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第021話:絶対殺人武器の憂鬱

作:◆E1UswHhuQc

「ヒャッハッハ。アンタもツイてないな」
「……分かってるからあまり喋らないで、マルコシアス。誰かに見つかるでしょう?」
 不機嫌に、ミズーは答えた。全く、運が悪い。
 何の意味があるのか分からない殺人ゲームに巻き込まれたかと思えば、支給された武器はおしゃべりな本だった。武器として使えないことは無いが、取り回しに不便すぎる。
 月灯を光源に、改めて名簿に目を通す――フリウ・ハリスコーの名前。
(運がないのは私だけじゃない、か)
 硝化の森で育ったという精霊使いの少女の名は、御遣いの言葉を思い出させる。問うことしかしない、哀れな精霊。
 未来精霊アマワ。そして名簿には、その契約者の一人の名がある。
 ウルペン。彼は死んだ。
(……違う。わたしが殺した)
 死者は蘇えらない。それは常識だ。
 だとすれば、このゲームの主催者は常識外の力を持っていることになる。いや、彼らがそんな力を持っているから、自分はここにいる。
 考える事をやめ、ミズーは息をついた。
「まずは……フリウね」
「お仲間も一緒に来たのか? 難儀じゃねっか。ところでよ」
 けたけたと笑うマルコシアスが、急に口調を変えて言った。
「その名簿の中に、マージョリー・ドーってぇ名前はあるか?」
「マージョリー・ドー? ……あるわよ」
「そーりゃあ良かった。ソイツは俺の契約者でな」


「契約者……」
 マルコシアスの発した言葉に、つい肩に手をやる。
 獅子のマント留めは、そこに無い。
 本は気にせず言葉を続ける。
「話によっちゃあ、仲間になってくれるかもしんないぜ。ゲームに乗る気はねえんだろ?」
「……ええ。そうよ」
 言って、ミズーは立ち上がった。殺人精霊によって死に絶え、硝化した帝都の光景を脳裏に浮かべて。
「殺し合いは最後の手段でいい」

【残り115名】

【D−5/森の中/一日目・00:40】  

 【ミズー・ビアンカ(014)】
 [状態]:正常
 [装備]:神器グリモア(形状:本。マルコシアス入り。この後の行間あたりにマージョリーの容姿説明)
 [道具]:デイパック(支給品入り)
 [思考]:フリウ・ハリスコー、マージョリー・ドーとのとの合流。

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