●50音表作成にあたって
一応、何冊かの本とタイ人の協力で、表にまとめましたが、日本語の子音とタイ語の子音はイコールではありません。
例えば、タイ語の「ก[k]」は、無気音(息を出さず喉から発音)の為、
濁って聞こえます。その為、タイ語に[g]に当たる子音が無いので、タイ人向けの日本語辞書では、
が行の説明に「ก」を当てています。
また、日本語では同じ「た」でも、タイ語では有気音([tha]:
ทะ)・無気音([ta]:
ตะ)と言う様に、別の文字を当てています。
どちらの文字を当てればいいのか、頭が痛いところですが、
日本語の場合、言葉の最初の音は、有気音で言って、最後の音は無気音で言う傾向があり、
有気音を無意識に良く使っています。その為、該当する文字で、有気音・無気音の区別があるものに関しては、
有気音の表記の方を採用して表を作成しました。
それ以外にも、日本語の音の長さ(半長音)に相当するタイ語の母音はありません。
タイ語では、日本語での「あっ」「あー」位の長さの母音を使い分けています。
長い方の母音は、日本語の長音に相当するので、短い方の母音で表を作成しました。
●タイ語で書き表す時の注意
日本語の音をタイ語で表記する場合、下記の注意点があります。
- 「ふ」は、FとHの中間的摩擦音で、日本語独特なものです。
その為、ふ(hu:ฮึ)か、
ふ(fu:ฟึ)のどちらでも書き表せます。
- か行は子音(kh:ค)の替わりに、
子音(k:ก)で、書き表せます。
でも、กは、無気音(息を出さずに喉から発音)の為、濁って聞こえます。
- が行は子音(g:ง 鼻に抜けるngの音)の替わりに、
子音(k:ก)で書き表す事も出来ますが、
日本語の標準語では鼻にかかる音が一般的で、特に助詞の「が」は、鼻にかかるngの音らしいのですが・・・。
- ぱ行は、子音(ph:พ)の替わりに、
子音(p:ป)で、書き表す事も出来ます。
- た行の(た・て・と)は、子音(th:ท)の替わりに、
子音(t:ต)で、書き表す事も出来ます。
- ざ行は、該当する音が無いので、さ行と同じ子音で書き表しました。
- 「し」の音には、有気音 ([shi]: ชิ)と無気音 ([si]:
ซิ)の区別がありますが、
日本語の「し」は、一般に[shi]と発音されています。
- 「ち」の音は、有気音([chi]:จิ)です。
基本的に「จ」は無気音(c)ですが、
母音(i)と結び付くと無気音(ci)にはならずに、有気音(chi)と発音するみたいです。
日本語の「ち」は、一般に[chi]と発音されているので、同じ筈なのですが、タイ語は、はっきり発声するので、
「ちぃ」と言っている様に聞こえます。
●タイ語の末子音相当の日本語の音
タイ語表記独自のルールがある為、タイ語の末子音相当の日本語の音は、
前の音の母音を下記のタイ語のルールで置き直し、その音節末に子音を当てます。
なお、末子音についての詳細は、子音が重なるパターンの読み-末子音を参照して下さい。
- 「え・お」の場合、タイ語・母音記号「ะ」を取り除く(えー・おーになる)
- 「う」の場合、タイ語の長母音(うー)に置き換えます。
- 母音「あ」行の文字は、タイ語の別の「あ」に相当する短母音記号を当て直します。
- 上記の、長母音に置きなおしたものは、末子音が在る為、短母音化されて発音されます。
- 日本語の「ん」の音は、タイ語の平音節の末子音相当の音で、後ろに続く音で変化します。
- @後ろの文字が、S・N・Zの場合「n(น)」
- せんせい(SENSEI)→เซนเซย
- A後ろの文字が、M・B・Pの場合「m(ม)」
- しんぶん(SHIMBUN)→ชิมบูง
- B上記以外の場合「ng(ง)」鼻に抜ける音
- さんか(SANKA)→ซังคะ
- 日本語の場合、母音が「あ・う・え・お」の音に続く「い」の音は、タイ語の平音節の末子音相当の音になります。
その為、タイ語で表記する場合、タイ語の「ย(i)」を当てて、
タイ語表記のルールを当てはめます。
例:
あい(ai) อัย
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かい(kai) คัย
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たい(thai) ทัย
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つい(tsui) ทซืย
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えい(ei) เอย
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れい(rei) เรย
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おい(oi) โอย
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よい(yoi) โยย
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- 促音「っ」は、促音節の末子音相当の音で、後ろの音の子音を挿入して、タイ語表記のルールを当てはめます。
- 日本語の「ぷ」の音は、語末ではほとんど[p]の音となります。
- 一般に、日本語のウ段の音は、語末では母音[u]を伴わないものが多く、
タイ語の末子音相当の音になるものもあり、その場合タイ語の末子音として表記する必要があります。
ただし、日本語って発声があいまいだからわかりにくいけど・・・。
●日本語の表記と音の違いについて
- タイ語は、声調といって、音の抑揚で、別の文字を当てたり、声調記号を付けたりします。
英語の授業で、日本語は、音の抑揚が無く、平板に聞こえるけど、英語にはアクセントがあって、
平板ではないと習った覚えがありますが、タイ人に言わせると、
日本語は同じ単語なのに使い方で声調が変わると言います。
多分、白人よりタイ人の方が音の抑揚に対して敏感なのかもしれません。
日本語の普通の名詞の場合、声調は付きませんが、
言い方によっては、声調が付いている様にタイ人に聞こえると思います。
その為、日本語の音をタイ語で表記したものは、タイ人に聞いてもらって、所々直してもらうのがベストです。
- 日本語は、書いた通り発音するかと言うと、必ずしもそうではありません。
例えば「そごう」、有名なデパートの名前ですが、ローマ字表記では「SOGO」、
タイ語では「โซโก」で、
タイ人に読んでもらうと「そーごー」になり、日本語の「う」は何処かへ消えて無くなりますが、
もともとの日本語で「う」を長音「ー」として発音しているので仕方がありません。
また、「いい」の場合も「いー」と発音する場合があったり、「う」と「お」の中間の音が存在したり、
日本人は無意識に読んたり書いたりしているので、音の曖昧さに対して鈍感ですが、
日本語の音をタイ語で表現する場合問題になります。
- 日本語の「ぢ」「づ」の音は、「じ」「ず」の音と同じ扱いをする場合がほとんどで、
「続く」は「つづく」で「つずく」では無いと言われれば、そうなのですが、発音上の厳密な使い分けでは無く、
ニュアンスで使い分けていると思われます。タイ人向けの日本語の本でも、「ぢ」「づ」を「じ」「ず」と同じ音として紹介しています。
- 「ぷ」「す」など、ウ段の音は、語末では母音[u]を伴わない多いです。例えば「〜します[simas]」
- 日本語の「を」は、[o]または[wo]と発音されます。目的格を表す助詞の時と、[u]音の次では、
主として、[wo]と発音されます。
●タイ人の苦手な音
- 「つ(tsu)」の音は、該当する音がタイ語にはありません。一応タイ文字を当てていますが、
タイ人の方に読んでもらうと「ス」に聞こえると思います。タイ語に無いので仕方ありません。
- 「し」の音は、タイ人はどうも苦手らしく正しく読んでくれません。「ドレミ…」も「シ」はタイ人が言うと「ちぃ」に聞こえます。
- 「ち」の音も、日本語に該当する音が無いらしく、「ちぃ」と言っている様に聞こえます。
- ざ行は該当する音がタイ語にありません。