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第143話:王子さまはティーが好き

作:◆xSp2cIn2/A

 ブン!
 ブン!ブン!
 薄暗い住宅地に、剣を振る音が響く。
「1761………1842…」
 ブン!ブン!ブン!
 ブン!ブン!ブン!ブン!
 音は、全く遅くなることはなく、むしろペースアップしていた。
「1903………2000!」
 ブン!
 そして、一際大きい音を出し、止んだ。
「やはり、不慣れな武器は扱いづらい……か……」
 先ほどまでレイピアを振っていた青年。シズは、誰ともなしに呟くと、
レイピアを、腰のベルトに挟んだ鞘に収め、数メートル先にある喫茶店に入って行く。
 カランカラン
ドアについているベルが乾いた音を鳴らす。
シズは喫茶店のカウンターの中に入っていくと、湯を沸かし始めた。
 お湯が沸くまでの間、腰からレイピアを引き抜き、裏の倉庫にあったもので簡単にレイピアの手入れをする。
デイパックの中に入っている斧も、同じように手入れをしてテーブルの上に置いた。
 シズはしばらく何かを思考するように、窓の外を眺めていたが、お湯が沸いたのでカウンターに戻る。
上品なカップにティーパックを入れ、お湯を注ぐ。
お茶を入れると、上品な仕草で味わうように一口お茶を飲み、デイパックからパンを取り出すと、
一切れちぎって口の中に放り込む。特に感慨も無く租借し、嚥下すると、
また一切れ口の中に放り込み、残りをしまう。
残りのお茶も一気に流し込むように飲み込み、先ほど倉庫から物色してきたものをテーブルに広げる。
テーブルの上には、
簡易救急セット、紐の束、目の細かい布、数本のナイフ、ジッポー、そして先ほど磨いた斧が乗っていた。
 シズは、一つ一つを丁寧に調べるとデイパックに全て戻した。
「さて、あと10分で6:00か……行動を起こすならその後だな」
シズはそう言うと、何をするでもなく手を組み合わせて思考をめぐらす。

 さっき名簿を見たが、ティーの名前があった。当面は彼女を探すことにしよう。
あとキノさんの名前もあったな。
彼女ならこんなゲームに乗ることは無いだろうから、彼女のことも探そう。
そういえば陸はここに来ているのだろうか?もし来ているのなら、
早く見つけないと自分を探して無茶をしかねない。
 しかし、こんな状況で探すべき人物が結構多いことに、自分でも驚く。
俺に、こんなに頼るような、もしくは守るような人物が居ることが少しうれしく感じる。
なんだか自分が孤独では無いように思えるのだ。
 そうだ、キノさんを見つけたら、エルメス君も探さなくては。

そこまで思考を進めたところで、唐突に思考が停止させられた。
頭の中に、ノイズのようなものが響く。
シズは時計を見た。6:00 
そう、一回目の放送が始まったのだ。
そしてシズはこのあと、探すべき人物が一人減ったことを、知る。



124 :王子さまはティーが好き(3/3) ◆xSp2cIn2/A :2005/03/30(水) 15:57:00 ID:jIrLPut2
【シズ】

【A-3/住宅街の喫茶店/1日目・6:00】
[状態]:正常
[装備]:レイピア
[道具]:2人分のデイバッグ(支給品入り)斧、
    簡易救急セット、紐の束、目の細かい布、ジッポー(ライター)。
[思考]:キノ、ティー、陸、エルメスを探す。(ティファナが死んだことを知らない)
    自分の命を狙うものには説得を試みますが、
    通じなかった場合は相手を躊躇無く殺すつもりです。

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