然人以外の団体が法律関係の権利・義務を有することが多くなり、これらの団体にも自然人と同様な法規範を適用する必要性が生まれてきました。
 そこで、法律により、それらの団体にも自然人に似た人格を与えて、法の中に取り組むようになりました。その団体が「
法人」です。
 しかし、全ての団体が「法人」として扱われる訳ではなく、改正前(平成20年12月1日以前)の
民法(旧第34条)では、「社団法人」とか「財団法人」になるには、主務官庁の許可が必要で、営利を目的とする団体の場合には当初は商法により規定されていましたが、平成18年5月1日施行の「会社法」により、株式会社や合同会社として設立できます。

 また、営利を目的としない社団法人と財団法人が行政官庁(主務官庁)の許可制という裁量で法人化されることには反対が多くて、平成20年12月1日施行の「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により、許可主義から簡便に設立できる登記による準則主義が採用されました 

★では、区分所有法での団体は
  普通、民法や会社法など法が団体の結成を強制し法人とする場合は、団体の性格や組織・代表の方法等実際に活動しうるだけの事項を法で定めるのが通常ですが、この区分所有者の団体の場合はそうではありません。
 これは区分所有者の団体があまりにも小規模であったり、団体としての活動をしていないなど、一律に組織・代表の方法等を法定化することが困難だったためと思われます。

  また、区分所有者の数が2名から始まり100名を超える規模のマンションがあったりで、多種多様な管理組合について、区分所有法で規定を設けて画一的な運営を強制することは、私的自治の観点から問題が多いと、平成14年の改正にあたって担当者が説明をしています。

★区分所有法で正式に「管理組合」の名称を使用していないわけ

 民法や特別法など、今までの法律上「法人や組合」と定義すると、該当の規定(民法での法人や組合の規定や、労働組合、農業協同組合など)に入ってしまいます。
 区分所有法で規定するマンションにおける団体も人の集合体であり、 ほぼ
民法で定める「社団法人・組合」に近い存在ですが、管理者がいない場合、多数決の原理によってその団体が動いていない場合などもあるため、明確に法律で規定の対象にできない実態から単に「団体」と規定したようです。
 しかし、この団体は通常「
管理組合」と呼ばれます。
 この第3条に団体と規定することにより、法律の手続き上「法人格」を与えることができます。(第47条以下参照)

「権利能力なき社団」が認められている
  人が多数集まって、特定の目的(マンションではマンション管理)のために結合するとその集団は「団体」と呼ばれます。
 この団体が
民法や会社法などの法令で定めた手続きを経て許可を得れば、法的な人格「法人格」を得てあとは、民法や会社法の規定に従って権利や行為能力を自然人と同じように取得します。

 しかし、世の中には、真面目に法定の手続きをとらない、またとれない団体もあり、この団体が社会生活において、多くの取引を行い、権利を持ち義務を負っています。
 これらの関係が裁判所に昔から持ち込まれて、
民法での規定がないため判例ができました。
 その概念が「権利能力なき社団」と言われているものです。

以下の要件を満たす場合には法人化していなくても、法人と同様に扱いその規定により、裁判を行うものです。

★「権利能力なき社団」といえる要件は
  @団体としての組織を備え、
  A多数決の原則が行われ、
  B構成員の変更にかかわらず団体が存在し、
  Cその組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等、団体としての主要な点が確立していること
  です。(最高裁:昭和39年10月15日)

★第3条の区分所有者の団体は、「権利能力なき社団」といえる  
  区分所有法第3条で規定される区分所有者の団体は、「権利能力なき社団」の要件のうち、
  「Cその組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等、団体としての主要な点が確立していること」については疑問がありますが、ほぼ該当していますので、一般に法人化していない場合でも、「権利能力なき社団」として扱われます。

★訴訟法上は、「権利能力なき社団」も当事者能力を有する。(民事訴訟法第29条)
  法人格がなくても、代表者や管理人(区分所有法での管理者)が定められていれば、訴訟での当事者能力が認められていますから、裁判を起こせます。

<参照>民事訴訟法29条 (法人でない社団等の当事者能力)
第二十九条  法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

 法人化されていないマンションの管理組合にとって、この「権利能力なき社団」という概念は、外部との関係において重要ですので、留意してください。

★この団体はいつから成立するのか
 専有部分の表示登記がなされたときから、区分所有者は一人でも区分所有法の適用が始まり、そして、区分所有者が複数(2人以上)になった時に、区分所有者の団体(管理組合)の成立となります。これは、その瞬間から、法律上、当然に全区分所有者を構成員とした団体として成立します。

 特に、区分所有者の設立の合意は必要とされていません。

★一部共用部分(建物の上が住居、下が店舗などの場合)があって、それを当該共有者たる区分所有者が管理する場合はやはり当該部分を管理する団体が形成され、その関係は全体共用部分の場合と同様になることになります。
(つまり、一部の区分所有者は、住宅部の団体と店舗部の2つの団体に入る場合もあります。)

★町内会や自治会と管理組合は違う
 団体といっても、町内会や自治会と呼ばれている組織とマンションの管理組合は違います。
 町内会や自治会は、その地域内に住んでいる住民が、祭りなどの親睦を図ったり、災害時での行政の補助を行う、地域における生活上での自治組織です。

 一方、マンションの管理組合は、マンションという建物と土地の維持管理を目的とし、区分所有者間の利害の調整をします。
 明確な違いは、マンションを借りている人も町内会や自治会の構成員になりますが、マンションの組合員は区分所有者(マンション・オーナー)だけで、賃借人は規約などを守る義務はありますが、構成員にはなれません。

 また、マンションの管理組合では、区分所有者の意志に関係なく、区分所有者全員が管理組合の構成員(組合員)になりますが、町内会や自治会への加入は、その人の任意であることです。


★それでも、マンションの団体の説明に納得しない人へ
  マンションでの生活は、戸建と違うことは理解されていると思います。

  これからの説明でも分かってきますが、マンションと戸建の基本的な違いは、今までの民法第251条で規定されている「共有」での変更行為の「全員の合意(同意)」の理論が、マンションでは採用できない現実が分かったことです。

 いいかえますと、「全員の合意を得る」という規定は、1万人の区分所有者がいて、その内の9,999人が賛成しても、たった一人が反対すれば、何もできなくなるということです。

 そこで、区分所有法では「多数決による決定」を採用しました。
少し、難しい言い方をすれば、建物並びにその敷地および附属施設の管理については多数決で行い、区分所有者の共同管理意識を徹底させるために「団体」という概念の導入が必要なのです。

 しかし、このマンションの団体の中には、区分所有法が整備される前からある小規模なマンションや古いマンションがあり、そこでは、
  @集会を開催していない
  A管理規約がない
  B管理者が選任されていない
   などの団体が存在したために、区分所有法でそれらの法律的な立場や訴訟上の当事者能力を論じることができなかったのです。

 今日では、マンション関係での意識が向上して、多くのマンションでは管理規約も入居時から存在し、管理者である理事長も選任され、管理組合と呼べる団体になっていますが平成14年の区分所有法の改正では、この「団体」には手を着けませんでした。
 それは、依然として区分所有者の怠慢や無関心から @集会を開催していない、A管理規約がない、B管理者が選任されていない、など管理組合のないマンションが存在しているためです。

 このような、区分所有法制定の歴史が条文として残っているわけです。

 


★試験での問題点(初心者には分からないでしょうが、この問題もまた、振り返ってきて検討してください。)

★一度、区分所有者の団体が成立した後に、区分所有者の数が1名になっても、区分所有者の団体は、当然には消滅しない。

 団体という以上、区分所有者の数は、複数(2名以上)必要となることは、普通の考え方ですが、区分所有法の解釈として、物理的に地震や爆発でマンションが滅失したとか、今まで数個の室があったが、改造して1つの室にしたなどの事由では、団体は消滅しますが、一度、複数の区分所有者が存在して、後に区分所有者の数が1名になっても、団体は当然には消滅しないと解釈されています。
 この、分かり難い内容の説明として、複数の室(専有部分)がある以上、潜在的に団体に戻る可能性があるためとのことです。
 
 過去にも、何度か出題されています。納得できますか?

 (これは、民法の法人での解散論議で、社員がいなくなっても、その社団法人は存続する。それは、また社員が入れば復活すると解釈されていることによるようです。)


★さて、区分所有法で規定するマンションの概要が少しはつかめましたか。
 区分所有法の各規定に従って、マンションの販売条件も記載されています。
 販売パフレットの下の方に小さな字で載っています。販売価格よりもマンション管理には重要な内容です。
 敷地、建物、駐車場の構造、管理費、修繕積立金の額など、これからは注意してみてください。

<参考>あるマンションの販売条件;(注:面積、金額、戸数は実数値ではありません。サンプルです。)

・所在地: 東京都AA区x丁目y番地(登記簿)
・交通: 東西線「XX」駅徒歩12分
・建物竣工予定日
  完成予定年月: 平成20年2月下旬予定
  入居予定日:   平成20年3月予定
・敷地面積: 3,500.50u
分譲後の権利形態 :
  敷地: 専有面積割合による所有権(敷地権)の共有

  建物: 専有部分は区分所有、共用部分は専有面積割合による所有権の共有
・地目: 宅地
・地域地区 :第一種住居地域・防火地域
・建蔽率 : 60%
・容積率: 300%
・総戸数 : 120戸 (住戸)
・販売戸数:110戸
・構造・階数: 鉄筋コンクリート造・地下1階地上14階
・間取り: 2LDK〜3LDK
・専有面積:    71.83u〜86.13u
・バルコニー面積:11.07u〜12.05u
・建築確認番号 :東防建確第yyyy号
・販売価格: 3,500万円〜4,500万円
・最多価格帯: 4,000万円台(10戸)
・管理会社 :株式会社XXX
・管理形態: 区分所有者全員により管理組合を結成し、管理会社に委託予定
・管理費(月額): 16,500円〜17,500円
・修繕積立金(月額): 7,300円 〜7,800円
・修繕積立基金(引渡し時一括払い): 400,000円〜500,000円
・駐車場台数: 合計 71台
  平置 41台 料金(月額) 16,000円/台 (内1台は身体障害者優先区画)
  屋外機械式地上2段地下1段駐車場(ピット式)30台 料金(月額) 12,000円/台
  (注: 平置より機械式の方が維持費が高くかかるが、出し入れの便利さから、使用料金は平置の方が高い。)
・駐輪場台数 :240台 料金(年額) 1,200円/台 
  屋内2段式 120台 屋外2段式 120台
・バイク置場台数 : 屋内 20台  料金(月額) 1,000円/台 


【設問】区分所有法第3条に規定する区分所有者によって構成される団体に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 団体は、法人とならない場合も、規約を定めなければならない。

答え:間違い。  
  区分所有法第3条前段「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」の規定により「できる」とあり、法人に関係なく規約作成は任意である。定めなくてもいい。

2 団体は、区分所有関係が成立したときに当然に成立し、その後区分所有者が一人で全部の専有部分を所有することになったときに当然に消滅する。

答え -1:正しい。?区分所有法第3条前段「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成...、」の規定により、団体であるためには当然複数の区分所有者が必要である。

答え -2:間違い。? 団体は、区分所有法第3条前段「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成...」により、区分所有関係が成立したときに当然成立するが、この団体が消滅するのは、区分所有建物の全部の滅失や建物に専有部分がなくなったことで(区分所有法第55条1項: 管理組合法人は、次の事由によつて解散する。
   一  建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)の全部の滅失
   二  建物に専有部分がなくなつたこと。
   三  集会の決議
参照)ある。
  このときでも、清算手続きが必要である。(区分所有法旧第55条3項による民法関係の準用あり)
よって、この設問のように、団体が成立した後で区分所有者が一人で全部の専有部分を所有することになっても、清算手続きが必要で、「当然には消滅」しない。

答え -3:間違い。 前半は正しいが、後半の、一度区分所有関係が成立すれば後で、区分所有者の数が、 1名になっても専有部分が存在する以上、後に増加することが考えられるので、当然には消滅しないと解釈されている。

3 団体は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うため、常に区分所有者全員で構成される。

答え -1:間違い。? 区分所有法第3条後段「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする」の規定により、一部の者の団体で構成される場合がある。

答え -2: 正しい。? 区分所有法第3条前段「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し...」だけを考え、一部の者は考えなければ、正しい。上の説明の後段は考えない。

4 団体は、区分所有者の数が30人以上であるものは、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議で法人となることができる。

答え:間違い。 区分所有法第47条1項「第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる」の規定により、以前は要件としてあった「区分所有者の数が30人以上」は現在は必要なくなり、かつ登記が必要。
(しかし、ここも、単純に設問のとおりに読めば、 30人以上いるのだから法人となれるという解釈が可能? 登記までは必要と考えないで。)

正解:2 又は 3 または 4。 設問が悪い。マンション管理センターの正解 3。

この設問のように、マンション管理士および管理業務主任者の試験には、曖昧な出題が多々ありますので、注意が必要です。

↑このページトップへ←区分所有法トップへ

ページ終わり

謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。

最終更新日:
2010年5月31日:ちょろちょろと
2010年1月30日:第2条5項;法定敷地のイラスト作成
2010年1月23日:H21年の出題年記入
2009年10月27日加筆
2009年10月6日:加筆
2009年9月22日:加筆
2009年7月2日:加筆

前へ前へ次へ次へ


全体のトップへ戻る
*総合ページへ*映画・演劇評論へ*日記へ*楽しいゴルフへ*投稿者のページへ*写真集へ*目指せ!マンション管理士・管理業務主任者へ*ヨーロッパ旅行記へ*ヨーロッパ 写真集へ*金町団地の建替闘争の記録へ ★「マンション管理士 香川事務所」へ、