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第023話:策師と指し手

作:◆vQm.UvVUE.

「イーザーヤぁー」
深い森の中、目の前の男は嬉しそうに笑いながら、彼に向かってくる
「やあ、静ちゃん、君も本当にたいしたものだね、こんなピンポイントで俺を見つけるなんてさ」
彼、折原臨也もそう言って笑いかえす。
まるで親しい友人同士のように。
しかし、二人の内心は表情とは真逆だ。
その証拠に、静雄の笑顔には怒筋が張り付き。
臨也の笑顔には緊張感が満ちている。
正直な話、まだこんな、何の体勢も立ってない状況では決して会ってはいけなかった。
臨也の手にしたアイテムは、どちらかというと当たりだがこんな局面で使えるものではない。
なによりこの、平和島静雄を前にしたこの状況下
どんなアイテムがあろうとまっとうな方法で切り抜けるにはあまりに厳しい。
「静ちゃん、落ち着いて話をしよう、どうだい、協力しないかい?静ちゃんだってこの状況には腹が立ってるだろ?」
何とか話術で、切り抜けようとするが、少し立ち止まっただけで
「ああ、このゲームを主催したやつも殺す、このゲームも壊す」
「でも今は、お前を殺す事が最重要だ、それに、お前は乗ったんだろ?このゲームに、だから殺す、そうじゃなくても殺すけどな」
等とのたまい、また歩みを進める。
(くそっ、普通だったらこの状況で知り合いに会って協力しようといわれたら少しは考えるだろ)
臨也はそう内心で毒づきつつも、何とか今の状況を脱しようと思考を巡らす。


ゲームにのった、それはある意味確かだった、彼の背後には頭を潰され事切れた少女の死体があった。
何をするにしても、もし一日誰かが誰も殺さないだけで全て終ってしまう。
だから殺した、殺し易そうな相手を選んで。
彼女にとっては不運だが、それは臨也にとっても不運だった。
本来、彼は自分から動くタイプではなく駒を操るように人を操るタイプだ。
それが無理やり盤上に上げさせられて自らが駒となってしまった。
情報を集めるにも駒を揃えるにもたった一日では不足だった。
だから、彼は殺し易そうな相手を探し出し殺したわけだが。
少女が直前に放った悲鳴のおかげで、まさか静雄が現れるとは思ってもみなか。

「殺す」
静雄が拳を振り上げる、本当にその一撃で人を殺しかねない力を秘めた一撃を。
しかし、静雄は突如その身を横に投げる。

銃声

静雄のいた場所を銃弾が抜ける。ほとんど動物的な勘だ。
「こっちです」
臨也にかけられる声、かなり遠くからだろうが不思議と通った、何の躊躇もなく、臨也は声の方向に走る。
静雄はすぐに立ち上がり臨也を追おうと走り出そうとするが再び銃弾が彼の歩みを止める。
流石にすぐに木の陰に隠れるが、銃弾は正確に静雄のいるあたりに撃ちこまれ続ける。


臨也は銃声だけで撃ち手のいる辺りに辺りをつけて足り続ける。
背後の静雄の怒声も聞こえはするが遠い。
銃声も消えやがて、再び森は静寂を取り戻す。
「止まってください」
突然頭上から、声をかけられる。
少女の声だ。
頭上を見上げると一本の木の上にライフルを持つ少女の姿がある。
おもむろに木の上から飛び降り臨也の前に着地する少女。
体術なら臨也よりも上かもしれない。
「年長者であろうあなたに敬意を表して私から名乗りましょう」
黒く、美しく、長い髪を持つ少女。
冷たい視線、値踏みでもするように臨也を見据えている。
「私は萩原子荻」
明らかに年不相応な少女は言う。
臨也も彼女を観察する、指し手の目で、彼女が使えるかどうか確認するように。
「一応、策師のような真似をしています」
「どうです?私と組みませんか?」

【F−4/森の中/一日目、01:42】

【折原臨也(038)】
 [状態]:正常
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:萩原子荻の値定めと同盟

【萩原子荻(086)】
 [状態]:正常
 [装備]:ライフル
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:折原臨也との同盟

【F−5/森の中/一日目、01:42】

【平和島静雄(037)】
 [状態]:正常
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:折原臨也への暴行、ゲームの破壊

【朝比奈みくる(091) 死亡】

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