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第118話:なるようにならない最悪―If nothing is bad―

作:◆xSp2cIn2/A

「ところで凪ちゃん」
「初対面の奴をちゃん付けで呼ぶか?ふつう」
 言われてしまった。はて?そんなにおかしなことだろうか。
「だって君は僕より年下だそうじゃないか。ぼくはこれまで年下の子には
 例外なくちゃん付けで呼んできたんだよ。」
 もちろん適当である。どんな風に呼んでいたかなんて覚えているわけ無いではないか。
だいたい対人記憶能力に重大な欠陥を持つ僕にしてみれば名前を覚えている人なんて
あの島で、ともに壮大なるラブストーリーを繰り広げた千賀ひかりさんだけだ。(一部脚色あり)
嘘だけど。
「ふぅん、まぁいいや。それより今のうちに寝ておけよ、やっと落ち着いた状況になったんだ。
 どうせこれまで一睡もしてないんだろ?」
 そのとおりである。しかしぼくは寝顔を他人に見られるのが嫌いなのだ。
春日井さんがぼくのアパートに来た時も、そのせいでよく眠れなかった。
「やっぱり、ぼくには孤独が似合ってる……か」
 戯言だ。
この状況、何人かでかたまっていた方がいいに決まっている。
それを考えると、ダナティアさんとはぐれたのは痛かったな、美人だったし。
凪ちゃんもかなり美人だが、ダナティアさんにはどこか、怪しい大人の魅力があった。
「その点で考えてもやっぱり痛いな」


「あ?どうした。なんか言ったか?」
「あぁ、零崎、参加者名簿を見せてくれないか?さっき言った通り、何も持ってないんでね」
 零崎は あぁ、と言うと、デイパックの中から名簿を取り出し放ってよこした。
ぼくは参加者名簿を覗き込む。やはり知らない人ばかりだ、単純に忘れているだけかもしれないが。
って、ぼくの名前いーちゃんってなんだよ。普通愛称で書くか?
零崎に、あぁ、哀川さんも参加しているようだ。これはもう優勝者は決まったも同然だな。
そして、
「なっ!」
その下に、ありえない、名前を、みつけた――
「子荻……ちゃん……」
そんな、ありえない。確かに子荻ちゃんは姫ちゃんに殺されて、ばらばらになって――
死んだはずだ!
ぼくは確かにこの眼で見ている。子荻ちゃんの頭部が胸部が腹部が肩が腕が手が
指が腰が尻が脚が足が、輪切り状に、飛び散るのを。
ぞっとするほど冷たい視線でぼくを見据えながら名乗りを上げる子荻ちゃん。
クロスボウでぼくを狙う子荻ちゃん。
ぼくを無為式と呼んだ子荻ちゃん。
ぼくの言葉に顔を真っ赤にする子荻ちゃん。
さまざまな子荻ちゃんがぼくの中でフラッシュバックする………
そんな、そんな馬鹿な。それこそ、戯言だ、先月の助教授でもあるまい。
「そんな……」
ばか…な…奴らは……あの優男は……
「死者……を…生き返らせることが……できる…?」


【残り98人】

【F−4/森の中/1日目・04:30】
【いーちゃん(082)】
[状態]: 健康 子荻ちゃんの名前を見て錯乱中
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: お互いに見張りあい体力を回復

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:とりあえず隠れて体力を回復、および状況の変化を待つ

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁
[道具]:デイバッグ(支給品一式)サバイバルナイフ
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。体力を回復

周囲には糸で作られたトラップが張られている。触れると3人が気付くが触れた人間は気付かないしくみ。

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