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双眼鏡を試してみましょう

 双眼鏡を扱うお店を見つけ、(もし必要なら)カタログを何冊か集め下調べを終えたとします。
 あとは店頭で実際に双眼鏡を試してみる番です。

 初めての双眼鏡を手にして確かめなければいけない点を考えてみましょう。


    まずは触ってみましょう

 まず確かめなければいけないのは実際の双眼鏡の大きさと重さです。
 同じような商品でも、重さは意外と差があるものです。
 また、カタログ上の大きさは同じでも、手になじむか使いやすいかは個体差があります。

 ピント合わせ・視度調整・眼幅調整などの稼動部分は操作しやすいですか。
 デザインは気に入りましたか。
 お子さんだとピントリングに手が届かなかったり、眼幅が合わなかったりすることがあります。 


    双眼鏡を観察してみましょう

 次に、外側から見える造作を観察してみましょう。

 レンズのコーティングを確かめましょう

 まずは「双眼鏡の命」レンズがどのようなものかみましょう。
 レンズにどのようなコーティングがされているかは双眼鏡の明るさを左右します。
 本当はレンズやプリズムが空気と接している面はコーティングが必要なのですが、内部の様子は判別不可能です。

 最も高級とされているのは「マルチコート」あるいは「多層膜コート」といわれるものですが、内容は千差万別です。
 「マルチコート」といいながら「シングルコート」より性能の劣る双眼鏡も存在します。

 コーティングの良し悪しを見分ける方法は、レンズに斜めから照明の光を反射させてみることです。

 このとき、光の反射が少なければ少ないほど良質のコーティングといえます。
 派手に色がついているものが「高級」ではないのです。

 上に1例を示します。
 上の双眼鏡では蛍光灯の光をほとんど反射していない良質なコーティングがされています。
 対して、下の双眼鏡はかなり明るく反射が出ています。
 これはコートが良くない証拠です。

 一般的に用いられているマルチコートではレンズは暗い緑色に見えることが多いのですが、ニコンのマルチコートなどは赤みがかって見えることがあります。

 詳しくは、「双眼鏡の基礎」をご覧ください。


良質のマルチコートの例


青紫色に見える一般的なマゼンダコートの例
いいかげんなマルチコートより良いことも多い


コートされていないレンズの例
安い双眼鏡では今でも見られる

 一部では「IRコート」とか「レインボーコート」といった派手な色付レンズもありますが、透過率では通常のマルチコートより大きく劣ります。

 コントラストが悪くなり、視野が強く青みがかるので私は嫌いなコーティングです。

 コーティングをチェックするときは対物レンズだけでなく、接眼レンズも確かめましょう。
 対物レンズに比べ接眼レンズのコーティングが劣る場合は注意が必要です。
 今はマルチコートも耐久性がありますから、接眼レンズのコートも手を抜くようならレンズ内部やプリズムのコーティングも思いやられます。

 本当はコーティングがどうであれ、明るくくっきり見える双眼鏡ならいいんですが。


 「射出瞳」を見てみましょう

 次に外観に双眼鏡の性能が現れるのが「射出瞳」といわれるものです。

 双眼鏡を明るいほうに向けて、少しはなれたところから接眼レンズを見てみましょう。

 

 以前述べたように、瞳の大小は双眼鏡の明るさの指標です。
 瞳の大きさは口径と倍率で決まっていますが、ここでチェックしたいのは瞳の質です。

 上の写真は綺麗な円形の瞳を作っていますが、下の写真を見てください。

 瞳が四角に欠けて周囲に暗い影が出ています。
 「ケラレ」と呼ばれる現象で、プリズムに反射率の低いプリズムを使っているときに見られます。

 高反射率のプリズムを「BaK4」、反射率の低いプリズムを「BK7」なんて言われていますが、これはある光学ガラスメーカーの商標になっています。

 瞳を見るときは、瞳の明るさだけでなく瞳以外の場所の暗さも重要です。

 このように瞳の外が明るく見えるのは内部で乱反射が生じている証拠です。
 このような双眼鏡はコントラストが低く、ゴーストやフレアの多さが予想されます。
 このような双眼鏡に いい品があるはずはありません。


    実際に双眼鏡を覗いてみましょう

 ここまで外観をチェックしたら、今度は実際にのぞいて見る番です。
 狭い店内だけでは本当の性能がはっきりしません。
 窓があれば外の景色を眺め、なければ店員に外で試させてもらえるか交渉しましょう。

 店員が難色を示すようなお店はあまり信頼できません。
 もし、そのお店にあるのが数台ならすべてを覗かせてもらっても罰はあたりません。
 特に高額機を買うつもりなら、納得がいくまで比較しましょう。

 まず、基本的なところからチェックしてみましょう。

1.その双眼鏡は自分の眼幅に合いますか。
2.ピントの調節はしやすいですか。
3.視度調整は使いやすいですか。
4.その双眼鏡を持って長時間使うことができる大きさ・重さでしょうか。

 (5.めがねを使っている人であれば、メガネを着けてまま覗くことができますか。)
 (6.逆に、めがねをはずして使うのであれば、裸眼でも遠方までピントが合いますか。)

 

 次に実際に外の景色をを覗いて見ましょう。
 店内だけ見ていては分からなかった違いが見えてくるでしょう。

 同じような商品でも景色の見え方には大きな違いがあると思います。
 一流ブランドの製品同士でも比べれば初めての人でも優劣(あるいは好き嫌い)がつけられます。

 良い双眼鏡は一目みただけで景色が細部まではっきりしているのに対し、駄目な双眼鏡はどんなにカタログ数値が立派でもぼやけた像しか見えませんし、数十秒覗いていただけで頭痛と眩暈に襲われます。

 主なチェックポイントを上げてみると

1.自分に使いこなせる大きさ・重さですか。ブレたり腕が疲れたりしませんか。
2.遠くの避雷針や電線が、ブレずにはっきりとみえますか。
3.風景に不自然な歪みはありませんか。色の滲みやゴーストはないですか。
4.双眼鏡での視野は狭くありませんか。視野の周辺部もはっきり見えますか。
5.のぞいて見て目が疲れたり頭が痛くなったりしませんか。長時間の使用が苦痛でありませんか。

 

 細かい点は色々ありますが、実際に比べてみて くっきり見えると思った双眼鏡が良い双眼鏡であると信じて問題ありません。
 見た目の直感は結構あてになるのです。
 多分、実際に比べてみると良いと感じる双眼鏡は、あまり倍率の高くない機種だと思います。


 どうですか。
 気に入った双眼鏡は見つかりましたか。
 あとはその双眼鏡を何に使うか考える番です。 

 えっ、「予算の手当てはどうするか?」ですって。
 後はお家の大蔵省と相談してみてください。


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