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国鉄があった時代
日本国有鉄道のあった昭和時代を検証するサイトです。日本国有鉄道のあった昭和時代を検証するサイトです。
国鉄改革に際して、公企レポートで語られていた、国鉄改革について当時の資料を元に、blackcatが語ります。

公企業レポートに見る国鉄改革

序章
国鉄改革とはなんだったのか?
日本国有鉄道が、民営化されて20年以上の年月が経過、昨年の民主党政権誕生で、国鉄改革で最期まで残っていたJR不採用事件は一定の解決が図られることとなったが、あまりにも時間がかかりすぎたことは否めない。
と思う反面、底まで追いかける必要のあることだったのかと言う考え方もあるのも事実。
そこで、ここでは当時の公企業レポートと呼ばれる冊子に書かれた記事を参考に当国鉄の状況を追いかけてみたい。
ただし、一部散逸した部分もあるので完全ではないことを了承願いたい。
なお、blogで原稿執筆した上で、こちらに反映したいと思うのでそちらもあわせて参照して欲しい。
blog 「国鉄があった時代」で執筆中

第4章 「国労、ILO事務局長宛に所管を発出」(概要)

国鉄当局との対立姿勢を強める国労は、昭和61年5月30日に、国労執行委員長及び総評議長の連名でILO事務局長宛書簡を出しましたが、内容としては「国鉄改革関連法案は団体交渉が行われず一方的に国会に提出されたこと」、「所属組合を理由に差別される可能性が強い」などと言ったことが書かれていました。これに対し、当局は世の中に誤解を生じせしめるような悪意に満ちたものであると厳しく反論しています。
以下、公企労レポートから引用します。
国労は、5月30日、国労執行委員長及び総評議長の連名でILO事務局長宛に書簡を発した。その主たる内容は、

 @ 今年3月に国会に提出された国鉄改革関連法案は労使間の団体交渉が行われなかった。
 A 清算事業団に移行する職員の雇用関係は事業団とともに終る。
 B 所属組合を理由に差別される可能性が強い
 C 国労との雇用安定協約の再締結を拒否している。
 D 国労の団体交渉開催要求は無視され公労委は機能していない。
 E 国鉄の労働者は労働条件等の不利益変更の受け入れを法的に強制される。
 F ストライキを組織するとき、あるいは勤務時間中の組合活動に対し処分が行われる。
 G 新聞へ投書したことで乗務停止をされた。
 H 過去1年6箇月の間に当局の執拗な退職勧奨等で61人の自殺者を生じたとし、これらの事実は、人間性の軽視、基本的な労働者の権利を保証した条約違反だとしている。

 これに対し当局は、著しく事実を歪曲したものが随所に見られ、世の中に誤解を生ぜしめようという悪意に満ちたものと厳しい反論を国労委員長宛文書で行った。
引用終了
という内容で、確かに自殺者は増えているが、それが全て過剰な勧奨退職だったのかは一概に言えないし、ストライキ云々の行では、公務員に準ずる国鉄職員はスト権は最後まで付与されなかったわけであるからここで、ストを組織して処分を受けたという発想はすでに何をいわんやと思います。

「国労、ILO事務局長宛に所管を発出」(国鉄当局見解)

国労は、当局との間に改めて雇用問題について、国鉄再建問題等懇談会を設置し、雇用問題について意見交換を行った直後にILO事務局長に書簡を送るという暴挙とも言えることをしたのですが、
その点について、公企労レポートから引用してみたいと思います。
【国労は当局との間に改て国鉄再建問題等懇談会を設置し、雇用問題について意見交換に入った直後にILO事務局長に書簡を送り、団交が拒否されているというような訴えをしましたが、どのようにとらえられておりますか。】
今回設置した国鉄再建問題等懇談会は信頼関係を回復することをねらいにしたものでして、雇用問題、経営問題一般について忌憚のない話し合いをしながら信頼を深めていこうということが目的であるものです。しかし、国労の対応は極めて不誠実だという感じがしています。二度懇談会をやりましたが、入口のところで極めて抽象的、総論的な話だけで踏み込んでこない。せっかくの話を生かそうとするのではなくて、むしろ懇談会を形式的に継続する努力をしているかの如く装うことにねらいがあるように思えます。
国会議論の中で、忌憚のない労使の懇談が続いている状況では29条4号を使うようなことは事実上あり得ない、という答弁を阻止していますけれども、これについて国労は懇談会がある限り29条4号の行使はしないという約束をしたんだろいうようにニュアンスを変えて下部に言っているようです。
公企労レポート引用終了
ここで、29条4号という言葉が出てきていますが、これは旧国鉄法29条4号のことであり、降職及び免職について書かれています。
以下引用しますと
日本国有鉄道法
(降職及び免職)
第29条 職員は、左の各号の一に該当する場合を除き、その意に反して、降職され、又は免職されることがない。
1.勤務成績がよくない場合 2.心身の故障のため職務の遂行に支障があり又はこれに堪えない場合
3.その他その職務に必要な適格性を欠く場合
4.業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じた場合
ということで、業務量の減少(実際にヤードの全廃、ローカル線の廃止などで人員的には過剰となっていたが、国鉄では、スト権は公務員に準じた組織のため無かったが、郵政同様に現業では団体交渉権が認められていたことから、降格や免職に関しても団体交渉の中で取り上げられることも多かったと聞いています。
話はそれましたが、国労としては、組合員への安心を得るため意図的に情報を歪曲して伝えていたようにも思います。
ただし、あくまでも当局側の言い分だけですので、この点についてはもう少し国労の意見を聞く必要があると思いますが、この時期は間違いなく国労組合員が減少しており、新会社に入るには、労使協調宣言をした組合に加入しないと不利であると動労や鉄労などは宣伝していたようです。
さらに公企労レポートから引用しますと。

ですから、懇談会がパンクさえしなければいいというように見るものが多いのです。しかし、我々としては仮に国労に真摯に話し合う姿勢が見られないとしても懇談を続けていく中で少しづつ信頼関係を形成していこうという努力はするつもりでいる訳です。懇談会の第一回目は5月16日、2回目は6月3日に開かれました。ところがこの間5月30日にILOに調査団を派遣してほしいというような趣旨の手紙を出したんですね。しかも、国労は私信ではあるが重い意味を持たせて出したものとだと言っていることです。その内容たるや無礼極まるものですし、事実を歪曲したもので、当局に対する誹謗中傷を意図して事実をねじ曲げたものと見られても仕方のないようなものです。例えば61人もの人が当局の退職勧告の結果自殺したというようなことを印象づけようとしていますし、団体交渉が形骸化されているとかあるいは改革法案について全ていわれのない非難をしているということがあります。
いってみれば軍縮交渉をやっている最中に戦闘準備しているような性格を持っているのがILOへの手紙だと思います。我々としては片方は軍縮をやり、一方で動因令を発して戦闘準備をするというようなやり方はペテンだと思います。
ということで、国労に対する怒りは当局側としてはかなりあるようです。
ここで一度切らしていただき、改めて述べたいと思います。
この件につきまして、次回以降に掲載しますが、ILOへの書簡を出した結果、国鉄当局と国労との再建問題等懇談会の開催が凍結されるなどの問題が派生しました。
さて、さらに、公企労レポートのから引用を続けます。

私どもは話し合いを重ね、信頼関係を築いていく努力を放棄する気はありませんけれども国労のやったことに対してはきちっと仕切りをつける必要があると思い、国労に文書を出した訳です。
国労への文書は、第一にILO への手紙を撤回すること、第二は信頼関係を作ろうということで始めた懇談会が進行中でありながら、不信感を助長するようなことについてあやまってもら必要があるということです。そしてこれから懇談会を続けていくわけですから二度とアンフェアなことをしないと約束してもらう必要があるという文書の内容になっていまして、6月21日付で申し入れて、6月末までに返事をもらいたいということになっています。
 私どもとしてはせっかく懇談会ができた以上実りあるものにしていきたいと努力している訳です。極めて誠意を持ってやってきたつもりです。ところが国労は表面ではあたかも自分達が信頼関係を高めようと努力しているかのごとく装いながら、裏では当局を誹謗中傷する如き行為に出ています。ですから国労が当局に求めた三点について行動でもって懇談会を実りあるものにしていこうという証明をしないならば懇談会を続けていくことは当面意味が無いという結論にならざるを得ない訳です。
 6月末までに誠意あるリスポンスがない場合は誠に残念ですが実りある懇談会の維持ができなくなるわけであり、私どもとしては実りある懇談会を開き得るような前提条件を整えるために根気よく国労に反省を求め、いろいろと説得してということが必要になります。その結果として国労が反省し、信義を重んじるという労使関係の基本を認識して意味のある懇談が一刻も早くもち得るよう努力を続けてゆくつもりです。
と結ばれており、国労が一方的に国際組織であるILOに直接書簡を発信したこと、そして信義を裏切る行為であったとかなり厳しい口調となっています。
さらに、国労が「ILO」に送った書簡は具体的にどんな点に触れているのでしょうか。
再び公企労レポートから引用します。

【国労が発信したILO書簡は具体的にはどんな点に触れているのですか】
国労のILOへの書簡には、「国鉄労働者の70%を組織する国労が民営分活化法案の内容になんの相談もされなかった」と書いてありますが、法案を作るのに団体交渉をして決めるということはどこにもありはしないんで、政府または国会議員がやることですね。
しかも、国労は処和57年以来、国鉄と組合との間で設けられていた国鉄再建問題懇談会を凍結した訳です。それは国鉄の経営上重要な事項で労使が忌憚のない意見交換をしようという場を凍結したということです。当方は再三にわたって再開を申し入れていたにもかかわらず凍結したままで国労はきたわけです。私どもは国労と話し合いたいと思ったことが度々ありましたけれども国労が拒絶をしていた訳です。また、労使間でいろいろな意味で国鉄改革について議論しよとい思うパイプは国労自身が凍結していた訳です。
ということで、国労自身が経営再建のための懇談会を拒否したという内容になっています。
さらに、余剰人員問題については書面ではどのように書かれているのでしょうか。
再び、公企労レポートを引用しまと。

【余剰人員問題については、書簡ではどのように言っているのですか】
清算事業団について「1986年のうちに8万2千人の職員が職を失い・・・・」と書いてありますがこれは全く事実に反するものです。余剰人員の首を切れば職を失うでしょう。しかし、今の改革は余剰人員が職を失わないように政府、国鉄が一体となって国や地方公共団体や民間産業団体にも協力を求めてやっている訳ですね。ダイヤ改正が済んだ場合、8万2千人のうち2万人は新事業体に採用されていくことは解っている訳です。6万1千人については2万人が希望退職になるけれどもそれやめた人達にも関連事業や一般産業界などいろいろの雇用の場を提供していく訳ですから職を失うというのは虚偽としかいいようがありません。
また、「4万1千人が清算事業団に移行され・・・・雇用関係は(3年間の期間経過後、事業団とともに終るものとされている)」と書いてあります。
実際は、3年間で全職員の雇用をきちっと確保して安住の地を求めていくようにしようということでして、民間企業が経営悪化した場合とは比べ物にならない手厚い雇用の確保に万全を期するといっているわけで、それをこのように書くのは全く事実と違いますね。
引用終了

実際には、清算事業団に移された人は御存知の通り九州と北海道に集中したこと及び、実際に雇用の確保となった場合に受け皿が本州各社と異なり極端に小さいこともあり、その後組合の反対を押し切って行った追加募集などで清算事業団職員の受け入れも行いましたが結局、国鉄改革3年後の清算事業団の雇用部門の解散時には少なからずの人々が職を失うこととなり、最近の国鉄清算事業団職員への和解金へとつながっていくことになるのですが、私見を述べさせていただければ、ここで清算事業団に残されたことで解雇されたことに対して自反対運動をされた方たちには正直言って賛同できません。
国鉄改革で、職を辞した人はたくさんいました。
国鉄に嫌気を感じて辞めた人もいるでしょうが、国鉄が好きだけれども辞めたという人も居るはずです。
また、国鉄から職を斡旋されたとしても新しい職場に馴染めず、転職した人も見てきました。実際に、郵政に雇用されたはいいけれど、鉄を扱っていたホトがいきなり紙を扱えていっても扱えずにそのまま退職したという例は多数あります。
ですから、国労に残って国鉄への採用を求め続けて20年間闘うことを否定はしませんが、プロ市民や左翼的活動家のターゲットにされ多様にすら感じてしまうのは私だけでしょうか?
さて、さらに公企労レポートからの引用を続けます。
さらに、「国鉄の労働者にとって、自分がどの事業体、例えば新事業体かそれともせいぜい三年間しかいることのできない清算事業団に移行するかは重大なことである。所属組合及び組合活動家への関与の度合いによって、労働者が差別される可能性が強い」と書いてありますが、所属組合や組合活動への関与の度合いによって差別するなんてことはあり得ないことだと思います。どうして差別する可能性が強いというのか。これから決まる新事業体の設立委員の考え方を憶測して、しかも非常に悪意のある見方をして、それを前提にしてものごとを考えている訳で非常におかしいと思います。
どうして差別される可能性が強いというのか。これから決まる新事業体の設立委員の考え方を憶測して、しかも非常に悪意ある見方をして、それを前提にしてものごとを考えている訳で非常におかしいと思います。
「事実、国鉄当局は、全部あわせても国鉄労働者の30%に満たない4組合と雇用安定協約を調印しているにもかかわらず、国策に非協力的な国労のような組合との雇用安定協約の再締結を拒否している」と書いていますが、私どもは余剰人員対策を推進することについて平等な条件で各組合に対して協力を求めてきている訳です。そういうことができて初めて雇用安定の基板ができると、雇用安定協定を締結する前提が満足されるから手を握りましょうと言っているわけでして、国労がそれを拒否したということは雇用安定の基盤が国労組合員との関係において整備されてないという形となるので雇用安定協定を結びたいのですが結べない訳です。国民の前で、国鉄労使が協定を結んで必死の努力をしていると映れば雇用対策に積極的に協力してやろうという空気ができると思います。
他の4組合は共同宣言を結んでい雇用安定の基盤を作る努力をして実績を上げてきていますし、国労はこれを破壊するように動いているということなんで、雇用安定協定を結びたいのですが結べないということで、差別している訳では全くない訳です。それを国労と協定を結んだとすれば国労を非常に甘やかすということで差別することになりますからできないことですね。
難解な表現ではありますが、国労は国策に反した動きをしているので、雇用安定協約を結びたくとも結びにくい状況におかれており、他の組合との絡みもあり、国労だけに優遇措置をとるのは難しいと言っており、そのあたりが国労と当局との間の温度差に成っているのではないかと考えられます。
さらに、公企労レポートから引用しますと。

【今後の書簡についての対応ということになりますと・・・】
その他いくつか書いていますが、あらゆる認識において極めておかしいという事にならざるを得ないと思います。労使の信頼関係を話し合いで確立していこうという会合が開かれた。そして継続しているにもかかわらず、その裏でアンフェアなやり方で攻撃をかけてくるというのは正にペテンであり、許せないやり方だと思います。私どもとしては国労に誠意ある態度をとってもらうように求めていますし、もし、全く誠意が感じられないということになると懇談会がサポタージュ行為の隠れみのになってしまいますので重大な決意で望まざるを得ません。しかしながら、実のある懇談が行えるような条件をつくるための努力を根気よく続けて、反省を求めていくという形になると思います。
今回の書簡は、次回以降のレポートに記載しますが、国労側もかなり反省しているとのことではありましたが、当局側としては今回の事態を非常に重く受け止めており、重大な覚悟で挑む様子が見てとれそうです。

参考事項

ILO条約(第87号)
ILO条約(第98号)