remove
powerd by nog twitter

第090話:みなものむこうがわ

作:◆xSp2cIn2/A

「迷った……」
 ぼくはこれで25回目のつぶやきを繰り返した。
「それにしてもコンパスすらないってのは厳しいな」
ぼくはもと来た方向とおぼしきところへ歩を進めた。

 あの女の人との戦闘のあと、茂みにダナティアさんと隠れていたのだが、
人間として当然の生理現象である、尿意をもよおしたぼくは、
付いて行くと言ったダナティアさんの申し出を当然のように丁重に拒否して、
いわゆる『立ちション』をするべくさらに奥の茂みに分け入っていったのは良かったのだが。
「あそこで崖に落ちるか?普通」
そう、ちょうどいい場所を探しているうちに崖から落下。元の場所に戻ろうとして……
「今に至るというわけだ。ったくなんて戯言だ」
ぼくは誰ともなしにつぶやく。
「でも、案外これでよかったのかもしれないな」
 そう、僕の周りでは何人もの人間が死ぬ。
 僕の周りでは幾つもの計画が狂う。
 子荻ちゃんだって
 姫ちゃんだって
 朝比奈さんだって…そうだった。
 ダナティアさんだって、きっとそうなるに違いない。
 僕の影響を受けないのはきっと、
 もうすでに壊れてしまっている青色のサヴァンか、
 人類最強であるあの請負人か、
 それか――ぼくと全く一緒の人間失格
「零崎人識か――傑作だ」


 そういえば、零崎はこのゲームに参加しているのだろうか?
ダナティアさんは名簿があると言っていたが、まだ僕は見ていない。
「零崎ねぇ……そもそもあいつは生死さえ不明だからな」
もし参加していたらあいつはこのゲームに乗るだろうか?
乗るかな?………いや、くだらねぇなどと言って乗らないだろう。
「人は殺すだろうけどな」
いくらか歩いたとき、唐突に――
「動くな。抵抗しなければ危害は与えない」
ナイフを突きつけられた。もちろん、首筋にだ。
「あぁ、誰かにつけられてると思ったら女の子か」
「しゃべるな。これから幾つか質問をするからそれに答えろ」
やれやれ、どうやらかなり強引な子のようだ。
「その前に――」
挨拶ぐらいはさせてくれ
ぼくは言った。
「哀川さんに追われて良く生きてたな『人間失格』」
返事はすぐそばの木から返ってきた。
「全くだぜ、死ぬかと思ったよ『欠陥製品』」
これが二回目の、
『人間失格』と『欠陥製品』の邂逅だった。

【残り 98人】

【F−4/森の中/1日目・03:40】
【いーちゃん(082)】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: 誰ともかかわらないように気をつけよう。せめて好きにならないくらいには

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:一人ずつ捕まえて協力してくれそうな人を探す

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁
[道具]:デイバッグ(支給品一式)サバイバルナイフ
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。 いーちゃんと話しがしてみたい……かも

←BACK 目次へ (詳細版) NEXT→
第089話 第090話 第091話
第060話 霧間凪 第096話
第075話 いーちゃん 第096話
第060話 零崎人識 第096話