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第060話:炎の魔女と殺人鬼

作:◆xSp2cIn2/A

「さて」
 霧間凪は身動きの取れなくなっている人識に近寄ると、屈んで顔を近づけて問う。
「まずあんたの名前を聞こうか?」
「かはは!こうやってあんたに生死を握られている以上、
 答えねぇってことはできねぇよな。名前、なまえねぇ……
 俺の名前は零崎人識。まぁ、あいつは俺のことを『人間失格』と呼んだけどな」
 凪は人識の答えに、ふぅん とうなずくと、近くの木箱に腰をかける。
「人間失格ねぇ。ところであんた……零崎は俺を殺そうとした。つまりこのゲームに乗ったってことでいいんだな?」
 凪は、肯定したら、とりあえず動けないくらいにボコっておくか。などと思いながら再び訊ねる。
しかし、帰ってきたのは肯定ではなく否定であった。
「いいや、俺はこんな糞ゲームに乗る気なんてこれっぽっちもねぇよ。
 かはは!しかしゲームねぇ、見事なたとえだぜ」
 人識はクックックと笑うと、で?ほかに質問は?というような眼で凪を見る。
「乗ってない?じゃぁなんで零崎は俺を殺そうとしたんだ?」
 凪が聞くと、零崎は、
「ハッ!傑作だ、いや戯言かな?あんたは人を殺すのに理由がいると本気で思ってるのか?」
と、ばかにするような声で言った。


凪はフフッと、おかしそうに笑うと
「おいおい、質問してるのはこっちだぜ」
と言った。
「ちっ。つれない女だぜ。まぁいいや。さっきの俺の質問だが俺は思わないね、
 俺は、まぁ世間一般に言わせる『殺人鬼』って人種なんだが、べつに理由があって人を殺してるわけじゃねぇ」
零崎は まぁ兄貴に言わせれば殺人鬼に失礼とこ言うんだろうけどな。と言って黙った。
「気持ちいいとか、スカッとするとか無いのか?」
「かはは!それじゃぁ俺が変態みたいじゃねぇか。まぁ似たようなもんだけどな。
 だから好みのあんたは殺さないし、このゲームに乗って、生き残るために人を殺したりもしない。
 つい殺っちまうってのはあるかもしれねぇけどな」
 なるほどね、と凪は言うとワニの杖を解除して零崎を自由にする。
「おいおい、俺を自由にしてもいいのか?いきなりあんたを殺すかも知れねぇぜ」
凪は木箱から飛び降りると、立ち上がった零崎に近寄って言った。
「お前は俺に惚れたんだろ?だったら惚れた女の手伝いをするべきだよな」
凪の有無を言わさない物言いに、零崎は人類最強の請負人、死色の真紅。
哀川潤を思い出した。

【残り104名】

【D-3/住宅街/1日目・02:40】

【霧間凪(048)】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:零崎と脱出の方法を考える

【少年(零崎人識)083】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。

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