作:◆5KqBC89beU
風見千里と蒼い殺戮者は、B-7の地下で会話していた。
「はい、アンタの木刀。私の銃は弾切れだから、ハッタリくらいにしか使えないわ。
甲斐と再戦することになったら、またアンタに助けてもらうしかないでしょうね」
「了解した」
「さっきは気づかなかったけど、地下地図の描かれたプレートが階段の上にあったわ。
外に向かって開いてた扉の裏側に。地下から地上へ出ただけじゃ発見できない位置に
あるあたり、設置した連中の性根はひねくれまくってるわね」
「そうか」
「地下地図によれば、そっちの通路は禁止エリアで行き止まりになってた。休憩したら
地底湖に――甲斐の逃げてった方に行くしかないみたい。いつまでもここにいたら、
この場所で食事してた誰かが戻ってくるかもしれないし。相手が平和主義者だったら
いいけど、狭い空間でも戦える殺人者とご対面、なんてことになったら厄介だわ」
「異議はない。後で地下地図の説明を頼む。だが、まずは濡れた服を脱水するべきだ」
「はいはい。……えーと、服脱いでしぼるから、ちょっとそっち向いててくれる?」
「こちら側の通路が禁止エリアで塞がれているなら、こちら側から襲撃される危険性は
ゼロに近いが」
「いや、だから……あー、私がそっちに行くから、アンタは逆方向を見張ってなさい」
溜息をつく風見を見て、蒼い殺戮者は培養脳に疑問符を浮かべた。
甲斐氷太は、地下通路を西へ移動していた。
それなりに走った後は、デイパックから懐中電灯を取り出し、なるべく足元だけを
照らすようにして進んでいる。
通路の先で殺人者が銃でも構えて待っていれば、おそらく一瞬で殺される。しかし
後戻りはできない。傷の痛みを忘れるため、カプセルを口に放り込み、噛み砕く。
(風見とあの蒼いデカブツは、俺とは逆の方向に進むか?)
B-7の地下で、敵の背後にも通路が延びていたことを、甲斐は確認している。
だが甲斐は、B-7から南へ向かう通路が禁止エリアに塞がれていると知らない。
(蒼いデカブツが地下から出てこなかったのは、出入口が狭くて出られなかったから
だろうが……俺が待ち伏せてる可能性を考えりゃあ、こっちには来ねえか? いや、
俺を殺すために、あえてこっちに向かってくるか? 広い方が戦いやすいのは、蒼い
デカブツも同じだろうしな)
地下通路が途切れた。広大な空洞に水の匂いが漂っている。地底湖だ。
いったん足を止め、デイパックの中からカプセルを取り出し、ポケットに詰めながら
甲斐は思案する。とりあえず懐中電灯のスイッチは切った。
選択肢は二つ。ここで殺しそこなった敵を待つか、地上へ向かって他の敵を探すか。
待ち伏せるなら現在地が最適だ。ここならば悪魔を召喚して戦えるだろう。
地上に出るなら現時点が最適だ。まだ雨が参加者を足止めしているだろう。
(さーて、どうすっか……?)
他の参加者がここに現れるという事態もありえる。戦闘を避ける理由はない。
また一つカプセルを口に入れ、甲斐は狂人の笑みを浮かべた。
三塚井ドクロは、F-1の地下にある格納庫にいた。
エスカリボルグを探してここまで来たが、トゲ付き金属バットなどここにはない。
ここにあるのは、大きな島の模型と、デイパックと、血溜まりと、青年の死体だけ。
「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪」
天使の力が放出され、燐光の如く煌めきながらカイルロッドの死体に降り注ぐ。
<ぼふん!>
青年の死体が謎の煙に包まれ、しかし彼は生き返らなかった。煙が晴れた後には、
何故か馬の死体がある。褐色の毛皮と白銀のたてがみが血に染まっていた。
「やっぱりエスカリボルグじゃないと上手くいかないよぅ……」
がっかりした様子で、ドクロちゃんは体育座りをし、床に『の』の字を書き始めた。
【B-7/地下通路/1日目・15:15頃】
『打撃少女と自動歩兵』
【風見千里】
[状態]:全身が冷えており疲労困憊(休養の必要あり)。右足に切り傷。あちこちに打撲。
表面上は問題ないが精神的に傷がある恐れあり。濡れ鼠。
[装備]:グロック19(残弾0・予備マガジン無し)、カプセル(ポケットに四錠)、
頑丈な腕時計、クロスのペンダント。
[道具]:支給品一式、缶詰四個、ロープ、救急箱、朝食入りのタッパー、弾薬セット。
[思考]:眠い。BBと協力する。地下を探索。仲間と合流。海野千絵に接触。とりあえずシバく対象が欲しい。
【蒼い殺戮者(ブルーブレイカー)】
[状態]:少々の弾痕はあるが、異常なし。
[装備]:梳牙
[道具]:無し(地図、名簿は記録装置にデータ保存)
[思考]:休憩を提案。風見と協力。しずく・火乃香・パイフウを捜索。
脱出のために必要な行動は全て行う心積もり。
[チーム方針]:しばらく休憩してから地底湖へ移動する。
【C-3/地底湖のそば/1日目・16:00頃】
【甲斐氷太】
[状態]:左肩から出血(銃弾がかすった傷あり)。腹に鈍痛。あちこちに打撲。カプセルの効果でややハイ。
自暴自棄。濡れ鼠。
[装備]:カプセル(ポケットに十数錠)、懐中電灯
[道具]:煙草(残り14本)、カプセル(大量)、支給品一式
[思考]:今からどう行動する? 次に会ったら必ず風見とBBを殺す。
とりあえずカプセルが尽きるか堕落(クラッシュ)するまで、目についた参加者と戦い続ける。
[備考]:『物語』を聞いています。悪魔の制限に気づいています。
現在の判断はトリップにより思考力が鈍磨した状態でのものです。
【F-1/格納庫/1日目・15:00頃】
【ドクロちゃん】
[状態]:左足腱は歩けるまでに回復。右手はまだ使えません。
[装備]:愚神礼賛(シームレスパイアス)
[道具]:無し
[思考]:エスカリボルグを探さなきゃ!
※カイルロッドの死体が馬の死体に変化しました。
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