remove
powerd by nog twitter

第175話:そんな大事なものなんだ……これ

作:◆xSp2cIn2/A

「かはは!やっぱりか!」
 人間失格の殺人鬼は、茂みに飛び込み影を見た瞬間、確信したようにつぶやいた。
そこに居たのは中学生くらいの、やけにグラマーな少女だった。
その少女は、手に持った鉄パイプを杖のようにつきながら、左足を引きずっている。
「ぼ……ボクの…わっか……かえし…て」
「ぎゃはははは!何のことだかしらねーが、とりあえず寝てもらうぜ」
出夢はそう言うと、一瞬で少女に肉薄し、鳩尾に拳を叩き込む。
「ぼ…ボクのわっ……」
ドズン!
「うっ!」


ドズン!
すごく嫌な音が、僕の耳に響いた。
出夢くんの一撃を喰らって体が半分に千切れてなければいいけど……
物凄い音の後、肩に小柄な少女を担いだ零崎と出夢くんが、茂みの中から出てきた。
「凪、やっぱりあいつだったぜ」
あいつ?知ってる人かな?
「あー糞ッ!ここまで手加減するとこっちが気持ち悪くなる」
なんだかとんでもないことを言ってる出夢くんは置いといて。
「知り合い?それにしては随分乱暴に扱ってるけど」
放り投げるように少女を木の下に置いた零崎を見て、ぼくは凪ちゃんに聞いた。
「あぁ、さっき言ってた「ぴぴるぴ」のガキだ」
零崎が答える。
え?と言うことは、こんな風にしても意味が無いんじゃないのだろうか?
ぼくの思っていることを察したのか、零崎がさらに答える。
「あぁ、本当は殺っちまおうかと思ったんだが、今回はさっきと様子が違ったんでね」
「様子が違った?」
「あぁ、さっきは「ぴぴるぴ」しか言わなかったんだが、今度はわっかを返せだの何だの
 言った上に、殺気が全く感じられなかった」

?どういうことだろうか?しかし、わっかをここまで取り返しにくるということは、
あの零崎が持っているわっかは、かなり重要なものなのだろう。そう、少女の生死にかかわるような。
そのとき。
「ん……うぅ………ハッ!」
さっき気絶させたばかりなの少女が、勢いよく立ち上がった。
「なッ!どういう体してんだよ!」
零崎が驚愕の声を上げる。
「チッ!」
再び駆け出そうとした出夢くんを、凪ちゃんが止める。
「まて、今のあの子なら会話が成立するかもしれない」
「ボクのわっか……かえして」
立ち上がった少女は、視界に零崎を捉えると、今にも泣き出しそうな声を出す。
うぅ!なんだか凄まじい罪悪感がっ!
「わかった、俺の質問に答えたら返してやろう」
凪ちゃんの言葉に振り向く少女。おぉかなりの美少女だ。
「こたえる……ボク答えるから……はや…く……うぅ!」
なんだかぼくたちが寄ってたかって、あの娘を虐めてるようだ。ていうかエロい。
「まず、なんでそんなに、あのわっかが欲しいんだ?」
「ぼ、ボク達天使は…うぅ!天使のわっかが無いと……」
そこで少女は顔を赤らめる……って!天使って言いましたか?あの娘は!
「げりぴーになっちゃうんだ……」
うわぁ………げりぴーって………
「「「「やな天使」」」」
ぼく達四人の声が見事にハモった。


【戯言ポップ】
(いーちゃん/零崎人識/匂宮出夢/霧間凪)
【F−4/森の中/1日目・05:45】
【いーちゃん】
[状態]: 健康
[装備]: サバイバルナイフ
[道具]: なし
[思考]:ドクロちゃんに質問。休息をとる

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:上に同じ

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]: 天使の輪
[道具]:デイバッグ(支給品一式)血の付いた出刃包丁
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。

【匂宮出夢】
[状態]:平常
[装備]:???
[道具]:デイバック一式。
[思考]:生き残る。いーちゃんに同じ

【ドクロちゃん】
[状態]: 頭部の傷は軽症に。右手腱、左足腱は、杖を使えばなんとか歩けるまでに
    天使の輪もない。
[装備]: 鉄パイプ
[道具]: 無し
[思考]: ボクの天使のわっか返して!
  ※能力値上昇中。少々の傷は「ぴぴる」で回復します。

←BACK 目次へ (詳細版) NEXT→
第174話 第175話 第176話
第134話 霧間凪 第170話
第134話 いーちゃん 第170話
第134話 零崎人識 第170話
第134話 匂宮出夢 第170話
第125話 ドクロちゃん 第170話