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第097話:自由と正義

作:◆5RFwbiklU2

「まったく、まったく困ったものだ。」

目の前に海を見渡して、カイゼル髭を生やした、総髪の大柄な老人―米国UCAT大佐.オドーはそうつぶやいた。
背後には森、塩辛い風が吹きぬけ、背広の裾をはためかせる。
あのふざけた男の説明を受けてから一時間、オドーは転送された場所を動かずにいた。
自分らが此処に集められた理由を告げられ、オドーは憤りを覚えた。
それは、

(米国の、米国UCATの自由と正義に反することだ)

むぅと唸る。
この状況を何とかして止めなければ。
オドーはもう一つ悩んでいた。
もう一度確認するために、右腕を高く挙げ、指を鳴らす。
小気味のいい音が響き、前方に衝撃が走った。
砂浜に砂塵が舞い、穴が穿たれる。
だが、それ以上の破壊は起きなかった。


(明らかに、明らかに力が弱まっている・・)

本来の力を出せる左腕でも、恐らく同じことだろう。
制限が掛かっている、とでもいうのか。
足元に置いたデイパックの中身を見る。
食料やサバイバルに必要なもの、そして。
錐のような形状をした刃物。
先が少し曲がっている。
何かに使用するのだろうかと疑問を持ちつつ、武器としては使えると思う。
先ほど見た名簿の内容を思い出す。
書き連ねられた参加者の中には、自分の良く知った日本UCAT、全竜交渉部隊の面々もあった。
死なせてはならない、と思う。
相手は未熟といえども、米国が認めた者たちであり、世界をこれから背負っていく者たちであり、
自分の唯一の親族――ヒオ・サンダーソンとその同棲者の仲間である。

オドーは歩き出す。
海に背を向け、森の中へと。
自らの信じる正義と自由を貫くために。


【残り98人】
【G−1/森と海の狭間/1日目・00:15】

【オドー(リチャードデイビス)】
 [状態]:心身健康
 [装備]:すぐに使えるものは無し。
 [道具]:デイパック一式とアンチロックドブレード(戯言シリーズ)
 [思考]:G−2方面への移動。ゲームをとめること。
     風見千里、出雲覚、佐山御言、新庄運切を探す。 
     米国の自由と正義の実行。

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