作:◆GQyAJurGEw
「ふぉーっふぉっふぉっふぉっふぉ!」
どこからか、魔の声が聞こえてくる。
木に隠れながら、悠二は呟く。
「くっ・・・何で僕があんな化け物に追いかけられなきゃいけないんだ…」
いまだに悠二を探し続けるボン太君の叫びを聞きながら、なぜこんなことになったのかの過程を思い出す。
「なんだ、これ……」
目前で奇妙な叫びを上げるボン太君を見ながら、悠二は呟いた。
きぐるみに覆われているので、表情は分からない。
だが、きぐるみから発せられる禍々しい気配から、中の人(人か?)が危険人物と判断出来る。
(…関わらない方がいいな)
そう判断した悠二は、踵を返そうとするが、
「ふぉふぉ! ふぉふふぉふぃふぉーふぇん! ふぉふぃふぉふぉい!」
こちらに気付かれ、声をかけられた。
きぐるみを着ているせいで、何と言っているのか全く分からない。
返答に困っていると、いきなり怒った様子でこちらに走ってきた。
(ヤバイ! 早くにげなきゃ!)
そして悠二は南を向き、全速力で駆けていった。
何かが粉砕される轟音を聞いて、ハッっとなる。
いつのまにかあの化け物がこちらへと向かっていた。
「しつこすぎる…」
このまま留まっていては、いつか発見されてしまう。殺されるわけにはいかない。
そう思い打開策を考える。
いくら走力があっても、森なら別だ。
あの巨体なら、木にひっかかってうまく動けないだろう。
なら、体格の小さい自分の方が有利。
「よし…これなら逃げ切れる」
悠二は、大きく深呼吸してからさらに森の奥へと駆けた。
「ふぉーっふぉっふぉっふぉっふぉ!」
息を荒くしながら、悠二は駆ける。
「嘘だろ…!?」
後ろを見て己の目を疑った。
あの化け物を阻むはずだった木は、どれも化け物の体に当たると粉砕されていった。
追いつかれるのは、時間の問題。
(ああ、ここで終わるのか、僕…)
諦めながら走っていたそのとき。
ドンッ!
誰かにぶつかって、盛大に地面を転がった。
痛む体に耐えながら、ぶつかった相手を見る。
銀髪で、黒い服を着ていた。刺青のある美しい顔と、美しい剣を携えてこちらを睨んでいる。
もう、こうするしかない。
「た、助けて下さい! 化け物に追われているんです!」
男が眉を顰めながら、答える。
「ぶつかった相手に、謝罪もせずに面倒事を押し付けるのが貴様の礼儀か?」
「うぅ…」
そして男は少し考えた後、口を開いた。
「…いいだろう。その化け物とやらからお前を逃がしてやろう」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「ただし…」
条件として、男は食料と水を要求してきた。
「わ、分かりました。どうぞ」
悠二はデイバッグから要求された物を取り出し、男に渡した。
「うむ。貴様はさっさと逃げた方が良い」
「はい、ありがとうございます!」
そして悠二はその場から逃げ去った。
「ハハハっ! 私は運が良いな!」
森の中で、ギギナは嗤っていた。
「化け物というからには、さぞ強いのだろうな!」
そしてギギナの前にあった木を粉砕して、《化け物》が現れた。
【F-5/森/1日目・7:02】
【残り88人】
【小早川奈津子】
[状態]:絶好調
[装備]:コキュートス(アラストール入り。アラストールは奈津子の詳細を知らず)
ボン太君量産型(脱衣不可能)
[道具]:デイバッグ一式
[思考]:1.竜堂終と鳥羽茉理への天誅。2.正義のための尊い犠牲をこの手で
【坂井悠二】
[状態]:かなり疲労。かすり傷多数
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック(食料、水なし)
[思考]:1.この場から離れる 2.長門さんとシャナの捜索
【ギギナ】
[状態]:狂喜
[装備]:魂砕き
[道具]:デイバッグ一式
[思考]:化け物と戦う
2005/04/30 修正スレ61
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