remove
powerd by nog twitter
―発端―
死ぬまでに一回くらいは旅をしてみたい。
そう思って旅に出ることにした。
数年前から、富士山に登りてえなあと思っていたので静岡まで旅にすることに決定。
せっかくだから自転車で行くか、ってなことに。
とんとん拍子で8月19日から25日まで一週間旅に出ることが決まりましたとさ。



1−1 コンビニがない

朝七時過ぎに三重県四日市市北部から一人の男が愛知県に向かって出発した。
どうやらシティサイクル、いわゆるママチャリに乗っているようだ。
この男、ただのあほである。
しかし、本気らしい。


一日目に目的地である富士山に行くのは無理なので
中継地点として 浜名湖ユースホステルを目指しました。
四捨五入したら出発地点から富士山まで300kmくらいあります。
初めの日に静岡までもう入ってしまうわけですね。
浜名湖ユースホステルまで130kmぐらいという計算が地図上でなされました。
早いうちに分かっておいてもらいたいのは、
富士山は旅のおまけみたいなものであくまで自転車で旅をすることが目的です。


大まかな道筋を地図で見てみよう。薄いピンクの道です。
愛知県の市の位置関係 も分かっておいたほうがすっきりします。


始めのうちは順調そのもの。
二時間で名古屋入りをしました。
晴れた日ざしで気持ちよく汗をかき、懸命にこぎ続ける自分。
たった二時間で名古屋に来れるのなら今度自転車で色々回ってみてもいいな、
などと考え出しました。
計画立案時の作戦では、国道一号線を延々とそれはもうずーっとたどっていくことに。
静岡県の富士山の近くまでは一号線だけで行く事ができます。
国道二十三号線を使ったほうが道のりは短くなるのですけど、空気が汚いため却下。
トラックがたくさん走り、交通量も多いためです。

どのくらい空気が汚いかというと知らず知らずのうちに体が黒くなっていきます。
これは間違いなく車の排気ガスによるものです。
愛知県に突入した頃、なんだか足がかゆいなちくしょう、
と思って信号で止まったときに足を見てみますとあら不思議。
足が黒くなっているではありませんか。
黒い斑点のようなものがすねに付着していました。
初めは汚いものに触れてそうなったのかと思うことにしておりましたが、
徐々に斑点の密度が濃くなっていくにつれてこれは空気の汚れだと確信しました。
勘弁してくれい。
これが起こったのが国道一号線を走っていた時です。
国道二十三号線のほうがトラックも多いですし、走るのも速いので
さらに黒くなります。人前に出るのが恥ずかしくなっちゃうじゃないか。

これは愛知を通る一日目だけだと思っていたのに結局静岡に入ってからも苦しめられます。
ほんとかゆくて、自分が傷つくだけだとわかっているのについ掻いてしまいます。
爪がなくなってもいいと思えるぐらい爪が黒くなります。
様々な思考を経て、人生って厳しいなあというのを悟るに至った。
自転車で旅をしている人ってこんな黒いすすみたいなものと格闘しているのか?


午前九時を過ぎ十時に差し掛かる頃、喉が渇いてきました。
当然のごとくノンストップでやってきましたので怪人汗男の如きです。
成り行きで右車線の歩道を走っておりました。
どっかにコンビニはないかなーと見回してみても、愛知県なのになかなかありません。
これは僕の非情な固定観念ですけども。
よっしゃー見つけたー、と思ったらそれは左側に立っているのです。
中央分離帯が邪魔して向こう側には渡れません。
信号を使えば何とか行けるのですけど、距離が増える上に信号を待つのがめんどいため
「自分が走る側のコンビニしか行かん」
という自分ルールを作ってやりましたとも。
他にも「コンビニでしか休まん」というのも作ってやりました。
都合上左側に切り替えれば、右側にばかりあります。
当然、このルールが首を締めたのは言うまでもない。

水分源を確保し知立市に入った頃になると腹が空腹を申し立ててきました。
岡崎市で食べる予定にしていたため、あっさり却下しました。
十時過ぎぐらいの出来事です。
今思えばこれは力を使いすぎているという信号だったんだよなあ。
当然、この却下が首を締めたのは言うまでもない。


写真1。現在知立市ぐらい。おなか空いたー。
こんなのの横を走ってたら黒くなりますって。それにしてもすごい交通量。
看板の文字判別できるかな?


岡崎市に差し掛かったところでへろへろになってきました。
踏ん張っても力が出ないという感じでしょうか。
気合を搾り出しても速度に変換されないのです。
よくよく考えてみると起伏にやられていたようです。
上っては下り、上っては下り。緩やかさに騙されていました。
ただ、距離が長いせいで体力を奪われていたようです。
平坦な道だった安城市が光って見えました。コンビニもたくさんありましたし。

写真2。バイシャンタンを来た方向から撮ってみました。
対面を走っていたら気付かなかったような。
微妙に分かりにくいお店です。

昼食を食べるところに着きました。
バイシャンタンで食べようとあらかじめ決めていました。
間違えて通り過ぎそうになったのは秘密ですよ。
とんこつスープをベースにしたお店だそうです。

まず、店の中に入って考えたのはまず手や腕についた黒いものを拭こうと。
ハーフパンツにTシャツという格好なので広範囲にわたって黒くなっています。
おまけに日光を浴びて日焼け、というか赤くなっております。火傷してます。

本来なら店内の様子を観察する事から始める事にしているんですけど、
よっぽど黒いものが気に入らないらしく、しきりに拭いておりました。
観察が行き届いてない証拠に、後ろに給水機があるのに店員さんにお冷を頼んでしまいました。
店員さんの手際がなかなかいい感じです。見てていい暇つぶしになりました。
ここらで和樹によるエセラーメン紀行と行きましょう。
Dumbo's HomePage「ALICE」 ―ここに大いに影響受けてます。僕にとっての本家。

★ラーメン紀行(in 藤川町)
さっそくですが何食べたか忘れました。
名前が普通と違って覚えにくかったものでつい。
公式ページらしきものにも載ってないです。
今思えば大好きな味噌にしておくべきだった。
僕が食べたのはとんこつスープのやつにチャーシューがのったもの。
チャーシュー麺ちゃうんかいという突っ込みは却下。全く同じ物とは限りません。

おいしいといえばおいしいです。
どの部分もそれなりによくできているといったところです。
気になったのはスープ。
妙に甘い。とんこつなので当然といえば当然ですけど、口にあまり残らない。
あっさりしすぎというか、スープとしてのコクがもっとほしいところです。
王道のとんこつスープがあるとすれば、それからやや離れた味です。
あまりこってりはしてないのですが、こってりを期待していたのでちと残念。
でもおいしくいただきました。
近場にあったらちょくちょく行ってみたいお店です。
遠いのが難点ですが、1号線沿いにあるため行きやすくはあります。

よく考えたら、消化の悪いラーメンは自転車の旅には向いてない気がする。


1−2 駆け抜けろ

だんだん道路の坂道が深刻化してきました。
これまでは道は平坦なほうだったのですが、
徐々に上ったり下ったりすることが増えてきて足にもきました。
ある程度の住居は店などは並んでいるだろうと踏んでいました。
しかし、見渡すと見えるのは木、工場、川などなど。
殺風景であり、見る者をどことなくすさんだ気持ちにさせてくれます。
自転車の鬼になろう。疲れなどに負けずひたすら漕ごう。さもなくばくたばるだけだ。
そう思ったのはこの辺りからです。


写真3。のどかというか、ほんとにこの道が静岡に続いてるのか不安。
バイシャンタンを出てちょっとあとの図。
この辺はこんな雰囲気のところばかりです。

バイシャンタンは岡崎市のかなり奥にあるようです。
すぐに豊川市に入り、次の豊橋市も越えて湖西市に突入しました。
豊川豊橋を走っている時間は非常に長く感じました。
何もない、といってしまうのは簡単ですけど、
それだけ辛い思いをした区間だったとも言えます。
単に辛いとだけ考えて走るマラソンは長く感じるものです。

写真4。よく見ると城が木に隠れているのが分かります。
豊川か豊橋で撮った一枚。橋の上からなんとなく撮ってみました。
こういうところをチラッと通り過ぎると安らぎます。
決して川で遊んでいたわけでは。

ここで問題が。
道がよくわからないという事象。
手持ちの地図は道が大まかすぎてどう進んだらいいのかよく分からない。
湖西市を進んでいくと新居町というところに行きます。
そこに浜名湖ユースホステルがあります。
書き立てるのは簡単です。
新居町に入ってもどうやらユースホステルを見つけるのが大変だとか。
地図と周囲を見比べていっても、いまいち道がはっきりしません。

不安ながらにずんずん進んでいくと、かなり長い距離の下り坂がありました。
大体こういうパターンは嫌な感じがします。
逆に登らなくてはいけない状況の事を自然と計算してるんでしょう。
地獄の一丁目に足を踏み入れたような気分です。
進んでいくごとに風景が恐くなっていきます。
空が曇っていた上に、日が沈んできているという影響が大いにあったと思います。
徒歩だったら自然と早足になっていたと予想。

やっぱり地図はちゃんとしたものを選んでおいたほうがよかったかな。
旅の最中でも終了後でも思います。
100円ショップダイソーの地図ではやはり無理があったか。
一枚の紙を広げるタイプの地図です。今年買ったのに2001年版です。
かさばるのでやむを得ない処置だったのですが。


1−3 ここは日本か

五時過ぎにユースホステル到着。
たどり着くまでに三回道を尋ねました。
30分くらい周辺をさまよっていました。
計算した予定より1時間ぐらい遅れたことになります。
入り口の前では欧米に住んでそうな人たちがしゃべっていました。


写真5。見つけるのに苦労しました。
ユースホステルを前から撮ってみました。
人気がなくてひっそりした感じです。
ゆっくり休めると思っていたらそうでもなかった。


受付の人の話によると、サマーキャンプで団体が泊まるとか。
見回してみると、大学生ぐらいの外国人と小学生ぐらいの日本人ばかりです。
とにかくすごくにぎやかです。
部屋で休んでても、声がおもいっきり中まで聞こえてきます。
防音がしっかりできてないというのもあるんでしょうけど。
分かったのは、お互いの言葉が微妙に理解できてないという事です。

夕食は中の食堂でとることにしました。
席に着いてマイペースにやっておりますと、黒人の女性が隣に座ってきました。
やはり外国の人は日本人とは違うなと思いました。
日本人なら面識のない人の隣に座るような事は極力避けます。
混んでいながらも席はまだ空いていたので、向こうも回避する事はできたのです。
予想はしていましたけど、やはり話し掛けてきました。
ここはTOEIC555点の腕前を披露せねばなるまい。

…相手の投げかける質問にたどたどしく答えました。
妙に敗北感を覚えながら部屋に戻ったのはゆるぎない事実。
日本の英語教育の弱さをもろに垣間見た気がしました。
やっぱりしゃべらなきゃだめです。
リスニングの訓練を積んだり、文法の勉強をするだけではまずい。
しゃべってなんぼ、実戦経験積んでなんぼです。
聞き取れてもちゃんと言い返せないと。というのが実感。
僕が答えられたのは、ゆっくりと日本人が聞き取りやすいように発音してくれたからです。
正直ありがたいと思いましたけども。自分の未熟さも再認識できました。
でも、楽しかったし刺激にもなりました。

食堂の様子は学校の給食のようでありました。
だれもかれも楽しそうにやっています。
不器用な言い方をすれば外国人に場の雰囲気を奪われてます。
ここだけ日本じゃないような気さえしてきます。
そもそも日本人の大人がほとんどいない。
自分が場違いなところにいるような気がして、じっとしてられなくなりました。


後は寝るだけだ、ということになって足にだけ布団をかけて目をつむりました。
が、いっこうに眠れない。
僕は決して場所が変わると眠れない人間でもなく、
枕が変わるとだめという贅沢にはできてないです。
子供達が騒ぐんです。

正確には外国人も騒いでます。
分別をわきまえる年頃なのでしょう、控えめです。
どたどたやったりなにかしゃべったりしているようでした、かなり長い間。
たまになまはげのごとく部屋の戸をごとく窓を開けてくれます。
僕は悪い子じゃありません、何もしてませんとも。
他の宿泊客と共用なので鍵をかけるという事はできません。
開けてもすぐ閉めてどこかに行ってしまって、ピンポンダッシュのようです、懐かしい。
おさまったかと思いきや、今度は宿泊客二名がトランプで大富豪を始めました。
ちょっと待てい、二人で大富豪って間違ってるやろ、
しかも8切り(読み:やぎり)て普通8切り(読み:はちきり)やろ、
さらに普通にうるさいし、俺も仲間に入れろ、
いやむしろ貴様らの性根叩き直、ぐー。zzz


静岡県の市の位置関係の予習

二日目に進む

戻る

トップページに戻る