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国鉄があった時代
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国労ILO事務局長への書簡全文

明らかに87・98号条約違反

国鉄の危機的状況調査を期待

国労の1985年2月15日付書簡を「条約及び勧告の適用に関する専門委員会」に付託していただき、心から感謝致します。
同専門員会は、その書簡を受けて。1985年次報告の中で日本を取り上げ、第87号条約【結社の自由及び団結権の保護に関する条約)に関して意見を述べられました。それによれば、「委員会は、国労が国鉄職員の現状について、1985年3月1日、政府に対して意見を申し述べたことについて注目している。日本政府はその内容について未だに回答していない。委員会は、国労が提起した問題点を調査できるように、この問題について、日本政府が十分な情報を提供することを求めている。」となっています。また、委員会は第98号条約【団結権と団体交渉権についての原則の適用に関する条約】について取り上げた部分に関しても同様の意見を表明されました。
しかしながら、日本政府はこれらの問題について何ら情報提供しなかったため、これに尽き、委員会は、単に1986年次報告(日本・第98号条約)の中で、簡単に言及したに過ぎませんでした。
「国鉄の労働者の身分に関して、重要な問題点が未解決のままである。」
遺憾ながら、日本政府は委員会の報告を軽く無視してしまいました。
一方、国鉄労働者を取り巻く状況は、以前にも増して簡単に見逃し得ない深刻な段階になっています。
まず、1986年3月に日本政府が国鉄の民営分割可に関する一連の法案を提出していましたが、同法案が労働者の雇用条件に重大な影響があるにもかかわらず、国鉄労働者の雇用条件に重大な影響があるにもかかわらず、国鉄労働者の約70%を組織する国労が同法案の内容についてなんの相談もされ無かっただけでなく、団体交渉さえも行い得ませんでした。 そればかりか公労委もこの過程で全然関与する余地がなかったのです。
次に、現国鉄労働者の身分が、公共事業体の労働者から8つの民営鉄道会社と一つの清算事業団の労働者へと変化する結果として、現在提案されている法案では、多くの問題が発生します。

(1)1986年度のうちに、277,000人の国鉄労働者のうち、82,000人が職を失い、いわゆる余剰人員となることを余儀なくされる。

(2)41,000人の労働者が清算事業団へ移行される予定である。この清算事業団は移行される予定である。この清算事業団は3年間、転職を希望する労働者の職業斡旋に従事するが、その雇用関係は、期間の経過後、事業団とともに終わるものとされている。

(3)国鉄網の分割によって生まれる八つの承継法人は、わずか215,000人の労働者を再雇用するに過ぎない。しかしながら、新会社の労働者の総数及び各会社毎の数は運輸大臣により決定され、この過程には、団体交渉のみならず、公労委でさえも関与できない。

(4)運輸大臣の指名を受けた承継法人の設立委員会のメンバーは、運輸省の条項に従い、労働条件及び雇用条件を決定し、労働者を選別するものとされている。この手続きの元でも、同様に団体交渉と公労委の関与は期待できない。さらに、国労と国鉄当局で締結された現行の協約類は、承継法人に適用されない。

(5)国鉄の労働者にとって、自分がどの事業体、例えば新事業体かそれともせいぜい三年間しかいることのできない精算事業団に移行するのかは重大なことである。所属組合及び組合活動への関与の度合いによって、労働者が差別される可能性が強い。事実、国鉄当局は、全部合わせてみ国鉄労働者の30%にも満たない四組合とは雇用安定協約を調印しているにもかかわらず。国策に非協力的な国労のような組合との雇用安定協約の再締結を拒否している。その結果としてこれら四組合は「われわれの組合に加入するならば、あなたの雇用は保証されますが、国労に居続ける限り清算事業団に行くことになりますよ」と宣伝している。この当局の雇用安定協約の調印拒否は、反組合的な差別待遇を禁止する第九八条約第一条、組合運動への干渉を禁止する同条約第二条の精神が未だに日本で理解されていないことを示している。

第三に、国鉄改革が予定されている1987年4月1日まで、残り10ヶ月しかないにもかかわらず、国労の団体交渉開催請求権は無視され続け、公労委は、代償機関として機能しておりません。もし、この状況が好転しなければ、つまり法案が議会を通過しなたならば、国鉄の労働者は、労働条件及び雇用条件についての不利益変更の受け入れを法的に強制されるわけです。
社会的行動が禁止されておりながら、かつ団体交渉を求める権利を軽んじられながら、もし国鉄労働者にとってそのような不利益変更が一方的になされりならば、それは社会正義に反しております。国労がストライキを組織するときには解雇を含む懲戒が加えられることが予想されるばかりでなく、「国鉄の民営分割反対」のスローガーン入のステッカーをつけたことに対してまでも、勤務時間中の組合活動であるとして、処分されるようになってきております。さらに、国鉄改革の結果生じた無人駅の問題について、新聞へ投書したことで車掌が乗務停止させられました。非常に残念なことに、1985年から今までに、61人の国鉄職員が、例えば当局の執拗な退職勧奨で生きていくことへの疑問に悩み、自殺しています。これらの事実は、人間性の軽視かつ基本的な労働者の権利を保証した第87号条約及び第98号条約違反を示しています。また、第11回内陸運輸委員会において採択された「鉄道事業における団体交渉の促進」や「鉄道事業における雇用喪失」の精神に反しております。
私共は、ILOに対する全幅の信頼をここに表明するとともに、社会正義実現のために協力する用意があることをお伝えする」次第です。
公企労レポート、昭和61年6月30日より引用
ILO87号条約 結社の自由及び団結権の保護に関する条約
ILO98号条約 団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約