remove
powerd by nog twitter



「エリオルからの贈り物<小狼編2>」


(わざわざさくらの誕生日にあらわれなくても…)
ついつい一方的にライバル視してしまうクセが抜けていないことに自分自身が戸惑った。
(あいつも、悪気があったわけじゃないだろうが)
と慌てて思い直す。

「おひさしぶりです」

久しぶりに二人での外出を楽しんで、友枝に戻ってきた二人の前に突然あらわれたエリオル。
さくらは素直に喜んでいたが、
(あいつのことだ、偶然を装ってなにか企んでいる)
またおもいっきりエリオルのことを悪く考えている自分に気付いたが、そのことに関しては確信があった。
穏やかなエリオルの笑みすら、小狼の気に障った。
(大体プレゼントのビデオなんか、偶然で持ち歩くわけがない!)
しかも、おれの分までーと、そこまで考えて、彼はようやく思いだした。
「ビデオ!」

エリオルがくれたビデオテープ。
さくらに手渡したときにはそれに何がうつっているのか大いに気になったが、いざ、自分にも 手渡されると、得体の知れない不吉な予感がしてしまった。
(見たくない)
素直にそう思った。だから………忘れていた。
思い出した今も本当は見たくない。
だが、もしも彼が見ないですませば、どうやってだかエリオルがそのことを知るだろうことに見当がついた。
たかがビデオで臆病者だと嘲笑されるのは嫌だった。エリオルにそういう意図はないにせよ、少なくとも小狼は揶揄されるだろうと思いこんだ。
それにもし、今度誘われているお茶会で感想でも求められたら大変だという思いもあったろう。
明日に持ち越しても良かったが、所詮、李 小狼は義務や義理を重んじる人間だ。
先回しにせず、今日のことは今日すましておくべきなのだ。

だから、仕方なくベッドから起きあがってビデオを探し、リビングに持っていった。
きちんと背筋を伸ばし、画面をぼんやり見つめていた小狼は、流れる映像にすぐに引き込まれていった。

indexに戻ります novelページの目次に戻ります 前のページ 次のページ