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お勧め双眼鏡はコレだ(1)
私はこんな双眼鏡が欲しい口径10mm編


 派手に予告を打った「お勧め双眼鏡編」
 初回は双眼鏡としては最小サイズ、口径10mmの製品群です。

 大半はダハプリズム双眼鏡で レンズの上下を切って視野を横長にしたフラットタイプが人気の中心ですが、クラシカルなミクロン型のポロプリズム双眼鏡も数社から発売されています。
 いずれにしてもサイズがサイズですから 主な用途は観劇や美術鑑賞が中心でしょう。
 お洒落な外観の製品が多いのも頷けます。

 具体的な評価の前に、ちょっと真面目に「優秀な超小型双眼鏡の条件」を考えてみましょう。

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    超小型双眼鏡の良さって?

 このクラスの双眼鏡は 軽さと小ささが何よりの魅力でしょう。

 反面、限られたサイズの本体ですから 全ての要素で理想的な機能を実現させることは困難です。
 どこかで利点を追求すれば、必ず別なところに付けが回ってきます。
 概ね、大きさと機能性はトレードオフの関係に位置しています。

 両者のバランスを何処で折り合わせるか。
 何を捨てて、何を取るのか。

 製品ごとに 設計者の思想が見えてきます。
 変なゴマカシが効かない分、大きな双眼鏡よりも 傍目には面白いサイズでもあるんです。

 その視点から行くと、今 市販されている双眼鏡は大きく3つに分類できるでしょう。

 現在 大勢を占めているのは、サイズと軽さをトコトンまで追求したフラットタイプの商品群でしょう。
 視野の上下を切り詰め 横長にすることで、本体の厚さを2cm弱まで削っています。
 重さも100g台前半と 誇張では無くポケットに収まるサイズです。
 製品の代表はミノルタ・UCシリーズ、ペンタックス・フラビーノ、オリンパス・RFシリーズ。
 この手の双眼鏡は室内での使用が多いのですから 横長の視野は合理的な選択でしょう。

 これに対して サイズは多少妥協しても 円形の視野を得ようとする製品も存在します。
 代表はキャノンFCシリーズでしょう。
 厚さは典型的なカードサイズ双眼鏡の倍近くありますが、使っていての違和感が少ないのが利点です。
 出来が良い製品だと 20mm双眼鏡の代わりに屋外で使用しても快適です。

 また、大きさや使い勝手での不利を承知で デザイン追求型の製品があるのも面白いところでしょう。
 代表は言うまでもなくニコンのミクロン双眼鏡や5X15DCFです。
 これらは携帯性やサイズの点で カードタイプに敵いませんが、共に独特のデザインに魅力を感じる方も多いのでしょう。


 実際に選ぶ時のことを考えてみましょう。

 まずは設計が自分の使い道にあっているかどうかが 最初のポイントです。
 それぞれの製品には 強い癖がありますから 大型機以上に注意が必要です。
 フラットタイプでも視野の縦横比はメーカーごとに異なりますし、目当て・フォーカスリング・視度調整などの操作系もメーカーごとに特色があります。

 これらの双眼鏡は口径が小さい上に 視野も狭いので、高倍率の双眼鏡は避けるべきです。
 基本的には5倍から6倍が使いやすいのです。
 普通の双眼鏡なら問題の無い7倍や8倍も、この保持しにくい形状では倍率が高いのです。


    お勧め超小型双眼鏡は?

 筆者が考える「お勧め双眼鏡」を挙げてみましょう。

キャノン・5X17FC
ミノルタ・UCIII 6X16
ニコン・6X15CF「ミクロン」
ブシュネル・6x18 NEXT VIEW

記号の見方はこちら

 まず三ツ星評価の双眼鏡は キャノン5X17FC

 このサイズでありながら正円の視野を持ち、自然観察分野にも違和感無く使うことが可能です。
 ハイアイポイント設計になっているのも ウレシイイところです。
 視野の味付けは上級機と共通のキャノン流で、柔らかいながらキッチリと仕上げられています。

 勿論 欠点が無いわけではなくて、視度調整が省略されていたり 眼幅調整の範囲が狭かったり、使用者を限定してしまう要素が目に付きます。眼幅調整の問題はフラットタイプ全てにいえる点でもあるのですが・・・
 この辺りを潔く割り切ってしまうとは、キャノンも随分と思い切ったことをしたものです。

 より多くの人に適合するのは むしろミノルタ・UCIII 6X16の方かも知れません。
 わざわざ20mmではなく、このクラスの超小型双眼鏡を選ぶ理由を考えても 正統派フラット双眼鏡のほうが 真っ当な選択なようにも思われます。
 が、用途の広い双眼鏡を好む筆者としては どうしてもキャノン5X17FCのほうが好きになってしまうのです。

 同じシリーズでも7X17FCは暗さと実視界の狭さが気になります。
 微妙な視度調整が効かないのも この倍率になると厳しいところです。


 次点は、前にも書きましたがミノルタ6X16UCIII
 フラット型双眼鏡の元祖にして、今でも最も優れた製品です。

 必要以上の薄型設計に走らず 縦方向の視野が保たれているのが魅力です。
 この縦横比なら 上下に押さえつけらる窮屈さを感じないで済みます。
 視度調整の位置などにも 気が使われている形跡も認められます。

 私は眼鏡を使う関係で ハイアイポイントでない分 評価が下がったのですが、裸眼で使うのであれば キャノンFCよりコチラの方が使いやすいのではないでしょうか。

 細かい評価はともかく、入手し易い価格の製品では この二つが図抜けており 用途に応じて選べば間違いないはずです。 


 星一つは、ニコン・ミクロン6X15

 絶対的な値段は高価ですが、このサイズで この性能は多くの人を驚かすには十分でしょう。
 20mmダハ双眼鏡に比べても携帯性に優れているわけではありませんし、人間工学的な工夫がされているとも言い難い形状です。
 実用一本槍で考えていけば 不満が出てくるのですが、実際に製品を目の当たりにすると 全て許せてしまうだけの魅力を持っています。

 アウトドアでガンガン使うような製品ではなく、お洒落のお供にするべき品物なのでしょうが、上品に使っているだけでは勿体無い一品ではあります。

 このサイズでありながらニコンの味がするのは 流石です。


 つづいて、星が付かなかった主な双眼鏡を見てみましょう。

 まず、ニコン5X15DCF

 この双眼鏡が抜群の性能を持っていることは 疑う余地がありません。
 間違いなく、10mmクラス双眼鏡の最高峰でしょう。
 コーティング処理・ハイアイ接眼・位相差コートプリズムと高級舶来機 顔負けのスペックが詰め込まれています。
 そういう意味で、実に日本的な双眼鏡です。
 ただ、価格も舶来機 顔負けで、ツァイス8X20Bの正規品と同じ値段になってしまいます。

 実用よりも見栄え重視の設計になっているのは 見ての通り。
 シュミット=ペシャン プリズム使用の小型双眼鏡としては珍しく、2軸式の折りたたみ機構をもっていません。
 20世紀初頭のメーラー型やヘンゾルト形の双眼鏡をモチーフにしたのでしょう。
 中心軸で眼幅調整だけが可能なのは 非常にクラシカルです。
 設計者は現代版超高級オペラグラスを作りたかったのでしょうし、その意図はよく表現されていると思われます。

 しかし、汎用性とコストパフォーマンスを重んじる筆者としては その比類なき性能を羨ましいと思う反面 、星を付けることが出来ないのです。 どうせニコンだって アウトドアで使われることなんて考えちゃいないんだろうしさ。


 次にペンタックス・フラビーノオリンパス・RF

 どちらもフラット双眼鏡の後発ですが、ミノルタよりも横長の視野にしています。
 薄型の設計では有利で 手にしたときは便利そうに見えるのですが、ここまで視野が上下に制限されると 個人的には窮屈な印象が拭えません。
 動きが左右に限局された舞台なら良いのでしょうが、自然観察は勿論 スポーツ観戦にも不便なのではないかと心配されます。

 ペンタックスはこれまで最低倍率が8倍だったのも大きなマイナスです。
 近頃、7倍のフラビーノ7が発売されたようですが、気が付くのが遅すぎます。(フラビーノ7は未チェック)
 おまけに新型では視野を縦に伸ばしてきているのも、前作の欠点は承知していたのでしょう。

 この会社はカードサイズで唯一 ズーム双眼鏡も出しているのですが どうしたものでしょう。
 実物を手にしてみると ズーム比が小さい分だけ悪くないのですが、この手の双眼鏡の命が軽さにあるのは譲れないところです。
 ズーム双眼鏡として真面目な作りと設計技術は評価しますが、積極的にはお勧めできない製品です。

 対して、オリンパスは初めから6倍機一本槍でした。
 少なくとも この点ではペンタックスより先見の明があったのでしょう。
 ただ、眼幅調整を本体の中で行なう構造のため、横幅が無意味に大きくなっているのは 個人的な好みではありません。
 光学的な味わいでもミノルタに負けているのですが、実売価格が安いので ノンブランドの地雷を踏んでしまうよりは悪くないでしょう。


 続いて、絶対に買ってはいけない地雷双眼鏡。

 ブシュネル・6X18 NEXT VIEW
 カラフルなプラスチック製スケルトンの外観を見ただけで マトモな製品でないのは想像できるでしょう。

 手にしてみると眼幅調整はガパガパで節度が無く、ちょっと斜めにしただけで端から端まで動いてしまいます。
 フォーカスノブもユルユルで、指に力を入れていないとピントが保持できない。
 大体、合焦操作をダイアルではなく 前後に動くレバーでさせること自体、人間工学的には落第確実でしょう。

 視野も100円ショップ級で お目汚しと言うほかありません。
 贔屓目に見ても 以前取り上げた598円ポロ型双眼鏡と同レベルです。
 見本品の他にも 箱に入った3台をチェックしましたが、どれ一つとしてマトモな物が無いのは これが「仕様」なんでしょうねえ。

 実物を手にしてみれば 間違っても買う気にならないほど酷いのは むしろ代理店Vの最後の良心?

 それにしても、こんな代物に約4000円の値札をつけるとは いい度胸です。
 ブランドをバター臭くすれば 許されるとでも思っているのでしょうか。
 あとちょっと足せばタンクロー・ミニやオリンパス・RFが買えるんですが・・・


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