remove
powerd by nog twitter

第084話:共通利

作:◆vQm.UvVUE.

あの辺りにはまだ静雄がいる、何より視界の悪い森の中での立ち話は危険と判断し
二人は子荻のスタート地点だったというマンションの一室に移動していた。
子荻がチョイスしたのは窓際ではなく、それでいて複数箇所出入り口のある部屋だった。
奇襲を受けにくく見つかりにくく、その上逃げやすい、絶好とはいえなくも悪くない場所だった。
もっとも禁止エリアとやらになるまでは、だが。

「こんな場所まで用意されてるのか、それで、組む・・・・・・ね、なぜだい?
このゲームにおいて誰かと組むというのは確かに有効な手段だ。
が、この段階で、知り合い意外と易々と組むっていうのは考えづらいな」
それは当然の疑問だった、こんな、本当なら知人さえも信用しがたい舞台の盤上で
赤の他人といきなり組むというのはもっともしてはいけない行為だ。
いつ寝首をかかれるか分かったものではない。
「それに君はどういうわけか俺を図ったように助けた、萩原さん、
どうやら君は状況によってはこのゲームに乗ることも躊躇わない人間のようだけど。
その意図はなんだい?」
当然、臨也と彼女は知り合いでも会った事も無い。
これだけ特徴的なら忘れるというのも考えにくい。
「簡単なことです、最初に集められた部屋で、あの二人が殺された後、冷静に状況判断をしていた人間を数人
その中でも簡単にゲームに乗りそうもない、切れそうな人物を自分の中でリストアップして
一番初めに見つかったのがあなた、なのでしばらくつけさせてもらっていた、それだけの事です」


表情には出さずに軽く驚嘆する、あの二人の騎士が殺された後の室内は騒然とし、多くの者が混乱していた。
まあ、当然の事ではある、目の前で人間二人が殺され、彼らが死んだ原因の紋章は自分達にもあるというのだ。
泣き出す者もいくらかはいたが無理のないことだ。
そんな室内で、冷静に他人の顔色を窺う事のできる人物。
その上殺人現場を見ておきながら、その殺人者と組もうなどという思考。

「だからあんないいタイミング助けに入れたか
策師、名前倒れじゃないようだね。
それで、君はこのゲームには乗る気は無いのかい?」
聞くまでもない問いだ、これだけ頭の切れる人物なら答えは決まっている。
「当然です、このゲーム、名簿によると参加者は117人。
私も数人知った名前を見つけましたがこの117分の1になるのに私やあなたのようなタイプでは難しいでしょう。
ならばこのゲームからの脱出を最優先に考えるべきです。
あなたも恐らく同じ考えでしょう、あの殺人はルールに対する単なる時間稼ぎ
本来なら自分自身の手で殺しはしたくない、違いますか?」

そのとおりだった、臨也にしろ子荻にしろ、一般人よりは優れている。
とはいえ所詮は静雄のような怪物には敵わない。
頭脳や立ち回りでカバーするにしても限界がある。
この限定した状況下で、先程のような事態に遭遇しないとは言い切れない。
さらにいえば、あの部屋で見た管理者連中、奴等が最後に残ったからといって素直に帰してくれるとも限らない。
「そうだね、それに無駄な殺しは不要な敵を作る事になりそうだ、24時間に一人は
まあ、保険のためには殺さなきゃならないわけだけど」
「仕方のないリスクですね、場合によってはそれも回避できるでしょう
とりあえずはあなたのおかげで少なくとも48時間は確保できました」

お互い、殺す殺さないについての割り切りはできている、これで下手に正義感のあるやつだと厄介だが。
「そして、俺と君が組めばこのゲームの間も双方にとってメリットがあるか」
「脱出するにしろ、ゲームをせざるをえなくなるにしろ、私とあなたなら、人数が一定のライン・・・・・・
そうですね、10人前後になるまでは確実に信用、いえ利用しあえるはずです」
つまり10人程度まで残ったなら、勝ち残りを目指す方が現実的というわけか。
「お互いいつ、どちらが寝首を掻かれてもいい覚悟のもとの同盟って分けか、面白いじゃないか」
完全に利害だけの同盟、だがそちらの方がむしろ信用できる。
下手な友情や博愛精神ではいつ足を引っ張られるかわかった物ではない。
だからこそ、子荻も臨也のような人間を選んだのだろう。
「それでは同盟成立です、そういえば、まだあなたの名前を聞いていなかったですね。
呼び名がないというのは不便ですから、よろしければ教えてください。
それともまさか教えられない、などという事情でもありますか?」」
今までに、教えなかった人間でもいるのだろうか、臨也は素直に答える。
「折原臨也」
そう答え、一拍置いて
「情報屋さ」
指し手の顔は隠したまま、折原臨也はそう名乗った。

【残り99名】
【C−4/ビルの2階/一日目、03:12】

【折原臨也(038)】
 [状態]:正常
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:ゲームからの脱出?

【萩原子荻(086)】
 [状態]:正常
 [装備]:ライフル
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:ゲームからの脱出?

←BACK 目次へ (詳細版) NEXT→
第083話 第084話 第085話
第023話 折原臨也 第149話
第023話 萩原子荻 第149話