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第005話:割り箸の恐怖

作:◆t4u50oq2Wo

場所で言えばE-7だろう。マジク・リン(115番)は暗闇の中、そうアタリを付けた。目はとうに
暗闇に慣れていて、その視界の中、大体北の方に、大きな湖が見える。ただ一つの池は
D-6とD-7をまたいでいるから、その南であるこの茂みはE-7と言うことになるからだ。

目が慣れたついでに、配られたバッグの中身を確認してみた。食べ物、水、紙と鉛筆。
地図は折りたたんでローブのポケットに突っ込んである。それとマジク、オーフェン、
クリーオウ、ついでにボルカノ・ボルカンの名前を含む参加者全員の名簿、他、雑貨。

あの胸くそ悪い管理人が説明した物は一通りそろっていたが、肝心の武器、支給品が見あたらない。
明かりを点けるわけにもいかず、暗闇の中、ガサゴソと四回バッグを漁り、しまいには
中身を地面に並べて五分ほど思案したあげく、ちっぽけな一箭の割り箸が支給品なのだと
結論づけた。要するに、ハズレだ。

こうなれば頼みの綱は首にぶら下げた牙の紋章だ。他の人たちの剣や怪しげな武器が
次々取り上げられていく中で、自分と師匠のペンダントだけが見過ごされたのは運がよかった。
端から見ればどうということのないアクセサリーなので当たり前と言えば当たり前だが、
使いようによっては弾丸をも超える武器になる。
(今はとにかく、お師様と、クリーオウ、はどうしよう。合流しないと)

わけもわからず放り込まれたサドンデスだって、自分の師匠ならばいつもの悪あがきで抜け出せる
はずだ。マジクはその点において、絶対的な信頼を寄せていた。だからまずは、オーフェンと
合流しなければならない。
(いや、やっぱりクリーオウも仲間だし、知らないところで死んでたらなんかアレだし)
考え直す。本心は彼女への恐怖心だということに、彼は幸か不幸か気づかない。

ちなみに、ここに至るまでコミクロンの名前が一度も出ていないのは二人に面識がないからである。
オーフェンから事前に説明は受けていたが、信頼するには少し材料が足りない。
そしてもう一人、彼らのメンバーであるはずの地人は、思い出す意味も必要もこれっぽっちも無かった。

とにかく、行動だ。散らかした物資をバッグに詰め込み、立ち上がろうとした、そのとき
(ん?)
彼は咄嗟に動きを止めた。北に広がる湖、そのほとりに、いつの間にか誰かが瀬を向けて立っていた。
不思議なことにその人影は、まるで地面から棒が生えたかのようなシルエットで、ただあった。

【残り117人】

【E-7 湖から少し南の茂みの中 1日目深夜】
【マジク・リン】
[状態]:健康体
[装備品]:牙の紋章
[道具]:割り箸、その他支給品
[思考]:オーフェン及びクリーオウとの合流/人影を見極めるまで待機

【D-7 湖のほとり 同時刻】
【ブギーポップ(宮下 藤花)】
不明

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