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第014話:それでも貴女が来るのなら

作:◆h8QB1rxvpA

シズは墓を作り終わると、海を見ていた。
暗く静かな海。かつて自分はその上で戦ったことがある。

「本当に済まない…」

そしてもう一度墓を見て、彼は呟いた。


数分前の話。
シズが海沿いにゆっくり歩いていると、突然ある事が起こった。
そう、それは突然の襲撃者の出現。
シズには知る由も無いが、その者の名は「島津 由乃」と言った。

「うわぁあぁぁぁあぁぁぁああぁぁ!!」

涙を浮かべ、大声を出しながら…恐らくは支給品であろう斧を振り回した。
だがその動きは甘く稚拙だ。いとも簡単に避けられる。

「君、何があったかは知らないが…止めないか」

シズが話しかける。
だが少女は答えない。恐怖で心が埋まり、言葉が聞こえない様だ。
距離を置き、慌てず冷静に自分の支給品を確認した。
中身はレイピアだった。護身にするには十分過ぎる。
そしてそれを取り出した瞬間、シズの視点は急に上へと移った。

気が付けば、少女が馬乗りになっている。
そして斧を上段に構えている。振り下ろすつもりだ。
何故相手が肉薄したことに気づかなかったのだろうか。武器が出たことによる安心感か。
そして、少女が斧を振り下ろさんとした時……。

シズは、レイピアを少女の喉に突き立てていた。
喉から細身の刃を生やした少女は、そのまま静かに亡くなった。




それから数分後…つまり、今。

シズはあの少女のデイバッグ諸々も回収し、一人東へ歩くことにした。
食料などもそうだが、斧も使いようによれば剣にも勝る部分もある。
故に少女の支給品も有難く頂戴することにしたのだ。

「……いつからこんな計算高い人間になったんだろうな、俺は」

嫌な癖だ、と自嘲する。
だがそんな事は言ってられない。

まずは、自分の身を守らねば。


【A-1/砂浜/1日目・0:15】

 【シズ】
 [状態]:正常
 [装備]:レイピア
 [道具]:2人分のデイバッグ(至急品入り) 斧
 [思考]:東へ向かう 護身


【島津由乃 死亡】
【残り116人】

自分の命を狙うものには説得を試みますが、
通じなかった場合は相手を躊躇無く殺すつもりです。


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