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2001年JTBショー紀行その1
確かに、歴史は動いている


 今年もJTBショー(日本望遠鏡双眼鏡ショー)が 6月23・24日に開催されました。

 双眼鏡関係の企業では ニコン・ペンタックス・ビクセン・タスコ・ケンコー・鎌倉光機の常連に加えて、去年は参加していなかったコーワ・宮内光学・ツァイス・シュタイナーが出展していました。
 替わりに ミノルタ・協栄産業・ミック インターナショナルが姿を消しています。

 ライカやスワロフスキーが顔を出さない分 コアなマニアには物足りないでしょうが、国産機に目を向ければ 見るべき物の多い内容でした。
 そして、悲しいことに 見ない方が良い中身が多かったのも 今年の特徴と書かなければなりません。

技術の平準化が進む中、どのように差別化を図っていくのか。

 絶望的な動きを加速させつつある社と 希望の光を感じさせる社。
 そして その間に漂っているグループ。
 それぞれの流れが 今まで以上にハッキリ出ています。

 それでは入り口から順に 各社のブースを眺めてみましょう。

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    ペンタックス

 まずは ペンタックス。
 受付を入ってすぐの一等地に望遠鏡を並べています。

 去年は高級ダハ双眼鏡など主だった製品だけの展示だったのですが、今年はタンクローやフラビーノまで見本品が置かれています。

 最近の製品としては フラビーノ7倍や10X50の高級ダハといったところでしょうか。

 別な記事で 「ペンタックスのフラット双眼鏡は視野の縦横比が最大の欠点だ」と書いたのですが、新型は縦方向に視野が伸ばされています。
 限られた本体容積で広い視野を稼ごうとすると 必然的に この形になるのでしょう。
 ハイアイ化されなかったのは残念ですし まだ倍率が高いのですが、以前に比べると格段の向上です。

 もう一つの見所は ペンタックスの最高級機は このDCF・WPシリーズでしょうか。
 最近 10X50が発売され 主要な口径・倍率が手に入れられるようになりました。

 午前中のOFF会で8X32を使ってみたのですが、素直に感心させられる一台でした。
 10X50も 舶来機と同じ土俵に上がれるところまでは来たように思います。
 ツァイス・スワロフスキーには まだまだ敵いませんが、その次のグループには入っているでしょう。

 この製品の最大の問題は 以前から指摘しているとおり、極めて高い価格設定です。
 8X32の定価7万円でも 米国における一般的な実売価格$400から大きな隔たりがあります。
 8X42が定価9万円となると、実売価格は並行輸入ライカと並んでしまいます。
 どちらの性能が優れているかは置いても 私は間違いなくライカを選びます。
 あと15%程度カタログ価格が安ければ 格段に魅力を増すだけに残念でなりません。
 ま、個人輸入してしまう手もありますけど。

 防水タンクローやポケットダハ機など 普段は見かけない製品を手にできたのも大きな収穫です。
 去年は展示数が少なかっただけに これだけでも長足の進歩といえるでしょう。

 新製品以外の中では ポケットダハ双眼鏡 8X22DCF・MC「アーバネット」が目を引きました。
 ニコン・スポーツスターIIIが自壊し、国産同級機は全滅かと思っていた時期だけに 希望の光を見たように思います。
 高価な値段が足を引っ張っているのか 店頭には並んでいませんが、積極的に探す価値のある製品といえるでしょう。

 双眼鏡を見る限り 明るい次世代を感じさせるペンタックス・ブースですが、次は どのような手を打ってくるのか 楽しみでなりません。
 個人的には 高級防水双眼鏡7X50BIFに新しい展開があると嬉しいのですが。
 インナーフォーカス化・CF化は時代の潮流ですが、このクラスに新風を吹き込めるのは ペンタックスしかないと思うのです。


    コーワ

 次はペンタックスの斜め向かいに陣取っていたコーワ。
 ブースの中はスポッティングスコープが 所狭しと林立しています。

 写真では対物レンズだけが見えていますが、「参考出品」という120mm双眼鏡が注目を浴びていました。
 外装は自衛隊納入品 そのままでしたが、市販品では手を打ってくることでしょう。
 製品版では 対物レンズをフローライトにして 「予定価格200万円」との事です。(筆者ノーコメント)

 私にも手が届く製品では 今年発売されたばかりの高級ダハが外装2色とも供覧されていました。
 インナーフォーカス・窒素ガス封入防水・位相差コートプリズム・ハイアイ接眼と 現代の高級機に要求される物は全て詰め込んでいます。 が、それは他のメーカーにしても 同じこと。

 覗いてみると 国内他社の高級機と遜色ない仕上がりですが、それ以上でも それ以下でもありません。
 覗き味は辺縁に癖を残した雰囲気で 非ニコン的な路線を狙ったのでしょう。
 自然観察を意識したのか、発色も癖を抑えた印象です。
 最後発メーカーなのですから 他とは異なる内容を期待したのですが、技術が平準化されつつある この業界では かなわぬ望みなのでしょう。

 結局は、このクラスの双眼鏡も 「値段で勝負」か「ブランドで勝負」の世界になりつつあるのです。

 性能では他のブランドに これより優れた製品がありますし、同等の性能を持ちながら価格の安い品物も存在します。
 コーワのブランドに惹かれるのであれば 悪くないのでしょうが、現状ではライバルの中に埋没する可能性が高いと思われます。

 

 市販双眼鏡で もう一品展示されていたのが 80mmハイランダー対空双眼鏡です。
 フジノン150mm・ニコン120mm・宮内141mmと名だたるライバルに囲まれていたのですが、その視野は全く遜色ないものでした。(昼間だから?)
 値段を考えると宮内100mmに行ってしまいそうなのですが、独自の世界を作っている(作ってしまった)のは嬉しい限りです。
 商業的に成功できるか否かは別問題ですし、どんなに良いと思っても 絶対に手が出せないのが このクラスの悲しさなのですが。


 入り口からすぐの列には この2社に加えて、日本望遠鏡工業会の相談コーナーと日本野鳥の会がブースを構えていました。


といって、次回に続く。

次回はビクセン・ツァイス・フジノンを取り上げます。

新型機を揃えたビクセン。
ヴィクトリーとディアファンで物議を呼んだツァイス。
目ぼしい動きが無いかに見えたフジノン。

この名だたる3社は どんな戦略を見せてくれるのでしょうか。

請う ご期待!


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