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第096話:似てる二人と似てる人

作:◆cCdWxdhReU

「零崎、おまえもこのゲームに参加してるとはな」
「かはは、なんだよおまえ誰が参加してるって知らなかったのか? 相変わらずぼけてんなおまえ」
そう言って人間失格は笑った。
「おまえも知らなかっただろう零崎、人のことが言えるか」
そう言ったのは黒髪の長髪の背の高いキリっとした美人の女子高生だった。
そう女子高生である。女子高生。
僕の知っている知人の範囲で女子高生で存命なのはもう一人としていない。
朝比奈さんも含めてだ。
そして生前のその知人たちは、
一人は見た目小学生にしか見えないが一度戦闘になれば鬼と化す、ジグザグ、紫木一

姫、姫ちゃん。
一人は見た目はちょっとイっちゃったファッションセンスの女の子だがやっぱり中身

もネジが一本どころかネジを使ってないって感じでありながら白兵戦では目の前の人

間失格程ではないが、
それに近いナイフ捌きを見せた西条玉藻ちゃん。
そして最後の一人、日本刀の先端の様な魅惑的な雰囲気の少女、
しかしてその実態は、全ての人を利用し、騙し、騙り、状況全てを彼女の掌の上で操る。
策士。萩原子荻ちゃん。
そんな3人の女子高生は、自分に言う資格はあまりないかもしれないが、
いずれも美少女だとしてもみな特殊、有体に言えば変という言葉が合う。
だがどうだろう、目の前にいるのは女子高生、普通の女子高生だ。
首吊り学園なんて万国ビックリショーもビックリの学校の生徒ではないのです。
さすがにこの戯言使いもDAIKOUHUNですよ。
「えーと君は……?」
そのモデルのような美人女子高生に聞いてみる。


「俺は霧間凪だ。わけあってこの『人間失格』と行動をともにさせてもらっている。

『欠陥製品』くん」
その整った顔についた唇から放たれた言葉は僕の予想の軽く斜め上を行った言葉だった。
『俺』? 今『俺』って言いましたかこの霧間凪さんは。
あーえーときっと聞き間違いさ。
そうこの異常な状況がいけないんだ。僕も早くも疲労してきたのかもしれない。
「それでそこの殺人鬼とお知り合いのあんたにも、
零崎と同じように質問させてもらおう。あんたはこのゲームに乗るかい?」
あぁ、なんだかこの喋り方、そしてこの雰囲気、どこかで見たことあるような。
僕の脳裏にある人物の影がよぎる。
「悪いけど興味ないね。僕は零崎みたいな殺人鬼じゃないから殺す意味がないし」
そう、興味がない。この状況全てに興味が無い。
殺し合いなんてのに興奮するほど下卑た趣味も持ち合わせていない。
興味があるとすれば零崎がこの女の子、霧間凪と行動を共にしている点だろう。
こいつが人と組むなんてのはレアなんじゃないかと思うんだが。
「そうか、零崎、この、えーと名前はなんだあんた? まさか欠陥製品じゃないだろ」
「僕は本名は誰にも言わないんだよ。
愛称でよければ戯言遣いなりいーちゃんなり、いっくんなりいの字なりお好きにどうぞ」
「そうか。零崎、この戯言遣いの言葉は信用できるのか?」
呼び名を聞いたと思ったら目の前でこんな質問を始めたよ凪さん。
なんだかやけに行動が潔いというかなんというか。
上品な女子高生というイメージはすでに僕の中から崩れ去っていた。
「あぁ、凪。こいつは殺人鬼なんかじゃねーし。
喜んで快楽殺人に走るようなキチガイでもねーだろ。人の行き死ににゃあ慣れてるみてーだしよ」
そう零崎は言った。殺人鬼に人を殺さないと太鼓判を押されてしまった。
これはかなり貴重な体験なのかもしれない。

「そうか、すまなかった。こんな状況では一応誰でも疑ってかからないといけないのでな」
「別にいいよ。こんな状況だしね」
まぁ妥当な判断だろう。この行動はある意味冴えた解答とさえ言える。
「それで『欠陥製品』この後の予定はあるか?」
「いや、このあと見たいテレビがとかそんな予定はまったく無いけど」
テレビなんて見たこと自体ほとんどないけどね。
「じゃあとりあえずもう少し奥の方で隠れようぜ。
立って喋ってるってのも目立つし疲れるしでいいことねーからよ」
零崎がそう言った。
確かにわざわざ立っているよりも木の陰に隠れた方がいいかもしれない。
「そうだな。とりあえず俺は戯言遣いが今までどんなことを体験したか。
どんな人間に会ったか気になる。今は情報が一番欲しいからな」
「異論はないよ。なにをするかも決まってなかったし」
「そんじゃあ行くか、こっちの方に目立たないいい場所があったんだ」
そう言って零崎は奥に歩いていこうとする。
「待て零崎」
「なんだよ凪? 隠れんだろ?」
「そこに行くまでに枝を集めてくれ、そこらに落ちているだろ」
凪さんはそう言って零崎の足元に落ちていた枝を指差した。
「なんでそんなこと、めんどくせーなー」
「いいからやれ」
「へいへい」
そう言って零崎は枝を集め始める。
あの人間失格を動かすとは、この霧間凪って人、どういう手を使ったんだ?

「なにしてる」
「え?」
僕は突然声を掛けられ、素っ頓狂な声をあげてしまう。
「あんたもやるんだよ、戯言遣い」
「そんな」
「なにか?」
「…………はい」
そう言うと凪さんも拾い始め、僕も零崎と一緒になり枝を拾い始める。
あぁ、なんだかわかってきた。この人、よーく知ってる人に似てる。なんか赤い人に。

「すごいな」
10分後、隠れることに適し、それでいて充分とまでは言えないが
仮眠も取れそうな木の幹のまわり数十メートルに
凪さんは自分が持っていた糸と木の枝で簡単なトラップを作ってしまった。
もし誰かが糸に触れれば目の前の枝が落ちて危険を仕組みを知らせるという仕組みである。
「ではとりあえず休もうか二人とも」
こともなげにそう言い凪さんは木の根に腰掛ける。
僕と零崎も腰掛ける。
「なあ零崎」
小声で言う
「あん?」
「似てるよな?」
僕はある種確信して零崎に言う。同意をもらえるに違いない。
「……変なとこばっかりな」
そう言って零崎はため息をついた。
二人の頭の中には人類最強の請負人、哀川潤が不敵に笑っていた。


【残り98人】

【F−4/森の中/1日目・04:00】
【いーちゃん(082)】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: 零崎達と情報の交換、及びお互いに見張りあい体力を回復

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:いーちゃんと情報を交換 とりあえず隠れて体力を回復、および状況の変化を待つ

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁
[道具]:デイバッグ(支給品一式)サバイバルナイフ
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。 いーちゃんと話しがしてみたい……かも 体力を回復

周囲には糸で作られたトラップが張られている。触れると3人が気付くが触れた人間は気付かないしくみ。

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