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第037話:血と鉄

作:& ◆35sraMq3/o

「・・・・・・・・・・うげえ」
我ながら情けない声で目の前に転がる少女の死体を見下ろす。
赤く濁った血はまだ乾いておらず、鉄臭い水溜りをあたり一面に作っていた
少女の瞳孔はぱっくりと開き、そのグロテクスさに思わず背筋が凍る
(まったく・・・・・・・・どうにもこうにも最悪だな)
    
非日常には慣れている。入学式の日、あの馬鹿に出会ったおかげでな
不気味な巨大カマドウマと対峙したこともあるし、夏の孤島の殺人事件(小泉の狂言だった訳だが)に
も付き合わされた
・・・・・・・・まあ一番困ったのはこれらすべての元凶であるあの馬鹿女、ハルヒが突然学校の連中全
員に忘れ去られたときのことなんだがな
今回もそう、ハルヒの奴がつまらない漫画でも読んで思いついた冗談だろう。あとでこっぴどく叱ってや
らないと----------最初の最初はそんな風にばかり考えていた

 だが目の前に広がる少女の死体と血の匂いはこれらすべての非日常が改めて今、ここにある現実とは
まったく違うことを無言で教えてくれた。
 殺される。問答無用。
      ・・・・・・・逃げられない。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・」
無残にも置き去りにされた細い死体。変な方向に曲がった首をゆっくり修正し、大きく開いた瞳孔を指で
閉じさせる。
服がまだ固まりきっていない血で汚れるが、そんなことどうだっていい。
学ランなんてどこかに脱ぎ捨てればいいさ
せめて誰かが弔ってやらないと・・・・・・・・

しかし眠るように眼を閉じた少女の顔は想像以上に整っていて
ハルヒや長門、朝比奈さんの姿を連想させ、彼女たちが無残にも殺された姿をイメージさせ
いったん収まりかけた吐き気が水門を破った洪水のようにむせ返してきた
    
 「ぐえっ・・・・・うっ・・かはっっ、あっ・・・・・・・ぐっっ」
すぐ近くの草むらに口元から溢れる大量の汚物を吐き捨てる。
鼻につく気持ち悪い匂いが当たり一面に広がる鉄の匂いと交じり意識が跳びそうになった 
しかし何も吐き出せなくなった胃はそれでも飽き足らず今度は胃液まで流し込んだ
口中に気味悪く酸っぱい味が広がり、それが気持ち悪くてまた排泄する
 「あ、ああっぐっ・・・・・・はあ、うっ・・・・・・」

目の前に広がるテレビのノイズのような景色に頭がおかしくなる。聴覚がイカレてしまう。
臭い、汚い、死体、どうしようもない。
    ・・・・・・・・・逃げられないのか?
 「・・・・・はあ、はあ」
笑いたくなる、だが笑えない。
そうだよ、俺がこんなんでどうするんだよ。今までもなんとかしてきたじゃあないか。
これがやつらの陰謀なら、なんとしてでもここから生き延びてやる。
・・・・・・・そうハルヒも長門も朝比奈さんも古泉も、みんな一緒に。
思い通りには、させない
    
・・・・・・・・・とにかく、とにかくだ、
「・・・・・・・・・・・・・・みんなを、探さないと。」    

【残り107人】
【C-2/高台/1日目・1:28】
【キョン(087)】
 [状態]:若干体調不良。
 [装備]:豆腐セット、醤油のボトル
 [道具]:通常の初期セット
 [思考]:怒り。SOS団の仲間を探しに移動

【C2地点にてキョンの学ランが脱ぎ捨てられました】

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