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第198話:挿話

作:◆CSZ6G0yP9Q

 それにしても、幽霊ってのは本当に居るんだな。
 ハルヒが何かをやりやがったせいかもしれないが、とりあえず俺がそうなってるという事実は変わりそうに無い。
 しかし、宇宙人だの超能力者だの未来人だの、そんな奴らの仲間入りをするとは思わなかった。溜息の一つくらい吐いたって良いよな?

 俺が幽霊になった時、俺の死体の隣で、豆腐を食ってる奴が居た。どうも、そいつが俺を殺したらしい。
 正直、痛いだの怖いだの感じる暇も無かったせいで、自分が死んだって実感が沸かない。
 どうしようもないので、俺を殺したらしい男についてきて今にいたるというわけだ。
 目の前の男は、うずくまると、デイパックから地図を取り出した。休憩みたいだ。
 地図からするとE−2の森辺りか。
 にしても、頬に傷があって物騒な雰囲気を醸し出してる、こいつは何者なんだろうか。
 俺は死ぬまで、というか、死んだことにも気づかなかった。
 学生服を着ているから高校生、で納得できるのはハルヒくらいのものだろう。
 そんな事を考えていると、声が聞こえてきた。

 ――彼にも、千鳥のように、多くの友人が居たのだろうか――
 俺はどこから声が聞こえてきたのか、辺りを見回すが、見えるのはうっそうと茂る森だけだった。
 ――彼にも、守るべき人が居たのだろうか――
 また、声が聞こえる。目の前にいる男以外に人は見当たらない。もしかして心の声ってやつなのか?
 だとしたら、彼って言うのは俺のことなんだろうか?
 ――彼にも、平和な日常があったのだろうか――
 いや、平和とは言えなかったな。ハルヒが次から次へと厄介事を持ち込んできやがったし。
 まぁ、友達と言ってよい奴は数人居たな。
 朝比奈さんという天使のような方を守ってあげたかったが、もうそれも出来そうに無い。
 そういえば、長門には守ってもらったことがあったか……。
 古泉は……まぁ、いいだろう……。
 一つ一つ律儀に俺は考えを巡らせた。

 ――俺は兵士として間違った選択はしていない……なのに――
 おいおい、間違いで人を殺すなよ。
 つい、頭を掻こうとするが、頭を手が貫通してしまう。
 ――俺は……どうしたら……どうすべきなのか――
 どうも、俺を殺した事で悩んでいるらしい。
 悩むくらいならやるな、と言いたかったが、あいにく声帯はないらしい。
 ――俺は…………千鳥を探そう――
 男はそこで思考を打ち切って、音も立てずに体を起こした。
 休憩は終わりらしい。
 足取りが先程より少し、ふらついている気がした。
 このままついていっても仕様がないし、俺はどうするべきか。
 これからの事を考えていると、頭の上から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
 どっかの騒がしい馬鹿の声と、愛らしい天使のような声。
 見上げると眩い光に俺は包まれる
 なんとなくそんな気はしていたけど、どうやら、あいつと彼女も死んでしまったみたいだ。
 死んだ後も、俺はあいつに付き合わないといけないらしい。
 まぁ、いいさ。どこかでそんな気はしてた。
 そして俺は、頭上の光の源へと吸い込まれていった。

【E−2/森の中/5:45】

【相良宗介】
【状態】健康/自分を建て直し中
【装備】コンバットナイフ、スローイングナイフ
【道具】前と変わらず
【思考】1、千鳥の捜索 2、今後の行動方針 3、変化した自分への戸惑い

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