双眼鏡の性能にとって 倍率やズームは重要ではありません。
倍率よりも双眼鏡の性能を左右する重要な数字は何なのでしょう。
対物レンズは双眼鏡の命 −対物レンズ有効径−
暗い双眼鏡と明るい双眼鏡 −射出ひとみ径−
対物レンズは双眼鏡の命 −対物レンズ有効径−
倍率のところで述べましたが、双眼鏡に書かれた「7X50」の後ろの方の数字が対物レンズの有効径を表します。
あまり聞いたことのない数字かと思いますが、倍率よりも双眼鏡の性能に直結する数字です。
これは文字通り対物レンズの大きさを表します。
天体観測でどこまで暗い星が見えるかは、倍率ではなく対物レンズの口径によって決まります。
同じ20倍の双眼鏡でも口径が50mmの双眼鏡と100mmの双眼鏡を比べると解像力は2倍・集光力は4倍になります。
口径50mmでは10等星までしか見えないものが口径100mmでは11等星まで見えるようになります。
分解能では口径50mmでは2.3秒(60秒=1/60度)まで分別できますが、口径100mmでは1.2秒まで分別可能です。
このように口径が大きくなるほど性能は良くなるのですが、双眼鏡は大きく重くなりますから携帯性は悪くなります。また、口径に比例して、高価な双眼鏡が多くなります。
口径の大きな双眼鏡
どちらも7X50の双眼鏡です。
口径50mmは手持ちで使う双眼鏡では、最大規模となります。
もう少し大きいところでは、8X56や10X56も手持ち使用を意識した機種です。
三脚固定では10X70や20X80などの機種も愛用されます.
天文用や航海用では、100mm・125mm・150mmの機種も使用されます。
口径の小さな双眼鏡
上が8X22、下が10X25のダハ型双眼鏡です。
このように携帯性を重視すると口径も小さくなります。
小口径の双眼鏡でも、明るい場所であれば鮮明な視野が得られます。(もちろん口径に応じた有効倍率内であればですが)
口径25mmの双眼鏡の有効倍率は10.5倍ですから、明るい場所なら10X25でも10X70でも理論的分解能は同じになります。
視野の広さは別な問題ですが、これなら小さな双眼鏡のほうが効率がいいといえるでしょう。
暗い双眼鏡と明るい双眼鏡 −射出ひとみ径−
接眼レンズを少し離れて覗くと明るい光の円が見えるでしょう。
この直径が射出ひとみ径と呼ばれ、正確には対物レンズ有効径を倍率で割って求められます。
この数字は双眼鏡の明るさの指標で、対物レンズ有効径とともに双眼鏡の性能を左右します。
人間の瞳孔は明るい場所で約2mm、暗いところでは約7mmの大きさがあります。
明るい場所では射出ひとみ径が2mmの双眼鏡でも十分に明るく見えますが、暗い場所では目に十分な光量を入れられません。
射出ひとみ径が大きな機種は暗い場所でも性能を発揮しますので、天体観測では[7X50]などの双眼鏡が使用されます。
射出ひとみ径の小さな双眼鏡
これは10X25の射出瞳で、径2.5mmとなります。
この双眼鏡を使って、デジカメで月を撮影しました。
画素数が少ないデジカメでJPEG圧縮がかかっていますので、肉眼で見るより写りが悪いです。
射出ひとみ径の大きな双眼鏡
こちらは7X50の射出瞳で、径7mmになります。
隣は同じ条件で撮影した月です。
倍率が小さいため、10倍撮影時より小さめに写っています。
何より、同じ撮影条件にもかかわらず、月が明るく鮮明に写っています。
大口径双眼鏡の威力を実感できる瞬間です。
ちなみに、普通に月を写すと、
こんなかんじになります。
小口径機でも双眼鏡で見たほうが、肉眼で見るよりもはるかに良く見えます。
このときはコペルニクスやティコなど主なクレーターを観察できました。
機会がありましたら、小口径大倍率の双眼鏡の例を撮影したいと思います。