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第227話:綱渡り

作:◆fq5lIWPgLQ

「ようこそお客人」
 流石にそう出迎えられるとは3人とも思わなかったようで、侵入者である3人は面食らってしまった。

 クエロ、クリーオウ、そしてゼルガディスの3人は、慎重に学校内の探索を行った。
 勿論学校――しかも木造の――であるわけで、さしたる武器や食料と言ったものも無かった。それどころか、人の気配すら殆ど無かった。
「……無駄骨か」
 ゼルガディスは憮然と呟いた。古い作りなので足音が響くし、いざとなれば脱出ロも多い。雨風がしのげ、調理場のようなものもあるようだった。
「拠点にするには悪くないと思ったんだがな…」
 実の所、タッチの差で彼らは人類最強+1と擦違っているのだが、彼らが慎重を期していた事、人類最強が急いでいた事の両方が作用したおかげで、ここで鉢合わせとは行かなかった。
 結果的にアメリアと再開できなくなることまでは、管理者と言えど予想はしなかっただろうが。
「さて、どうするのかしらゼルガディス」
 値踏みするようなそんな声で横を歩くクエロが言う。
 はたから見れば、彼女は容姿も美しく、気立ても良く、頭も周り、行動力もあった。
(……だが、それが気に入らない)
 ゼルガディスは、強くなる為にまっとうな人間の肉体を捨てた。その末路がこの岩人形と邪妖精、そして人間が混ざった哀れな姿だ。
 完璧な人間などいない。かの赤法師でさえ、その全能と言える力の代わりに、その視覚を奪われていたのだから。
(赤法師……レゾ)
 ゼルガディスを騙した男。仲間を殺した男。大魔道師レイ・マグナスと並び称される魔術の才を持ちながら、己の盲目だけは治せなかった哀れな魔王。
「ちょっと、ゼルガディス?」
「……ああ、すまん。考え事をしていた」
 クリーオウに言われて現実に戻る。
「クエロ、放って置いて先に言っちゃったよ。ほらあそこ」
 前を見れば、クエロが部屋の前で立ち止まっている。次の探索はあそこのようだ。
(俺は……同じ間違えはしない)
 光の剣を腰に確かめて、クエロの後を追った。

 そうして扉を開けて、先の挨拶であった。
「……ゲームには、乗っていないのか?」
 ゼルガディスが口を開いた。中の二人、一人は男、一人は女。挨拶をしたのは女であり、風体的にはどちらも戦闘向けとは言い難い。
「まぁ、そんな所かな。こちらは特に敵対の意志は無い。そちらは未だ読書に夢中のようだし…」
 サラは空目を見やったが、彼は現在10冊目の読書を終わろうとしている。かなり驚異的なペースである。
「私としても、君達3人を相手にして生き残れるとも思えない」
「……そう単純にも思えないがね」
 ゼルガディスはそう言って剣から手を離した。敵意はお互いに無かった。
「信用するの?」
「アンタよりはな」
 クエロは内心舌打ちをした。このゼルガディス、ガユス等よりよほど「裏」の事情に精通しているか若しくは……兎も角彼は思いのほか用心深く、簡単に信用を勝ち取る事は出来なかった。
 お互いが綱渡りであった。今は利害の一致で一緒に行動しているに過ぎない。
「まぁとにかく、今はお互い情報の交換といかないかね。それに……もうすぐだ」
「何がだ?」
 ゼルガディスがサラの言葉に疑問符を投げる。
「管理者様からの、ありがたい放送タイムさ。それまでにお互いの情報を整理しようじゃないか」
 
【残り91人】


【D−2(学校内3階図書室)/1日目・05:30】
【クエロ・ラディーン】
[状態]: 健康
[装備]: ナイフ
[道具]: 高位咒式弾、支給品一式
[思考]: ゼルガディスに同行する、サラと会話
+自分の魔杖剣を探す→後で裏切るかどうか決める(邪魔な人間は殺す)

【C-2/高台の下辺り/1日目・03:05】
【クリーオウ・エバーラスティン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]:ゼルガディスとクエロに同行する

【ゼルガディス・グレイワーズ】
[状態]:健康、クエロを結構疑っている
[装備]:光の剣
[道具]:支給品一式
[思考]:サラと情報を交換する、リナとアメリアを探す

【サラ・バーリン(116)】
[状態]: 健康
[装備]: 理科室製の爆弾や煙幕を幾らか。及び、メスや鉗子など少々。
[道具]: 支給品一式/巨大ロボット?※1(詳細真偽共に不明)
[思考]: 刻印の解除方法を捜す。ゼルガディスらと情報を交換する
[備考]: 刻印の盗聴その他の機能に気づいている。刻印はサラ一人では解除不能。

【空目恭一(006)】
[状態]: 健康
[装備]: 図書室の本(読書中)
[道具]: 支給品一式/原子爆弾と書いてある?※2(詳細真偽共に不明)
[思考]: 書物を読み続ける。ゲームの仕組みを解明しても良い。
[備考]: 刻印の盗聴その他の機能に気づいている。

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