日朝国交正常化について
日朝国交正常化に絡んで、もっとも多く言われる誤解のひとつに、
「小泉総理は政治家としての名誉のために、日朝国交正常化を急いでいる」
というものがある。
これは、5/22再訪朝以後急激に増えた俄強硬派の主張の根幹を成し、小泉総理を「売国奴」と呼ぶための根拠としてよく言われる。
これは、例の「平壌宣言が遵守され日朝国交正常化が行われれば国交樹立は1年でも可能だが、そうでなければ2年たっても3年たっても(総理任期満了後も)正常化は不可能」というコメントが歪曲されて一人歩きした「日朝国交正常化を1年以内に急ぎたい」というマスコミのミスリードから派生した、既成事実化された誤解の一例と言える。
日中国交正常化は田中角栄の「功績」になった。
敵対していた共産国との国交正常化が【政治家の功績】として語られたという前例があるため、北朝鮮との問題についても「国交正常化を成し遂げて歴史に名を残そうとしている」という解釈がまかり通っているようだ。
しかし、実際問題として、ここまで怨嗟渦巻く関係となっている今の北朝鮮と、現状のままで友好関係を結べるとはおよそ思えない上に、北朝鮮から得られるメリットがあまりない現状を鑑みれば、国交正常化そのものに大きなメリットはない。政治家としての功績という魅力もほとんど感じられない。
では、日朝国交正常化を進めようとすることには、どういった目的があるのだろうか?
以下は、以前にまとめた「5.22再訪朝の要点のテンプレート」から、特に国交正常化に関する解説だけを抽出・整理したものである。以前まとめた部分からは再訪朝のメリットの部分などは一部外したり、書き足した部分があるが、「国交正常化の目的」の部分を理解するには足りるだろう。
以上からわかるように、小泉総理が殊更に「日朝国交正常化を推し進める」と繰り返しているのは、「餌をやるからお手をしろ。餌が欲しかったらお手を覚えるのが先だ」と言っているのと同じで、餌をやることよりも芸をさせることに主眼が置かれている。極論するなら、芸をさせられるなら餌などやらなくてもいいくらいなのだが、「餌をやる」という褒美を用意しなければ動物が芸を覚えないのと同じである。日朝国交正常化をちらつかせる=餌をちらつかせる、国交正常化のための条件を満たさせる(拉致、核、ミサイルの解決)=芸をさせるということと考えればよい。
(2004/12/15 12/29改)
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◆北朝鮮核問題、ミサイルディフェンス(MD)配備、それと仮想敵国としての中国を、ひとつの軸として考える
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