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第506話:ほんの些細な代償行為

作:◆MXjjRBLcoQ

 砂浜で出会ったのは赤い髪の男だった。
 一見したところは何の変哲もない青年。
 爽やかな気配、威圧感を伴う重厚な生気。どちらかというと、ハーヴェイとは反対側の気配。
 男はこっちに向かってる。というよりハーヴェイの後ろにある「どこか」を目指してる。
 ハーヴェイの存在にも頓着する様子はなく、ただ真っ直ぐにハーヴェイの脇を抜けるコースを、自身の道の上を往く。
「なぁ」
 すれ違いざまに、声をかけていた。
 背中に立ち止まる気配がして、それはほんの少しだけ意外な気がした。
「この島に大切な人はいるか?」
 そんな言葉が流れるように口をついた。
 返事は期待していない。自分ならそのまま無視する。この男も多分そうする。
「あぁ」
 だから返事が返ってきたことには、ほんのもう少しだけ、意外な感じがした。
「逢いにゆく途中だ」
 言葉に、確固たる自信が漲っていた。
 鏡を見てるような違和感があった。同じものなのに一致しない、そういう違和感だ。
 そうだ、今までは「同じところ」が引っかかってたからで。
「なら、何でまだこんなところをうろついてる?」
 ここからは、ひどく、本当にひどく珍しく、癇に障ったからだ。
「ゲームが始まって、もう半日以上が過ぎてるんだぜ、なんでそばに居てやらない?」
 だからこんな疑問が口をついたんだ。
「探しちゃいるんだけどな。島中割と隈なくだ」
 そりゃだめだ。 相手のことが見えてない。
「自分の行きたいところにいけよ。
 あんたの大切な人は、あんたの助けをじっと待っているのか?」
 キーリはこの危険の島で、ハーヴェイを探して回り、そして死んだ。
「行けよ」
 それだけ言って、すっきりした。何かに憑かれたような時間はココで仕舞いだ。
 後は自分のやるべきをやる。ウルペンは倒す。
 復讐とは違う。熱がない。これと同じの、ほんとに単なる代償行為だ。
 後ろで何か言われたが、もう気にならなかった。
 いつもどおりの無関心に、いつもどおりに無気力だった。
 ポケットに手を入れて歩き出す、最後まで男のほうを振り返ることはしなかった。

【G-8/砂浜/1日目/16:44】

【ハーヴェイ】
[状態]:精神的にかなりのダメージ。濡れ鼠。
左腕は動かせるまでには回復。(完治までは後1時間半ほど)
[装備]:Eマグ
[道具]:なし
[思考]:ウルペンの殺害
キーリを一人にしておきたくはない、と漠然と考えている(明確な自殺の意思があるかは不明)
[備考]:ウルペンからアマワの名を聞いています。服が自分の血で汚れています。

【クレア・スタンフィールド】
[状態]:不明
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:シャーネに会いに行く。海洋遊園地へ
[備考]:城を脱出後島中を回っていました。何人かとはすれ違いましたが気づかれることなくやり過ごしています。

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