作:◆R0w/LGL.9c
「んっく、んっく」
ドクロちゃんが水を飲んでいる。几帳面に音を立てて。
あの出雲さんとアリュセちゃんが立ち去ってからしばらく。
ずっとドクロちゃんは水を飲んでいる。
殺し屋から首を糸で絞められてからやたらのどが渇くそうだ。
零崎はあの後、張られた糸を気づかれないように巧妙に張り直したようだ。
「今度こそバレずに引っかかるはずだぜ」
零崎と他愛の無い会話をしているとさっきの男との事がまた浮かんできた。
─あの時あの男が殺人行動にでたら
─最初の弾丸が凪ちゃんに当たってたら
─ドクロちゃんを絞める糸に力が加えられてたなら
物騒な想像をしていると口の中が乾いてきた。
でも僕のデイパックはダナディアさんの所で失くしてしまったので、当然水も無かった。
「凪ちゃん、水のボトル持ってる?」
「俺のは三塚井にやった。俺の飲みかけの一本は飲みきって、もう一本は今飲んでる」
「ドクロちゃんは…デイパック無いんだったね。零崎は?」
「ん? ああ俺の奴は一本は飲んだのと包丁砥ぐのに使っちまった。
あと一本あるぜ」
ああじゃあそれを飲も──
「それじゃあ僕たちの残りの水は」
三人の気持ちが一つになった。一本。いや、ドクロちゃんの飲みかけが──
「ぷふぅ」
ドクロちゃんは飲み終わったボトルを地面に置いた。
からん。ころころ。転がった空ボトル。どこからか吹いた風で転がる。からからと。空空と。
「いいか? ここから近くて水が採れそうなのは」
「湖は…飲めるかどうか分からないね。井戸も毒が入れられてないとも限らない」
「すると、この商店街か」
「やってくれるな? 零崎」
「俺しかいねーだろ?」
「全部詰めたら三キロになるけど、大丈夫か?」
「おいおい俺を誰だと思ってやがる」
「1時間以内に帰って来いよ」
「おう」
「なるべく殺すなよ」
「そりゃ保障できねーな。かははっ」
「おい!」
「じゃ、行ってくるぜ」
「ちっ…」
「あれ? ドクロちゃんが落書きしてるのって」
「零崎の…地図だな…」
「おかしーな。商店街が見えてこねぇ」
とことこ歩きながら呟く。辺りは森だった。横に普通の道が見える。
地図でもう一度確認しようとして、デイパックを探って──
探って探って探って。
地図を忘れた事を確認した。
「参ったなー。三塚井の奴に落書きされてそんまんまだったか」
一回戻って地図を持ってくるのも間抜けな話だ。
誰かに道を聞ければいいんだが…そう思ってとりあえず森を歩く。
なにやら少し先に三人組がいた。男二人女一人。
まったく用心せずに正面から近づいていく。ただし背中に隠した包丁はいつでも取り出せる。
三人の動きが止まる。先頭の目つきの悪い黒ずくめの男が警戒心丸出しで半身ずらすのが見えた。
「よぉあんたら。ちっとばかし道を聞きてーんだけど──つっても人せ──」
突然正面の男のデイパックの中から、青い虫のようなものが飛び出して語りだした。もちろん人生について。
「道を聞きたいと。そもそも道なんてのは人や場所や考えについて回るものだ。
人ならば人道。街ならば街道。剣ならば剣道。沼なら沼道か?
他人の作った思想の道を歩かないで済む方法を知ってるか?地位とほんの少しの勇気でいい。
なんとも無いことをなにか有り気に言い切る勇気と、なんとも無いことなのに何故か重く聞こえるほどの地位だ──
っておう。 それで思い出したけど何故あの占い機甲軍団は退屈なことばっか呟くのに、それを皆真に受けまくってあたふたせねばならんのだ」
「…先に言われちまった。戯言のように傑作だな」
笑みを深めて零崎は呟いた。
戦闘体勢をとってた黒ずくめのオーフェンは肩を落として声を上げた。
「頼むから、こいつに語り掛けないでくれ…」
それから数分間、オーフェンが止まらないスィリーをポケットに詰めるまで──
その『道』についての演説(内容はどんどん変わっていったが)は続けられた。
【キーフェンを出よう!-from the aspect of ENJOU-】
【残り85人/E6/森の中/1日目/09:55】
【宮野秀策】
[状態]:健康
[装備]:自殺志願(マインドレンデル)・エンブリオ。
[道具]:通常の初期セット。
[思考]:刻印を破る能力者、あるいは素質を持つ者を探し、エンブリオを使用させる。
:この空間からの脱出。 状況様子見
【光明寺茉衣子】
[状態]:健康
[装備]:ラジオの兵長。
[道具]:通常の初期セット。
[思考]:刻印を破る能力者、あるいは素質を持つ者を探し、エンブリオを使用させる。
:この空間からの脱出。 状況様子見
【オーフェン】
[状態]:精神的に疲労気味、いろんな意味で。行動には支障なし。 偏頭痛。
[装備]:牙の塔の紋章×2
[道具]:支給品一式(ペットボトル残り1本、パンが更に減っている)、獅子のマント留め、スィリー
[思考]:クリーオウの捜索、仲間を集めて脱出(殺人は必要なら行う) コイツどうしよう。スィリー黙れ。
※第一回放送を冒頭しか聞いていません。
【零崎人識】
[状態]:平常 迷子。
[装備]: 出刃包丁 (隠し持ってる)
[道具]:デイバッグ(空のボトル三個) 砥石
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。 水を汲みに商店街まで。道を聞く。11時までには戻りたい。
[備考]:包丁の血糊が消えました。
──────────────
【F−4/森の中/1日目・09:55】
【戯言ポップぴぴるぴ〜】
(いーちゃん/(零崎人識)/霧間凪/三塚井ドクロ)
【いーちゃん】
[状態]: 健康
[装備]: サバイバルナイフ
[道具]: なし
[思考]:ここで休憩しつつ、トラップにかかった者に協力を仰ぐ 零崎を待つ
【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:ここで休憩しつつ、トラップにかかった者に協力を仰ぐ 零崎を待つ
【ドクロちゃん】
[状態]: 頭部の傷は軽症に。左足腱は、杖を使えばなんとか歩けるまでに 回復。
右手はまだ使えません。 乾きは大体治りました。
[装備]: 愚神礼賛(シームレスパイアス)
[道具]: 無し
[思考]: このおにーさんたちについていかなくちゃ
※能力値上昇中。少々の傷は「ぴぴる」で回復します。
備考:水が残り1リットルしかありません。
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