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第151話:彷徨う紅薔薇

作:◆Sf10UnKI5A

 小笠原祥子は、一条豊花を殺害した後、海へと向かって歩いていた。
 人を殺したというショックからか、その歩みは重く、のろのろとしている。
 それでも彼女は歩き続ける。愛しい妹――祐巳を守るために。
 海岸線が見えてくる頃、祥子は別の物に気付いた。
「……あれは?」
 左手側、数百メートルは離れている所に、小さく建物の影が見える。
 ――このまま海まで行っても意味が無いわね。
 祥子は、その建物へと歩みを進めた。

 約十五分後、祥子は建物――公民館に到着した。
 玄関からそっと中に忍び込む。中へと足を進めるが、
 ――誰かいる? それも、……複数?
 祥子は慌てて、しかしリリアンで身に着けたスカートを翻さない静かな走りで、公民館の外へと戻る。
 玄関脇の植え込みの影に座り、聞こえてきた声を思い出す。
 声は男と女の二つ。つまり、先ほどの少女――一条豊花――のように、
 簡単に殺すことは出来ないだろう。
 ――長居は無用ね。
 殺せないのならば、一旦無視して祐巳を探すべき。
 祥子は中から人が出てこないのを確認し、地図を開いた。
 玄関の明かりに地図を照らし、次の移動先を検討する。
 地図に示された建造物の中で、ここから近いのは二つ。
 南の海洋遊園地と、東の学校。
 ――もし祐巳なら、どちらを選ぶ?
 悩んだ末、祥子は海洋遊園地に目的地を決めた。
 祐巳は、夜の学校なんて怖がって嫌うような気がしたからだ。
 それに狭い学校よりは、広くて隠れる場所も多い遊園地の方が安全なはず。
 地図を畳み、祥子は静かに立ち上がった。
「待っていてね祐巳。貴方は私が絶対に守るから……」

 この選択が二人の距離を大きく離したことを、祥子は知る由も無かった。

 【残り95人】

 【D−1/公民館/1日目 02:00】

 【小笠原祥子(061)】
[状態]:殺人のショックで、やや精神的疲労状態
[装備]:銀の短剣
[道具]:デイパック(支給品一式/食料&水二人分/ソーコムピストル)
[思考]:海洋遊園地(E−1)へ移動。
    祐巳と自分が生き残り、最後に自害する。

2005/06/13 改行調整

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