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GBCS第5戦 BIANCHI CUP

2002.8.21

プロローグ

 2002年7月27日。いやになるほど眩しい夏空の下、ぼくは愛媛県松山市に向かって愛車チェイサーを走らせていた。後部座席にはアルミのアタッシュケースとスポーツバッグ。一泊分の着替えや洗面道具は、小さなナイロン袋に詰めてトランクに放り込んである。大量の荷物は、競技用にチューンされたエアガンとホルスタをはじめとする射撃用品だ。翌28日はビアンキカップの開催日。前日から松山入りして、万全の体制で挑戦するのだ。そのために、仕事も大幅に前倒しで済ませた。数日間の出張から帰り、休む間もない。身も心も疲労が澱のように溜まっていたが、燃えるものがあった。社会に出て10年以上が過ぎた。仕事にも慣れ、単調になりかけていたぼくの人生。仕事とは基本的に飯を食うためにするものだが、それだけじゃ寂しすぎる。仕事以外に打ち込むものがあれば、本業にも熱が入るというものよ。外気温モニターはすでに35℃を示していたが、それ以上に心は熱かった。とにかく、納得いくまでやってみるのだ!

GUN BOYとGBCS

 GUN BOYは不思議な場所だ。松山市の中心近く、わりとゴチャゴチャした辺りに、それはある。1階がコンビニのサンクスになっているビルで、各フロアに事務所とか「何とか教室」なんていうのが入っていそうな感じなのだ。初めて来た人なら、「こんな町中にシューティングレンジなんてあるんやろか」と思うだろう。あるんです。しかも、かなりの面積&設備で。2階と3階の2フロアを占め、2階が10メートル級のレンジが5レーン。3階はレイアウトフリーの広間になっているので、好きなコースを組んで練習することができる。使用料はといえば、2時間未満なら1時間あたり400円、1000円払えば何時間でも使い放題というのだから驚きである。基本的に土・日しか開いていないのが残念だが、運営スタッフも本業が別にある、ボランティア的な人達らしい。あまりに楽しそうなので、「ボランティア?」とも思うが、本来ボランティアとは楽しくやるものだとも思う。

 それはともかく、このGUN BOYで毎月シューティングマッチを行っているのだ(GBCSという)。それも年間シリーズ戦で、獲得ポイントで通年の優勝者を決定するというもの。思いつきの単発ものじゃあない。しかも、ぼくが一番やってみたいと思っていたビアンキカップもあるというではないか。これはもう、やるしかない。実際にはスティールチャレンジ→ビアンキカップ→IPSC・・・というように3種類の試合が月ごとにローテーションしている。いきなり本命のビアンキ、というのも緊張するので、まず前月のスティールチャレンジに出場してみた。で、すっかりハマってしまったというわけ。

前夜祭

 ぼくの右手はボロボロだ。ひどい腱鞘炎で右手がほとんど動かなくなり、2002年4月に手術をした。比較的簡単な手術とはいいつつも2時間近くかかった。その結果、8月現在、仕事や日常生活には支障がないくらいに回復した。だが、悪影響が全くないわけではない。疲労が溜まると腕全体が鈍く痛み出し、握力が下がってしまう。関節自体も硬くなってしまっているので、現在もリハビリ中なのだ。完全回復まではかなり長い時間がかかりそうだ。シューティングについても、特にドロウがキツい。また、手術後はグルーピングが2倍近く大きくなってしまった。握力が足りていないのか、震えが出ているのか、それとも筋のこわばりで微妙にフォームが崩れてしまっているのか・・・。だから、長丁場のカップを戦うことに不安は、ある。少しでも安静にしておきたいという気分もある。

 それでも練習せずにはいられないのが、小心者の証拠。サイトインと勘を取り戻すのを兼ねて2階のレンジで軽く撃ち、後は3階で軽く30分くらいムーバーを撃ち、仕上げにバリケードを体験して終わりにする予定だった。その後は早めに夕食を済ませて宿舎に入り、GUNのクリーニングやイメージトレーニングをし、十分な睡眠をとって本戦に臨む・・・ハズだったのに。ただの練習があっという間に「ミニ試合」になってしまった。エントリー料を100円だか集め、それを賞金にするのだから熱も入るわな。ムーバー撃ちで最高得点を出した人が勝ち、というシンプルなルール。ぼくはオープンクラス用のレースガンにレースホルスタという装備なので、ハンディとしてウイークハンドオンリーで撃つことになった。当たるかい、そんなもん!かなり寄付しました。他の人が撃つのを見ていたら、目下のライバル(と勝手に思っている)とて20さんが、リボルバのウイークハンドでズボッとグルーピングをまとめて見せた。う、うまい。ウイークハンドではターゲットペーパーにすら当てられないぼくは、本戦が不安になる。今回はとてさんがリボルバだと聞いていたので、優勝の可能性もありか?と思っていたのに現実は厳しい。

 厳しい、といえば管理人(店長、かな)のジル・ビル・27さんのハイキャパが突然スタックするという事態も発生した。調子よく撃って、ものすごいグルーピングをたたき出した直後に謎の作動不良。スライドも引けず、分解することもできない。強引にバラすと、内部の部品にある小さな突起が折れたために関連部品の位置がずれて、スライドの動きを妨げていた。ハイキャパは頑丈なイメージがあるが、しょせんは脆いプラスティックと亜鉛合金の塊。明日は我が身だ。本番だったらと思うとゾッとする。そういえば「マッチ用の銃は疲労が内部に溜まる。ゲーム用の銃は外観に溜まる」と誰かが言ってたような。

 すっかりヘコんだところで夕食。とて20さんオススメの沖縄料理の店へ、ゾロゾロと向かう。とて20さんを筆頭に、REDBさん、たかさん、ちゃれたさん、柴さん、○福嬢、ジル・ビル・27さん、そしてぼく。タコスの中身がご飯の上に乗ったタコライス、ゴーヤー料理いくつか、当然飲む人は泡盛・・・いつしか宴会。さんざん飲んだり食ったりしてGUN BOYに帰り着いたときは、すっかり練習を続ける気力をなくしていた。なんだかよくわからない(覚えていない)話をみんなでして、宿舎に帰ったときは午前2時になっていた。ああ、やっちまったぜベイビー・・・けど沖縄料理は美味かった!

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