ビアンキカップは4種類のステージからなる総合射撃競技だ。各ステージ480点満点×4ステージ=1920点満点で争うわけだ。ペーパーターゲット上の直径5p、10p、15pの同心円がそれぞれXゾーン、10点、5点となる。5点ゾーンの外側は0点。中心のXは10点だが、同点のシューターが出た場合にはXのヒット数が多い者が上位になる。ラインカット(得点圏を区切る境界線上に弾痕がある場合)には、基本的に高い方の得点で計算する・・・が、球形のBB弾ではワッドカッターのようにきれいな円形にならないので、判定は難しいのが現実。1ストリング6発を上限とし、決して短くはない制限時間内に撃ち終わればいいのだから、難しくはない・・・のだが実はそこが落とし穴で、めまぐるしく変わる距離と制限時間、そして発射弾数に多くのシューターが翻弄される。さらに、各ステージごとに要求される、それぞれ異なるテクニック・・・。ビアンキのフルコースをねじ伏せ、満点をたたき出すのがシューターとしてのぼくの目標だ。
とはいえ完全に寝不足で迎えてしまった当日。初挑戦のビアンキはどうなることやら。
一定時間に横一列に並んだ6枚のプレイトを撃つ。ただそれだけのシンプルなステージ。ただし、このステージだけはペーパーターゲットではなく金属製のターゲットを使用するのがミソ。つまり「ヒットorミス」の世界になることを意味する。当たれば10点、外れれば0点。この違いは大きく、シューターはビビる。
4m 6発 4秒 フリースタイル 各距離を2回ずつ撃つ。プレイトは直径が10pほどだ。特別なテクニックも必要なく、カップシューターがはじめにパーフェクトスコアを出せるようになるべきステージである。逆に言えば、プレイトをクリーンできないうちはカップの世界の入り口にも立っていないのだと・・・思う。 ぼくの名前がコールされる。いよいよ出番だ。4mラインに立つ。近い。しかしぼくは4m4秒のストリングに苦手意識があった。チャンピオンシップspl.をビアンキのヘミスフィアから抜き、左端のプレイトを狙ってみる。ワルサーダットの紅い光点が、白いプレートの中心で煌々と輝いていた。マグを差し、初弾をロードしてセフティをかける。ふたたびGUNをホルスタに戻す。心臓がドクリドクリと血液を送り出しているのがよくわかる。「スタンバイ」の指示に左手を挙げた。少し遅れて右手を挙げ、ハンズアップの体勢。こうすると、右手がグリップの感覚を覚えていてくれるような気がするだけのことだ。「レディ」の指示で息を吸い、少し吐いて待った。視線は左端のプレイトに送ったままだ。 「プイ〜ン」というか「プァ〜ン」というか、何とも気の抜けるタイマーの音と共に両手を振り下ろす。振り下ろす、と書いたが実際には「落下するような自然なスピード」になるように気をつけた。この後に銃を「振り上げる」という反対方向の動作が待っているので、必要以上に加速が付くと方向転換にロスが出るからだ。左手は胃の辺りに引きつけるような感じ。右手がグリップをつかんだら、ヒョイッという感じでダットを右目とターゲットを結んだ線上に持ってくる。このときも加速が付きすぎているとブレーキをかける動作が必要になって、結局初弾が遅れることになる。それは右手の負担が増すことを意味するので、今のぼくはこの「やる気無しドロウ」に落ち着いている。 ダットがプレイトに乗った。トリガーを引く。初弾に少し時間をかけ、2枚目からは一気に片づける。きれいにクリーンした。昔は右端から撃ったものだが、今は左端から撃つ。2回目もそつなく撃ち、苦手な4mをビートした。嫌いなスピード寄りのストリングをクリーンしたことで、調子は悪くないのがわかった。5mラインに下がる前にGUNをアンロードするのを忘れてしまった。同一ステージ内で距離が変わるビアンキでは、「移動」があるのが結構クセ者。こういうことも試合に参加してこそ肌で感じるんだよな・・・などと思いながら改めて5mラインに立つ。 GUNを抜いてロードしようとした時、自分の右手が小刻みに震えているのに気が付いた。それに合わせるかのように、両足もプルプルと震えている。何なんだ、これは!?深呼吸しても止まらない。いや、止められない。これがマッチプレッシャーというやつか!?強力なライバルであるとて20さんとrx78さんがリボルバで参戦し、自分が苦手なストリングをクリーンしたとき、ぼくの心の中に「勝利」への欲が生まれた。それが、必要以上に力が入る原因なのはわかっている。わかっていても、こうなってはどうにもならない。酸素が足りない状態だったが、それでもダットはプレイトを捉え続けた。ほとんど反射に近い動作だ。しかし、とうとう1発がプレイトの右側を通過した。『あーっ!?』と心で叫んでも後の祭り。6m、7mではさらに外した。終わってみれば9枚残しの390点。うう、恥ずかしい。外した原因は、「ちゃんと狙ってなかったから」。これだけだ。この時点でぼくの優勝はほぼ蒸発することが決定した。
とて20さん 410点 |
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