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第100話:すれ違い

作:◆NULLPOBEd.

廊下の窓から降りた先――――お城の庭園で坂井悠二は抱きかかえられていた。
 あのディートリッヒの話を聞いて悠二が取った行動は狙撃銃PSG-1の最優先の確保だった。
 自分を守る武器がなければ生き残れない。なんせ、自分は無力であると自覚しているのだから。
 悠二は自分の力を見極めた上で、狙撃銃PSG-1を取りに最上階である3階へ向かった。
 だが3階に辿り着いたとき、叫びが城に轟いた。
「あー、名前なんだっけ?…そうそう、坂井ぃぃぃ!どこに居るかはしらねぇが敵襲だ!
 とりあえず逃げるぞ!襲われる前にここから出ろ!紅い髪の女だ!『死色』じゃぁねぇけどな。
 ぎゃははははは!」
 紅い髪の女の敵襲――――その言葉に急いで元の部屋へと向かう。
 誰も、いなかった。
 何故か大穴が開いていて、悠二がどうたらという声が聞こえたが……悠二にはそれをシャナの声だと判断できなかった。
 城が思ったより狭いのか、声が反響して声色が変わっていたのも一つの理由だろう。
 本人達は知る由はないが、それは長門がシェルターを作る為に色々細工していたのが災いした。
 更に襲撃と言う言葉。シャナはフレイムヘイズだ。
 フレイムヘイズとして生き残る為の戦いはするかもしれないが、決して殺しはしないと悠二は思っていた。
 いや、思いたかったのだ。
 最初に会った頃は人間をなんとも思っていなかったが、悠二の母親や友人と出会いそれも改善されたと思っている。
 だから、問答無用で敵襲を掛けてくる女がシャナとは結びつかなかった。
 すぐに狙撃銃PSG-1を手にとり、一階へと駆け下りていく。
 しかし一階の階段のすぐ手前で悠二は一時停止する。一階の部屋には駆け回る音が響いていた。
(襲撃者が探しているんだ……恐らく手薄な僕を……!!)


 駆け回る音が最も正面の出入り口から離れたときを狙って、悠二は残る段差と部屋を一気に走った。
 襲撃者もその音に気付いたのか、こっちの方へと駆けてくるのが分かった。
 悠二の仲間の二人、長門と出夢が城門で立っているのが分かった。
 城門を閉じることで襲撃者との差を広げようという考えだろうか。
 しかし悠二は既に知っている。それには致命的なミスがあることを。
(早くあの二人に知らせないと)
「早く逃げるんだ! その門は――――閉じれない!」
 襲撃者が発砲してくる様子はない。武器は飛び道具ではないらしい。
 だから追いつかれさえしなければいい。
 なのに、二人は城門から動こうとしない。
 もう少しで二人に追いつく。再度悠二は忠告した。
「その門は――――」
「待って、悠―――」
 悠二と襲撃者、シャナの声は、遮られた。
 城門を潜って外に逃げた瞬間、城門は『閉ざされたのだ』。
 あの大きな城門を閉めたのは出夢だった。
 きっと普通の人間じゃないんだろうな、なんて失礼なことを思いながら悠二は長門に尋ねた。
「あの門、動かないように固定されていたようだけど……どうやって?」
「城門を少々修正した」
 ただシンプルに、そして簡単そうに言ってくれる。
「って、早く逃げないと」
「城門をもう一度改変する。少し重くすることぐらいしか今はできないけど時間は稼げる」
 そう長門は呟く。長門と会話しているうちに出夢もこちらへとやって来たようだ。
 悠二は最後に聞こえた声に既視感を覚えたが気にしないまま、3人は城をすぐさま離れた。


【チーム・殺し屋と人形達】(匂宮出夢/長門有希/坂井悠二)
【残り98人】【G-4/城の外/03:17】

【長門有希】
[状態]:かなり疲労。
[装備]:ライター
[道具]:デイバック一式。
[思考]:情報収集/ハルヒ・キョンの安全確保

【匂宮出夢】
[状態]:健康。
[装備]:???
[道具]:デイバック一式。
[思考]:生き残る。

【坂井悠二】
[状態]:健康。
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック一式。
[思考]:襲撃者の声に既視感。シャナの捜索。


【シャナ】
[状態]:傷は少し癒えてきたし、悠二の心配で気にしていない。
[装備]:刀(なまくら)
[道具]:デイバック一式。
[思考]:悠二が近くにいる!?

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