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第047話:悪役と宇宙人

作:◆5RFwbiklU2


(どうしたものか・・・・)

佐山御言は悩んでいた。
一つは、理不尽な事態に巻きこまれているということ。

(殺し合いなど)
くだらないことだ、と思う。
このくだらないゲームを発案した奴を見つけたら、自主的な反省を促さなければならない、と固く誓う。

二つ目は目の前のことだった。
自分たちは開始場所からワープ、とでも言うのだろうか。
全く別の場所に移動させられたのはわかる。
とても非常識な方法だが、まだ理解の範囲内だと思う。
しかし、周りの奇人どもならまだしも

「常識人の私には少々ついていけない事だ・・・」

「え?」

「なんでもない、独り言だ。 忘れてくれたまえ」

殺し合いという状況から鑑みるに、参加者の移動はランダムだった筈だ。
なのに、目の前には一人の少女が立っている。

(何故私の目の前にいるのかね・・・・)

自由に行動できるようになったと同時に、この事態に陥ったので、無論荷物の中身などは確認していない。
つまり今の自分は無手。
戦力確認の意味も含めて、相手の容姿を観察する。
自分と同い年か、少し下のような感じのする可愛らしい少女。
それを理解しつつも、新庄君には及ばないね、と心の中でつぶやくのを忘れない。

(しかし)

容姿だけで判断するのは早計だと自分を戒める。
スタート地点で少し周りを見回しただけだが、奇抜な格好をした人物や、ロボットのようなものもいた。
しかも、周囲には容姿が普通でも、性格がおかしい人間で溢れている。
自分の目の前に立っている少女が、地球人だとも限られないのだ。
(これは・・・・)
背中に冷や汗が流れる。
もしかしたら自分は今、人類として初の地球外生命体とコンタクトしようとしているのかもしれない。
それならば、全人類の代表として恥ずかしくないように振舞うべきだ。
今からしようとしている自己紹介一つにしてもだ。
数秒考え、自分に出来るだけの自己紹介を構築する。
(――よし)
心の中だけで、コホン、と咳払いをし、自己紹介に及んだ。
手を大きく広げ、歓迎の意思を示し、良く通る声で言った。

「お初にお目にかかる! 私の名は佐山御言! 宇宙の中心に立つものである!」

言い終え、うむ、と満足する。
これで相手には地球人の礼儀正しさと正確な自己認識能力が伝わったはずだ。
ふと相手を見ると、面食らった顔をしている。
やはり、自分が最初にあってよかった。
人類に、地球という星に対して、驚いている。

少女と見える宇宙人は、少し戸惑いながら口を開いた。

「あの・・・私は、宮下藤花って言います・・・」

小さな声で告げられた自己紹介は、まごう事なき地球のものだった。


【残り105人】

 【座標G−6/場所、森の中/時間(一日目・00:10)】

 【佐山 御言】
 [状態]:現状についての思考。五体満足。
 [装備]:デイパックは未開封。(中身はお任せ)
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:殺し合いを止めること。 地球外生命体とのコンタクト。

 【宮下 藤花】
 [状態]:奇人(佐山)を前にして緊張状態。 五体満足。
 [装備]:デイパックは未開封。(中身はお任せ)
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:目の前の人物をどうにかすること。

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