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2−1 轢かないで
眠れないと思いつつもいつの間にか寝ていました。
ただ、眠りが浅かったような気がして仕方がないです。
七時に食事なのに六時に起きてしまって、
再び眠れずに死体のごとく一時間ぐったりしていました。
全然疲れが取れた感じがしません。
眠りが浅かったからかどうかは分かりませんけど。
それだけ一日目で体を酷使したということで納得しております。
そういうわけであまり力を使いすぎないように進む事にしました。
朝早くから浜名湖を見て体が起きてきたような気がします。
穏やかに動く浜名湖の水面がのんびりした朝を演出してくれているような。
ここから浜松市の終わりにかけては、平坦な道が続きます。
昨日の午後からしてみれば、まるで嘘のようです。
相変わらずコンビニが少ないです。
しかも、ガードレールがないので危険といえば危険ですけども。
朝早くから横を走るトラックには、畏敬の念すら出てきます。
それでも坂がないだけ本当にありがたかった。
浜名湖だと思い込んでの撮影。穏やかな浜名湖の水面。
浜名湖を渡っているという事になりますか。
よーく見ると向こうにバイパスが見えます。
当初は行けると思い込んでました。行けない上に有料だったとは。
海にあるあれは一体何なのだろう。
昨日調べた結果によると、あるあほが飲んだ水分の量は2.4リットルだそうです。
なんというか飲みすぎだと思いますね。
コンビニで買った分だけでだとか。
食事で飲んだのも含めると3リットルはゆうに超えます。
今日は減らそうとか思ってるらしいです。
しかし出発一時間しか経過してないのに買ってます。
酸味と甘味のバランスがいいとか、
粗引ききりり りんご
。 おすすめだとか。
標識には静岡86km、袋井29km、磐田22kmと書いてあります。
写真では見えているのに取り込んでみると見えない。
あと四時間で静岡まで行ける、と思った僕が馬鹿だった。
次の市へ次の市へと進むごとにサイクリストに対する仕打ちがひどくなってきます。
自転車に対する道路設計がまったくなっていません。
道の段差で徐々に体力を奪われていったり、
自動車の進行方向しか書いてなくて自転車がどう進んだらいいか分からなかったり。
一番ひどかったのは掛川市と島田市の間に位置する金谷町です。
区間としては相当短いですが、それだけに凝縮されてます。
この辺がどんなところかというと山です。
見渡しても特に何もありません。森。
ただ、山を道が貫いているというものです。
坂で自転車を漕ぐのがしんどくなって歩いていました。
これはしょうがないというものでしょう、そういうものですもの。
トンネルとかあっても全然しょうがないです。
三つあったって全然しょうがないです。
ただ、自転車が走れないようになっているのは全然しょうがなくないです。
僕の怒りが頂点に達しました。
どうして自転車が走れないのか。
トンネルまでは自転車で走れるようになっているのですから
トンネルも同じく走れるようにすべきです。
そもそも走れないのなら書いておいていただきたいのです。
トンネルをくぐっていたら灰だらけになったとか熱風が吹き付けたとかは別の話。
写真を撮っておこうかと思いましたが、それどころではない上に、
なぜか敢えて止めておこうと心の動きがありました。
走れないのなら自転車を引いて歩いていくしかない。
自転車を引けるのなら走れるんじゃない?と思った人はするどいです。
確かにそのほうが幅は取らない。でも、それは無理なんです。
トンネル内部の構造を申し上げますと、まず車線が一線ずつあります。
その横に自転車が走れる隙間などなく、わずかな幅の段差があるだけです。
その段差には緊急電話が配置されてあったりします。
その段の上にはポールが立ってやがりまして、これが邪魔で走れません。
幅も狭いのも理由の一つです。壁に当たれば長年の蓄積による灰を一身に受けるだけです。
恥ずかしいのでそれだけは避けたい。
壁のないほうに傾いてしまえば、ただの肉の塊になってしまいます。
壁をよく見ると灰が取れている部分があって、
以前自分と同じように自転車でここを通った人がいる事が分かりました。
自分だけじゃないという安心感とともに、怒りがさらに湧き起こります。
この辺にくると生身の人間を見る機会など全くなく、何かに飲み込まれそうになります。
車に乗っている人間はたくさんいるのですけど、それらには生の息吹は感じません。
自分と同じ事をやっている人がいるんだなあと思うとおかしくなってきます。
灰だらけになりながらトンネルと超えた人が他にもいようとは。
当然ながら旅とは孤独です。
旅について考えを展開させてみたりして気を紛らわせました。
よく言われてますけど、日本はサイクリストに厳しい国です。
今回の旅でそれがよく分かりました。
2−2 誤算
位置関係を把握しておこう。
現在、大井川を渡ろうというところで一号線を走るのを諦め、別の道を走る事にしました。
理由はバイパスは自転車で走れないから。
それと直進しているとトンネルがまた待ち構える事になるからです。
結局一号線に合流する運びとなりますが、藤枝市の藤枝駅から百五十号線に進路変更。
東に向かって駿河湾に向かって進む事になります。途中で百五十号線に合流するわけです。
当方の予定だと、午後二時くらいに目標の清水市清水駅に着く予定でした。
地図を見て縮尺を測って距離を算出すると間に合うはずですけど、
途中で歩いたり坂を結構登ったり進路を変更したりして無理になってきます。
坂を計算に入れなかったりというのは僕の誤算です。
もっと大きく悲惨な誤算が。
左膝がいかれてきた。
膝を曲げると内部から痛みが走ります。
痛いだけなら何とかなりますけど、痛みで力を入れて漕ぐ事がきません。
大井川で進路変更をしてから痛みが走るようになりました。
僕の勝手な憶測ではブレーキとして左足を多用した結果ではないかと考えておりました。
もしかしたら段差の衝撃吸収のためかもしれません。
ブレーキの効きが悪く、ブレーキが壊れるとにっちもさっちもいかないため、
極力温存していたのです。
左足と右足を使う頻度や力の割合を1:4にすることにしました。
自転車を漕ぐ時などはほとんど右足しか使っていないような状態です。
当然、
右膝も痛くなってきます。
痛みをよく比べると右のほうが痛いように感じました。
つまり右のほうが重症ということになります。
藤枝市の中を走っていると突如出てきた痛み。
最悪です。
漕げば距離に比例して悪化していくでしょうから。
しかし、なんとしても清水駅に急がねばなりません。
清水駅では人が待っています。僕の友人が。
足の痛む中数え切れない回数、悩まされます。
このまま自転車で清水駅まで行くのか、それとも電車の力を借りるのか。
僕が東に向かいだしたのは、電車を使わなければならない状況を想定したというのもあります。
国道一号線よりは百五十号線のほうが清水に行ける駅に近いためです。
電車のほうが当然早く行けます。
そのほうが友人にかける迷惑も少ない。
いやだからといって電車で行ったのでは何のためにここまで自転車に来たのか分からない、
そもそも自転車で旅をしようというのが事の発端ではないか、
という二つの考えが頭で強く主張する結果、
自転車で行く事にしました。
膝から悲鳴が聞こえてきたような気もする。
進行速度は時速10kmより少し早い程度にまで落ち込んでいました。
平素の半分以下しか出ていません。
静岡まで何kmという数字が減るのが妙に遅く、空回りした気持ちになってきます。
本当に近づいているのだろうかというような。
実際はじわりじわりと近付いてます。
午後二時はとっくに過ぎました。
2−3 ご対面
ようやく友人と会うことができました。初顔合わせです。
清水市の三保からわざわざ来ていただきました。
どこかの掲示板で知り合った方です。
いつぞや静岡に住んでいるという事を耳にはさんだので、
こちらから頼み込んだということになります。
ハンドルネームは……止めておこう。
プロの小説家を目指している方のようです。
たくさんの作品を読ませていただいているわけではないですけど期待しています。
挨拶を済ませて、さあどうするかということで膝の事情を話しこみ、
電車で次の宿泊先に進む事にしてもらいました。
上で色々言っておいて結局これか、という感じもしますが、
結論から言えば自転車では今日中に着きません。
よって計画がめちゃくちゃになってしまいます。
それどころか膝の状態もただでは済まないはず。
富士山に登るのですから少しでもマシな状態にしておきたい。
予定は変わって富士宮駅に向かうことに。
そこから宿泊先、ふもとの家ユースホステルの近くを通るバスが出ています。
思えば遠いところまで来たものです。
旅とは孤独との勝負みたいなものです。
たまに負けそうになって、自分の住む所に戻りたくなってきます。
旅をする事によって自分の住む所がある良さが分かってきました。
旅は束縛から逃げられるけども、住む所には家庭のぬくもりがあるじゃないか。
とはいえ、旅はいい。自分なりの発見ができて面白い。
道を歩く親子を見て、なんかいいなあとかつていた所を思い出しつつ、
旅だってたくさんいいところがあるじゃないかと思ったり。
帰ろう、いや進もう、の絶妙な均衡でとうとう清水駅までやってきました。
200kmも頼りないママチャリでやってきたんだなという懐かしいような感慨。
道がちゃんとつながっててその先にちゃんと世界がある安堵。
今はついさっき顔をあわせたばかりの人と電車に乗って富士山に向かっている。
電車の窓から流れ行く景色がなぜかこれまでたどってきた道のりを振り返らせてくれます。
だんまりで友人には申し訳なったものの貴重なひとときを過ごす事ができました。
膝を壊して電車に乗る事になろうとは。とんだお笑い種。
電車の階段で膝がいかに壊れているかがよく分かりました。
まず普通に上ると痛い。
多少痛みをやわらげようと思うと膝の角度を大きくして改善する必要があります。
厳密には鋭角になるとはっきりとした痛みがあります。
一般人と同じ速さで上り下りする事ができない上に、
痛みを和らげようと無意識のうちにがに股になるので恥ずかしいものがあります。
駅の外に出るまで痛い思いをしてまずは夕食をする事にしました。
非常に楽しいお食事会となりました。
当り障りのない身の回りの話から小説の話まで。
僕の周りでは趣味で小説を書く友人はいても、小説で飯を食っていこうという友人はいません。
なのでこういう方から話を引き出せるというのはとても有意義な事です。
僕は小説が大好きですから願ってもないことです。
こちらからも自分の考えを交えたりして実りのある時間を過ごしました。
バスでふもとの家ユースホステルに向かおうかとしました。
が、すでにバスは最終が出てしまったようなので、入山瀬駅に移動しました。
ユースホステルの方に電話すると、入山瀬駅から歩いてきてください、
というような返答がきたので。
駅に着いてとりあえず連絡を入れると、二人は歩いて向かうことに。
歩いて35分くらいかかるというような話も聞きました。
辺りはちょっとした田舎のように見えます。
夜になると人通りはほとんどなく、学校で練習している野球部が珍しく感じてしまいます。
しばらく歩いていると、後ろからクラクションをしきりに鳴らす車がいるではありませんか。
誰だ無礼な奴め、と思って振り返ると、
なんとユースホステルの方が迎えにきてくれたのでした。
助け舟とはまさにこのことです。
道もよく分からない上に、疲れていたので本当に助かりました。
駅で待っとらんか、というお叱りを受けてしまいました。
人間っていいなあ。
おまけにこのあとシャワー室があるのにお風呂にも入れていただきました。
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