遠のいていく長門の姿を見つめながら、このまま行かせていいのかと自問した。
(いいはずが、ない)
彼女が最後に見せた表情は、本人がそう望んでいるように見えたか。
違う。望んだことなら寂しそうな表情はしない。
追わないと、彼女を。追わないと――追う?
僕を殺すかもしれないと宣言した少女を、僕が?
シャナを見つけることだって叶っていないのに、長門さんを優先するのか。
それでも気がつけば僕は長門さんを追っていた。
草などが折れており、方向は検討がついている。
追いながら長門さんの事を考えていた。
彼女を説得できなければ追いつこうが意味はない。
(そういえば未来人とか言ってたな……)
前にシャナが世界は矛盾や衝撃に弱いと聞いたことがあった。
未来人がここで死ぬのは問題がないんだろうか。
ここの参加者がトーチのようによく出来た紛い物だったらどうだろう――いや、違う。
トーチの如く紛い物だけなら作れるだろうが、自分に蔵された零時迷子はどうだろう。
秘宝中の秘宝と言っていた零時迷子を複製できるだろうか。
(……どうせ複製するんだったら生前の僕を作ったほうが楽なのに)
些細なことで紛い物説を否定しながら、新しい説を考えてみる。
(……だめだ。でもシャナや長門さんなら分かるかも――――)
そこまで考えて、悠二は自分の考えに驚いた。
いつのまにか此処で初めて会った少女をこんなにも頼りにしている。
長門さんの名をシャナを、無意識とは言え同列に並べた。
そのことに色々と頼りになったからなぁ、と誰に言う訳でもなく言い訳しながら苦笑した。
森を抜けたところで、長門さんの足跡は辿れなくなっていた。
今まで東に突き進んでいたのだが、どうやら足跡を辿っているのを気付かれたらしい。
「……長門さんはどっちだ?」
地図を見ると、このまま東へ突き進むと海があるようだ。
このまま直進はしないだろう。
だとすると、南か北へ移動へすることとなる。
南は城。城から逃げたことを考えると――――北か。
悠二は北東の方へと(森を抜けてから直角に曲がるとは思えない)突き進み、人影が見える。
人影に向かって悠二が叫んだ。
「長門さん!」
駆けより、近づいてみるとそれは長門さんではなかった。
正確に言えば人でもない。
「ふぉーっふぉっふぉっふぉっふぉ」
それ――ボン太君が叫んだ。
(痴れ者め……貴様には探す者が他にいるだろう)
そうアラストールが考え、口に出したが――――
「ふぉふぉふぇふぉふぇ」
悠二にはボン太君が二度喋ったようにしか聞こえなかった。
「なんだ、これ……」
あまりにシュールな光景に、悠二は呟く。
中にアラストールがいることなど、当然知る由もなかった。
389 :気付かぬ再会 :2005/04/03(日) 00:59:57 ID:Kshv8jde
【F-5/平原(北東辺り)/1日目・6:30】
【小早川奈津子】
[状態]:絶好調
[装備]:コキュートス(アラストール入り。アラストールは奈津子の詳細を知らず)
ボン太君量産型(脱衣不可能)
[道具]:デイバッグ
[思考]:1.竜堂終と鳥羽茉理への天誅。2.正義のための尊い犠牲をこの手で
【坂井悠二】
[状態]:かなり疲労。
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック一式
[思考]:1.なんだこりゃ……。 2.長門さんとシャナの捜索
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