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□□ ムーヴァー □□
5メートル 右→左(3秒) 6発 さて、いよいよ最後のステージだ。3イベントを満点で済ませ、最後にムーヴァーで優勝争いをする、というのが昨今のUSビアンキカップの状況らしい。ここまでの成績を確認しよう。
暫定順位 HN(敬称略) 得点(720点満点) うーん(笑)。理由はそれぞれなんだろうけど、ただ1人の例外もなく大きく乱れているというすごい状況になってきた。後は、ムーヴァーでミスした者が容赦なく振るい落とされていくわけだ。オープンクラスは本格的に生き残りレースの様相を呈してきた。 この時点で優勝の可能性がある(トップのとて20さんが0点だったと仮定して)のは、上位7人。残念ながら、GUNトラブルに泣いた○福嬢はこの時点で脱落した。撃つ順番としては、ぼくの後ろには○福嬢しかいない。ということは、最後の最後に、自分の手で優勝か否かを決定するということか。これはドラマティックな展開になってきたぞ。 まずはrx78さんから。危なげないシュートだが、やや点数が低い。GUNトラブルが気になって集中できないのか・・・本来なら200点はオーバーしてくるはず。本当に不思議。不思議といえば初出場のてっちゃんはともかくとして、ムーヴァー経験者が次々に撃沈していく。これは一体何なんだ!?魔物か何かに取り憑かれたとしか思えない。 そんな中、暫定トップのとて20さんが撃つ。シャーッと走り出すターゲット。軽快な連射音。次の瞬間、会場は異様などよめきに包まれた。散らばった、弾痕。予想していなかった低い点数に、とてさんの顔が強張る。115点。練習なら、当たり前のように240点(満点)を出すシューターなのだ。技術と経験は十分でも、それを砕いてしまう波が、マッチにはあるのかもしれない。とて20さんの第8戦オープンクラスは745点で終了した。 ということは。ぼくは615点持ち点があるから・・・イカンイカン、余計なことは考えないようにしよう。無心だ無心。オレだって、練習では満点を出せるときもあるんだから(「ときもある」かい!)、落ち着いて撃てば大丈夫!よし、落ち着いた。 レンジに入ろうとしたとき、とてさんが囁いた。「130点超えれば優勝だよーん♪」うわ。ええタイミングで言ってくれるぜ。でも大丈夫・・・130点か・・・イヤイヤ無心だ無心。さー、来い、ムーヴァーよ!! 心を決めてハンズアップ。一瞬、会場が静かになった。・・・ような気がした。そこで、また、「130点よ〜ん♪」きゃーっ!ヤメテぇ!! ターゲットが走り出したのを見て、慌ててドロウ。膝が笑って、ダットが踊りまくる。往復で、何と65点!オー、ノォー!!すかさず「あと70点取れば優勝だよー♪」思い切り、動揺してますがな、私。 泣いても笑っても、あと12発で70点取らなければ優勝はない。7メートルラインに下がって、大きく息を吸った。深く吐く。得点的には酷いもんだが、こういう状況で勝つのも強さの証やろな、と考える。7メートルではタイジャーを使う。ノブを半回転だけ回し、リードを調整する。 ターゲットが走る。じっくり時間をかけて3発。ノブを反対側に回す。また3発。意外なほど静かな気持ちで撃てたのは、ずっと憧れていたビアンキの優勝に王手がかかっていたから。これまでの、我慢するしかなかったマッチへの憧れを思い出したとき。アメリカの試合を、そして東京の試合を雑誌で見ては溜息ばかりついていた少年時代の自分を思い出したとき。 音が消えた。
ぼくのマッチへののめり込みように対して、悪友Y田が、試合の後でこんなことを言っていた。 もうちょっと気取って言えば、やっと自由に泳げる海を見つけたという感じ。 あと数発撃てば、この世界からしばらく離れることになる。だから、感謝と別れを惜しむ気持ちを込めて、トリガーを引く。そして、「必ずまた帰ってきてやる」という決意を込めてトリガーを引く。最後の1発を放った後、合計165点という成績が残った。 総得点780点。苦しい戦いを象徴するような点数だが、とにもかくにも、とうとう優勝することができたのだ!えーと、2位は・・・ん?755点でrx78さん!?とて20さん逆転されてたのかー。 と、いうことは・・・とてさんの言うとおりに130点ほどしか取れなかったら、優勝はなかったってことぢゃないの。もぉ、危うくダマされるところだったぜい。 |
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