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[日記]




2007.06.25


はりけ〜んず 前田登の単独ライブ『登風9 〜海で溺れたら美少女が〜』を観覧。魂を揺さぶられました。


以下、レトロゲーム系サイトの前提をかなぐり捨てて若手お笑い関連の説明っぽい事を書かせていただきますが、最近のお笑い業界ではオタク漫才/漫談なるものが一部で存在しておりまして、上述したはりけ〜んずの漫才を筆頭に、天津若井おさむ、そして毛色は若干違いますが野球オタク漫才のストリークなど、吉本興業だけでも群雄割拠の様相を呈しています(他、大川豊興業のアニメ会や松竹芸能のアメリカザリガニ・なすなかにしなど)。
 そのうち多くは、ボケ側のオタクが自らの内的世界を全力で吐露し、ツッコミがそれを抑止するといった構成を用いています。従来の漫才/漫談に昨今人気の「細かすぎて伝わらないモノマネ」に通じる「あるあるネタの笑い+その世界設定が緻密でありすぎるが故の笑い」を加えたその作品群は奇抜かつ精密で、お笑いファン、オタクファン(?)の両面から見て興味深いものとなっています。

そんな中で今回のはりけ〜んず前田さんは、秋葉原方面には全くノンケのお笑いファンへアニメ・マンガネタをいかにして伝えるか、という作業においてとにかく精神論を多用、ざっくり言ってしまえば観客を魂ごと持っていくナイスな無頼漢なのです。いや『M-1グランプリ』での東京予選司会など、その技術には定評があり東京吉本での興行ではトリを務めるほどで、今回の『登風』でもそういった丁寧なネタ振りと切れ味鋭いオタクワードを選別されたオチは健在だったのですが、さすがに2時間も『まなびストレート』『苺ましまろ』『桜蘭高校ホスト部』の単語を、まがりなりにも「お笑いライブを観に来ている自分の眼と脳」のフィルター越しに感知していると、なんというか、磁場が歪んで見えます
 例えて言うとアレです。「お前、これ絶対好きだから! 絶っ対、好きだから!!」とだけ絶叫して、体験してみると確かに面白いゲームやらマンガやらを貸してくる大学の友達みたいな感じ。一点突破的。




ちなみにライブ本編なんですが、最初のコントが「オタク刑事が水死体の身元を調べる為に聞き込みをしているけれど、オタク関連の情報ばかり仕入れてしまう」というもので、そこで仕掛けられたフリがサブタイトルの『海で溺れたら美少女が』と、そして『ながされて藍蘭島』を経由して、締めのコント「流れ着いた先は、まあ、確かに、女性の比率は多いけどさ……」な内容へ着地する超濃密な2時間。今回ゲスト出演されていた、オリエンタルラジオと同期NSC生にしてスター性充分ながらも才能のベクトルがねじれの位置に配されてしまった巨漢芸人、大好物のなんしぃが堀江由衣を自称した時点でライブ全体のピークを迎えましたが、前田さんの愛情と知識量から精製されたオタクネタの多用に観客との精神障壁は無効化され、ゼロ距離で通じ合うハート・トゥ・ハート。置いてけぼりをくらってる会場整理担当の若手芸人と、ネタの詳しい意味を知らされていない一部の演者を除けばみんなが幸せになれるサンクチュアリで、退場後も思い出し笑いの嵐に見舞われました。




「ある狭い世界での話題を笑いに昇華する」という事の難しさは、その話題をどうにかして共有する、もしくは共有している気にさせる、もしくは拒絶させる地点から始めるなど位置関係の定め方にはじまり、オタクっぽく聞こえる単語の選定や、漫才の場合はオタクでない相方の立ち位置(ちなみにNON STYLEのイキリ漫才におけるキャラクターとボケ・ツッコミの役割の複雑っぷりは今後のオタク漫才に応用されるべき素晴らしい構成だと思います)などを構築する仕事量の多さに始まり、それをお笑いの定型に当てはめる作業を伴う煩わしさも重なり、本当に好きじゃなければやってらんない事だと思います。

だからこそ、好きです。
 本当に好きだからこそ伝わること。お笑いという普遍的な媒体を用いて伝えられるオタク愛に、今回は心を揺さぶられてきました。




どうやら2ヵ月後に行われるらしい、次回の『登風』。節目となる10回目の公演での様々な特別演目、楽しみに待っています!




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本当はここにスペースラジオのゲームネタと、数多あるRPGネタ・ドラクエネタ中で史上最高と目されるバッファロー吾郎のドラクエネタを複数の動画配信サイトから拾ってくる予定だったのですが、いくら検索かけても見つからず、無念。とりあえずアニメ・マンガネタ中心のオタク芸人業界に『ゲーム』の風穴を是非。



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