カタログに載らない高倍率双眼鏡
名門望遠鏡メーカーの実例
一般の目から見ると、双眼鏡のブランドはカメラメーカーとそうでないメーカーに大別できるでしょう(そのことにどれだけ意味があるかは疑わしいのですが)。
カメラメーカーというとニコン・キャノン・ライカが代表になるでしょうし、そうでないメーカーというとビクセン・タカハシ・宮内が挙げられると思います。
優れた光学機器というとカメラメーカーがイメージされやすいのですが、天体望遠鏡などではそれ以外のメーカーのほうが質・量ともに大勢を占めています。
なかでもビクセンの社名は天文に興味がある人なら必ず知っているといっても過言ではないはずです。
双眼鏡においてもカタログ紹介で書いたように多数の製品をラインナップしており、興味深いメーカーの一つです。
ところがこのメーカーもK社と同じく、メインのカタログに載せられていない製品群が存在しているようです。
下のチラシは、夏休み直前に地方のカメラ店で配布されていたものです。
夏の行楽シーズンを控えて需要期向けに作られたのでしょう。
普段は双眼鏡なんて興味がなくても、この季節はキャンプだ行楽だで欲しくなる人が多そうです。
このチラシでは 本カタログには無い低価格の商品を中心に掲載されています。
アスコット双眼鏡はあってもアルティマ双眼鏡は載っていませんし、フィールドスコープも全面単層コートの入門機になっています。
このチラシを見ると双眼鏡の売れ筋価格が見えてきませんか。
グルメでなければ、全面マルチコートされていなくたって十分に役に立つでしょうし、入門用に手軽に買える価格の商品が用意されているのは喜ばしいことです。
この手の道具に興味があるからといって、諭吉さん5人を手放すのはそうできることではありません。
「安いけれども結構使える」というのが入門編には理想的なように思います。
ところが、無知に付け込んで「12〜50X25」や「15〜50X50」なんて双眼鏡まで載っているのはどうしたことでしょう。
50倍にしたって写真のように見えないことはメーカーが一番知っているはずです。
三脚+超望遠レンズで撮影した写真と 双眼鏡の視界なんて全く別のものです。
35mm一眼レフで50倍といったら2500mm相当です。
このクラスの望遠レンズがどんな大きさでいかに高価な代物なのか普通の人は知らないんでしょうが。
メーカーの人と話をしてもホームページの解説記事を見ても双眼鏡を良く知っているメーカーだと思うのですが、商業的要求には勝てないのでしょうか。
しかも、うるさい客が手にするであろう本カタログには載せないのは、この手の製品がブランドイメージを傷つけることを理解してのことでしょう。
ちなみにホームページの方ではもっと高倍率名双眼鏡も売られています。
「みすみす他社に客を取られるより自前で高倍率双眼鏡を用意する」のは正しい判断でしょうが、高倍率双眼鏡を積極的に薦めるのは将来の客を潰すことにならないのでしょうか。
私が試した双眼鏡をみる限り、この手の製品を手にした客が次の双眼鏡を欲するとは考えにくいのですが。
K社だけでなく ビクセンもかと思うと少し残念になると同時に、やはり望遠鏡商売のつらさを感じてしまいます。
おまけ
ちなみに、この広告の表面は入門用天体望遠鏡と顕微鏡セットが載せられています。
夏休みの自由研究用に買う客が多いのでしょうね。
でも、これらの望遠鏡ってどのくらい使われているのでしょうか。
平均使用回数ってそんなに多くないような気がするのですが。
夏休みが終わったら押入れで埃を被って、忘れた頃に粗大ゴミでは・・・
ところで、この手の反射望遠鏡ってどこまで放物面鏡を使っているのでしょうか。
29800円だと球面でしょうか。詳しい方がいたら教えてください。
29800円なら相当な双眼鏡が買えるし、こっちのほうが使い回しがきく分便利なんですけど。
筆者のようにずぼらな人間だと、どれだけ星を見る気になるかは機材の重さと反比例するものですから。