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第505話:我ら、炎によりて世界を更新せん

作:◆ozOtJW9BFA


「………退屈」

人形使いは今の現状に退屈していた。こんなにも面白いゲームなのに想像を越えるアクシデントがなに1つ起きないのだ。
最初の退屈がきた時は暇を潰す物が落ちていたのでよかった。ホールで魔術師に殺された二人を拾い、死体兵士を造りながら時間を潰した。
しかし、いつもは吸血鬼相手を兵士にしているせいか、只の人間二人は時間もかからず作れてしまい、少しの時間しか潰せず直ぐに退屈になってしまった。こんな事ならモニタールームで参加者達の会話を聞いたほうがよかったかもしれない。
そう思いモニタールームに行くとワインを片手にモニターを見ている先客がいた。

「それでどんな感じ、イザーク?」

「今のところは予定通りさ、人形使い。参加者は群れを作りだした。ついでに私自慢の刻印も解除されようとしている」

「嘘を言わないでよ。あんなチャチな物が自慢の品なんて君も皮肉がきいてるね。」

「“われわれの最も誠実な努力はすべて無意識な瞬間に成就される━━━ゲーテ………酷い言われようだな。あんなモノでも私が作った刻印だ。頑張って解いてくれることを、おや?」

そのままワインを飲もうとしている黒髪の紳士の手からワインを没収すると、鳶色の髪の若者は悪戯っぽく唇を尖らせた。

「ワインを飲みながら管理は出来ないでしょ」

ワインをとられて非難がましい色を湛えて上がった相手の視線は無視して、沢山の参加者が映すモニターに眼をむける。その様子を見ながら魔術師はとられたワインのかわりに細葉巻(シガリロ)を口にくわえる

「人形使い、君の賭けた参加者は死んでしまったようだね。」

「それって僕に人を見る目が無いっていう皮肉かい、イザーク?」

あらゆる機械類が所狭しと設置してあるモニタールームには魔術師と人形使いしかいない。部屋に響く音は二人の会話と端に置いてあるコーヒーメーカーのコポコポというBGMが響いている。

「そういえばさ外の方がなんだか騒がしいんだけど何か知らない?」

「騒がしい?何がかね、人形使い?」

「とぼけないでよ、知ってるんだろ。外でいろんなのが集まっているってことをさ。」

人形遣いはまるで愉快と言わんばかりの笑みをする。その様子に魔術師は興味なさげにモニターを見るばかりだ。
魔術師にとって外にいる組織のことは興味や好奇心が湧く相手ではない。興味があるのは塔に眠るあの男のみ。そして、参加者や参加者を助けにきたであろう組織も眼中にはないようだ。妨害等取るにたらない要素。
ま、いつもいつも作戦の度に妨害されている身だからから、馴れちゃってるんだろうね。実際問題、外の連中は何回か空間に穴を開けようと努力しているらしいけど効果はあがってはいないらしいし。
それにしてもと人形使いは思う。この邪悪な魔術師のことだから、ろくでもないことか、さもなくばよからぬことを企んでいるのだろうが、いずれにせよこの魔術師が次にすることはすぐに予想がついた。

「ねぇ魔術師、君がこれからすることを当ててみせようか?もっとひどいことをするんだろ」

「その通りだ人形使い。もっと、もっとひどいことをするんだよ」

そう言うと魔術師は細葉巻を灰皿に押し付けた。


【一日目 18:25】

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