マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。
試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。
条文を勉強することが、合格への道です。
第三十五条 |
1項 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。 |
過去出題 | マンション管理士 | H19年、H16年、H15年、 |
管理業務主任者 | H21年、H18年、H17年、H16年、H15年、H14年、H13年 |
*少なくとも1週間前に...通知を集会の最低7日前(前日までに7日あること)には出しておくこと。
★会議の目的をはっきりさせること
*伸縮することができる...会日の1週間前に、「目的」を示して、通知を出す。この1週間の期間は伸ばしたり、また短めることが別途規約で定められる。(注意:これを受け標準管理規約(単棟型)では伸ばして「2週間前」としている(標準管理規約(単棟型)43条1項)
★招集通知の趣旨
第35条は集会の招集の通知に関する規定です。
★集会の位置づけ − 最高の意思決定機関 −
集会(総会)は区分所有者が全員参加して区分所有法や規約で定める重要な事項、また会計関係も審議し、管理方法などを決定する管理組合の法定の最高の意思決定機関です。
そして、集会での決定は反対した人を含めた全区分所有者を拘束し、更には後からマンションを買った特定承継人やマンションを借りている占有者等決議に参加できない者に対してもその効力が及ぶなど多くの関係者に重大な影響を及ぼす会議です。
従って、その会議の重大さに伴い、決定される事項が法に沿ったもの、いいかえると適法であるべきことは勿論ですが、その前に、集会の招集の通知や手続き自体も法定化され、この規定に従った内容であることが要請されます。
第35条はその集会の始めとなる、集会を招集する通知手続きに関する規定です。
◎まず、区分所有者が必ず集会に参加できることと同時に招集者の便宜を図り、手続きの瑕疵で会議全体が違法となることを阻止し、会議で決めた事柄の適法な成立を目指します。(集会の議題の通知がなかったために、決議が無効になった例があります。東京地裁 昭和62年4月10日、東京高裁 平成7年12月18日)
この観点からは、一定期間前の通知や各人宛の通知、さらに通常議決事項の議題の通知や特別決議事項の議案の要領の通知は参加者の便宜をはかるためであり、通知の期間計算が到達主義によらず発信主義によること、住所不明時の探索責任を免除すること、掲示による通知のみなし規定があること等は招集者の便宜と会議の適法な成立の確保のためのものといえます。
★集会招集の原則
1項は集会招集の原則規定です。
★いつまでに、誰に通知するのか −最低、集会の日の1週間前に、議題を示して各区分所有者に出すこと −原則−
集会招集の通知はいわゆる観念の通知で、通常、民法の意思表示の規定が準用されます。
民法での原則は相手に到着したときに効力を生じる「到達主義」(民法第97条)となりますが、通知すべき相手方が多数の場合には到達時を揃えるのは事実上不可能ですから、区分所有法第35条1項の規定のように「発すればいい」発信主義が取られます。
<参照>民法第97条 (隔地者に対する意思表示)
第九十七条 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
従って、招集者は1週間前に各区分所有者宛に会議の目的たる事項、即ち「議題」を明示した招集の通知を発信しさえすればよく、この場合の到達の危険(その早遅や事故による不到達)は受信者たる区分所有者が負担することになります。
これで一部の者に対する通知の不到達が招集手続きの瑕疵、ひいては集会決議が違法・無効になることを防止しています。
◎1週間前は、参加者に集会の議事内容の検討と出席の準備のための猶予期間です。
この通知期間の厳密な計算方法は区分所有法には規定がありませんから、民法(第138条から第143条)により、期間の初日は算入せず、通知日と集会日との間に中1週間(中7日)以上の期間を置くということになります。
★規約で、伸ばしたり短くできる
もとより、この1週間前という通知期間も区分所有法の想定した決め事に過ぎません。
従って、リゾートマンションのように区分所有者が分散していたり、都会の賃貸用マンションなど、個々の管理組合における構成員の住所地の分布状況に応じて1週間前という期間が短すぎたり長すぎたりすることもあるでしょうから、この期間を伸ばしたり縮めたりして適切な期間を規約で定めることができるものとされます。
具体的な例としては、区分所有者の数が少なく、しかも全員が同じマンション内に住んでいて、通知先もそのマンション内として届け出ていれば、すぐに連絡ができますから、通知期間を1週間前よりも短かくする規約も考えらえます。
ただし、区分所有者が参加できないような余りにも短期間を設定した規約の場合には、区分所有者の集会議決権を侵害するものとしてその規約は無効となることもあります。
なお、第35条1項は、通知を出すのは「少なくとも1週間前」と規定しているので、これより長い期間、例えば、「10日前」や「2週間前」に通知を出すのは、規約がなくても可能です。
★集会に出席機会と準備のために、最低1週間は見ている。発すればよく、到達は1週間よりも遅れてもいい。
1週間前は規約で プラス・マイナスできる。
◎通知 ―― (原則:1週間前 プラス、マイナス可能) ――――> ◎集会
◎ただし、マンション標準管理規約では、2週間前を推薦している。(混同しないように!)
<参考>標準管理規約(単棟型) 43条1項:招集手続)
第43条 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。
★集会の通知は、通常の集会と建替え集会では、異なる。
(*注):普通の集会での、招集通知は1週間前で、伸長、短縮(プラス、マイナス)が出来るが、
建替えでは、その重要性から、集会日の2ヶ月前に発し、説明会は1ヶ月前に発する。この2ヶ月前と1ヶ月前は伸長(プラスだけ)だけしかできない。
ここらが、試験で狙われている。<参照>第62条4項、第62条7項
★集会(総会)を招集するためには、まず各区分所有者に通知しなければなりません
その通知の方法は、法律上は必ずしも書面による必要はなく、電話や口頭やFAXや、IT化によるEメールでも可能ですが、聞いていないとか、届いていないなどの、後日の紛争を予防するためにも、書面によって通知することが適当といえましょう。
通常、集会の通知には、集会の開催日時・場所(区分所有法では規定されていませんが)の通知はもとより、「会議の目的たる事項」をも通知することが必要です(第35条第1項)。
★会議の目的たる事項を通知すること
この「会議の目的たる事項」とは、通常、集会(総会)にかけて討議・決議する題目で、具体的には「決算案の承認」「予算案の承認」「役員の選任」「修繕積立金の値上げ」「給水管更生工事の実施」「規約の変更」というような議決の目的である事項を指しています。
★「会議の目的たる事項」の重要性に伴い「会議の目的たる事項」+「議案の要領」が求められることがある
また、「会議の目的たる事項」が、区分所有者及び議決権の各3/4以上または4/5以上(建替え)の賛成を必要とする特別決議事項のうち、
@「共用部分の重大な変更」(第17条第1項)、
A「規約の設定・変更・廃止」(第31条第1項)、
B「建物の価格の1/2超が消滅した場合(大規模滅失)の復旧」(第61条第5項)、
C「建替え」(第62条第1項)、
D「団地管理組合の規約の設定の特例」(第68条第1項)、
E「団地内の2以上の区分所有建物の一括建替え承認決議に付する旨」(第69条第7項)
この場合には、招集の通知に当たり、会議の目的たる事項のほかに、その「議案の要領」も通知する必要があります(第35条第5項)。
これらの事項は、重要性が高いため、「会議の目的たる事項」のほかに、区分所有者に充分な予備知識を与えて、集会に臨むように配慮したものです。
(*注)多くは3/4以上の議決が必要な特別決議事項だけど、全部ではない。ここらも試験で狙われる。
ここに入っていないもの(議案の要領が不要なもの)
@管理法人となること(第47条1項)
A管理組合法人の解散(第55条2項)
B使用禁止、競売または占有者に対する引渡しの訴えの提起(第58条2項、第59条2項、第60条2項)
★会議の目的たる事項、議案の要領とは
会議の目的たる事項には、大きく分けると、@報告事項(会計報告、事業報告、監査結果報告など。区分所有法第43条参照)と、A討議だけする事項、そして、B討議して決議する決議事項があります。決議事項は、通常は「議案」とも呼ばれています。
<参照>区分所有法(事務の報告)
第四十三条 管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。
(*注:ただし、多くの管理組合では、「会議の目的たる事項」を「議題」とよんだり、「議案」とよぶこともあります。)
区分所有法での議案とは、具体的には、規約の改正なら、『規約xxx条中「○○○」を「△△△」に改める』というように、討議して賛否を決議する内容の原案を示すものです。
議案の要領はそれを要約したものをいいます。
上の例での、規約改正なら、その理由を要約します。全文である必要はありません。
また、討議だけする事項では、議案の要領は、不要です。(つけてもかまいませんが)
議案の要領の内容は、当然に議案によって異なりますが、区分所有者がその議案について予め賛成・反対の意思決定が可能である程度に具体的かつ理解可能であるように示すことが必要です。案が2つ以上あるときは、全部示すべきです。
特別決議事項については、普通決議よりも区分所有者に充分な検討材料を提供させる趣旨です。
議案の要領が不十分だと、会議を開いて決議しても無効と判断されることもありますから、注意してください。
{判例}「議案の要領」とは、事前に賛否の検討が可能な程度に具体的内容を明らかにしたものを要するが、最大58票を有する者がいたにも拘わらず、単に「議決権条項」とだけ通知してなされた1区分所有者1議決権への変更決議は、重大な手続き違背があり無効である。(東京高裁:平成7年12月18日)
{設問-1}甲マンション管理組合が「現在の仕様に合わせた屋上防水補修工事の実施及びそれに係る修繕積立金の一部取崩しの件」を議案とする集会を5月25日に開催する場合おいて、管理者が行おうとしている集会の招集通知に関する次の記述は、区分所有法の規定に反するか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。
*集会の招集通知書を、同年5月17日に発信することとした。
答え:反しない。区分所有法第35条1項によれば、招集には1週間前に通知を発することが必要で、5月25日の前日から7日は、5月24日 - 7日 = 5月17日 であり、反しない。
{設問-2}次の記述は正しいか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。
*集会のお知らせは、開催日の10日前に区分所有者の方々にお出しします。
答え:正しい。集会のお知らせは、区分所有法第35条1項により、少なくとも1週間前であればいいので、開催日の10日前に区分所有者の方々にお出しします、は、正しい。
第三十五条 |
2項 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。 |
過去出題 | マンション管理士 | H16年、H15年、 |
管理業務主任者 | 未記入 |
★また、後ろの条文(第40条)を引き出してくるとは、区分所有法の立法者は問題ありです。
<参照> 区分所有法 第40条:議決権行使者の指定
専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。
★共有者がいる場合の集会の通知法
専有部分が複数の人の共有関係にあれば、各共有者は、その各々が区分所有者ですから(区分所有法第2条2号)、単純に第35条1項の規定によると、各区分所有者あてに出すことになっていますから、その専有部分を共有している人、全員が招集通知の送付対象者となります。
しかし、通常は専有部分1戸(1室)につき1区分所有者の場合が多く、議決権も区分所有者数を数える時には共有者全員を併せて1名としています(第40条参照)し、招集は議決権行使のためですから議決権を行う人に出せばいいことになります。
このようなことから、専有部分が共有の場合には、議決権を行使する者が決められていればその者に、決められていなければ招集者が、共有者のだれか1名に通知を発すればよいとしたのが2項です。
★共有:例えば区分所有者の名義が夫婦の共有になっているとき。議決権行使者が決まっていなければ、妻でも夫でも、どちら宛でもいい。
また、夫婦で持分が夫:2/3、妻:1/3でも、持分の少ない妻を議決権行使者にしても問題ない。
★ただし、共有者への通知は1人宛だけど、共有者は全員集会に出席ができて、発言も出来る。
この場合、共有者同士で1つの議案について賛成・反対など異なった発言をすることは許されない。
このようなことが起きないよう、共有者間で事前に発言者を一人に定めておくことが望ましい。
議決権は、決められた数だけしか行使できない。
共有関係がある場合、集会(総会)での、賛成・反対の決議での計算では、確認が必要です。
{設問-1}甲マンション管理組合が「現在の仕様に合わせた屋上防水補修工事の実施及びそれに係る修繕積立金の一部取崩しの件」を議案とする集会を5月25日に開催する場合おいて、管理者が行おうとしている集会の招集通知に関する次の記述は、区分所有法の規定に反するか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。
* 夫婦が共有する専有部分に係る議決権行使者の通知を受けていなかったため、妻に当てて集会の招集通知書を送付することとした。
答え:反しない。区分所有法第35条2項によれば、共有者に対する通知で議決権行使者が定められていない場合は、共有者の一名に通知すれば足る。この場合、妻宛でも夫宛でも許される。
{設問-2} A及びその妻Bは、甲マンション(その敷地を区分所有者が共有しているものとする。)の1室を共有しており、Aの持分は三分の一である。この場合のAに関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。
1 議決権を行使すべき者が定められていない場合には、持分の小さいAに対してした集会の招集通知は、有効である。
答え:正しい。共有で議決権を行使すべき者が定められていない場合には、区分所有法第35条2項括弧書きにより、持分に関係なく共有者の一人に出せばいいため、持分の小さいAに対して出した集会の招集通知も、有効である。
2 Aは、持分が小さいので、議決権を行使する者となることができない。
答え:間違いである。 区分所有法第40条によりAは、持分の多寡にかかわらず、共有者間で決めれば、議決権を行使する者となることができる。
3 甲マンションに管理組合法人が設立されている場合、持分の小さいAでも監事となることができる。
答え:正しい。甲マンションに管理組合法人が設立されている場合、区分所有法第49条、同法第50条でも理事・監事の資格要件は無いから持分の小さいAでも監事となることができる。
4 Aは、Aの持分を他に譲渡する場合は、その持分とその持分に係る敷地利用権とを分離して処分することはできない。
答え:正しい。共有持分といえども区分所有権である以上区分所有法第22条により、Aは、Aの専有部分の持分を他に譲渡する場合は、その持分とその持分に係る敷地利用権とを分離して処分することはできない。
正解: 2
第三十五条 |
3項 第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。 |
過去出題 | マンション管理士 | H20年、H16年、H15年、 |
管理業務主任者 | 未記入 |
★通知の宛先
集会開催の通知を出すためには、その宛先が分からないと意味がありませんが、宛先は招集権者が決めるよりも各区分所有者が届出るのが現実的ですから、宛先はまず、
@区分所有者の届出た場所とし、
A届け出のない者については、その者の専有部分(室)宛に発信すれば充分としました(3項)。
この場合、通常の到着時により到達とみなされますから、発信しさえすればよく、現実には到達しなくとも招集手続きの瑕疵にはなりません。
発信主義を採用した当然の結果です。
郵送なら、通常の必要日時後に到着したとみなされ、実際に各戸の郵便受けに入れる方法をとれば、直ちに到着とみなされます。
届出された場所が曖昧であるとか、そのマンションに住んでいないことが明らかである時は、登記簿などから宛先を探して、現実の住所に送ることは、望ましいことではありますが、この場合には到達の擬制は受けられませんから集会の適法性保持の面ではかえって危険な行為といえます。
★区分所有者から通知場所の変更の届出がないかぎり、届出を受けた通知場所にあてて通知すれば、管理者は責任を免れることを意味します。
したがって「転居先不明」等で通知書が戻ってきた場合でも、管理者は通知義務を果たしたことになります。
★マンションに住んでいないのが分かっていて、通知もないので、勝手に登記簿から調べて、そこに送っても適切な処置ではない!
★専有部分を賃貸に出している区分所有者は、通知場所を届けるべきです。
{設問-1}甲マンション管理組合が「現在の仕様に合わせた屋上防水補修工事の実施及びそれに係る修繕積立金の一部取崩しの件」を議案とする集会を5月25日に開催する場合おいて、管理者が行おうとしている集会の招集通知に関する次の記述は、区分所有法の規定に反するか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。
* 長期の海外駐在中の区分所有者から、現在の居住地及び連絡先についての通知を受けていなかったため、マンション内の見やすい場所に集会の招集通知書を掲示することとした。
答え:反する。 通知が無いときは、区分所有法第35条3項により、「区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。」 そして、区分所有法第35条4項によれば、通知のない区分所有者に対して「掲示」で代行できるのは、規約による特別の定めが必要。 住んでいないことが明らかでも、法に従わない行為はできない。
{設問-2}次の記述は正しいか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。
* 集会の招集通知は、あらかじめご連絡いただければ、ご親戚などの家にお届けすることもできます。
答え:正しい。 通知を貰っているので、区分所有法第35条3項により、親戚などの家に送ってもいい。
第三十五条 |
4項 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。 |
過去出題 | マンション管理士 | H16年、H15年、 |
管理業務主任者 | H17年、 |
★規約に特別の定めがあれば、掲示でよい場合...規約で定めていなければ、郵便受けに入れるより、通知が不確実なので、掲示しても有効でない。
★通知の例外
区分所有法第35条1項により、通常、集会招集の通知は、各区分所有者あてに発されます。
これは、具体的には、各戸の郵便受けに投函されることになります。
通常は、郵便制度を利用した郵便配達の方法をとりますが、郵便代がかかるため、理事または委託を受けた管理業者が直接マンションの郵便受けに入れます。
集合ポストがあれば、各戸あての投函作業も楽ですが、集合ポストがないと各階を歩きまわるので、面倒な作業です。
そこで建物内ではもっと簡便な通知方法として、規約があれば掲示板での招集通知を認めたのが本4項です。
掲示は建物内への通知である点で建物内にいる区分所有者(当然建物内の場所を宛先として届出した者です。)も、届出がないために専有部分宛通知される者と変わりがありませんから、その者も対象となります。
ただし、この方法は個々の直接の通知ほど確実性がありませんから、この簡便な方法を取るためにはその旨の規約の定めが必要です。
★規約があれば、建物内の見やすい場所に掲示で通知は有効だけど、規約がないと通知にならない。
これを受け、標準管理規約(単棟型)43条3項では、明確にマンション内に住んでいる区分所有者、届出のない区分所有者には、掲示板への案内でよいとしてます。
<参考>標準管理規約(単棟型): (招集手続)
第43条 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。
2 前項の通知は、管理組合に対し組合員が届出をしたあて先に発するものとする。ただし、その届出のない組合員に対しては、対象物件内の専有部分の所在地あてに発するものとする。
3 第1項の通知は、対象物件内に居住する組合員及び前項の届出のない組合員に対しては、その内容を所定の掲示場所に掲示することをもって、これに代えることができる。
★招集通知は、各区分所有者に対して個別にするのが原則ですが、区分所有法においては、建物内の見やすい場所(建物の出入口の掲示場等)に掲示するものと規約で、定めることができることとされています(区分所有法第35条4項前段)。ただし、それは建物内に住所を有する区分所有者又は管理者に通知場所の届出をしない区分所有者に対する通知に限られます。
従って、この掲示板の規約の定めがあっても、マンション外に居住しており、そこを通知場所として管理者に届出ている区分所有者に対しては、個別に通知をしなければならないのは当然です。
規約に基づいた掲示による通知は、その掲示をした時に到達したものとみなされます(第35条3項後段)。
第三十五条 |
5項 第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。 |
過去出題 | マンション管理士 | H20年、H16年、H15年、 |
管理業務主任者 | H21年、H18年、H16年、H15年、H14年、H13年 |
★「会議の目的たる事項」の他に「議案の要領」の必要な場合
招集通知では、審議内容を事前に検討し会議の準備をさせるために「会議の目的たる事項」を示しますが、いわゆる区分所有者及び議決権の各3/4以上の賛成が必要な特別決議事項の内
ア.管理組合法人となること(第47条1項)、
イ.管理組合法人の解散(第55条2項)、
ウ.義務違反者に対する処置の使用禁止(第58条)、競売(第59条)、占有者の引渡(第60条)
である場合を除く、
@第17条第1項の共用部分の重大な変更、(軽微な変更は入っていない)
A第31条第1項の規約の設定・変更・廃止、
B第61条第5項の共用部分の大規模滅失(建物価格の1/2超)の場合における復旧、
C第62条第1項の建替え、(ここは、区分所有者数および議決権の各 4/5以上 要)
D第68条第1項の団地管理組合の規約の設定・変更・廃止
E第69条7項の団地内の2以上の区分所有建物の一括承認に付する旨の承認の決議
の場合にはその重要性を考慮して、「会議の目的たる事項」に追加して「議案の要領(概略的な議案の内容)」も併せて通知するものとされます。
★特別決議事項と呼ばれる4分の3(75%)以上や5分の4以上(80%)の多数の決議が必要な(8の内6)。
★多数の決議が必要な内、管理組合の法人化(第47条1項など)、解散や義務違反者に対する措置(第58条2項)などが入っていないことに注意。
★これらはその重要性から、「会議の目的(議案)」のほかに「議案の要領」も通知して、前もって検討させる。
@第17条1項(共用部分の重大変更):
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
A第31条1項(規約の設定・変更・廃止):
規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
B第61条5項(建物の大規模滅失の場合の復旧):
第一項本文:(建物価格の2分の1以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は滅失した共用部分および自己の専有部分を復旧することができる)に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。
C第62条1項(建物の建替):
集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。
★ただし、建替決議では、1.会議の目的、2.議案の要領 のほかに
一 建替えを必要とする理由
二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
も必要。(第62条5項)
D第68条1項(団地規約の設定):
次の物につき第六十六条において準用する第三十条第一項の規約を定めるには、第一号に掲げる土地又は附属施設にあっては当該土地の全部又は附属施設の全部につきそれぞれ共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意、第二号に掲げる建物にあってはその全部につきそれぞれ第三十四条の規定による集会における区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議があることを要する。
一 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は附属施設(専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く。)
二 当該団地内の専有部分のある建物
<参照> 第30条1項:建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
E第69条7項(団地内の2以上の特定の区分所有建物の建替について一括して建替承認決議に付す旨の決議):
前項の場合において、当該特定建物が専有部分のある建物であるときは、当該特定建物の建替えを会議の目的とする第六十二条第一項の集会において、当該特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付する旨の決議をすることができる。この場合において、その決議があつたときは、当該特定建物の団地建物所有者(区分所有者に限る。)の前項に規定する合意があつたものとみなす。
<参照> 前項=第69条6項 :第一項(団地内建物)の場合において、当該特定建物が二以上あるときは、当該二以上の特定建物の団地建物所有者は、各特定建物の団地建物所有者の合意により、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付することができる。
◎まとめ
◎集会の決議で「会議の目的」以外に「議案の要領」が必要なもの | |||||
番号 | 条文 | 内容 | 決議 | さらに必要な「通知事項」 | |
1 | 第17条1項 | 共用部分の重大変更 | 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数、ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる | ||
2 | 第31条1項 | 規約の設定・変更・廃止 | 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議 | ||
3 | 第61条5項 | 建物の大規模滅失の場合の復旧 | 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数 | ||
4 | 第62条1項 | 建物の建替 |
区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数 (*建替え決議は、4/5以上に注意) |
一 建替えを必要とする理由 二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに 要する費用の額及びその内訳 三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容 四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額 |
|
5 | 第68条1項 | 団地規約の設定 | 土地または附属施設 | 共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意 | |
専有部分のある建物 | 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議 | ||||
6 | 第69条7項 | 団地内の2以上の特定の区分所有建物の建替について一括して建替承認決議に付す旨の決議 | 特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数 (建替え決議は、4/5以上に注意) |
★議案の要領とは 、「事前に賛否の検討が可能な程度に具体的内容を明らかにしたものであることを要する」。案が2つ以上あるときは、そのいずれも示すべきである。
{判例-1}
判決趣旨:区分所有法第35条5項の定める「議案の要領」とは、事前に賛否の検討が可能な程度に具体的内容を明らかにしたものであることを要するが、最大58票を有するものがいたにもかかわらず、単に「議決権条項」とだけ通知してなされた1区分所有者1議決権への変更決議は、重大な手続き違背があり無効である。(平成7年12月18日:東京高裁)
★普通の決議事項であっても、「議案の要領」を示してもいい
区分所有法第35条5項は、第17条1項など重要な事項の場合は法で必ず「議案の他に具体的な内容=議案の要領」をも通知しろと強制してますが、区分所有法に定められていない普通の決議事項についても、議案の他に具体的な内容を通知することは、区分所有者の判断材料の提供として許されます。
<参考>標準管理規約(単棟型) 43条:(招集手続)
第43条 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。
2. 前項の通知は、管理組合に対し組合員が届出をしたあて先に発するものとする。ただし、その届出のない組合員に対しては、対象物件内の専有部分の所在地あてに発するものとする。
3. 第1項の通知は、対象物件内に居住する組合員及び前項の届出のない組合員に対しては、その内容を所定の掲示場所に掲示することをもって、これに代えることができる。
4. 第1項の通知をする場合において、会議の目的が第47条第3項第一号、第二号若しくは第四号に掲げる事項の決議又は建替え決議であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。
5. 会議の目的が建替え決議であるときは、前項に定める議案の要領のほか、次の事項を通知しなければならない。
一 建替えを必要とする理由
二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持
及び回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する
費用の額及びその内訳
三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
6. 建替え決議を目的とする総会を招集する場合、少なくとも会議を開く日の1か月前までに、
当該招集の際に通知すべき事項について組合員に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。
7. 第45条第2項の場合には、第1項の通知を発した後遅滞なく、その通知の内容を、所定の掲示場所に掲示しなければならない。
8. 第1項(会議の目的が建替え決議であるときを除く。)にかかわらず、緊急を要する場合には、理事長は、理事会の承認を得て、5日間を下回らない範囲において、第1項の期間を短縮することができる。
第43条関係コメント
(第3項、第7項関係)
所定の掲示場所は建物内の見やすい場所に設けるものとする。以下同じ。
{設問-1}甲マンション管理組合が「現在の仕様に合わせた屋上防水補修工事の実施及びそれに係る修繕積立金の一部取崩しの件」を議案とする集会を5月25日に開催する場合おいて、管理者が行おうとしている集会の招集通知に関する次の記述は、区分所有法の規定に反するか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。
* 集会の招集通知書に、議案の要領を記載しないこととした。
答え:反しない。区分所有法第35条5項によれば、
@共用部分の重大変更、
A規約の設定・変更・廃止、
B共用部分の大規模滅失の場合の復旧、
C建替、
D団地規約の設定・変更・廃止、
E団地内建物の一括建替承認決議
のような、特別決議事項を議案とする総会招集には議案の要領を通知する必要があるが、
「現在の仕様に合わせた屋上防水補修工事の実施及びそれに係る修繕積立金の一部取崩しの件」を議案とするものは、軽微な変更で、普通決議事項のため要領の記載は不要で、反しない。
{設問-2} 次の記述は正しいか。
* 集会の招集通知とともに、規約改正の議案の要領も通知いたしますから、あらかじめご検討ください。
答え:正しい。規約の改正は区分所有法第31条に該当し、この場合、集会の招集通知とともに、同法第35条5項により規約改正の議案の要領も通知がいる。
第三十六条 |
1項 集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。 |
過去出題 | マンション管理士 | H17年、H16年、 |
管理業務主任者 | 未記入 |
*全員の同意があるとき...区分所有者”全員”が同意してなければ無効。
第36条は、第35条で定める招集手続きを省略できる場合の規定です。
★招集手続きの省略化
集会は区分所有者の権利義務に影響を与える重要な会議ですから、会議の構成員である各区分所有者の会議への準備およびその出席の機会が保証されなければなりません。
前の第35条「招集の通知」規定は集会参加への準備、およびその出席の機会の確保を目的とした重要な手段の法的保護の表れです。
しかし、招集手続きを規定するのは、各区分所有者の集会出席権を法的に保護する目的ですから、その保護を受ける者が保護をいらないといえば招集手続きは不要となるはずです。
従って、「区分所有者全員が承諾すれば招集手続きが不要」になり、招集手続きなしで集会が開催できるというのがこの趣旨です。
★規定の対象
この規定が本来対象とするのは少人数の管理組合で相互の連絡が電話で出来るとか、1週間の事前予告が長すぎるくらい速やかに取れる場合を想定しているようです。
しかし、大規模な管理組合においてもこの規定は当然に有効です。
ただ、多人数の管理組合では区分所有者全員が招集手続きの省略を承諾することは事実上無いでしょうから、この規定が意味を持つのは少数の招集通知洩れの瑕疵をその者の承諾を得て集会開催前に補完することくらいでしょう。
ただし、手続きに瑕疵があるままで開催された場合にはその集会は違法なものであり、事後に区分所有者全員の承諾を得ても集会の違法性を阻却するものとは原則として考えられません。
この規定の文言からも、「同意」は集会の開催前のものであることを前提とした表現となっています。
★省略される手続き
なお、この規定が適用される場合には、招集権者による招集、招集通知の期間、議題や議案の要領などその他招集に必要な諸手続きが不要となります。
もっとも、承諾権者は一括して招集の利益を放棄する義務はありませんから、どの手続きを不要とし、どの手続きを必要とするかも自由であり、例えば、招集の通知期間については妥協するが、議題や議案の要領の通知は必要だと主張することも当然可能です。
★あらかじめ通知されない事項も、決議ができる。
集会では、次の第37条1項によって、「あらかじめ通知した事項」のみが、決議の対象になりますが、この第36条の「区分所有者全員の同意で開催された集会」においては、「あらかじめ通知していない事項」であっても、決議できますので、注意してください。(参照:第37条3項)
<参照> 第37条 (決議事項の制限)
第三十七条 集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
2 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。
★区分所有者の全員出席集会
ところで、区分所有者全員の同意があるという場合は、事実上は少人数の管理組合に限られるでしょうが、この規定が適用される典型的な場合はいわゆる区分所有者全員が出席した集会です。
忘年会その他の懇親会や町内の他の会合等で区分所有者の全員がたまたま集まった場合などで、管理組合の集会で決議すべき事項についてこの機会に決議しようと、区分所有者も全員が合意すればこの規定の適用により、適法な集会を開くことができます。
ただし、この規定は招集手続きの省略を認めるだけにすぎませんから、特別決議や普通決議に必要な定数を満たすことや建替え決議等の特殊な決議を行う場合の決議内容の具備、利害関係人の意見聴取が必要な場合の当該人の出席確保等招集手続き以外の要件を満たす必要があることは勿論です。
★小さなマンションなどでは、面倒な招集手続きは区分所有者全員が同意すれば、省ける。
ただし、招集手続きだけが、省けるだけで、他の規定による定数や議決内容が必要なものは別の話になる。
{設問}甲マンション管理組合において規約を変更する場合、規約で定めることができるものとして、区分所有法の規定によれば、次の記述は正しいか。
*集会の招集について、区分所有法の規定により集会の目的たる決議事項が議案の要領の通知をしなければならないものを除き、招集手続きを省略することができると定めること。
答え:間違いである。 区分所有法第36条は、「集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。」だけである。 招集手続きの例外を定めるのはこれだけであり、本肢のように集会の招集について、区分所有法の規定により集会の目的たる決議事項が議案の要領の通知をしなければならないものを除き、招集手続を省略することができると定めることはできない。
第三十七条 |
1項 集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。 |
過去出題 | マンション管理士 | H19年、H14年、 |
管理業務主任者 | H16年、 |
*決議をすることができる...あらかじめ通知しなかったことは、集会では決められない。ただし、特別決議でない事項は、規約があれば、別段の定め可能(2項)
また、区分所有者全員の同意があり、招集手続きのない集会では可能(3項)
集会に不参加で、書面決議や代理人での決議をする区分所有者の権利を守るための規定。
第37条は決議事項の制限の規定です。
何度も言いますが、集会は区分所有者で構成される団体(管理組合)の最高の意思決定機関であり、各区分所有者はそこでの討論や表決で各々の意思を表明することにより各自の利益を守ることができることになっています。
この審議権を確保するために、第35条で集会が何時どこで開催されるかの他、何について審議するのか(会議の目的たる事項)をあらかじめ通知することが招集手続きとして要求されていますが、あらかじめ通知された事項以外が、集会で審議・議決されたのでは第35条の定めは骨抜きとなってしまいます。
そこで第35条に定める招集手続きを実効性のあるものにして、各区分所有者の審議権を保証するのが本第37条1項の趣旨です。
★集会(総会)においては、区分所有法第35条1項と同5項の規定により「あらかじめ通知した事項」、すなわち、集会(総会)の招集通知に会議の目的たる事項として示された事項及び議案の要領についてのみ決議できるのが原則です(区分所有法第37条1項)。
この趣旨は、区分所有者が集会(総会)に出席するかどうかは、その会議の目的たる事項の重要性又は自分が利害関係を有するかどうかによって判断するのが普通ですから、不意打ちにならないようにという考慮から、あらかじめ招集の通知に会議の目的たる事項及び議案の要領として示された事項についてのみ、決議することができるのを原則としたのです。
会議の目的たる事項は、報告事項を含めて、その会議にかけて討論する問題のことで、会議で討論・決議すべき事柄の概要を表したものす。
たとえば「管理費値上げの件」「共用部分変更の件」等です。
したがって、「その他」という事項はその内容が不明ですから第37条第1項により有効ではないと解されております。
ただし、この決議事項の制限は、下記の2つの場合は適用されません。
◎ 決議制限が適用されない場合
1.普通決議事項であって規約に決議できる旨別段の定めがある場合(第37条第2項)
(特別決議事項については認められません)
2.区分所有者全員の同意により招集手続を経ないで開かれる集会の場合(第37条第3項)。
なお、この場合でも、集会(総会)は、会議の目的たる事項によって特定されるものと考えるべきですから、区分所有者全員が出席していればいかなる事項をも決議できるのは当然ですが、欠席者との関係においては、会議の目的たる事項を特定して集会招集の同意を得なければならないと解されています(濱崎恭生「建物区分所有法の改正」法曹会発行)。ご注意ください。
★第37条2項に基づいて、規約に「あらかじめ通知した事項以外の事項をも決議することのできる」旨の定めがあり、通知もれした会議の目的たる事項が規約の定めに反しないかぎり(たとえば、特別決議事項は第37条第2項で認められていない)、通知もれの会議の目的たる事項も決議できます。
しかし、規約に別段の定めがない場合は、決議できないことはもとより、「その他」の事項は上記のとおり無効と解されていますので、招集通知に会議の目的たる事項として提示することは避けてください。
★通知がない事項は、集会に出席しなかった人が不利益になるので決議を禁止しているが、規約があれば、普通決議事項に関してのみ「あらかじめ議題」となっていなくても、決議できる。(第37条2項)。なお、特別決議事項は、規約があっても、「あらかじめ通知」していないと、決議できない。
{設問-1}この間の総会で、前から何度も問題になっていた共用庭の手直しについての緊急提案が出されて、そのまま賛成多数で可決されてしまいました。問題はないのでしょうか
答え:ご質問のような緊急提案は可決できないのが原則です。したがって、法的にも無効です。
前もって知らされていない緊急提案は、その内容について総会出席者が事前に自分の意見を整理するだけの用意ができていませんから、望ましい議決ができないことを考えて、このような定めになっているのです。
{設問-2}甲マンション管理組合でア〜エを議題とする総会が開催され、その席上、 組合員から出た意見のうち、議長が取り上げてこの総会に諮らなければならないものは、標準管理規約によれば、次のうちどれか。
ア 大規模修繕工事の実施
イ 玄関の階段への車椅子用スロープの併設
ウ 共用廊下等への手すりの設置
エ ア〜ウの費用についての修繕積立金の取崩し
1 高齢者対策のみでなく、盗難防止対策こそ急を要するものであり、玄関等に防犯カメラを設置すべきであるという意見。
答え:議長が取り上げて決議できない。標準管理規約(単棟型)47条9項「 総会においては、第43条 第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。」とあり、総会では「あらかじめ通知した事項についてのみしか、決議することできない」。「盗難防止対策こそ急を要するものであり、玄関等に防犯カメラを設置すべきであるという意見」は、今回の通知した事項から外れた新しい提案であるため、議長が取り上げて決議できない。
2 この議題が可決されると修繕積立金が少なくなるから、修繕積立金を1割値上げすべきであるという意見。
答え:議長が取り上げて決議できない。 これも、選択肢1で述べた、標準管理規約(単棟型)47条9項で通知した内容(取崩し)とは異なり、値上げという新しい提案であり、議長が取り上げて決議できない。
3 スロープの併設と手すりの設置によりマンションの形状が変わるし多額の修繕積立金を取崩すのであるから、特別多数決議をすべきであるという意見。
答え:議長が取り上げて決議できない。 これは、標準管理規約(単棟型)47条関係のコメント「Dこのような規定の下で、各工事に必要な総会の決議に関しては、例えば次のように考えられる。ただし、基本的には各工事の具体的内容に基づく個別の判断によることとなる。
ア)バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は普通決議により、階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けしたりして、エレベーターを新たに設置する工事は特別多数決議により実施可能と考えられる。」
とあり、普通決議で可能と考えられ、特別多数決議は不要であるが、個々の内容から検討して、特別多数決議となることもあり得る。
4 この議題が可決されると修繕積立金が少なくなるから、手すりの設置箇所を半分に減らすべきであるという意見。
答え:議長が取り上げて決議できる。 これは、選択肢1で述べた、「あらかじめ通知した事項」内での具体的な意見であるため、議長が取り上げてこの総会に諮らなければならない。
正解:4 (これも3の場合、内容によっては、判断が異なるので、設問が悪い。) マンション管理センターの正解:4
★あらかじめ通知した事項の変更の範囲 −修正も同一性があれば可能−
もっとも、あらかじめ通知した事項といっても、一字一句同じのものを議決しなければならないというわけではありません。
集会は上程された議題ないし議案について出席者の様々な意見を集約して区分所有者の総意を形成する場ですから、この意見の中には当然議案の修正ないし変更というものも含まれます。
集会で諸々の事項に関し討議検討されることは常識であり、このことは欠席者も当然予測できることですから、修正ないし変更がこの予測の範囲内であるならこれも実質的に予め通知した事項に包含されると考えられます。
従って、あらかじめ通知した事項と同一性のある範囲内であれば、この判定もかなり難しいですが、集会は原案を変更修正することができ、1項に違反するものではありません。
★あらかじめ通知した事項以外でも、討議はできる。
区分所有法第37条1項は、集会に出席しなかった人が不利益になるので、あらかじめ通知した事項以外の決議を禁止していますが、決議を禁止しているだけで、集会での討議までは禁止していませんので、ご注意ください。
★「議決」と「決議」の違い
集会(総会)では、各区分所有者が意思を表示して、多数者によって支持された意思表示が、全区分所有者を拘束する「多数決の支配」がなされます。
このような、多数決をつくる行為を議決とよび、多数決によってつくられた意思表示を決議と呼びます。
また、標準管理規約(単棟型)47条9項は、決議事項での別段の規定は定めずに、「あらかじめ通知した事項だけ、決議できる」としています。
<参考>標準管理規約(単棟型)47条9項:
9 総会においては、第43条 第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。
第三十七条 |
2項 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。 |
過去出題 | マンション管理士 | 未記入 |
管理業務主任者 | 未記入 |
★特別の定数の定め...特別決議事項で4分の3(75%)以上とか、5分の4(80%)以上の決議が必要なもの。
★規約で定めれば、あらかじめ通知していない事項も、内容により決議できる事項もある。
★通知事項以外の決議の制限の緩和
第37条1項で定める「あらかじめ通知した事項」という決議事項の制限は、何かを決める場合には、常に第35条に定める1週間前または規約に定める招集期間(プラス、マイナスが可能)が必要ということですから、招集通知後に判明した緊急議題や集会での変更が通知事項の同一性を超えるような場合には、再度招集する必要があります。
しかし、欠席者の意向がどうであれ出席者で議決要件に満ちる賛成があればその議案は可決されるわけですから、再度招集する時間がないような場合には出席者のみで議決できる方が便宜に感じられることがあります。
このような場合に備えて決議事項の制限を緩和することを認めたのが2項の規定です。
◎ただし、決議事項の制限は区分所有者の利益を守る重要な制度である一方、欠席者の意見が集会の議決を左右することもありうるわけですから、決議事項の制限を緩和するためには、その旨が規約で定められて予め参加者に予告されている必要があり、且つ特別決議事項ではそれほどの緊急性も考えにくく緩和による集会参加者の便宜より欠席した区分所有者個人の利益保護の要請が勝りますから緩和を認めないこととしています。
★第37条2項に基づいて、規約に「あらかじめ通知した事項以外の事項をも決議することのできる」旨の定めがあり、通知もれした議題が規約の定めに反しないかぎり(たとえば、特別決議事項は第37条2項で認められていない)、通知もれの事項も決議できます。
しかし、規約に別段の定めがない場合は、決議できないことはもとより、「その他」の事項は無効と解されています。
★通知がない事項は、出席しなかった人が不利益になるので決議を禁止したが、規約があれば、普通決議事項は「あらかじめの通知事項」となっていなくても、決議できる。
<参照> 第35条5項(議案の要領も必ず通知する決議事項)
◎集会の決議で「会議の目的」以外に「議案の要領」が必要なもの | |||||
番号 | 条文 | 内容 | 決議 | さらに必要な「通知事項」 | |
1 | 第17条1項 | 共用部分の重大変更 | 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数、ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる | ||
2 | 第31条1項 | 規約の設定・変更・廃止 | 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議 | ||
3 | 第61条5項 | 建物の大規模滅失の場合の復旧 | 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数 | ||
4 | 第62条1項 | 建物の建替 |
区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数 (*建替え決議は、4/5以上に注意) |
一 建替えを必要とする理由 二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに 要する費用の額及びその内訳 三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容 四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額 |
|
5 | 第68条1項 | 団地規約の設定 | 土地または附属施設 | 共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意 | |
専有部分のある建物 | 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議 | ||||
6 | 第69条7項 | 団地内の2以上の特定の区分所有建物の建替について一括して建替承認決議に付す旨の決議 | 特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数 (建替え決議は、4/5以上に注意) |
第三十七条 |
3項 前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。 |
過去出題 | マンション管理士 | 未記入 |
管理業務主任者 | 未記入 |
<参照> 前条の規定=第36条:
集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。
★集会の手続きを経ていなくて開催された集会なので、当然「あらかじめ通知した事項」はない事が普通である。
第三十八条 |
1項 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。 |
過去出題 | マンション管理士 | H20年、H19年、H16年、H15年、H14年、 |
管理業務主任者 | H20年、H13年 |
<参照> 区分所有法第14条:各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
★議決権の割合を定める趣旨
第38条は議決権に関する規定です。
議決権とは文字通り議題の決議に参加する権利を言いますが、この第38条の規定では、議決権は普通の選挙の投票権のように1人1票のような平等なものではなく、原則として、建物の専有部分の床面積の割合であるため、区分所有者によって大小の割合による差があるものとされています。
建物の専有部分の床面積の割合によるということは、区分所有者の団体である管理組合で問題となる事項の多くが議決権者たる区分所有者の各個人にかかわるものというより、建物を共有している人たちの共有物の管理方法という色彩が濃厚のため、その発言権たる議決権も持分に比例することが公平であるという考えによります。
しかし、マンションは、個人の生活の本拠たる住居を目的としていますから、そこでの個人の人格の平等という点も全く無視することはできません。
そこで区分所有法では、この個人の平等と持分権者間の公平を、@区分所有者数 と A議決権 の双方を要件とする次の第39条の議決要件で調整しているものと考えられます。
★議決権の割合 −原則 専有部分の床面積の割合ー 規約で別段可
第38条で規定する「第14条に定める割合」とは、共有持分の割合であり「内法(うちのり)計算」で算定される専有部分の床面積の割合に比例しています。
しかし、同じく第38条で議決権割合は規約での別段の定めを許していますから、持分を内法面積基準以外の壁芯面積基準とした場合の持分割合や、考え方としてはマンションの階別や南向き等の方位別の効用比を加味した価値基準による持分割合とすることも規約に定めれば可能です。
このような決め方はいずれも持分に応じた議決権である点で区分所有法や民法の趣旨に添うものです。
しかし、この決め方は法の趣旨にはあっていても、専有部分の床面積(u)に応じて明確に示すと、各戸の議決権が123.45等の4、5桁の数値となりますし、且つ議決権合計も相当大きな数値にならざるを得ません。
区分所有法での議決権の役目は、議決の際に必要な多数が確保されているか、とか、少数招集権に必要な議決権総数の1/5以上は満足しているか等を判断する割合としての指標ですから、割合が表されていれば床面積の値に完全に一致しなくてもいい性質のものです。
従って、議決権総数を 10、000 や 100、000 等の数えやすい数値にして各戸の持分を換算した議決権とするのが実際の総会運営の便宜に適うでしょう。
◎ところで、規約による別段の定めは持分によらない議決権も許容しているように読めますから、上記の 10、000や 100、000等の数値がまだ大きいと感じられる場合には、100または 1,000の数値にするために各戸の議決権を四捨五入等により丸めることも可能です。
この場合、専有部分の大小により本来あるべき権利の割合に比べ多少の不公平は生じますが、実際上の権利行使の効果は殆んど変わりがないでしょうから、その不利益と議決権計算の便宜の利益を比較すると議決権計算の便宜の利益が勝り適法な定めといえるでしょう。
◎この点において、議決権計算の便宜のため、持分の多少に関わらず 「 1戸=1議決権 」 という定めも本条が許容しているとの考えもありますが、1戸=1議決権は同じような広さの住戸の集合体の場合には計算の便宜の利益の優越という理由から認められても、議決権の本体は所有権の持つ所有物の自由な管理・使用・処分権能ですから、本来持分の多少に比例して表現されるのが当然であり、このような所有権の割合を極端に無視したやりかたは区分所有法や民法の趣旨に添う方法ではありません。
つまり、専有部分の面積が2倍も違うような場合に 各戸が、1戸=1議決権では実質的に少ない面積の人が、大きい面積の人の倍も投票権を持つような結果となり公正とはいえません。このような場合は、本来あるべき持分比での議決権の場合と比べて、不適切な規約として無効になることがありますので注意してください。(判例)
★議決権の表示
議決権は原則として、専有部分の床面積の割合と同様な数値になりますから、その総数が全専有面積の合計値になります。
例えば、Aとして 99.68uの建物と、Bとして 76.88uの建物の2個の区分建物の場合には議決権総数は A+B (99.68+76.88=)176.56 (100%、小数点を嫌い、100倍にして整数値に直すことが多いようです。)、個々の専有部分の議決権はその面積分の数値がその値となりますのでAの議決権は 99.68(56.46%)となりBの議決権は 76.88(43.54%)となります。
なお、この場合に計算の便宜のため数値を四捨五入する等により整数値とする場合には、
例えば、議決権総数 176.56 を100 とすると、Aの議決権は 99.68/176.56x100 = 56
となりBの議決権は 76.88/176.56x100= 44 となります。
標準管理規約(単棟型)では、議決権割合は、具体的には示さず、各マンションの実情に合わせた設定ができるように、○○としています。(別表第5参照)
<参考>標準管理規約(単棟型) 46条(議決権)
第46条 各組合員の議決権の割合は、別表第5に掲げるとおりとする。
2. 住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使については、これら共有者をあわせて一の組合員とみなす。
3. 前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければならない。
4. 組合員は、書面又は代理人によって議決権を行使することができる。
5. 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、
その代理人は、その組合員と同居する者
若しくはその組合員の住戸を借り受けた者、
又は他の組合員
若しくはその組合員と同居する者でなければならない。
6. 代理人は、代理権を証する書面を理事長に提出しなければならない。
〔※管理組合における電磁的方法の利用状況に応じて、次のように規定〕
(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
(規定なし)
(イ)電磁的方法が利用可能な場合
7 . 組合員は、第4項の書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法によって議決権を行使することができる。
別表第5 議決権割合 | |||
住戸番号 | 議決権割合 | 住戸番号 | 議決権割合 |
○○号室 | ○○○分の○○ | ○○号室 | ○○○分の○○ |
○○号室 | ○○○分の○○ | ○○号室 | ○○○分の○○ |
○○号室 | ○○○分の○○ | ○○号室 | ○○○分の○○ |
・ | ・ | ・ | ・ |
・ | ・ | ・ | ・ |
・ | ・ | ・ | ・ |
・ | ・ | ・ | ・ |
・ | ・ | 合計 | ○○○分の○○○ |
第46条関係コメント
@ 議決権については、共用部分の共有持分の割合、あるいはそれを基礎としつつ賛否を算定しやすい数字に直した割合によることが適当である。
A 各住戸の面積があまり異ならない場合は、住戸1戸につき各1個の議決権により対応することも可能である。
また、住戸の数を基準とする議決権と専有面積を基準とする議決権を併用することにより対応することも可能である。
B 特定の者について利害関係が及ぶような事項を決議する場合には、その特定の少数者の意見が反映されるよう留意する。
C 書面による議決権の行使とは、総会には出席しないで、総会の開催前に議案についての賛否を記載した書面を総会の招集者に提出することである。
他方、代理人よる議決権の行使とは、組合員本人から授権を受けた代理人が総会に出席して議決権を行使することである。
なお、組合員は、代理人により議決権を行使する場合は、第46条第5項に規定する者の中で、誰を代理人とするかについて主体的に決定することが望まれる。
★ 議決権...原則:建物の専有部分の床面積の割合(規約で別段可)
<参照> 第14条:各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
◎ 1人で同じ面積の室を2つ持っていれば、議決権は2倍になる。
区分所有者の数=1
議決権の数=2
◎ 共有者:区分所有者の数=1
議決権の数=1
<参照> 第40条:
専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。
{設問-1} 甲マンションの現況は、ア〜ウのとおりである。甲マンション管理組合の管理者が、集会の開催に当たり、議決権の対象となる戸数の総数及び自己の名義で議決権を行使することができる者に関して行った次の説明のうち、区分所有法、民法及び民事執行法の規定によれば、正しいものはどれか。
ア 甲マンションは、全戸の分譲開始から1年足らずであるが、一部が売れ残り、販売を継続中である。
イ 103号室の区分所有者Aは、所在不明で、財産の管理人も置かれず、Aの債権者Cが時々外部から同室の点検を行っている。
ウ 201号室の区分所有者Bは、第三者のために同室に抵当権を設定し、差押えを受けている。
1 議決権の対象となる戸数の総数は、全戸数ですが、規約で販売済みの戸数とすることもできます。いずれの場合にも、Aが集会に出席をすれば、議決権を行使することができることは当然です。
答え:誤りである。 議決権は区分所有者の権利であり、区分所有法第38条によれば、議決権の割合は規約で別段の定めが出来るが、規約でも、売れ残りの戸数の議決権を失わせることはできない。誤りである。この売れ残りの議決権は、販売会社がもっている。なお、所在不明のAが集会に出てくれば、当然に自己の議決権を行使できる。
2 議決権の対象となる戸数の総数は、全戸数ですが、集会の決議で販売済みの戸数とすることもできます。集会の決議が行われた場合には、Cは議決権を行使することができますが、差押えを受けているBは、議決権を行使することはできません。
答え:誤りである。 議決権は区分所有者の権利であり、たとえ集会の決議でも、規約でも、売れ残り分の議決権を失わせることはできない。また、区分所有者ではない債権者のCは議決権を行使することができない。なお、差押えを受けていても区分所有者であるBは、議決権の行使はできる。
3 議決権の対象となる戸数の総数には、所在不明のAの分は含まれません。また、差押えを受けているBが議決権を行使するには、裁判所の許可が必要です。
答え:誤りである。所在不明でも区分所有者である限りAにも議決権はある。所在不明者を議決権数から除く規定はない。また、差押えをうけていても区分所有者のBは、裁判所の許可がなくても議決権の行使はできる。
4 議決権の対象となる戸数の総数は、全戸数ですから、Aが所在不明でも、その分を集会の決議で除くことはできず、Bも議決権を行使することができます。Cは、議決権を行使することはできません。
答え:正しい。所在不明のAも、差押えのBも専有部分の法的権利の処分に制約は受けるが、集会での議決権行使には制約は受けない。Cは債権者であるだけで、区分所有者ではないので議決権はない。
正解:4
{設問-2}次の記述は正しいか。ただし、規約での別段の定めはないものとする。
* 各住戸の専有部分の床面積は異なりますが、各住戸の議決権は、それぞれ1個となりますので、ご承知おきください。
答え:間違いである。「各住戸の専有部分の床面積は異なりますが、各住戸の議決権は、それぞれ1個となり ます」というのは、規約が無い以上、区分所有法第38条「専有部分の床面積の割合による」べきで承知できない。(規約があれば可能だけど)。
第三十九条 |
1項 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。 |
過去出題 | マンション管理士 | H21年、H16年、 |
管理業務主任者 | H18年、 |
*区分所有者 及び 議決権の各過半数で決する...決議は、原則として、
@区分所有者数 と
A議決権
の両方において、半数(50%)を越えなければならない。(どちらか片方だけを、満足しても決まらない)
半数が 10 なら、過半数は 11 となる。(注:以上と過半数は違う!)
普通決議と呼ばれる。ただし、区分所有法で許している場合は規約で別に決めてもいい。
★議事での議決の原則
第39条は議決の要件に関する規定です。
1項により、集会の議事は区分所有者及び議決権の各過半数で決するものとされます。
従って、区分所有法各条項で「集会の議決による」、とされている事項、例えば第7条の先取特権での「他の区分所有者に対して有する債権」、第18条1項の「共用部分の管理」、その他については原則として「区分所有者及び議決権の各過半数」で可決成立することになります。
★例外1−区分所有法の規定−
区分所有者及び議決権の各過半数の例外が、@区分所有法 又は A規約に別段の定めがある場合です。
@このうちの「この法律に別段の定めがある場合」とは、区分所有法の各条項に本条が定める原則の区分所有者及び議決権の各過半数という要件を変更・修正する特別の定めがある場合です。
例えば、第17条の「共用部分の重大変更」や第31条の「規約の設定・変更および廃止」など「特別決議事項」とされる項目や「建替え」のような特殊の決議事項の場合であり、これらの条項では区分所有者及び議決権の 各 3/4 以上や 各 4/5 以上の多数という要件が明記されて過半数の原則を修正しています。これらが特別の定めに該当します。
このうち、第17条に限り「共用部分の変更の決議を区分所有者の 3/4要件を規約で過半数まで減じることを許す」としていますが、他の場合は、その要件を規約で緩和することも加重することも認められていません。
★例外2−規約の規定−
A例外の2は、規約で別段の定めをすることを許している場合です。
これに該当するのは、原則として普通決議事項に関したものです。
区分所有法で別段の定めがない事項は、規約があれば、規約での決議要件により、特に「区分所有者及び議決権の各過半数」でなくても、議決できます。
一般に規約では、区分所有法で求められている、区分所有者数の要件を外し議決権の過半数と緩和する例や、これを更に緩和して出席した者の議決権の過半数とする例などが多いようです。
例えば、区分所有者数の要件を外すということは、各区分所有者を平等に取扱うということをせず議決権、即ち持分の多少で区別した取扱いをするということになりますが、第38条でも一言したように共有物に関する事項の決定権がその持分の多少に比例するのが民法の原則ですから、議事内容が財産の管理項目である限り妥当なものといえます。
これを受け、標準管理規約(単棟型)では、普通決議は、区分所有者の数を入れずに、出席した者の議決権の過半数で決するとしています。
<参考>標準管理規約(単棟型)47条1項: (総会の会議及び議事)
第47条 総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
2. 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
3. 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
一 規約の制定、変更又は廃止
二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)
三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項
4. 建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。
★ 区分所有者の数...1人が複数のマンションの室を持っていても1つ。また、複数の人が1室をもっていても1つ(共有)。
{設問}複数の人が、複数の室を持っていたら、区分所有者の数は?
共有者:区分所有者の数=1
議決権の数=1
議決権...原則:専有部分の床面積の割合(別途規約可)
★区分所有法では、決議の多数決要件として特別の定めをしている特別決議事項と、過半数の決議で決する旨の定めをしている普通決議事項とがあります。
普通決議事項については、区分所有法第39条1項で、原則として、区分所有者の人数と議決権のそれぞれについて、過半数以上の賛成を必要とする旨その要件を定めています。
そしてこの普通決議の過半数は、集会(総会)に出席した区分所有者の人数と議決権を基準にするのではなく、全区分所有者の人数と議決権を基準にします。
つまり、全区分所有者の人数と議決権割合の、それぞれの過半数の賛成がないと決議が成立しないことになります。
よって、賛成・反対が同数のときは、否決となります。議長による採決はありません。
*議長の立場
区分所有法では、議長になった人も、議決権を有するなら、区分所有者として当初から、決議に加わって賛成・反対を表明することを想定しています。
なお、国会での議長は、当初の採決には加わっていないため、賛否同数なら、議長裁決となります。
<参照>憲法第56条2項
第五十六条 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
ただし、この普通議決の要件の軽減あるいは加重は、規約で別段の定めをすることによってそれが可能になります。(第39条1項)
★特別決議事項
区分所有者及び議決権の各3/4以上の決議を必要とする、特別決議事項には、次のようなものがあります。
@第17条1項の「共用部分の重大な変更」、(ただし、区分所有者の定数だけは、規約でその過半数まで下げられる。議決権は変更できない)
A第21条の「共有に属する敷地などの変更」、(17条の準用)(ただし、区分所有者の定数だけは、規約でその過半数まで下げられる。議決権は変更できない)
B第31条1項の「規約の設定・変更・廃止」、
C第47条1項の「管理組合法人となること」、
D第55条2項の「管理組合法人の解散」、
E第58条2項の「義務違反者に対する処置の使用禁止」、
F第59条1項の「区分所有権の競売請求」、
G第60条2項の「占有者に対する引渡請求」、
H第61条5項の「共用部分の大規模滅失(価格の1/2超)の場合における復旧」、
I第62条1項の「建替え」、(建替えは、重要性が高いので、区分所有者及び議決権の各4/5以上 要)
J第68条1項の「団地管理組合の規約の設定・変更・廃止」、
K第69条7項の「団地内の2以上の区分所有建物の一括承認に付する旨の承認の決議」(これは、区分所有者及び議決権の各4/5以上 要)
★集会(総会)成立の定足数は区分所有法では定めがない
定足数とは、「合議体が議事を進め議決をなすに必要とする最小限度の構成員出席数」のことですが、区分所有法は、第39条1項で「決議成立要件」を定めているだけであって、集会((総会)成立に関する定足数の定めを置いていません。
従って、定足数を充足しないからといって、総会が流会になるということはないのですが、仮に決議に必要な「区分所有者及び議決権の過半数」に出席数が達してない場合は、出席者した全員が賛成しても決議は成立しませんので、後日改めて総会を開かざるを得ないことになります。
ところで、普通決議の要件の軽減は規約でその定めをすれば可能ですが、たとえば「出席区分所有者の議決権の過半数で決する」と規約で定めたとします。
この場合、定足数を定めてないと、極端にいえば区分所有者1人の出席があればその者の意見で決まることになり、これでは区分所有法が集会という制度を設け区分所有者の大多数の意思によって管理運営の方向を定めようという法の趣旨が全く失われてしまうことになります。
そこで、かかる軽減措置を図る場合、一定数以上の出席がないと決議がなし得ないような仕組みにすることが肝要です。
つまり、定足数も併せて規約で定めておく必要があります。
なお、標準管理規約では、定足数を議決権総数の半数以上の出席と定めています。
★そこで、1つの例で検討してみましょう。
議決権総数が 40 なら、 20以上の出席で集会は成立です。
そして、普通決議は、過半数で決しますから、この 20 で成立した総会の決議は 10 を超えた 11 で決議されます。
なんと、40 の議決権総数でも、11 の賛成で通ります。多数決の理論といいながら、実際には 1/4 しか賛成がなくても可決します。
規約の規定には、注意が必要です。
<参考>標準管理規約(単棟型)47条1項: (総会の会議及び議事)
第47条 総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
2. 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
3. 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
一 規約の制定、変更又は廃止
二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)
三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項
4. 建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。
〔※管理組合における電磁的方法の利用状況に応じて、次のように規定〕
(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
5. 前4項の場合において、書面又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。
(イ)電磁的方法が利用可能な場合
5. 前4項の場合において、書面、電磁的方法又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。
6. 第3項第一号において、規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
7. 第3項第二号において、敷地及び共用部分等の変更が、専有部分又は専用使用部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分を所有する組合員又はその専用使用部分の専用使用を認められている組合員の承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
8. 第3項第三号に掲げる事項の決議を行うには、あらかじめ当該組合員又は占有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
9. 総会においては、第43条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。
そして、標準管理規約(単棟型)47条のコメントとして以下の内容があります。議長を含めて賛否同数なら否決です。
多くの集会で見られる、「議長裁決」は、標準管理規約では認めていません。
第47条関係コメント
@ 第2項は、議長を含む出席組合員(書面又は代理人によって議決権を行使する者を含む。)の議決権の過半数で決議し、過半数の賛成を得られなかった議事は否決とすることを意味するものである。
A 特に慎重を期すべき事項を特別の決議によるものとした。あとの事項は、会議運営の一般原則である多数決によるものとした。
B 区分所有法では、共用部分の変更に関し、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(特別多数決議)で決することを原則としつつ、
その形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更については区分所有者及び議決権の各過半数によることとしている。
建物の維持・保全に関して、区分所有者は協力してその実施に努めるべきであることを踏まえ、機動的な実施を可能とするこの区分所有法の規定を、標準管理規約上も確認的に規定したのが第47条第3項第二号である。
C 第1項に基づき議決権総数の半数を有する組合員が出席する総会において、第2項に基づき出席組合員の議決権の過半数で決議(普通決議)される事項は、
総組合員の議決権総数の4分の1の賛成により決議されることにかんがみ、
例えば、大規模修繕工事のように多額の費用を要する事項については、総組合員数及び議決権総数の過半数で、又は議決権総数の過半数で決する旨規約に定めることもできる。
D このような規定の下で、各工事に必要な総会の決議に関しては、例えば次のように考えられる。
ただし、基本的には各工事の具体的内容に基づく個別の判断によることとなる。
ア)バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は普通決議により、階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けしたりして、エレベーターを新たに設置する工事は特別多数決議により実施可能と考えられる。
イ)耐震改修工事に関し、柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事や、構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さいものは普通決議により実施可能と考えられる。
ウ)防犯化工事に関し、オートロック設備を設置する際、配線を、空き管路内に通したり、建物の外周に敷設したりするなど共用部分の加工の程度が小さい場合の工事や、防犯カメラ、防犯灯の設置工事は普通決議により、実施可能と考えられる。
エ)IT化工事に関し、光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場合、その工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に変更を加えることなく実施できる場合や、新たに光ファイバー・ケーブルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない状態に復元するのであれば、普通決議により実施可能と考えられる。
オ)計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる。
カ)その他、集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事などで、大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議により、窓枠、窓ガラス、玄関扉等の一斉交換工事、既に不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事は普通決議により、実施可能と考えられる。
E 建替え決議の賛否は、売渡し請求の相手方になるかならないかに関係することから、賛成者、反対者が明確にわかるよう決議することが必要である。
{設問} 5個の専有部分を所有している区分所有者が死亡して5人の相続人が共同相続しましたが、まだその遺産分割をしていません。
その場合、区分所有法上、5人の相続人は、総会に関してどのように扱われるのですか。
{答え}:この場合、まだ遺産分割がされてないので、5個の専有部分は5人の相続人によって共有されていることになります。そこで、5個の専有部分を5人が共有しているという観点から区分所有法上の総会(集会)に関する扱いを考えていく必要があります。
5個の専有部分を5人で共有している場合の区分所有者の数は、1人として扱われます。ただし、議決権数は1住戸1個の場合は5個となります。5人の共同相続人が5個の議決権を行使するときは、行使者を1人指定し、その旨を議長に前もって届け出ておく必要があります(実務的には書面で届け出ることが望ましい)。
また、1人で複数個の専有部分を所有しているときも、区分所有者の人数の計算において1人であることに変わりません。
総会において議決権を行使する場合にも、共有者は、共同して(1個の専有部分について)1個の議決権を行使すべきであって、共有者はその議決権の一部ずつを行使すべきものではないことは明らかです。
つまり、5人の共同相続人は、共同して5個の議決権を行使することになります(現実には5人の相続人のうちの1人が代表して5個の議決権を行使すべきです)。
また、議決権の前提としての意見陳述権についても同じことになります。(現実には共有者の誰か一人が代表して意見陳述をし、議決権を行使すべきです)。
このような考え方を前提として、区分所有法は第40条で、「専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない」としています。
共有者(5人の共同相続人)のうち誰を指定するかは、共有者の内部関係の問題ですが、それは共有物の管理の関する事項と考えられますから、民法第252条の規定にしたがい、各共有者の持分の価格の過半数によって決めることになります。
総会の招集通知は、区分所有法第40条の規定によって議決権行使者が指定されているときは、その者に対して通知すればよく、その指定がないときは、共有者(つまり5人の共同相続人)のうち誰でも1人に対してすればよいこととされています(同法第35条第2項)。
なお、行使者が定められていても、招集通知の際に招集者(管理者)に届け出ていなければ、招集通知は、その指定がないものとして取り扱ってよいと解されています。
第三十九条 |
2項 議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる。 |
過去出題 | マンション管理士 | 未記入 |
管理業務主任者 | H21年、H15年、 |
★議決権の行使 −@書面で A代理人で −これは、昔からある基本ー
集会(総会)は、区分所有者の団体=管理組合の最高且つ唯一の意思決定機関であり、予算・決算等を含め、区分所有者がその意思を管理組合の運営や建物の管理・使用に反映させるためには集会において自己の意思を表明することが唯一の手段です。
そのため区分所有法では招集手続きを厳格に定めて区分所有者が集会に参加する機会を保障していますが、実際の集会の開催日時は個々の区分所有者の予定を聞かずに招集権者が決定するため、仕事等で当日都合により区分所有者が参加できない場合があります。
この場合に、区分所有者自らは出席できなくともその意思が代わりの者等により表明されれば、区分所有者の集会参加権は一応保護されることになりますし、定数が必要な集会の議決が個人の都合でできないというような不都合も回避できることになります。
このような理由により、第39条2項で、区分所有者は@書面 または A代理人 でその議決権を行使できるものとしています。
本人が出席しない@書面 と A代理人による 表決はもともと民法でも認められているものです。
代理人は区分所有者の選任する任意代理人となりますので、委任事項やその権限は全て区分所有者の授権の範囲・内容により決定され、通常は委任状で代理人資格および授権の内容・範囲が明らかにされますが、白紙委任状の場合は(本来は白紙部分に記入が必要)全般的な権限があると取り扱うのが通常でしょう。
★代理人の資格を制限できるか
なお、区分所有法では代理人資格を制限していませんから、誰を代理人にしようと、何人代理人を選任しようと原則として自由ですが、それでは集会にそぐわないような者の参加を規制できないため、標準管理規約を始めとして代理人資格を規約で区分所有者等に制限することが多いようです。
★標準管理規約は、代理人の資格を制限しているので、注意のこと
<参考>標準管理規約(単棟型)46条5項:
5. 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、
その組合員と同居する者
若しくはその組合員の住戸を借り受けた者、
又は他の組合員
若しくはその組合員と同居する者でなければならない。
★区分所有法第39条2項には規約での別段の定めを認める記載はありませんが、区分所有者の議決権という権利行使も集会の円滑な運営という他の利益との調和のもとで達成されるべきですから、その制限が実質上議決権行使を相当困難にするようなものでない限り規約による代理人の制限は、解釈として争いがあるでしょうが、一応有効と思われます。
集会の議事内容からすれば、区分所有者本人よりも事情に精通した同居人や他の区分所有者が最も代理人に相応しいわけですが、そのためには事前に賛否の意向を代理人に十分説明しておく必要があります。
たとえ本人の意思と異なる場合でも代理人の質疑や賛否の行為は本人のものとされますから、後でそうではなかったというのは通じないからです。
★書面による議決権行使
そういう場合に備え、白紙委任状ではなく賛否を明らかにした委任状の使用が望ましいかもしれません。
この考えを延長すると書面による議決権の行使、いわゆる「議決権行使書」となります。
書面による議決権の行使とは、集会(総会)には出席しないで、集会の開催前に議案についての賛否を記載した書面を集会の招集者に提出することです。
通常、下の例のような形で、議決権を行使します。
議決権行使書の例 |
平成○○年○○月○○日 |
私は都合により、○月○日開催の第○回通常総会に出席できませんので、本書をもって下記のとおり議決権を行使いたします。 |
記 |
第1号議案○○○の件(賛成 反対) |
第2号議案○○○の件(賛成 反対) |
第3号議案○○○の件(賛成 反対) |
室番 △△棟 △△号室 |
氏名 ◇ ◇ ◇ ◇ 印 |
各議決事項単位に賛成・反対を明らかにして議長に提出するもので、白紙委任状の有効性をめぐる諸問題や、代理人の代理権不誠実行使等の代理でのトラブルが防止できる利点がありますが、議案修正への対応については硬直的な結論となりかねない欠点もあります。
★ 多忙な人の便宜をはかり、書面や代理人での議決権行使ができる。
代理人...誰でも可能(制限能力者でも。 民法 第102条:代理人は、行為能力者であることを要しない。)
★ 行使方法:集会の日までに、各議案につき「賛否」を記載した書面を、集会の招集者(管理者・理事など)に出す。
★ 次の電磁的方法(3項)と違って、書面と代理人による議決権行使の方法は規約がなくても、一般のやり方で、全ての区分所有建物で認められた方法であることに注意。(過去から法律上当然に認められている。)
★集会における議決権は、区分所有者本人が出席して自ら行使するのが原則ですが、書面で行使すること(書面投票)、または代理人によって行使することが認められています(区分所有法第39条2項)。
なお、この書面または代理人による議決権行使は、区分所有者の法律上の権利ですから、規約等でこれを一切認めないと定めたり、著しい制限を加えたりすることは認められません。
★書面での議決権の行使(書面投票)とは、集会に出席できない場合、あらかじめ通知を受けた議案について、集会開催日前に賛否を記載した書面を集会の招集者に提出して、議決権を行使することをいいます。
また、規約又は集会の決議により、書面に代えて電磁的方法による行使も可能です。(3項)
書面投票はその提出自体が議決権の行使である点が、委任状による議決権の行使と異なります。
◎代理人による議決権の行使とは、委任を受けた代理人が集会(総会)に出席して区分所有者に代わって議決権を行使することをいいます。
法律上は必ずしも委任状の提出を必要としませんが、代理権の存在をはっきりさせるため、規約で委任状の提出を条件としているのが一般的です。
また代理人の資格については、特に制限はないので、民法と区分所有法上では、意思能力がある限り誰でも代理人になることができます。
ただ、規約でその資格を一定の者(例えば他の区分所有者、同居者、賃借人等)に制限することは、法律上も争いがありますが、一応許されると解されています。
因みに、くどいようですが、標準管理規約(単棟型)では、代理人の資格を限定していますので、注意してください。(標準管理規約(単棟型)46条5項)
<参考>標準管理規約(単棟型) 46条5項:(議決権)
第46条 各組合員の議決権の割合は、別表第5に掲げるとおりとする。
2. 住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使については、これら共有者をあわせて一の組合員とみなす。
3. 前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければならない。
4. 組合員は、書面又は代理人によって議決権を行使することができる。
5. 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、
その組合員と同居する者
若しくはその組合員の住戸を借り受けた者、
又は他の組合員
若しくはその組合員と同居する者でなければならない。
6. 代理人は、代理権を証する書面を理事長に提出しなければならない。
★自分の部屋の賃貸人は代理人になれるが、他の部屋の賃貸人は代理人になれない!
代理人が、区分所有者本人と異なった意思表示を集会で行っても、区分所有者はその結果に従うことはいうまでもありません。
★書面投票と書面決議の違い
さて書面投票(書面での議決権行使)のに類似した言葉として、書面決議がありますので、注意を要します。
書面決議とは、実際に集会(総会)を開催しないで総会の決議事項のすべてを決議しようとするもので、区分所有者全員の書面による合意をもって成立します(区分所有法第45条)。
書面決議は集会の決議を代替する効果はありますが、区分所有法第34条2項の規定で義務づけられる毎年1回の集会(総会)が招集されたことになるわけではありません。
★ 区分所有者(組合員)が議決権を行使する場合、区分所有法は第39条2項で次の3通りの方法を認めています。
1.区分所有者(組合員)本人が集会に出席し、議決権を行使する場合(これは、当然ですが)
2.区分所有者が集会に出席できない時、総会開会前に書面にて、例えば「第1号議案賛成」、「第2号議案反対」等と記述して議決権を行使する場合(書面投票) (注:同法第45条の「書面決議」とは異なります)。
3.区分所有者の代理人を集会に出席させて、議決権を行使する場合(委任状の提出)
したがって、2.書面による議決権行使 と 3.代理人の出席 の場合も出席扱いとする必要があります。注意してください。
★白紙委任状の取り扱い方
集会(総会)において、区分所有者が出席をしない場合には、委任状を提出し、これも出席として扱います。
そこで、この委任状に署名・押印はあるものの、委任の相手方も委任の内容も記載のない、いわゆる白紙委任状が提出された場合は、どう扱うかの問題が以前からあります。
マンション管理のなかで白紙委任状が理事長への一任として扱えるかどうかを検討してみました。
ア.白紙委任状は無効であるという考え方
標準管理規約(単棟型)46条5項は「組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、その組合員と同居する者若しくはその組合員の住戸を借り受けた者、又は他の組合員若しくはその組合員と同居する者でなければならない。」と規定し、代理人の資格を厳しく制限している。
そして、同46条関係のコメントでは、「なお、組合員は、代理人により議決権を行使する場合は、第46条 第5項に規定する者の中で、誰を代理人とするかについて主体的に決定することが望まれる。」とあり、この規定の意図するところは、「望まれる」とあり、明確ではないが、主体的に代理人を定めない白紙委任状を認めないものであると取れる。
白紙委任状を理事長への一任とすると、多くの集会での案件は、理事会にて賛成・反対が決められたのと同じ結果となり、最高意思決定機関である集会での反対・賛成の議論が反映されない弊害が発生する。
イ.白紙委任状は有効であるという考え方
一方、現実のマンション管理での集会の実体をみると、組合員の殆どが集会(総会)に出席せず委任状で済ませている。本来なら、受任者(代理人)を指定し最低でも議決権行使書(議案の賛成・反対の明示)の提出を行うべきであるが、署名・押印だけ記入し、他は白紙が多い。この場合、白紙委任状を無効とすると、集会(総会)も成立せず、マンションの管理が行えない事態にも陥る。そこで、白紙委任状を、有効として扱い、その論理的帰着として、理事長に委任されたものとみなさざるを得ないという消極的な理由もある。
私は、白紙委任状を理事長への有効な委任状とすることの弊害の方を重視し、適切でないとします。
第三十九条 |
3項 区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)によって議決権を行使することができる。 |
過去出題 | マンション管理士 | H17年、H16年、 |
管理業務主任者 | H21年、H20年、H15年、 |
★電磁的方法による議決権の行使 − IT(アイティ)化 − ...ただし、前もって規約か集会の決議がなければ、電磁的方法では議決権を行使できない。第39条1項の「書面」と「代理人」による議決権行使の場合は、過去から認められた方法で規約や集会の決議は要らない。
紙にした議決権行使書による場合は、書面による区分所有者の意思の表示方法ですが、本人や代理人が出席しない点では書面が郵送でなされようが手渡しでなされようが変りはありません。
そうすると、時代の変化により、Faxでも電子メール(Eメール)でも郵便と同じといえ、更に電子投票システムを使用する場合も同様となります。
そのため、電磁的記録による規約や議事録の作成を認めたのと同様の理由により、議決権行使の方法の一環として改正法では電磁的方法による議決権行使の方法が、平成14年の改正で新たに認められました。
電子メールなど電磁的方法による議決権行使の方法は遠隔地にいる区分所有者が費用をかけずに集会に参加できるメリットがある一方、この方法が普及すると集会で他の人の意見等を総合的に判断して自己の結論を導くという会議制のメリットをますます阻害する可能性も秘めたものであり、インターネットのチャットや掲示板等の即時双方向の議論ができるものとセットでないと電子化のメリットが生かせないのではないかと危惧されます。
また電磁的方法では、文書でみられる本人確認の捺印が無くなるため、他の人が「本人に成りすます」危険性もあり、投票者の本人確認をどう行うかの技術的な問題もあります。
この場合には、あらかじめ、特定のパスワードを割り当てて入力させるとか、電子署名等の採用が必要となります。
もっとも、電子メールが手紙等の文書より手軽になった現在では文書による投票が認められる以上、電子メールを否定する絶対的な理由はありません。
しかし、IT化が進んだとはいえ、区分所有者の中には、パソコンを持っていないや人や、インターネット接続環境にない人もいるでしょうから、この電磁的方法で議決権を行使するには、前もって規約で認めるか、または集会の話し合いで決めることになっています。
★ 前もって規約や集会の決議で決めていれば、電子メールやWEBサイトでのホームページへの書き込み、フロッピー、CDなどの交付で議決権の行使ができる。(本人確認が必要。)
2項の書面や代理人による議決権の行使と違って、前もって規約や決議がないと、やりかたとしては無効になる。(法律上当然ではない。)
<参照> 規則(法務省令で定めるもの): (電磁的方法)
第三条 法第三十九条第三項 に規定する法務省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。
一 送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法であって、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録されるもの
二 第一条に規定するファイルに情報を記録したものを交付する方法
第三条2 前項各号に掲げる方法は、受信者がファイルへの記録を出力することにより書面を作成することができるものでなければならない。
<参考>標準管理規約(単棟型)50条:(書面又は電磁的方法による決議)
第50条 規約により総会において決議をすべき場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。
ただし、電磁的方法による決議に係る組合員の承諾については、あらかじめ、組合員に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
2. 前項の電磁的方法の種類及び内容は、次に掲げる事項とする。
一 第44条第4項各号に定める電磁的方法のうち、送信者が使用するもの
二 ファイルへの記録の方式
3. 規約により総会において決議すべきものとされた事項については、組合員の全員の書面又は電磁的方法による合意があったときは、書面又は電磁的方法による決議があったものとみなす。
4. 規約により総会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、総会の決議と同一の効力を有する。
5. 前条第5項及び第6項の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第1項及び第3項の電磁的方法が行われた場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。
6. 総会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。
{設問}次の記述は正しいか。
*議決権は、書面又は代理人によって行使するほか、規約又は集会の決議により、電磁的方法によって行使することができる。
答え:正しい。 (区分所有法第 39 条2項、 3 項) 議決権は、書面又は代理人によって行使するほか、規約又は集会の決議により、電磁的方法によって行使することができる。
「2 議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる。
3 区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による議決権の行使に代えて電磁的方法(中略)によって議決権を行使することができる。」
により、議決権は、書面、代理人によるほか、規約又は集会の決議があれば、電磁的方法でも行使できる。
◎区分所有法と標準管理規約(単棟型)で別段の定めの例 | |
区分所有法 | 標準管理規約(単棟型) |
◎管理者の資格 | ◎35条2項 役員 |
規定がない | 役員(理事・監事)は、現に居住する組合員 |
◎第35条 集会招集の通知 | ◎43条 総会の招集手続 |
会日の少なくとも1週間前に発する | 原則:少なくとも会議を開く日の2週間前 |
規約で伸縮 可 | 緊急:理事会承認で5日を下回らない範囲 |
◎第39条1項 議事 | ◎47条1項、2項 |
区分所有者及び議決権の各過半数 | 定数:議決権総数の半数以上の出席 |
議決:出席組合員の過半数 でいい | |
◎議決権行使の代理人の資格 | ◎46条5項 議決権行使の代理人の資格 |
規定がなく限定されない | ・組合員と同居する者 |
・その組合員から住戸を借り受けたもの | |
・他の組合員 | |
・他のその組合員と同居する者 | |
◎第34条 集会の招集の限定 | ◎42条 集会を総会と言い換える |
少なくとも年1回 と規定するだけで期日なし | ・新会計年度開始後2ヶ月以内に招集のこと |
ページ終わり |
謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。
最終更新日:
2010年10月16日:議題と議案が明確でないので、第35条を中心に加筆
2010年6月10日:ちょろちょろと加筆
2010年1月23日:H21年の出題年を記入
2009年6月20日:第35条1項「通知」などに加筆。