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★★       条 文 の 解 説        ★★

建物の区分所有等に関する法律

(この解説においては、略称:区分所有法 と言う)

第1章 建物の区分所有 第2節 共用部分等

第十一条 共用部分の共有関係
第十二条
第十三条 共用部分の使用
第十四条 共用部分の持分の割合
第十五条 共用部分の持分の処分
第十六条 一部共用部分の管理
第十七条 共用部分の変更
第十八条 共用部分の管理
第十九条 共用部分の負担及び利益収取
第二十条 管理所有者の権限
第二十一条 共用部分に関する規定の準用
 
 保険について
 債権の回収方法

U-b.第15条(共用部分の持分の処分)から 第21条(共用部分に関する規定の準用)まで

マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。 

試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。

条文を勉強することが、合格への道です。

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凡例:各条文は、黒字にて表示。解説は条文の下に緑字にて表示

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(共用部分の持分の処分)
第十五条
1項 共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
過去出題 マンション管理士 H21年、H14年、
管理業務主任者 H18年、H17年、H13年

原則:専有部分の処分に従う...処分とは、売却や抵当権の設定をさす。この規定で、建物の共用部分は専有部分に付随して処分されることになる。
                  参考:民法の共有では、自分の持分の処分はその部分だけ単独でできる。

<参照>民法第256条 (共有物の分割請求)
第二百五十六条  各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2  前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。

 ◎ これが、区分所有法の特徴。

★専有部分と共用部分の不可分性(一体性)の効果 −分離処分の禁止ー
 マンションのように区分所有されている建物では、その構造上、出入り口・階段室などの共用部分を利用しなければ、専有部分も使えません。
 これは専有部分と共用部分とが、構造上だけでなく法律上も分離されていては利用価値がないことにつながります。 そこで、専有部分の移動があれば必ず共用部分も移動し、また共用部分の持分のない区分所有者が存在しないようにしました。

 本第15条の規定により、ある区分所有者が自己の専有部分を譲渡したり、専有部分に抵当権の設定をすればその共用部分として持っている分も当然に(仮に譲渡等の意思がなくても、譲渡・担保目録から漏れていても)譲渡をしたことになり、抵当権が及びます。

これは、逆の解釈として、共用部分の持分だけを譲渡したり抵当にいれても無効であり、また共用部分の持分はそのままで専有部分だけをを譲渡しても、無効となります。

 しかし、区分所有法での別段の定めがあります。(2項)   

★建物の区分所有権(専有部分)と廊下・エレベーター室など共用部分の共有持分は一体であり、別々に分離処分はできない。

 民法の共有関係では、分割請求ができたり、共有持分だけの処分ができるけど、区分所有法では、それを禁じている。

★また、後ででてきますが、建物の共用部分だけでなく、土地(敷地利用権)と建物の権利も分離して処分できなくしている。(参照 第22条

<参照>区分所有法 第22条(分離処分の禁止)
第二十二条  敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。

★この、第15条と第22条により、区分所有法では、完全に、建物の権利と土地の権利は共に移動することになる。

  

 

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第十五条
2項  共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。
過去出題 マンション管理士 H21年、H18年、
管理業務主任者 H18年、

★原則として、建物の専有部分と共用部分は分離処分ができないが、例外がある。

★専有部分と共用部分の不可分性(一体性)の例外。
 2項は、1項の例外規定です。

2項の「その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。」ということは1項の「専有部分の処分に従う。」ことを言い換えたにすぎませんから、2項の代わりに1項に「ただし、この法律に別段の定めがある場合はこの限りでない。」と規定するのと同じです。   

★専有部分と共用部分を分離して処分できる、別段の定めがある場合 2つある。
   それは、@管理所有の場合 と
 A規約で別段の定めがある場合 です。

   @管理所有の場合
     第11条2項 --->第27条1項(
管理所有)...管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。

        管理者(理事長など)が共用部分を所有しているとき。管理者に譲渡(所有権が移る)できる。(ただし、共用部分には、所有権の登記はできないが。)

        また、建物のもともと共用部分だけを所有できるだけで、敷地(土地)の所有はできない

   A規約で別段の定めがある場合
     第14条4項(共用部分の持分の割合)...4項  前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

       規約で共用部分の持分の割合を変更した場合。共用部分の持分を区分所有権から分離して処分できます。

       しかし、「標準管理規約(単棟型)」は、この分かり難くて、面倒な「管理所有」には触れていません。
       そして、規約でも、専有部分と共用部分の持分の分離処分は認めない立場を推薦しています。

<参考>「標準管理規約(単棟型)」11条:(分割請求及び単独処分の禁止)
第11条 区分所有者は、敷地又は共用部分等の分割を請求することはできない

2. 区分所有者は、専有部分と敷地及び共用部分等の共有持分とを分離して譲渡、抵当権の設定等の処分をしてはならない。

第11条関係コメント
@ 住戸を他の区分所有者又は第三者に貸与することは本条の禁止に当たらない
A 倉庫又は車庫も専有部分となっているときは、倉庫(車庫)のみを他の区分所有者に譲渡する場合を除き、住戸と倉庫(車庫)とを分離し、又は専有部分と敷地及び共用部分等の共有持分とを分離して譲渡、抵当権の設定等の処分をしてはならない旨を規定する。


{設問−1}マンションの共用部分に関する次の記述は、区分所有法の規定によれば、正しいか。

 *規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、共用部分の変更をすることができる。

答え:正しくない。 規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、その共用部分の管理義務は負う(区分所有法第20条1項)が、同法第20条2項「前項の共用部分の所有者は、第十七条第一項に規定する共用部分の変更をすることができない」の規定により、共用部分の変更はできない。


{設問−2} 平成21年 マンション管理士 試験 問5

 共用部分に関する次の記述は、区分所有法の規定によれば、正しいか。


*共用部分の持分と専有部分とを分離して処分することができる旨を、規約で定めることはできない。

答え:誤っている? ここの設問は曖昧です。共用部分の持分と専有部分の処分については、区分所有法第15条(共用部分の持分の処分)
 「第十五条  共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
   2  共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。 」とあり、
 区分所有法では原則として、専有部分と共用部分の持分は分離処分ができませんが、別段の定めが2つあります。
 その1番目は、規約によって他の区分所有者又は管理者を共用部分の所有者とする場合(区分所有法第11条2項、第27条1項参照)で、2番目は、規約の設定・変更によって共有持分の変更をする場合(同法第14条4項参照)です。
 1番目の場合には、実質的な処分とみなされないこともありますが、2番目の場合には、共有者の間で共用部分の持分の処分が規約により専有部分と分離してなされたことになります。

 (注:マンション管理センターの正解は、ここを、正しいとしていますが、出題としては、不適切です。)

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(一部共用部分の管理)
第十六条
 一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第三十一条第二項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。
過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 H15年、

★一部共用部分は一部の区分所有者のみの共有に属しますから、所有者の責任として、一部共有者だけの責任と負担で管理するのが原則です。

 しかし、建物全体を管理する組合(団体)と一部管理組合が並存して各々の管理対象を管理するのは、組織が重複して不経済でもありますから全部を全体管理組合が管理することにしても当事者がそれを望むならかまわないわけです。

 また、建物の壁の色を一部だけ塗り替えるなど、一部共用部分の管理が全体に影響を与える場合には全体の利益のためには一部共有者が勝手に管理することは全体に迷惑や損害を与えるおそれがありますので、それを未然に防止するため始めから全体管理組合で管理する必要もあります。

 このような理由により、本第16条で「区分所有者全員の利害に関係するもの」は一部共用部分であっても全体の管理への強制移管と任意移管を規定しています。

   ◎例:一部共用部分の外装が建物全体の美観に影響するときの外装の管理。

★一部共用部分の例
 ところで、「一部共用部分とは一部の者のみの共用に供されることが
明らかである部分」(第3条後段)とされますが、具体的にどのようなものがそれに該当するのかよく分かりません。

 例えば、駐車場は三方が閉じられていれば区分建物登記が可能ですので、地下駐車場の三方が閉じられたブース単位で区分登記すれば車路が駐車場を利用する人のみの一部共用部分となり、その駐車場に設置されている消防設備等が全員の利害に関係するものとしてその管理が管理組合に強制移管されますが、通常のマンションでは各階の廊下といってもその階だけの共用とされることが明らかかは疑問がありますので、一般にはあまり利用されない規定のようです。

{判例}構造・機能上特に一部の共用が明白な場合に限ってこれを一部共用部分として扱うことを相当とした判例があります(東京高裁:昭59.11.29判決)。

★一部共用部分:第3条:下駄履き団地のように、下が店舗で上が住居で、明らかに別の出入り口や階段などがあり、使用対象が明らかに違うとき。

 

◎区分所有者全員(=管理組合)で管理するもの。

   @区分所有者全員の利害に関するもの

   A一部共用部分だけど全員の規約で決めたとき(ただし、一部共用部分の共用者の4分の1超が反対したら全体の規約はできない。区分所有法第31条2項参照)  

    ◎これ以外は、一部共用部分を共用する区分所有者たちだけで管理することが基本。(同一の建物内に、全体を管理する団体とは別に一部共用部分を管理する団体ができる事になる)

<参照>
第31条2項:
  2項  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

<参照> 
前条第2項=第30条2項:
 
  2項  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。

◎一部区分所有者だけで管理を行う場合
  では、逆の解釈として、一部区分所有者だけで管理を行う場合は、
   @区分所有者全員の利害に関しない場合
  A規約で定めなかった場合
  になります。


{設問} 次の記述は正しいか。

*一部共用部分は、規約に特別の定めをしても、区分所有者全員の共有とすることはできない。

答え:間違いである。原則一部共用部分は、(区分所有法第 11 条)「1項 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。」により、一部の区分所有者の共有であるが、
  同条2項 「前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。 」
により、規約があれば、全員の共有とできる。

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(共用部分の変更)

第十七条

1項 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
過去出題 マンション管理士 H21年、H20年、H19年、H17年、H16年、H15年、H14年、H13年
管理業務主任者 H18年、H16年、H15年、H14年、H13年

★何と分かりにくい言い方。こんな、条文を放置しておく、立法者の意識を疑う。
 分かり難さと、規約で区分所有者の数だけ過半数に減らせるので、よく出題の対象になるので、注意のこと。

  挿入されている「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。」も独立して意味をもっている

   ○ 「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」;これは軽微の変更と呼ばれる。

   ○ 逆に、「その形状又は効用の著しい変更を伴うもの」;これは重大変更と呼ばれる。

◎平成14年の法改正で、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く(軽微な変更)」は普通決議でできるようにしたため、面倒な表現になった。
  ここは、「共用部分の重大な変更をするときには、特別な決議が必要。だけど、規約で定めれば、議決権の数の3/4以上は変えられないが、区分所有者の数の方は、3/4から、過半数まで減らすことができる」ということ。

 ★変更するなら、特別に「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数」の賛成が必要で、普通決議(区分所有者および議決権の各過半数の賛成)に対して「特別決議事項」と呼ばれる。(その8の1)

ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる...ここにも、注意が必要。議決権の数の方は3/4以上は規約でも変えられない。

 「共用部分の重大な変更」は特別決議事項の1つだが、他の特別決議事項と異なり、「区分所有者の数」だけ3/4以上から「過半数」に減らせる。(出題では、議決権も規約で「過半数」に減らすことができる、が多い。)

★1項は、共有物の変更を共有者の数および議決権(規約で別段の定めのない場合には専有部分の床面積の割合)の各3/4以上の多数決でできるとして、同様の事項に関する民法第251条の「共有物の変更(処分を含む)は全員の合意(同意)から、区分所有法での多数決への特則を定めた規定です。

<参照> 民法 第251条(共有物の変更) ;
  各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない

民法の共有関係を、区分所有法では緩和した −多数決原理の採用 −
 区分所有法でも昭和58年改正前の旧法では民法原則である全員の合意(同意)を必要としていましたが、それでは1名でも反対の人がいると多くの人が必要とする改善工事ができなくなる等の不都合が多く発生しましたので、全員の合意から、マンションという複数の人が1つの棟に住むという特異性のある存在を認め、所有者及び議決権の各 3/4以上 の多数決という条件に緩和したものです。

★強行規定 − 変更を許さない 原則 −
 本来、民法の全員の合意を必要とする行為を区分所有法が緩和した規定ですから、原則として規約等の当事者の合意でこれを更に緩和したり制限を強めたりすることはできません。その意味でこの規定は強行規定です。

 ただし、一部の者が多くの持分を有するようなマンションの場合(議決権が一部の人に偏るとき)に、区分所有者としては数が多い少数持分権者の反対で必要とする改善工事ができなくなる等の不都合を回避するため区分所有者の定数要件は、規約で 3/4以上 からその 過半数(1/2超) まで減らすことができるとされていますので、この範囲の緩和は法が認めているといえます。

 この緩和の趣旨が妥当なものかどうかは、過去の規約との整合性との関係など議論のあるところですが、区分所有法が財産管理の法である民法の特則規定である性格が現れている規定と言えます。

★その形状または効用の「著しい変更か」「否か」の判断基準
 平成14年の改正前には、「著しく多額の費用」の表現がありましたが、何と比較して「著しく多額の費用」かはっきりしませんでした。
そこで、平成14年の改正では「多額の費用」の言葉を外し、「形状または効用の著しい変更」にしました。

 形状の変更とは、外観や構造を変更することで、効用の変更とは、その機能や用途を変更することですが、何が「著しい変更」に該当するかは、明確ではありません。

 たとえば、
  @階段室をエレベーターに変えるのは、「形状または効用の著しい変更」で、特別多数決議が必要です。

  Aエレベーターに遠隔監視装置を設置する場合は、安全性の向上として使用価値や交換価値の増加が見込まれ改良概念に該当すると共に機器の新設や価値の変更という意味で「著しい変更」概念にも該当しそうですが(設置工事に伴う共用部分への加工自体を変更とすべきではありません。)、既存の機器の常識的な範囲の機能向上を目的とするものに過ぎず管理行為に含む改良と思われます。普通決議で可能です。

  Bインターネット回線の新設も現在では同様に管理行為といえるものと考えます。これも、普通決議で可能です。(この点に関しましては、光ケーブルか、ケーブルテレビなど何を選択するかの方が問題かもしれません。)

 標準管理規約のコメントでは、「形状または効用の著しい変更」をかなりの例をあげて、「普通決議(過半数)」と「特別多数決議(区分所有者の数だけ規約で過半数まで減可能)及び議決権の各3/4以上」を示していますので、参考になります。

<参考>標準管理規約47条(総会の会議及び議事)関係のコメント

ア)バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は普通決議により、
階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けしたりして、エレベーターを新たに設置する工事は特別多数決議により実施可能と考えられる。

イ)耐震改修工事に関し、柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事や、
構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さいものは普通決議により実施可能と考えられる。

(筆者注:これに対して、建物の1階の柱をすべて切断して、免震部材(積層ゴムなど)を挿入する工法は、建物の基本的な構造部分である柱の下部をすべて取り除くので、特別多数決議が必要と考えられます。)

ウ)防犯化工事に関し、オートロック設備を設置する際、配線を、空き管路内に通したり、建物の外周に敷設したりするなど共用部分の加工の程度が小さい場合の工事や、
防犯カメラ、防犯灯の設置工事は普通決議により、実施可能と考えられる。

エ)IT化工事に関し、光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場合、その工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に変更を加えることなく実施できる場合や、
新たに光ファイバー・ケーブルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない状態に復元するのであれば、普通決議により実施可能と考えられる。

オ)計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる。

カ)その他、集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事などで、大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議により、
窓枠、窓ガラス、玄関扉等の一斉交換工事、既に不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事は普通決議により、実施可能と考えられる。

 ◎大規模修繕は多額の費用はかかるが、「形状または効用の著しい変更」でないと判断されている。普通決議でできるように改正された。
   また、普通決議となると、規約での別段の定めができ、集会の決議から、理事会での決議に変更もできる。

★注意しなければいけないのは、共用部分の廃止行為です。
 変更とは、変更前との同一性がある行為でなければなりません
 改造工事により、共用部分が無くなったり、改造で以前と大きくことなると、変更ではなく、共用部分の廃止や処分行為となり、区分所有者の多数決や3/4以上ではもう決定できません。
 当然に、民法の共有者全員の賛成が必要となります。(ここらが、出題傾向が高い!)

{例}変更行為として区分所有法の適用の場合
  敷地の一部にある樹木を伐採し、駐車場として隣接するマンションに賃貸する場合は、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議(特別決議という。)を得なければならない 。

民法の適用になる場合
・集会所として使用するため隣接する土地及び建物を購入しようとする場合
 新規の不動産購入は区分所有法の行為を超えた行為となり全員の合意が必要とされる。(民法第251条)
・共用部分の廊下を改造して、専有部分とする。
・屋上に増築して専有部分を作る。
・専有部分とした増築部を分譲する(処分行為)

★区分所有法はあくまでも、民法の特別法です。
 基本的に、区分所有法の適用がある他に、民法の適用もあります。区分所有法の適用を受ける項目は、区分所有法の中に規定されている項目に限られます。


 例えば、新しくマンションの敷地を購入するなら、区分所有法での区分所有者及び議決権の各々 3/4以上の多数決では決められません。民法により、共有者全員の合意が必要になります。
 また、余っている敷地を売却する行為も、民法により、共有者全員 の合意が必要とされます。

 区分所有関係に入る時と、区分所有関係から出る行為は民法が適用されます。

 ただし、民法か区分所有法の適用か、区分が曖昧な部分が多く、学説も分かれることがあります。
 それは、基本的に区分所有法が民法で定める「全員の合意」が困難なことを受け、「多数決の原理」を取り入れて制定されていることを、どう解釈するかです。

 端的な例として、区分所有法では、個人の最大財産である建物であっても、全部を壊すことのできる「建替え」を多数決でできると認めているなら、他の処分行為も、多数決で可能だという解釈も当然にあるわけです。


{設問} 平成18年 マンション管理士試験 問4

マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律第2条第1号イのマンションをいう。以下同じ。)についての共有物分割請求権の行使に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。


1 1個の専有部分を共有する区分所有者は、その専有部分について、共有物分割請求権を行使することができない。

答え: 誤りである。まず、民法と区分所有法との共有関係を明確にしておくこと。また、区分所有法では「マンション」の用語の規定はないため、マンションの管理の適正化の推進に関する法律で定義されることに注意。
  区分所有法で定める共用部分(廊下、階段室など)は建物の存在に不可欠なため、原則、区分所有者全員の共有とし(区分所有法第11条1項参照)、共用部分が共有関係にあると、民法の共有に関する規定ではなく、区分所有法第13条から第19条までの規定に従い(区分所有法第12条)、また、専有部分と分離して処分ができない(区分所有法第15条参照)としてあるが、設問は専有部分(平たくいうと自分の室)の共有関係で、これは、民法の適用となる。すると、民法第256条1項「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない」 の規定により、可能。

2 専有部分以外の建物の部分を共有する区分所有者は、その建物の部分について、共有物分割請求権を行使することができない。

答え: 正しい。今度は、民法の適用ではなく、区分所有法の適用となる。
    専有部分以外の建物の部分は「共用部分」(区分所有法第2条4項参照)となり、これは、区分所有法の適用となる。選択肢1でも述べたように、区分所有建物にとって、廊下や階段など共用部分は建物の存在に不可欠なため、共用部分の共有は民法で規定する「分割請求」が認められない。
  区分所有法第15条2項「共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない」の規定により、原則、共用部分の持分の処分(移転、売買、分割など)が禁止され、共有物分割請求権はない。

3 専有部分に属しない建物の附属物を共有する区分所有者は、その建物の附属物について、共有物分割請求権を行使することができない

答え: 正しい。専有部分に属しない建物の附属物(雑排水本管、昇降機など)も「共用部分」(区分所有法第2条4項参照)となり、これは、区分所有法の適用となる。すると、選択肢2と同様に共有物分割請求権はない。

4 規約により共用部分とされた附属の建物を共有する区分所有者は、その附属の建物について、共有物分割請求権を行使することができない。

答え: 正しい。規約により共用部分とされた附属の建物(別棟の集会所、物置など)も「規約共用部分」(区分所有法第4条2項参照)となり、規約共用部分も法定共用部分も、区分所有法ではまとめて「共用部分」として適用される(区分所有法第4条2項)。すると、選択肢2と同様に共有物分割請求権はない。

答え:1


 

★共有物の管理には、民法では三つのタイプがある。

 区分所有法が成立する前に、民法は規定していた。

     @保存行為...現状維持。エレべーターの保守・点検・修理、廊下の清掃、壊れた窓ガラスの交換など。

               <参照> 民法 第252条但し書き:単独でできる

     A利用改良行為...性質を変えない範囲で利用したり、価値を増加させる。屋上を貸して賃料をとる、廊下に夜間灯をつけるなど。

                <参照> 民法 第252条本文:持分に従い過半数できめる

     B変更・処分行為...形や性質を変えたり、処分する。マンションの増改築など。

                <参照> 民法 第251条:全員の同意(合意)が要

★これを区分所有法では少し変更した。

      A.保存行為...各所有者が単独でできる。ただし、規約で(たとえば、管理者(理事)がするとか)決めていい。

                <参照> 第18条

      B.狭義の管理...利用・改良行為と軽微の変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないもの)

                   玄関の扉を取り替えるなど。

                  *工事の費用や期間ではなく、その形状または効用の著しい変更を伴わないものであること。

                   よって大規模修繕工事は重大変更ではない(試験にでるぞー)

                   この狭義の管理は、区分所有者および議決権の各過半数の賛成決議でいい。(普通決議)

                   また、規約で過半数をかえたり、管理者の機関(理事会)の決定に委ねるとかしていい。

      C.重大変更... 軽微の変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないもの)を除いた変更。

                  お金(費用)がかかるとか、時間がかかっても、形状や効用があまり変わらないのは、ここには含まない。

                  ◎階段室をエレベーター室に変更するなどは「形状の著しい変更」となる

                  ◎集会室を廃止して賃貸店舗に転用するが「効用の著しい変更」でこれらが重大変更にはいる。

                  これは、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成決議がいる。

                  このうち区分所有者の定数だけは、規約があれば、4分の3以上から過半数まで減らせる。(注意ポイント)

                 (議決権は変更できない。4分の3以上必要。)これは民法の持分の価格の過半数が必要の精神と同じ。

                 ◎区分所有者の定数―――>3/4以上 から 過半数 まで下げられる。

                  議決権の定数   3/4以上 は 変えられない。

                この第17条は、「C.重大変更」を定めたもの。

◎ 共 有 物 の 管 理
 内容 区分所有法での決定方法 規約での別段の定め
保存行為 各区分所有者 可能
管理行為(狭義)軽微の変更 集会の普通決議 可能
重大変更(その形状又は効用の著しい変更を伴うもの) 集会の特別決議 できない(ただし、定数のみ過半数まで減らせる)

{設問-1}あるマンションの管理組合の規約の定めに関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、次の記述は有効か。

*共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者総数の4分の3以上及び議決権の過半数で決する。

答え:有効ではない。区分所有法第17条1項に「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決する。ただし、区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。」と規定されており、区分所有者の定数は減らせるが、設問の「議決権を過半数にすること」は区分所有法では許されていないため、無効である。


{設問-2} マンションの共用部分の修繕工事の決議に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、最も適切なものはどれか。なお、規約に別段の定めはないものとする。

1 内外壁塗装工事を行う場合には、出席した区分所有者の議決権の過半数の賛成による集会の決議が必要である。

答え:適切でない。 「内外壁塗装工事を行う場合」は「共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴わない」ことから、区分所有区分所有法第 17 条の共用部分の重大変更に該当しない。普通決議事項である。しかし、出席した区分所有者の議決権の過半数ではなく、区分所有者及び議決権の過半数の賛成による集会の決議が必要である。規約があれば、可能であるが、設問は規約で別段の定めがない、とある。

2 内外壁塗装工事のほか、鉄部塗装工事、屋上防水工事、給水管ライニング工事を併せて行う場合には、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成による集会の決議が必要である。

答え:適切でない。 「内外壁塗装工事のほか、鉄部塗装工事、屋上防水工事、給水管ライニング工事を併せて行う場合」は選択肢1と同様に、区分所有法第 17 条の共用部分の重大変更に該当しない。普通決議事項である。区分所有者及び議決権の過半数の賛成による集会の決議でいい。

3 内外壁塗装工事のほか、階段と廊下に手すりを設置する工事を併せて行う場合は、区分所有者及び議決権の各過半数の賛成による集会の決議が必要である。

答え:適切である。 「内外壁塗装工事のほか 、階段と廊下に手すりを設置する工事を併せて行う場合」は、選択肢1と同様に、区分所有法第 17 条の共用部分の重大変更に該当しない。普通決議事項である。区分所有者及び議決権の過半数の賛成による集会の決議が必要である。

4 内外壁塗装工事のほか、階段室をエレベーター室にする工事を併せて行う場合には、出席した区分所有者の議決権の4分の3以上の賛成による集会の決議が必要である。

答え:適切でない。「階段室をエレベーター室にする工事を併せて行う場合」は、「共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴う」ことから、区分所有法第 17 条の共用部分の重大変更に該当する。特別決議事項である。出席した区分所有者の議決権の4分の3以上の賛成による集会の決議ではなく、全体の区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成による集会の決議が必要である。

(注:)標準管理規約の普通決議は「出席した区分所有者の議決権の過半数の賛成」であるのに対し、区分所有法の普通決議では、「区分所有者及び議決権の各過半数の賛成」となっている。設問で「別段の規約がない」ことに注意。標準管理規約と区分所有法での混同を狙っている。

正解: 3

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第十七条

2項  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

過去出題 マンション管理士 H20年、H15年、H13年
管理業務主任者 未記入

★共用部分の変更に対して、影響を受ける専有部分の所有者が反対したら変更できない。多数決であっても、個人の権利は尊重するのが趣旨。

特別の影響とは
 2項は、共用部分に係る既得権保護の規定です。

 今ある共用部分を変更することは、既存の共用部分の形状や使用方法等の現状を改変することとなり、全員に何らかの影響を及ぼすことは避けられませんが、その影響が、出入りが不自由になる、日当たりが悪くなるなど特定の専有部分や専用使用権設定部分、その他特定の区分所有者の共用部分との係わり合いに特に強く関係する場合もあります。

★多数による横暴を抑止する
 この場合に、多少の影響があるからといって、共用部分の変更を拒絶されたのでは、全体としての円滑な共同生活は成り立ちませんが、他方で影響を受ける特定の者に通常受忍すべき範囲を超える受忍を強いる場合は、多数による少数の圧迫としてそのような行為が制限されるのもまた当然です。

 このような趣旨により、共用部分の変更が特定の区分所有者に通常の受忍範囲を超える場合には、その人の承諾を必要とすると規定したのが2項です。

 この規定の反対の解釈として、特別の影響がない限り個々の所有者の承諾は不要ということで、現実にはこの意味で使われるのが多い条項です。

★具体的には?
  何がこの「特別の影響」に該当するかもまた抽象的な概念ですから、個別の判断となりますが、工事の目的、性格、内容、方法、必要性と影響の性質、内容、程度、必然性ないし回避可能性、代償措置等を総合的に判断する必要があるでしょう。 

{判例}
「特別の影響を及ぼす」場合か否かの判断に当たっては、共用部分の変更又はそのための工事の必要性、合理性と、共用部分を変更することによって区分所有者の受ける不利益とを比較衡量し、不利益が受忍すべき程度を超えるか否かを基準に検討すべきである。 

そして、共同市場における、通路の幅が狭くなる改修工事を「特別の影響」を及ぼさない、と判決した。(平成9年5月27日:神戸地裁)

★集会で決議しても、影響を受ける室の持ち主が承諾しないと、重大変更もできない。

 区分所有法では多数決を取り入れていながら、多数の横暴が許されない。次の第18条の「狭義の管理」でも準用されている。


*区分所有法の多数決と民法の全員の同意について

 この区分所有法第17条に規定される重大変更を始めとして、今後出てきます、建物の復旧や建替え(区分所有法 第61条、第62条参照)にみるように、区分所有法では、民法で定める「共有物の変更での全員合意をうること」が困難であることの反省から、多数決を採用したことに、民法に優先する特別法としての存在価値があります。

 しかし、共有物の処分行為(共有持ち分に変更をもたらす売買など)は相変わらず、多数決では決定できず、民法の適用があり、「全員の合意が必要」とされています。
 この法的な構成は、もう時代の要請には合わないとの説があります。
それは、最大の共有物である建物を無くすことができる「建替え」が「4/5以上の多数の賛成」で可能であるのに、それよりも影響の少ない「変更」に「全員の合意」を求めなくてもいいのではないかとの考え方です。
 この考え方には、私は同意してます。


{参考: 例−1}平成18年マンション管理士試験 

〔問 6〕マンションの管理組合(区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体をいう。以下同じ。)の集会において区分所有者及び議決権の各4/5の多数によっても決議をすることができないものは、区分所有法及び民法の規定によれば、次のうちどれか


1 老朽化したマンションを取り壊して、平面駐車場にする旨の決議

答え:  決議できない。民法と区分所有法の限度を理解しておくこと。また、区分所有法では「管理組合」という定義はなく、「団体」であることに注意。
  老朽化したマンションを取り壊す行為は、区分所有法での「建替えの決議」が参考になる。
  建替えは(区分所有法第62条1項参照「集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。」とあり、要件として、「建物」が建築されないといけない。壊して平面駐車場にするには、区分所有法の規定から外れて、民法に戻る。民法第251条「共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない」により、区分所有者全員の同意が必要。集会において区分所有者及び議決権の各4/5の多数によっても決議をすることができない。

2 居住用のマンションを取り壊して、その敷地に新たに区分所有された住居の部分のある商業用ビルを建築する旨の決議

答え: 決議できる。 区分所有法第62条の建替え決議は法改正により従前と同一用途である要件が外れたので決議可能。


{参考: 例−2}平成17年マンション管理士試験 

〔問 5〕 甲マンション管理組合における区分所有者の共有に属する敷地及び共用部分の管理等に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする


1 甲が敷地の一部にある樹木を伐採し、駐車場として隣接するマンションに賃貸する場合は、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議(以下特別決議という。)を得なければならない 。

答え: ここも、区分所有法の限界、民法の共有を聞いている。
  植栽を駐車場にするのは、区分所有法第17条「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。」
で規定する、「形状・効用の著しい変更」に該当し、特別決議が必要。民法での規定でなく、区分所有法の規定内で可能。

2 甲が集会所として使用するため隣接する土地及び建物を購入しようとする場合は、購入について、特別決議を得なければならない。

答え: 新規の不動産購入は、土地の共有持分等に変更が生じるため、区分所有法の変更行為を超えた行為となり、民法の共有物の変更の適用で全員の合意が必要とされる。(民法第251条:各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。 )


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(共用部分の管理)
第十八条
1項 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
過去出題 マンション管理士 H17年、H16年、H15年、H13年
管理業務主任者 H18年、H16年、H14年

前条の場合を除く...第17条での重大変更をさす。

★本第18条1項では、共用部分の管理のうち前第17条の、「C.重大変更(その形状又は効用の著しい変更を伴うも)の場合」を除く範囲の管理(A.保存行為、B.狭義の管理)については集会の決議で決するものとされています。

 いいかえると、共用部分の管理は、集会で決めるため、保存行為を除き、個人ではできず、原則 管理組合が行うことになります。
ただし、規約で別段の定めができます。(2項)
でも、その狭義の管理に関する変更が、特定の区分所有者の使用に特別の影響を及ぼすときには、17条と同様に、その区分所有者の承諾が必要です。(3項)

 そして、集会の決議は別段の定めがない限り、第39条1項で「区分所有者及び議決権の各過半数で決する」(普通決議)とされていますから、前第17条、本第18条1項本文及び但書を総合すると最広義の管理のうち、重大変更は区分所有者及び議決権の各3/4以上(3/4を含み)可決となります。

 また、保存行為を除く狭義の管理は区分所有者及び議決権の各過半数(半数は含まず、否決となります。)で、保存行為は本第18条1項但書により集会の決議も不要で区分所有者が単独でそれぞれ可能ということになります。

★共用部分の、A.保存行為と、B.狭義の管理は、集会の決議(区分所有者および議決権の各過半数の賛成決議)でいい。

  しかし、保存行為は、各共有者が単独でできる。<参照>第6条2項(区分所有者の権利義務)でも規定されている。

★ 区分所有法の保存・管理(利用・改良・軽微の変更)・重大変更の内容。
A.保存行為 現状維持・修理は、各所有者が単独でできる。

ただし、規約で(たとえば、管理者がするとか)決めていい。民法と同じ。
B.狭義の管理 利用・改良行為と軽微の変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないもの)は、管理組合の集会の決議がいる

区分所有者および議決権の各過半数の賛成決議でいい。
玄関の扉を取り替える。工事の費用や期間ではなく、その形状または効用の著しい変更を伴わないものであること。
よって大規模修繕工事は重大変更ではない
これは、区分所有者および議決権の各過半数の賛成決議でいい。(普通決議)
また、規約で過半数をかえたり、管理者の機関(理事会とか)の決定に委ねるとかしていい。
C.重大変更

軽微の変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないもの)を除いた変更。

階段室をエレベーター室に変更する。
これは、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成決議がいる。(特別決議)
このうち区分所有者の定数だけは、規約があれば、4分の3から過半数まで減らせる。
(議決権数は変更できない。4分の3必要)。<参照> 第17条1項

       この第18条は、「A.保存行為」と「B.狭義の管理」を規定したもの。 

★保存行為と狭義の管理の区別
  ある行為が修理なのか改良なのかは判断が難しい場合が多々あります。
  本第18条1項では、特に、「ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。」としてあることから、保存行為と狭義の管理とを区別することが問われる場合があります。
 通常、本項での各区分所有者が単独でできる保存行為としては、緊急を要する場合か、修理内容としては、共用部分の点検や破損個所の小修繕程度と解され、共用部分の塗装工事などは、狭義の管理となり、集会の決議事項と解されます。

★専有部分でない「専用使用権」の管理について

  特定の区分所有者が、区分所有者全員の共有部分(=共用部分)を、排他的、独占的に利用できる部分を専用使用部分といい、専用使用部分を使う権利を専用使用権とよびます。
  例としては、1階の区分所有者だけが使う専用庭、最上階の区分所有者専用の屋上のテラスまた特定の区分所有者だけが使える駐車場がこれに該当します。

  また、空いている駐車場を区分所有者でない外部の人に貸すときにも、排他的、独占的な専用使用部分が生じます。

  この場合、使用者が区分所有者であるときは、区分所有法の規定(共有物の管理:第18条、規約の関係:第31条など)が適用され、外部の人が駐車場を借りているときは、民法の賃貸借(民法第601条〜第622条)が適用になります。


{設問} 平成16年マンション管理士 問1

 建物の区分所有などに関する法律(以下「区分所有法」という。)上当然に共有部分とされる部分(以下この問いにおいて「法定共用部分」という。)に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。

3 法定共用部分は、規約で定めても、区分所有者以外の者が排他的に使用することとすることはできない。

答え:  誤りである。
 これは、良く出る設問。バルコニー、ピロティーにある駐車・駐輪場所等は法定共用部分とされるが、前者は専用使用権により後者は使用契約により排他的使用権が設定される。また、電気室を電力会社が排他的に使用することもある。他に判例として、法定共用部分である屋上広告塔について、特定の者による専用使用権を認めたものもある。規約で定めれば、たとえ法定共用部分でも、区分所有者以外の者が排他的に使用することができる。

4 法定共用部分を専有部分とする場合には、これについて、その共有者全員の同意が必要である。


答え: 正しい。
 法定共用部分(廊下、階段室など)を専有部分とするのは今までの共有持分が減少または消滅するため、各区分所有者の財産権を変更する処分行為であり、区分所有法上の共用部分の変更行為から外れ、民法の共有(民法第251条)「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」により、全員の同意が必要となる。

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第十八条

2項 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

過去出題 マンション管理士 H15年、
管理業務主任者 未記入

妨げない...共用部分の重大変更(第17条参照)を除いた、狭義の管理行為と保存行為については、規約で別の方法をとってもいい。 

★2項は、1項の原則である「管理行為は集会の決議で決すること、保存行為は、各共有者がすることができる」ことについて規約で変更ができることを認めた規定です。

 具体的には、管理行為を、毎回の集会の決議事項から変更し、理事会の決議で決することができます。
しかし、管理者の判断に任せて実施とか、また保存行為が各人の判断で実施できることには保存行為の該当性判断が各人各様では収拾がつかなくなりますから規約で原則として個人の行使を禁止すること等が考えられるでしょう。

   ★ 前項=第18条1項:管理のうち A.保存行為 と B.狭義の管理 は規約で別の定めができる。

                          C.重大変更は区分所有者の数だけは4分の3から過半数に減らせるが、それも集会の決議によること。

   ★共用部分の「A.保存行為」と「B.狭義の管理行為」は普通決議(過半数で決める)によるが、その他の決定方法(理事会での決定、管理者に決定させるなど)を規約で定めてもいい。


<参考>「標準管理規約(単棟型)」21条:(敷地及び共用部分等の管理)
第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。
ただし、バルコニー等の管理のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。

2. 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。

第21条関係コメント
@ 駐車場の管理は、管理組合がその責任と負担で行う。
A バルコニー等の管理のうち、管理組合がその責任と負担において行わなければならないのは、計画修繕等である。
B 本条ただし書の「通常の使用に伴う」管理とは、バルコニーの清掃や窓ガラスが割れた時の入れ替え等である。
C 第2項の対象となる設備としては、配管、配線等がある。
D 配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。

<参考>「標準管理規約(単棟型)」22条:(窓ガラス等の改良)
第22条 共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。

2. 管理組合は、前項の工事を速やかに実施できない場合には、当該工事を各区分所有者の責任と負担において実施することについて、細則を定めるものとする。

第22条関係コメント
@ 窓枠、窓ガラス及び玄関扉(玄関扉にあっては、錠及び内部塗装部分を除く。以下「開口部」という。)については、第7条第二号及び第三号において専有部分に含まれないこととされていること、専有部分に属さない「建物の部分」については、第8条に基づく別表第2において共用部分とされていることから、開口部は共用部分として扱うこととなる。

A また、区分所有法は、その形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更について、集会の普通決議により決することを定めている。

B 第1項は、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上のため行われる開口部の改良工事については、原則として、他の共用部分と同様に計画修繕の対象とすべき旨を規定したものである。

C 第2項は、開口部の改良工事については、治安上の問題を踏まえた防犯性能の向上や、結露から発生したカビやダニによるいわゆるシックハウス問題を改善するための断熱性の向上等、一棟全戸ではなく一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合もあり得ることにかんがみ、計画修繕によりただちに開口部の改良を行うことが困難な場合には、各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができるよう、細則をあらかじめ定めるべきことを規定したものである。

D また、第2項は、マンションでは通常個々の専有部分に係る開口部(共用部分)が形状や材質において大きく異なるような状況は考えられないことから、当該開口部の改良工事についてもその方法や材質・形状等をあらかじめ定型的に細則で定めることにより、その範囲内で行われるものについては施工の都度総会の決議を求めるまでもなく、各区分所有者の責任と負担において実施することを可能とする趣旨である。

E 「共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するもの」の工事の具体例としては、防犯・防音・断熱性等により優れた複層ガラスやサッシ等への交換、既設のサッシへの内窓又は外窓の増設等が考えられる。

F 各区分所有者の責任と負担において行うことができるものとしてあらかじめ定型的な工事内容を定めるに当たっては、専門的知識を有する者の意見を聴くことを考慮する。

G 本条の規定のほか、具体的な工事内容、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、細則に別途定めるものとする。

H 申請書及び承認書の様式は、専有部分の修繕に関する様式に準じて定めるものとする。


{設問-1}次の記述は、正しいか。

*共用部分の保存行為については、規約で定めれば、特定の区分所有者のみが行うこととすることができる。

答え:正しい。原則共用部分の保存行為(現状維持)は、区分所有法第18条第1項により、各共有者でも行うことが可能であるが、区分所有法第18条2項によれば、共用部分の保存行為については、規約で別段の定めが許されているため、規約で定めれば、特定の区分所有者のみが行うこととすることができる。


{設問-2}あるマンションの管理組合の規約の定めに関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、次の記述は有効か。

*共用部分の管理に関する事項は、共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴わない場合には、理事会の決議で決する。

答え:有効である。区分所有法第18条1項に「共用部分の管理に関する事項は、前条の場合(共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴う変更)の場合を除いて、集会の決議で決する」とされているが、同第2項において「規約による別段の定め」を認めていることから、
設問の「共用部分の管理に関する事項は、共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴わない場合には、理事会の決議で決する。」という規約の定めは有効である。

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第十八条
3項  前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
過去出題 マンション管理士 H15年、
管理業務主任者 未記入

★前条第2項の規定=区分所有法第17条第2項: 

  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

「B.狭義の管理」に準用。特定の専有部分の区分所有者に影響するときは、その影響をうける人の承諾が必要。多数の横暴が許されない。

「A.保存行為」は当然ここには該当しない。(影響を受ける人の承諾は不要。)

★特別の影響
 本3項は共用部分の変更の場合に特別の影響を受ける者に対する承諾取得義務の準用規定です。

 共用部分の狭義の管理行為と重大な変更行為では程度に差がありますが、特定の区分所有者に対する影響も狭義の管理行為でも発生する可能性がありますので、管理行為が特定の区分所有者に特別の影響、即ち受忍限度を超える場合には当該区分所有者の承諾が必要とされるのは当然でしょう。

 その場合の判断基準等は前第17条2項の場合と同様です。
 判断の基準は、第17条2項を読んでください。


{設問}次の記述は正しいか。

*共用部分の管理(保存行為を除く。)に関する集会の決議が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければ、その決議は、無効となる。

答え:正しい。区分所有法第18条3項によれば、同法第17条2項の準用で、共用部分の管理(保存行為を除く。)に関する集会の決議が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

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第十八条

4項  共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

過去出題 マンション管理士 H20年、
管理業務主任者 H16年、

*「みなし規定」とは...本当はそうではないものをそう扱う特別規定で、損害保険の付保契約は内容の如何にかかわらず、この規定により管理行為として扱われることになる。

*共用部分の管理に関する事項...これにより「狭義の管理」と同じ扱いとなり、普通決議(過半数)で決められる。(「保存行為」ではないことに注意。)

    規約で別段を定めてもいい。(第18条2項)

★損害保険契約の特則
 4項は、損害保険の契約行為を共用部分の管理行為とみなす規定です。

損害保険の契約が条文として必要なわけ - 管理組合としての保険の名義人が必要

◎損害保険とは、火災保険等のように偶然の事故で物に生じた損害を填補する保険をいいますが、その場合に保険金を受領できるのは被害者即ち物の所有者となります
 そこで誰が共用部分の所有者かが問題となります。

 共用部分の所有者を団体である管理組合としないで、区分所有者の共有とした場合は、各区分所有者が個人として自己の保険金をそれぞれ請求することになります。
 しかし、もともとこの保険金は事故で傷ついた共用部分の修復に使用されるべきものですから、この請求を団体である管理組合の事務として一括して請求できることがその目的に添う方法です。

  このような理由により管理組合の管理事務であることを正面から認めて(みなす、とする限度ではありますが。)個々の区分所有者の請求を認めないとするのが、保険事項を管理事項(即ち管理組合の事務ということ。)とする本項の趣旨といえます。

 そして、管理者(理事長)は、集会の決議により、管理組合の名において、損害保険会社との間で、損害保険契約を締結できます。(区分所有法第26条1項、2項参照)

<参照>区分所有法第26条 (権限)
第二十六条 管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。

2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする

3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。

   保険契約は、理事長名(xxマンション管理組合 理事長 yyyyy)で締結しますが、被保険者(保険の対象者)は、区分所有者全員となります。

************************************************

★損害保険について

  マンションの共用部分に火災損害保険をする場合には、「上塗り基準」(上下階との床スラブ、隣との境界は共用部分で含まれる)が「壁芯基準」(上下階との床スラブ、隣との界壁は中心線を堺にしてそれぞれ専有部分となり、共用部分にならない)より望ましい。

 また、「住宅総合保険」に入り、普通の「住宅火災保険」での補償内容である、@共用部分の建物が火災、落雷、破裂・爆風、風・ひょう・雪災による損害補償をうけ、臨時費用・残存物片付け費用・損害防止費用などをカバーし、その住宅火災保険にプラスして、A建物外部からの飛来・落下・衝突、騒じょう・集団行動・労働争議に伴う暴行・破壊、水漏れ損害、水災、盗難による建物損害の補償を受けるのが一般である。

★地震保険 −単独では加入できない −

  地震・噴火またはこれらによる津波を原因とした火災・損壊・埋没・流失による損害補償を受けるには、住宅火災保険(住宅総合保険)と共に地震保険に加入が必要となる。地震保険単独では入れないので注意のこと。

★個人賠償責任保険

  不注意による漏水、ベランダからの落下物による駐車中の自動車への損害、ボール遊びでのエントランスのガラスを割ったなど、住戸の所有・使用・管理中の偶然な事故や、個人の日常生活での偶然な事故による損害賠償の補償がされる。

 など、他にも特約で補償されるものや、機械設備の保険などもあるので、管理組合の実態にあった保険を選らぶこと。

★分譲開始時での保険契約

  まだ、分譲が開始されたばかりのマンションでは管理組合も実態がなく、管理者(理事長)も選任されていませんが、入居者があれば、引越し作業でタイルが欠けたり、漏水や駐車場での損害事故などが発生します。
  加害者が特定できれば、その加害者に賠償請求ができますが、加害者が不明な状態が発生します。これに備えるために、分譲会社から管理を委託されたマンション管理会社がマンションの管理組合名義で保険契約に加入しています。
 時々、被保険者の名義が理事長に変更されていない場合もありますので、管理組合は確認が必要です。

 また、保険契約の内容も、マンションの実情にあっているか、適宜チェックすることも必要です。

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★ あるマンション販売でのサンプル

「xxxxマンション」管理に係わる承認書 

(売主)     AA 株式会社 
(管理会社)  BB 管理 株式会社  御中

 今般、土地付き区分所有建物「xxxxマンション」の売買契約締結に伴い、下記の事項を承認します。
      − 記 −
対象物件: 名称   :「xxxxマンション」
        所在地 :東京都千代田区・・・・

1. 別記 「xxxxマンション 管理規約」、 「同使用細則」、「同宅配ボックス使用細則」、「同駐輪場使用細則」、「同共用駐車場使用細則」、「同共用駐車場使用契約書(書式)」、「同共同バイク置場使用細則」、「同共同バイク置場使用契約書(書式)」案を原案の通り承認し遵守いたします。 
 なお、この規約に基づき、「xxxxマンション管理組合」に加入し、他の組合員と協議の上、規約に定める役員を選任することを承認します。 
 また、専有部分を第三者に貸与する場合は、その者にも、この規約及び使用細則等に定める事項を遵守させることを、誓います。

2. 管理規約による正規の管理者(理事長)が選任されるまでの間は、「BB 管理 株式会社」が管理組合の職務を代行することを承認します。
  また、本物件の維持管理の必要上、あらかじめ備品として清掃用具、管理組合印及び理事長印、電話加入権(名義上は、「BB 管理 株式会社」にしますが、費用の負担及び実質上の権利者は、本物件の管理組合とします。)などの購入及び管理組合の預金口座の開設を承認します。

3. 本物件の駐輪場、駐車場及びバイク置場の当初の区割りについては、「売主 AA 株式会社」 の指定の方法によることを承認します。

4. 別記 「xxxxマンション 管理費予算見積書」及び「xxxxマンション 管理委託契約書」により、管理組合が「BB 管理 株式会社」に管理を委託することを承認します。

5. 対象物件に関し、売主又はその指定する者が、建物及び共用部分を、次の販売活動のために、無償使用することを承認します。 (規約x条a項参照)
    ア.対象物件内に販売案内所及びモデルルームを設置し、それらに伴う案内板や看板等を設置すること。
    イ.対象物件の外壁面等に販売に関する垂れ幕、看板等を設置すること。

6. 管理の開始後、売主による未販売住戸がある場合には、売主による管理基金・修繕積立基金(一時払い金)の納付は要しないことを承認いたします。(規約x条b項参照)

7. 対象物件の管理開始後、部分管理(暫定管理)があることを承認します。(規約x条c項参照)

8. 管理規約ならびに管理委託契約書への署名捺印を、本書の署名捺印をもって代えることを承認します。

                                     以上

 平成  年  月   日
      xxxxマンション       号室 区分所有者
      氏名                 印
     共有者 氏名             印

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<参考>「標準管理規約(単棟型)」24条:(損害保険)
第24条 区分所有者は、共用部分等に関し、管理組合が火災保険その他の損害保険の契約を締結することを承認する。
2. 理事長は、前項の契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。


{設問}平成16年 管理業務主任者試験 問39

マンションの共用部分に係る損害保険に関する次の記述のうち、区分所有法の規定およびマンション標準管理規約の定めによれば、誤っているものはどれか。

1 管理組合は、共用部分に係る火災保険その他の損害保険に係る業務を行う。

答え:正しい。(マンション標準管理規約[単棟型]第32条第七号)
設問の「共用部分に係る火災保険その他の損害保険に関する業務」は、管理組合の行う業務として示されている。

2 共用部分に係る火災保険料その他の損害保険料は、管理費から充当する。

答え:正しい。(マンション標準管理規約[単棟型]第27条第五号)
設問の「共用部分に係る火災保険料その他の損害保険料」は、管理費から充当するものとされている。

3 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の保存行為とみなされる。

答え:誤り。 (区分所有法第18条第4項)
「共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす」と規定されている。設問の「共用部分の保存行為」とあるのは誤りである。

4 理事長は、共用部分に係る損害保険契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。

答え:正しい。(区分所有法第26条第2項)
管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第18条第4項の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得の返還金の請求及び受領についても同様とする。」とある。そして、マンション標準管理規約[単棟型]第38条2項「理事長は、区分所有法に定める管理者とする。」とあり、理事長は区分所有法の管理者であり、区分所有者の代理人である。設問とおりに規定されている。

正解:3

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(共用部分の負担及び利益収取)

第十九条
各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。
過去出題 マンション管理士 H21年、H17年、H13年
管理業務主任者 H19年、H14年、

*収取する...金品などをうけとること

★趣旨:
 第19条は、1棟の建物を構成する専有部分を除いた共用部分は区分所有者全員の共有とされ(第11条1項)、その持分は原則として専有部分の床面積の割合によるとされていることから(第14条1項)、区分所有者全員が共用部分の共有者としてその費用を分担し、その利益を享受するという原則を宣言した規定です。

★共用部分の負担の内容
 負担とは、玄関や廊下など共用部分の清掃費・照明代・動力費・管理人人件費・エレベーターその他機器の保守・点検費等からなる管理費と、大規模・計画修繕費からなる修繕積立金のように共用部分を維持・保全・修繕・改良するための費用および共用部分に起因する不法行為の賠償金その他共用部分に関して発生する一切の責任をいいます。

 なお、このような定義付けや「共用部分の負担」という文面からは管理や修繕に関する直接費用のみが本条に該当し、理事会の会議費や通信費等の組合費的な費用や滞納徴収費用等の間接費については定めていないようにも思われますが、このような間接費も区分所有者に便益を与える一方、他に負担者がいないという点では共用部分の負担である直接費と同様ですから、これらの間接費用に関しても本条が準用又は類推適用され、それらの費用も持分に応じて全員で負担するものであると考えるべきでしょう。

★保存行為、狭義の管理行為、重大変更などの費用を、区分所有者全員で負担し、収益をとる。規約で別段を定めてもいい。

    なお、支払が遅れた管理費・修繕積立金などは債権なので、特定承継人(買った人など)にも請求ができる。

    (*注)賃借人などの占有者は、区分所有者ではないので、管理費などの請求は当然できない。

    規約でこの第19条と異なった負担割合は決めてもいいが、負担義務者は区分所有者以外に規約で定めても無効。

<参照> 第8条(特定承継人の責任)

★管理費用の負担割合の決め方
 管理費用の負担は、規約に別段の定めがない限り、共用部分に対する各区分所有者の「持分に応じ」、分担されると区分所有法(第19条)に定められています。そして、この「持分」は、原則として専有部分の床面積の割合による(第14条1項)とされています。

この定め方は、固定資産税や、都市計画税などの負担割合においては、区分所有者も納得し易いのですが、他の点では問題もあります。

 たとえば、エレベーターの運転経費については、持分ではなく、各区分所有者の使用頻度を基準に分担することも考えられないわけではありません。

 しかし、純然たる使用回数などによるのは、理論的には公平かつ合理的と思われますが、現実問題としては、どの人が何回エレベーターに乗ったか、廊下を何回行き来したかなど、各区分所有者ごとの使用回数を正確に算定・記録することは24時間・365日のビデオ・カメラを設置すれば可能でしょうが、その家族や訪問者までを含むとなると、経費面からも妥当ではありません。
また、例えば外灯の維持費に至っては、特定の区分所有者が、夜間外出しないこと等を理由に支払いを拒む事態さえ起こりかねません。

 そこで区分所有法は、共用部分の負担につき、技術上の可能性および区分所有の全体的運営の視点に立ち、各人の持分を算定の基準とすることによって、区分所有者の円滑な継続を企図することになったのです。

 これにより、1階の区分所有者が、自分はエレベーターに乗らないからエレベーターの保守管理費は払わないと主張は出来ませんし、夜間外出しない人が外灯の電気代の支払を拒否できません。

★負担金の種類 -@管理費とA修繕積立金がある-

 標準管理規約(単棟型)では、負担費用を清掃など通常の管理に使用する「管理費」と将来の修繕などに使用する「修繕積立金」とに分けて負担させています。
また、負担の基準は、専有部分の割合で、多くの場合分譲時に決められています。

<参考>標準管理規約(単棟型)25条:(管理費等)
第25条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。

   一  管理費
   二  修繕積立金

2. 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。

第25条関係コメント
@ 管理費等の負担割合を定めるに当たっては、使用頻度等は勘案しない
A 管理費のうち、管理組合の運営に要する費用については、組合費として管理費とは分離して徴収することもできる。

★規約で負担割合は変更できる
 管理費用の負担は、第19条では「規約に別段の定めがない限り」、共用部分に対する各区分所有者の「持分(=専有部分の床面積の割合)に応じて」分担される、としていますので、規約で別段の定めをすることを認めています。

 したがって、管理費用等の負担割合を各区分所有者が所有する専有部分の戸数の割合による旨規約に規定すれば、この規約の規定が優先し、管理費用等を専有部分の戸数で按分して負担することができます。
 しかし、各区分所有者の専有面積がほぼ同じ大きさであればともかく、2倍、3倍と極端な差がある場合は、逆に不満がでやすいことを付記しておきます。

{判例-1}共用部分の管理費の負担割合をどのように定めるかは区分所有者内部の自治に委ねる性質の事項であるから、区分所有法第14条は任意規定と解するのが相当であり、
集会の決議で持分割合のほか他の要素を加味した基準により管理費の負担割合を定めることもその内容が著しく不公正、不公平でない限り許されると解して妨げない。(東京高裁:昭和62年5月27日判決)

★管理組合が区分所有者や賃借人等の占有者から徴収する費用・利益(使用料)については、様々なものがあります。

 代表的なものは、管理費、修繕積立金です。
 その他、状況に応じて、集会所使用料、テニスコート使用料、掲示板使用料、駐輪場使用料、駐車場使用料、専用庭使用料、倉庫使用料、トランクルーム使用料等が発生するマンションもあるでしょう。

★管理費等は民法不可分債務と解される
  共用部分の維持・管理に必要な経費である、管理費や修繕積立金(管理費等)の支払い義務があるのは、区分所有者です。
 管理費等は金銭債務ですが、その負担額の一部が支払われただけでは目的を達しませんから、不可分債務と解されて、各区分所有者はそれぞれが、負担する全額の支払義務を負います。(
民法第430条、同法第432条参照)

<参照> 民法第430条(不可分債務)
第四百三十条  前条の規定及び次款(連帯債務)の規定(第四百三十四条から第四百四十条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。

<参照> 民法第432条(履行の請求)
第四百三十二条  数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

★管理費等が余っても、各区分所有者は返還請求や分配請求ができない
  ここが、
民法での共有と異なっている点です。
  一度支払った、管理費や修繕積立金は、管理組合が法人化されていなくても、管理組合という区分所有者の団体に「合有的に帰属して団体の財産を構成する」ため、そのマンションの区分所有者でなくなっても、積立金の返還請求はできないと考えられています。

★管理費と修繕積立金は分離して会計処理をする

  マンションでは、管理人の人件費、清掃代や備品・通信費などを一般的に管理費勘定とし、建物の定期的な修繕や災害による修繕に備えた修繕積立金勘定とは分けて会計処理を行います。
 この分離会計制度により、各々の金額が明らかになり、修繕計画なども立てやすくなりました。

 具体的な「管理費」と「修繕積立金」の内容は、標準管理規約(単棟型)では、次のようになっています。

<参考>「標準管理規約(単棟型)」における管理費の内容;(管理費)

第27条 管理費は、次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。
   一 管理員人件費
   二 公租公課
   三 共用設備の保守維持費及び運転費
   四 備品費、通信費その他の事務費
   五 共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料
   六 経常的な補修費
   七 清掃費、消毒費及びごみ処理費
   八 委託業務費
   九 専門的知識を有する者の活用に要する費用
   十 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用
   十一 管理組合の運営に要する費用
   十二 その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用

<参考>標準管理規約 27条関係 コメント;

@ 管理組合の運営に要する費用には役員活動費も含まれ、これについては一般の人件費等を勘案して定めるものとするが、役員は区分所有者全員の利益のために活動することにかんがみ、適正な水準に設定することとする。

A コミュニティ形成は、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するものであり、マンションの適正管理を主体的に実施する管理組合にとって、必要な業務である。管理費からの支出が認められるのは、管理組合が居住者間のコミュニティ形成のために実施する催事の開催費用等居住者間のコミュニティ形成や、管理組合役員が地域の町内会に出席する際に支出する経費等の地域コミュニティにも配慮した管理組合活動である。
他方、各居住者が各自の判断で自治会、町内会等に加入する場合に支払うこととなる自治会費、町内会費等は地域コミュニティの維持・育成のため居住者が任意に負担するものであり、マンションという共有財産を維持・管理していくための費用である管理費等とは別のものである。

新しく地域コミュニティーの概念が管理費に入ってきたことに注意。
マンション全体で加入する町会費と個人で加入する町会費では扱いが異なる。

★町会費を管理費と共に徴収するには、注意が必要
 標準管理規約では、新しくマンションの居住者も「地域コミュニティー」に積極的に参加を勧めていますが、判例は管理費と共に町会費(自治会費)をとることはできないといっています。

{平成19年8月7日判決言渡:東京簡易裁判所:町内会費相当額を管理組合費に含めて徴収することを管理規約等で定めても、拘束力はないとされた事例。また平成17年04月26日 最高裁第三小法廷判決もある。 }

<参考>「標準管理規約(単棟型)」における修繕積立金の内容;(修繕積立金)

第28条 管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
   一  一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
   二  不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
   三  敷地及び共用部分等の変更
   四  建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査
   五  その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理

2. 前項にかかわらず、区分所有法第62条第1項の建替え決議(以下「建替え決議」という。)又は建替えに関する区分所有者全員の合意の後であっても、
マンションの建替えの円滑化等に関する法律(以下本項において「円滑化法」という。)第9条のマンション建替組合(以下「建替組合」という。)の設立の認可又は円滑化法第45条のマンション建替事業の認可までの間において、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、
その経費に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時に建替え不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積立金を取り崩すことができる。

3. 管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、修繕積立金をもってその償還に充てることができる。

4. 修繕積立金については、管理費とは区分して経理しなければならない

<参考>標準管理規約第28条関係コメント

@ 対象物件の経済的価値を適正に維持するためには、一定期間ごとに行う計画的な維持修繕工事が重要であるので、修繕積立金を必ず積み立てることとしたものである。

A 分譲会社が分譲時において将来の計画修繕に要する経費に充当していくため、一括して購入者より修繕積立基金として徴収している場合や、修繕時に、既存の修繕積立金の額が修繕費用に不足すること等から、一時負担金が区分所有者から徴収される場合があるが、これらについても修繕積立金として積み立てられ、区分経理されるべきものである。

B 円滑化法に基づく建替組合によるマンション建替事業における建替えまでのプロセスの概要は、円滑化法の制定を踏まえ作成された「マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル」(平成15年1月国土交通省公表)によれば、次のとおりである。
A.建替え決議までのプロセス
   (ア)準備段階:一部の区分所有者から建替えの発意がなされ、それに賛同する有志により、建替えを提起するための基礎的な検討が行われる段階であり、「管理組合として建替えの検討を行うことの合意を得ること」を目標とする。
   (イ)検討段階:管理組合として、修繕・改修との比較等による建替えの必要性、建替えの構想について検討する段階であり、「管理組合として、建替えを必要として計画することの合意を得ること」を目標とする。
   (ウ)計画段階:管理組合として、各区分所有者の合意形成を図りながら、建替えの計画を本格的に検討する段階であり、「建替え計画を策定するとともに、それを前提とした建替え決議を得ること」を目標とする。

B.建替え決議後のプロセス
   (ア)建替組合の設立段階:定款及び事業計画を定め、都道府県知事等の認可を受けて建替組合を設立する段階。
   (イ)権利変換段階:権利変換計画を策定し、同計画に関し都道府県知事等の認可を受け、権利変換を行う段階。
   (ウ)工事実施段階:建替え工事を施工し、工事完了時にマンション建替事業に係る清算を行う段階。
   (エ)再入居と新管理組合の設立段階:新マンションに入居し、新マンションの管理組合が発足する段階。

C Bのプロセスのうち、BのA(イ)及び(ウ)の段階においては、管理組合が建替えの検討のため、調査を実施する。調査の主な内容は、再建マンションの設計概要、マンションの取壊し及び再建マンションの建築に要する費用の概算額やその費用分担、再建マンションの区分所有権の帰属に関する事項等である。

D Bのプロセスのうち、BのB(ア)の段階においても、修繕積立金を取り崩すことのできる場合があることを定めたのが第2項である。
E Bのプロセスによらず、円滑化法第45条のマンション建替事業の認可に基づく建替え、又は区分所有者の全員合意に基づく任意の建替えを推進する場合であっても、必要に応じて、第1項及び第2項、又は第2項と同様の方法により、修繕積立金を取り崩すことは可能である。ただし、任意の組織に関しては、その設立時期について管理組合内で共通認識を得ておくことが必要である。

F 建替えに係る調査に必要な経費の支出は、各マンションの実態に応じて、管理費から支出する旨管理規約に規定することもできる。

★管理費・修繕積立金はだれが決めるのか
  新規に分譲されたマンションでも入居時において、管理費と修繕積立金や駐車場使用料などが既に決められています。
  一般に、管理費については、マンション分譲会社が管理委託会社に清掃・エレベーター保守など管理費の見積もりを出させ総額を把握し、各戸の専有部分の面積割合で按分する方法がとられています。
  一方、修繕積立金は、内容が将来に渡り不確かな要素が多いため、 概算で設定され、これも各戸の専有部分の面積で按分されます。

  共に、当初の管理費と修繕積立金の額は分譲会社が決めますが、暫定的な内容であるため、分譲後の会計(収支報告書)により、実際の数値での赤字・黒字を精査して、管理費・修繕積立金の精度を高める必要があります。
  管理費の方は現実的な数値があるので、極端な差異は生じないでしょうが、修繕積立金については、長期修繕計画を検討し金額の修正が必要となることがかなりあります。  

  これは、マンション分譲会社が販売時での必要経費を少なく見せる販売方法にも問題がありますが、分譲後は、区分所有者の責任で必要に応じ金額の変更を行います。

 ★参考までに...国土交通省の調査によると、(平成17年 303件)、修繕積立金の 月 徴収額 ¥9,826/月・戸、 専有面積当たり、 ¥131/月・u とのことです。

            また、平成21年に発表された、国土交通省の平成20年実施の「マンション総合調査」によると、

月:戸当たり

項目 平成15年 平成20年 増減
管理費 ;¥12,565 ¥15,848 +¥3,283
修繕積立金 ¥10,967 ¥11,877 +¥910

<参考>標準管理規約(単棟型) 61条:(管理費等の過不足)
第61条 収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度における管理費に充当する。

2. 管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して第25条第2項に定める管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を求めることができる。

★支払が遅れた時の債務(滞納管理費等)の時効期間 −5年で決着ー
 このように具体化された管理組合の債権に関し、その消滅時効期間について定期給付債権(民法第169条)に該当し5年間とする考えと、一般債権(民法第167条1項)に該当して10年間とする考えがありました。
しかし、現在では、最高裁の判決により、滞納管理費などの請求は5年の時効となっています。

定期給付債権とは、地代家賃や年金のように原則として毎月定期的に支払がなされる債権であり、怠られがちであると共に支払い証書が債務者の手元にないことが一般のため債務者を保護の目的で短期の消滅時効を認められたものです。

◎この点が論点となった事件の高裁判決では10年説が採られましたが、その上告審の最高裁判決では定期給付債権だとして5年説が採られ、5年で確定しました。(平成16年4月23日:最高裁)

★修繕積立金も5年の時効でいいのか?
  一応、最高裁の判決で、管理費等の消滅時効は、5年となりましたが、修繕積立金については、その性質が、一次的な修理においても徴収されることがあるなど定期金でないこともあるため、管理費とまとめて、5年の消滅時効にしていいかは、疑問があります。

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★債権(滞納管理費など)の回収方法

  一般には、電話や手紙、訪問などの督促を行います。これでも回収できないときは、少額訴訟制度(訴額60万円以下)や支払督促の制度(簡易裁判所書記官に申し立て)、通常の訴訟などの裁判での回収となります。

  また、滞納管理費には遅延損害金(民法第415条)や督促にかかった電話代、訴訟費用なども加算して滞納者に請求できます。

  遅延損害金の利率は、管理規約で特に定めが無いときは、法定利率の年5%を請求できますが、管理規約で多少多めに設定し滞納防止策とすることもできます。(参考:国税の滞納した場合;14.6%)

  ◎駐車場使用契約の解除も考えること。

   通常、管理費や修繕積立金と駐車場使用料も一括して、組合員の預金口座から管理組合の口座に振り替える収納方法をとっていますから、管理費などの滞納があると、駐車場を利用している場合は駐車場使用料も共に滞納になるケースが一般です。
   この場合、早期に駐車場使用契約も解除して、滞納金額が大きくならないようにします。

★回収の対応

  目安として、滞納期間が3ヶ月以内に、電話や対面、内容証明などの文章での督促を行い、これ以降は理事長の勧告・警告を行います。この間、状況を検討し、少額訴訟、支払督促制度など法的措置の行使を考えます。
  そして、滞納期間が6ヶ月になる前に、法的措置をとるのか、現在の方法で当分様子を見るのか、理事会での対応方針を固めるといいでしょう。

  ◎対面での督促は勇気がいる
   回収業務に直接タッチしていない、解説本の著者や弁護士は簡単に訪問して督促しなさいなんて、ほざくけど、対面での督促は、滞納者が暴力団関係などであることも多く、普通のマンションの管理組合の役員では簡単にはできません。
   暴力行為や脅迫的な言動も受けることもあります。
   このため、管理会社もできるだけ、訪問しての督促は避けたがります。
   滞納者としては、自分が滞納しているのは分かっているため、できるだけ督促者の言葉じりを捉えて、少しでも自分に有利な状態にもっていこうとします。
   対面での督促は、絶対一人では行わないでください。必ず、二人以上で対面し、記録を残してください。

  ◎督促の記録をとっておくこと
    滞納の当初は回収できると思っていますが、多くの滞納(平成15年で32%もある)は、請求すると払うというものの、実際は支払いがありません。
   将来の訴訟を見据え、戸別の督促記録簿を作り対応します。
   督促記録簿の内容としては、日時、電話・手紙・訪問の区別、督促の内容、相手の回答内容を記載しておきます。

★滞納者氏名の公表はできるか
  管理費・修繕積立金の滞納金は会計処理では「未収入金」として表されます。
  月次の会計処理により、滞納者氏名も当然に把握され、督促もされます。
  滞納は、多くの場合、理事会での対応となりますが、総会での会計報告事項ともなります。
  この場合、一部の管理規約では、滞納者氏名の公表を認めている規定もありますが、プライバシー保護の観点から、総会での決算報告では氏名の公表は避ける方がいいと思います。

<参考>標準管理規約(単棟型) 60条:(管理費等の徴収)
第60条 管理組合は、第25条に定める管理費等及び第29条に定める使用料について、組合員が各自開設する預金口座から自動振替の方法により第62条に定める口座に受け入れることとし、当月分は前月の○日までに一括して徴収する。ただし、臨時に要する費用として特別に徴収する場合には、別に定めるところによる。

2. 組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、
年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、
その組合員に対して請求することができる。

3. 理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。

4. 第2項に基づき請求した遅延損害金、弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用に相当する収納金は、第27条に定める費用に充当する。

5. 組合員は、納付した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない。

第60条関係コメント
@ 管理費等に関し、組合員が各自開設する預金口座から自動振替の方法により管理組合の口座に受け入れる旨を規定する第1項の規定は、原則方式又は支払一任代行方式(いずれも、集金代行会社委託等を除く。)を前提とした規定であり、集金代行会社委託等による原則方式又は支払一任代行方式や、収納代行方式をとる場合にはその実状にあった規定とする必要がある。

A 督促及び徴収に要する費用とは、次のような費用である。
   ア)配達証明付内容証明郵便による督促は、郵便代の実費及び事務手数料
   イ)支払督促申立その他の法的措置については、それに伴う印紙代、予納切手代、その他の実費
   ウ)その他督促及び徴収に要した費用


★標準管理規約の問題点

{設問} 平成19年 管理業務主任者 試験 「問29」(似た例は、平成20年 管理業務主任者 試験 「問10」など。

 あるマンションの管理規約に関する次の記述は適切か。

* 管理費滞納者に対し、遅延損害金のほか、違約金としての弁護士費用、督促及び徴収の諸費用を加算して請求することができる旨の定めは有効である。

★この設問での問題点:標準管理規約60条2項での管理費等の未納者に対する費用請求に弁護士費用を含めていいか?

 本来、管理費滞納は、債務不履行であるので、債権者は債務者に対して損害賠償が請求できる。
 
民法第415条「(債務不履行による損害賠償)
「 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」
 そして、 その損害賠償の範囲は
民法第416条1項 (損害賠償の範囲)
「 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。」
  とあり、
 「通常生ずべき損害」には、遅延損害金は入るが、一般には損害賠償責任を生じる原因となる事実と相当因果関係にあるものに限られ、弁護士費用や回収費用などは入らないと解されている。
 現行制度上、民事事件では、弁護士に依頼することは不要であり、また、訴訟当事者がその依頼した弁護士に支払う弁護士報酬は、原則として訴訟費用に含まれず、訴訟の勝敗に関わりなく、各自負担とされている。ただ、判例により、不法な訴えに応ずるため専門知識を有する弁護士に委任し、報酬を支払った場合、および不法行為に基づく損害賠償請求権の行使のため、弁護士に委任して訴えを提起することを余儀なくされた場合には、勝訴当事者が支払った弁護士報酬は、「相当と認められる額の範囲」で、損害の一部として相手方に請求できるとされている。
 これを、金銭債務の争いまでに広げて含めることには、学説でも争いがあり、決着していない。

   しかし、標準管理規約(単棟型)60条2項
 「  組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。」
 と定めているので、一応、公序良俗に反しない範囲で、規約の自治性から適切ということにする。


★滞納している室が競売になることが多い

  多くの場合、マンションの購入に際し、銀行などから融資(金銭消費貸借契約)をうけ、抵当権が設定されています。
  この場合、融資金の返済ができないと競売になります。そして、競売で落とした人は「特定承継人」となるため、この「特定承継人」に対して滞納管理費等が請求できます。(区分所有法第8条
  しかし、現実には、回収は殆ど出来ません。 
  そこで、債権の放棄も検討します。

  債権の放棄は、「不動産登記簿」も取り寄せて、誰が区分所有者か抵当はどうなっているかなども検討します。

★債権の放棄

  様々な回収手段を使っても、滞納者に財産が無ければ実際の回収はできないことが数多くあります。
  また、裁判での弁護士費用などの支出が回収に見合ったものであるかの検討も必要です。
  それらを検討し、債権の放棄となることもありますが、債権放棄の手続きは、法人でない管理組合と法人である管理組合とでは異なります。

  1.法人でない管理組合の債権放棄手続き
    滞納管理費などの債権は区分所有者全員の債権であるため、放棄には「区分所有者全員の合意」が必要で、多数決の決議ではできないと解されています。

  2.管理組合法人の債権放棄手続き
     滞納管理費などの債権処理は管理組合法人の事務処理に関するものと解され、区分所有法第52条により、集会の普通決議(過半数)で放棄できます。

<参照>区分所有法第52条:(事務の執行)
1項  管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によつて行う。ただし、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び第五十七条第二項に規定する事項を除いて、規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。
2項  前項の規定にかかわらず、保存行為は、理事が決することができる。


★滞納者の水道、電気等を止めていいか?
  いくら督促しても、支払のない場合には、つい、滞納者の室の水道やガス、電気の供給を停止したくなりますが、これはしてはいけません。
 生活上必要不可欠なものを奪った「権利の濫用の不法行為」として、返って滞納者から訴えられます。
 気を付けてください。

***********************************************************

★共用部分から生じる利益
  共用部分の使用にから生じる利益については区分所有法第13条で民法で規定される「持分」ではなく「用方に従い平等に使用できること」になっていますから、ここでの利益とは使用以外から発生する駐車場使用料・ベランダなど各種専用使用料、状況によっては、電柱や看板の設置料等の共用部分の使用の対価が主なものでしょう。
 勿論共用部分や附属施設・設備の売却代金や、地方自治体からの資源ゴミの回収収益等が発生すればそれも含みます。

★利益の帰属先
  これらは可分債権である金銭債権となりますので第19条をストレートに適用すれば、持分に応じた債権を各区分所有者が取得するようにも思えますが、これらの実態が社団(団体若しくは管理組合)財産の使用の対価等である以上、この財産はまず社団(団体若しくは管理組合)に帰属しますので(区分所有者単位で表現すれば総有的帰属と合有的帰属となります。)、各区分所有者への配分も組合財産の処分の一環として総会決議が必要であることは上記の組合財産の放棄の場合と同様です。
 従って、この決議無しには各区分所有者は当然には自己の収益分を管理組合に請求する権利はありません。
その意味で、利益の収取の場合にも第19条は総会決議で具体的な債権にならない限り抽象的な権利にとどまります。


{設問-1}Aは、B法人所有の中古マンションの1室を購入したが、その際、Bの役員C(マンション管理担当)から管理費等の滞納の事実について説明されていなかった。このため、Aが管理組合Dから管理費等の滞納分を請求されることになった場合に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aが滞納管理費等の全額をDに支払った場合は、Aは、その全額について、Bに対して損害賠償を請求することができる。

答え: 正しい。滞納の責任は本来は滞納者のBにあり、区分所有法第8条「前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる」規定により、特定承継人として支払ったAはBに対して保証債務の履行による償還(民法第459条)ができ、また無瑕疵の物件を移転する義務に反した債務不履行やAに損害を与えた不法行為としての損害賠償請求もできる。

2 Bの管理費等の滞納の事実を知らないことについてAに過失がない場合、Aは、Dに対する債務を免れる。

答え:間違いである。 区分所有法第8条の責任は無過失の法定責任のため、Aの過失の有無を問わず責任を免れない。

3 Cの着服によりBの管理費等の滞納が生じたものであった場合は、Aは、Bに対して損害賠償を請求することができない。

答え:間違いである。 Cが着服したことが原因でも管理組合にBが滞納した以上、Bは肩代わりしたAに対する責任を免れない。

4 DのAに対する滞納管理費等に係る債権の消滅時効期間は、Aが購入してから5年間である。

答え:間違いである。 滞納管理費の消滅時効はBの弁済期から(民法第166条1項「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する」参照)始まり、民法第169条「年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する」 により 5年で、Aの購入日は起算日とはならず、起算日は管理費の支払時期である。

正解:1


{設問-2}マンションの滞納管理費を請求するために、民事訴訟法(平成8年法律第109号)に定められている「少額訴訟」を利用する場合に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 少額訴訟を提起する場合は、必ず簡易裁判所の調停を経なければならない。

答え:間違いである。 民事訴訟法第368条(少額訴訟の要件等)の規定
    「簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数(10回)を超えてこれを求めることができない。
   2  少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
   3  前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。」
    には、調停が必要(調停前置)とは記載がない。

2 少額訴訟を提起する場合、原告は管轄の地方裁判所又は簡易裁判所のいずれかを選択することができる。

答え:間違いである。 民事訴訟法368条1項「簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。」の規定により、簡易裁判所以外ではできない(専属管轄)。

3 少額訴訟においては、被告は反訴を提起することができない。

答え: 正しい。 民事訴訟法第369条「少額訴訟においては、反訴を提起することができない」 の規定どおり。

4 少額訴訟の審理においては、訴訟代理人が選任されている場合でも必ず当事者本人が裁判所に出頭しなければならない。

答え:間違いである。民事訴訟法第六編 少額訴訟に関する特則にそのような規定は無い。
    民事訴訟では、訴訟代理人を選任でき(民事訴訟法第54条1項:法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができる。 )、少額訴訟審理でも、訴訟代理人を選任したときは、その訴訟代理人が当事者の代理として裁判所に出頭すればいい(民事訴訟法第139条:訴えの提起があったときは、裁判長は、口頭弁論の期日を指定し、当事者を呼び出さなければならない。 )

正解:3

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(管理所有者の権限)
第二十条
1項 第十一条第二項の規定により規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、区分所有者全員(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負う。この場合には、それらの区分所有者に対し、相当な管理費用を請求することができる。
過去出題 マンション管理士 H20年、
管理業務主任者 H18年、

*第11条第2項の規定...前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。

★管理所有とは
  建物の共用部分は区分所有者全員の共有、また一部共用部分はそれを利用する一部区分所有者の共有となっていますが、規約で特定の区分所有者だけを建物の共用部分の所有者にでき(第11条2項)、また第25条により選任された管理者(区分所有者でも第三者でもいい)も規約により共用部分の所有者になることがあります。(第27条1項)。

 このときの共用部分の所有形態を「管理所有」といいその所有者を「管理所有者」とよびます。

★この規定も、なぜこんな例外をもってくるのか、当初は分かり難い。
 いままでの、マンションの管理が杜撰だったため分譲時に分譲会社が勝手に管理人室などを所有している実態の、整理規定と考えるといいかも。

★管理所有の立法趣旨とは
 管理所有制度の立法趣旨に関しては、立法担当者の説明によれば(新しいマンション法)、区分所有法制定当時に共用部分を実際に管理する者の所有にしているケースがあって、その実態を認めるために規定したものとのことであり、このように管理対象が単独所有であればその委託契約もその者が単独で可能であり管理の便宜に資する、というものです。

 たとえば、5人の区分所有者がいて、その内の1人を規約で共用部分の所有者に定める場合です。

★管理所有の法的性質
 現在、管理所有方式はあまり見られませんが、一応の検討をしてみますと、まず、管理所有者は規約の設定又は変更により共用部分の所有権移転を受け所有者となり、第20条1項により区分所有者全員(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負うとされていますから、全員のための管理義務が付着した特殊な所有権を取得するに過ぎないこととなります。

 元来、民法で定める所有権は他からの制約や特別の負担なしに、自由に物を支配でき処分できる権利ですから、このような制約を伴った所有権の移転というのは通常のものとはいえません。

ところが、区分所有法における、このような制限が付いている権利移転とは、まさに、信託法が「本法に於て信託と称するは財産権の移転の他の処分を為し他人をして一定の目的に従い財産の管理又は処分を為さしむるを謂う」(信託法第1条)ということですから、共用部分の管理を目的としてその所有権を移転するという管理所有が信託の一種であることを示しています。

これは即ち、区分所有法での管理所有が信託的譲渡といわれる所以です。

なお、信託的譲渡とは、特別の意味のある表現ではなく、この信託における譲渡行為ないし単純な譲渡ではなく信託上の制約のある譲渡行為という程度の意味合いです。  

<参照> 第11条2項(共用部分の共有関係):
 2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。

★規約があれば、建物の共用部分(管理室など)でも特定の人や管理者(第27条1項)の単独所有にできる。

   この方が共有よりも単独で管理ができるので便利。

   でも所有は名義だけで、あくまでも他の区分所有者たちの共有下にあると考えていい。

   管理は「信託」に近く管理の義務はあるが、管理にかかる金は、区分所有者に請求できる。

★また、管理者になっているなら区分所有者でなくてもいい(外部の分譲会社など)が、他の身分の人が共用部分を所有するなら、権利関係が複雑になるので、必ず区分所有者の中から指定されること。(外部の人には認めない。)

    ◎管理所有(第27条)は、共用部分(建物。法定共用部分と規約共用部分を含む)にだけ認められる。敷地(土地)には認められていない。

<参照>第27条1項(管理所有):
  管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。

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第二十条
2項  前項の共用部分の所有者は、第十七条第一項に規定する共用部分の変更をすることができない。
過去出題 マンション管理士 H20年、H15年、
管理業務主任者 H18年、

共用部分の変更はできない...規約で共用部分(管理室など)の所有者(管理所有者)となっても、「A.保存行為」と「B.狭義の管理」はできるが、その室の「C.重大変更」は出来ない

       集会の決議(これも第17条に従うと考えていいのか?)がいる。

<参照>第17条1項(共用部分の変更)
 第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

 ★管理所有者は、管理義務を負うが、その共用部分の重大変更はできない。  

★区分所有法第17条を中心に、共用部分の管理の方法を、管理所有者とこれから出てくる管理者、集会の決議との関係でまとめました。

◎共用部分の管理の方法  (○可能、X不可、*規約可)
行為 集会  各区分所有者  管理所有者  管理者 
保存行為  普通決議
管理行為  普通決議 X(*) X(*)
変更行為 軽微   普通決議 X(*) X(*)
重大  特別決議 X X


{設問}次の記述は正しいか。 

* 規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、規約で定めれば、その形状又効用の著しい変更を伴う共用部分の変更行為をすることができる。

答え:間違いである。区分所有法第20条2項によれば、規約で定めても共用部分の所有者と定められた区分所有者は、同法第17条1項で定める「その形状又効用の著しい変更を伴う共用部分の変更行為をすることはできない」(重大変更)。

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(共用部分に関する規定の準用)
第二十一条
 建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。
過去出題 マンション管理士 H16年、
管理業務主任者 未記入

<参照>
   第17条(共用部分=重大変更 の変更)、
   第18条(共用部分の管理)、
   第19条(共用部分の負担及び利益収取)

★準用の対象
 第21条は、敷地と共用部分以外の附属施設について第17条の「共用部分の変更」、第18条の「共用部分の管理」、第19条の「共用部分の負担及び利益収取」の規定がそれぞれ準用される旨の規定です。

 区分所有法では、共用部分として専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第4条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物を定義することにより(第2条4号)、建物内の設備関係も含めて共用部分に網羅し、民法の特則としての取扱いを第17条から第19条に規定しておりますから、管理組合や区分所有者間において残る問題は、附属施設と敷地及び債権等の財産関係となります。

★敷地の場合
    今まで述べたように、建物の共用部分は
民法の共有の原則では、全員の合意を必要とするなど共同で管理・変更することが現実的に困難であることから、区分所有法で第17条以下の特則を置き、多数決を取り入れるなど、区分所有者団体の現実的な運営を可能とする手段を講じています。
 これは、マンションの敷地にも当てはまります。

 通常、土地(敷地)の権利は、建物の権利とは別個の区分所有者個人の財産であり、その保存・管理・変更は特段の定めのない限り民法の適用を受けます。
しかし、マンションの敷地の権利(所有権・地上権・賃借権)は、区分所有者の共有(または準共有)が通常です。
それならば、敷地の変更・管理・負担も共用部分と同じように、集会での多数決の原理にしようと定めたのがこの特則です。

★附属施設の場合
  そこで、後に残るのは附属施設と債権関係ですが、このうち附属施設はその存在意義は共用部分と同様に区分所有者全員の便益に供されることにあるのですから、共有の場合には共有関係に伴う管理や処分・変更行為の実施について他の共有者間との団体的共同が必要なことは共用部分の場合と同様です。

 従って、その場合の多数決要件等も、民法のように単に持分で且つ変更等に全員の合意が必要とすることは実態に合うとはいえませんから、附属施設については共用部分の場合と同様の取扱いをすべき必要性と合理性が認められます。

このように附属施設については共用部分の取扱いと同様に取り扱うのが妥当であり、仮にこの規定がなくとも民法の規定を適用するのではなく、区分所有法の第17条から第19条の規定を類推適用すべきですから、このことを正面から認めたのが本条の準用の趣旨といえます。


 この第21条の準用で、建物の敷地及び附属の施設についても 損害保険契約を締結することは、「その管理に関する事項」みなされますから(第18条4項参照)、集会の決議で、その保険契約の締結が決定され、管理者が、区分所有者全員を代理して契約の締結ができます。

★債権の場合はどうなる?
 最後の債権関係に関しては、第21条に規定がありません。
区分所有者の間に第21条に定める物的権利関係以外に債権的権利関係が生じることは明らかですから、何らかの規定を置くべきであるとも思います。
しかし、債権の場合はその発生原因が様々であり、そのためもあってか団体ないし全員に総体的に帰属するものから個人に帰属するものまで様々のものが予想されます。

 例えば、管理費・積立金や各種使用料等の組合対個人の関係で発生する債権は団体に帰属し、団体的処理に適するものといえますが、個人財産である敷地の収用対価や補償料は個人に、また共有の共用部分や付属施設は団体に帰属するともいえる半面専有部分との一体性の原則にもあるように個人財産としての性格もあり、こと交換価値という面では個人財産性が勝るというべきでしょうから、共用部分の瑕疵や損害による交換価値の減少補償の賠償金は個人に帰属する債権といえます。

 このように、債権関係に関するこの法の沈黙は単なる規定の失念という訳ではなくケースバイケースの処理が必要な事項にため一律的な規定が馴染まないとして解釈に任せたものと考えるべきでしょう。
従って、区分所有法に規定がないからすべて
法の原則によるという考え方には賛成できません。

 この債権関係の帰属の違いが現実の取扱いにどういう違いをもたらすかといいますと、組合ないし区分所有者総体に帰属する場合は管理者ないし区分所有者の代表者が当事者適格者として管理組合ないし区分所有者を代表して訴訟することになり、個人に帰属する場合は当該個人が自己の権利につき当事者適格者として訴訟することになります。

  ★敷地や附属施設(倉庫、駐車施設など)が共有なら、変更や管理では集会の決議や4分の3以上の決議がいる。

   また、持分に応じて負担・利益を得る。


{設問-1}効用の著しい変更を伴う区分所有者の共有に属する建物の敷地の変更は、規約で定めれば、規約により設置された理事会で決議するものとすることができるか。

答え:区分所有法17条1項によれば、共用部分の著しい変更は集会の特別決議が必要で、この規定は同法第21条で敷地に準用されているので、規約での変更はできない。


{設問-2}民法及び区分所有法の規定によれば、区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数による集会の決議によって行うことができないものはどれか。ただし、いずれの場合も専有部分の使用に特別の影響を及ぼすことはないものとする。

1.区分所有者全員が共有するマンションの敷地内に機械式駐車場を新設すること。

答え:3/4特別決議で行うことができる。 「区分所有者全員が共有するマンションの敷地内に機械式駐車場を新設すること」は、建物の敷地の重大変更にあたり、区分所有法第21条により準用される区分所有法第17条が適用され、「区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数による集会の決議」により行うことができる。

2.区分所有者全員が共有するマンションの敷地内の別棟集会所を除却すること。

答え:3/4特別決議で行うことができる。 まず、区分所有法第17条の共用部分の変更は、「共用部分の用途を確定的に変えること」と解されている。例えば、共用部分を専有部分に変更することは「共用関係の廃止」であり、「共用部分の変更」ではないと考えられている。
区分所有法には「共用関係の廃止」に関する規定はないため、「共用関係の廃止」は区分所有法の適用はなく、民法の共有に基づき共有者全員の合意が必要である。
 そこで、設問の「区分所有者全員が共有するマンションの敷地内の別棟集会所を除却すること」は、区分所有法第21条の「附属建物の変更」に該当するか否かが問題となる。
別棟集会所を除却は、規約共用部分たる附属建物から単なる敷地上の空間(共用部分)に変更することであると考えられる。規約共用部分を専有部分に変えるような「共用関係の廃止」ではなく「附属建物の変更」であると考えられるから、区分所有法第21条、及びこれに準用される区分所有法第17条の「共用部分の(重大)変更」の規定が適用されると考えられる。したがって、「区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数による集会の決議」により行うことができる。

3.区分所有者全員が共有するマンションの敷地の一部を分筆の上、売却すること。

答え:3/4特別決議により行うことはできない。 敷地共有持分の割合は、マンション分譲時等の売買契約により定められるものであるとされている。
すなわち、管理組合の決議により定められる規約、あるいは集会の決議等により、団体的拘束に服させるものではないと解されている。
したがって、設問の「区分所有者全員が共有するマンションの敷地の一部を分筆の上、売却すること」は、区分所有法の適用がなく、民法の共有に基づき、共有者全員の合意が必要である。

4.区分所有者全員が共有するマンションの階段室をエレベーター室に改造すること。

答え:3/4特別決議で行うことができる。 「区分所有者全員が共有するマンションの階段室をエレベーター室に改造すること」は、共用部分の著しい変更にあたり、区分所有法第17条が適用され、「区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数による集会の決議」により行うことができる。

正解:3

ページ終わり

謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。

最終更新日:
2010年6月2日:第19条などに追記
2010年2月2日:平成20年のマンション総合調査の管理費・修繕積立金を追加
2010年1月23日:H21年の出題年を記入
2009年11月5日:著しい変更で、耐震加筆
2009年10月18日:ちょろちょろと
2009年6月18日

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