ポケットタイプ対決!!
高級機 対 激安機
ここまで見てきた範囲では、この3000円の双眼鏡は、約3倍の値段のニコンに敵わなさそう。
でも、普段何気なく使う双眼鏡なら安いほうが壊したとき気がラク。
多少性能が劣っていても、実用に使える品なら悪くありませんが。
ではこの激安双眼鏡。何処まで実用になるのでしょうか。
真昼の対決 -団地の午後-
それではいよいよ実戦で両者を比較してみましょう。
まず、家の周りを観察。
ニコンでは近くから遠くまではっきり像を結びます。遠くに木々の枝まできっちりと描写する能力はさすがです。
対してケンコーでは近くの対象に対してはコントラストは低く解像でもいまいちですがそれなりに見えそうにも思えます。
ところが、遠くの対象になるととたんに像が不鮮明で、全く像が結ばない。
左右どちらかのピントが合わないか、光軸に異常があるかのような症状です。
客観的な見栄味を再現するため、双眼鏡とデジカメを使って望遠撮影を行いました。
どちらの双眼鏡とも手持ちで、デジカメの方を三脚固定にして撮影しています。
ピントはデジカメの液晶画面で確認し、双眼鏡側で調節。
どちらもアパートの数字に合焦しています。
「スポーツスターU10X25DCF」
周辺像の悪化を軽度認めるし、糸巻き状の収差も僅かにある。この手の機種としては平均的か。
しかし、壁の模様まできっちり判別できるし、木の枝が近景・遠景とも判別可能で解像力は文句なく高い。
ケンコーSG「8X22DH」
糸巻き状の収差が大きい(アパートの屋根と壁の縁に注目)。辺縁でピントが合わないのは像面湾曲の影響か。
ニコンと比べると確かに広視界だが、合焦する範囲が狭い上に周辺での像の崩れが大きく実用には耐えない。
こんなに見えが悪い製品が社内の検査をどうやってパスしたのだろうか。
比べてみなくても、ニコンとケンコー、違いは一目瞭然です。
ケンコーは数字上の視野が大きくても、こんな像では全く使い物になりません。
このときは10秒ほど双眼鏡を覗いただけで目が痛くなってきました。
出来の悪い双眼鏡はあなたの健康を蝕みます。
夜更けの対決 -月光編-
昼間だけではなんなので、夜にも使ってみました。
この夜は月がきれいだったので、両方の双眼鏡を使って月を撮影しました。
ニコンで撮った月です。
ひとみ径が小さいので画像が暗めですが、きれいな写真が取れました。
肉眼でもかなりのクレーターを観察できました。
妻など、はじめてクレーターを見て感動していたほどです。
次にケンコーで撮影してみました。
ところが月にも全くピントが合わない。いろいろ双眼鏡を調整したのですがきれいな写真は全く撮れませんでした。
仕方がないのでデジカメで露出をあげて撮影。
やはりピントが全く合っていません。
ここまで来ればいくら安くても許すことは出来ません。
ガラクタ双眼鏡に3000円は高すぎます。ジャンク双眼鏡なら100円くらいが適当です。
厳正なる審判
いくら見えが酷いと言っても、これだけでは素人の空騒ぎと思われかねません。
客観的なデータがなければまずいので、JTBショーで双眼鏡検査機にかけてもらいました。
返事はやはり「完全な不良品」。
視軸は問題ないのですが、右の鏡筒で無限遠のピントが全く合わないのです。
どうやらプリズムの不良らしく、修理の仕様がないそうでした。
ここまで分かれば怖いものなし。早速購入した店にクレームをつけました。
店員に経緯を話したところ、新品と交換ということになりました。
本来なら返金を求めたいところなのですが、交換された品もこのホームページのネタにできますのでおとなしく新しい品を受け取りました。
双眼鏡も工業製品である以上、一定割合の不良品は許容しなければなりません。
交換された商品が問題なければ、このレポートを破棄するつもりだったのですが。
新しい双眼鏡も、店内では問題ないようでしたが、家に帰って外を見るとやはり酷い出来。
最初の品よりは何ぼかマシなのですが、実用に耐えうるレベルには程遠いです。
新しく我が家にきたケンコーがどれほどのものなのか、また後日レポートしましょう。
今回の経験で、双眼鏡の性能差の大きさと、同じ商品でも個体差が大きいことを身にしみて実感しました。
個人的にもいい勉強になりましたね。
今回の教訓
1、安い双眼鏡ほど念入りにチェックすべし。
2、双眼鏡は実際に覗いて見ないと性能は分からない。自分の見た目を信じる。
3、カタログの数字を信用してはいけない。定価はもっと信用してはいけない。
4、双眼鏡には個体差がある。気に入ったら見本品だけでなく購入するその品もチェックするべし。