remove
powerd by nog twitter

第150話:魔女の直観

作:◆a6GSuxAXWA

 佐山達は互いの情報を交換すると、岩陰を利用しつつ、海岸線に沿って西に移動を開始した。
 そして――
「……やはり、ゲームに乗った馬鹿者はそれなりに居るようだ」
 眼前には、事切れた少年の遺骸。
 頭部をかち割られている――凶器は剣、だろうか。
 周囲を調べれば、足跡と少年のものではない髪の毛。
「今から二時間くらい前、かな? 髪の長い男の人が殺したみたい」
 死骸と犯人のものらしき足跡から離れながら、ぽつり、と詠子が呟く。
 黙祷を終えて隣を歩く佐山は、その呟きに首を傾げる。
「分かるのかね?」
「うん、ここにいるくねくねした人が教えてくれたよ? ありがとうね、くねくねさん」
 何も見えない空間に向かってそう言う詠子の奇矯な言動。
 ……やはり真性なのか?
 その言葉が単に霊感少女の類を装っているだけの推理なのか、それとも実際に何かを見ているのかは不明。
 だが、今はそんな事は気にするべきではない。
「やはり朝を待ち、森伝いに街へと移動するべきだろうかね」
 その呟きに、詠子が頷く。
「うん。あと、お城には近付かない方が良いかもね――何だか危ない気がするから」
 遠方に聳える黒い影を見ての言葉に、佐山は考える。
 詠子の言葉を信じるべきだろうか、と。
「……信じよう。この近辺の森で朝を待ち、そのまま森伝いに北上して北西の市街地を目指す。城近辺は迂回。――良いかね?」
「“魔女”はもう“裏返しの法典”――“悪役”に誑かされるって決めたから」
 詠子が微笑み、透明な狂気と純粋な闇が、ほんの少しだけ蠢いた。
 佐山は気付かず、ゆえに動じない。

「あ、そうだ。これをあげる――白髪の子が持っていたの。私には使えないし、使う気も無いし」
 そして荷物の中から手榴弾を取り出し、佐山へと。
「助かるよ――有り難う」
「どういたしまして」
 二人は微笑みを交わし、そのまま海岸沿いの森へと。
 ――朝はまだ、遠い。


【座標H−5/海岸沿いの森の蔭/時間(一日目・3:01)】

【佐山・御言】
[状態]:健康
[装備]:Eマグ、閃光手榴弾一個
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:1.仲間の捜索。2.言葉が通じる限りは人類皆友達。私が上でそれ以外が下だが。

【十叶詠子】
[状態]:健康
[装備]:メス
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:1.元の世界に戻るため佐山に同行。2.佐山の仲間の魂のカタチも気になる。

←BACK 目次へ (詳細版) NEXT→
第149話 第150話 第151話
第129話 十叶詠子 第191話
第129話 佐山御言 第191話