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鉄道模型おきらく研究室:レイアウトと列車のページ

緩和曲線の作り方
〜3次関数緩和曲線理論の応用〜


 緩和曲線とは?

 直線からカーブ(円弧)に入るとき,いきなりその半径に突入しないで,直線(半径無限大)から徐々に半径を小さくしていく曲線 です.
 下の図の赤い部分です.

緩和曲線説明図


 実物では,実物での効能は
 ・脱線防止
 ・軌道に局部的な負荷を与えない.
 ・乗り心地の向上

 などです.模型でも,効果があります.それは,直線から急カーブに入ると,急に「カクン」と曲がるようにみえますが,この現象を低減できます.
 また,脱線防止にも効果があるとの記事を読んだことがあります.

緩和曲線の特徴

 鉄道工学の本を読むと,本来はクロソイド曲線(*)で,簡易的には3次関数(y=a x^3)を使うそうです.
 そこで,3次関数による緩和曲線の設計ツールを作ってみました.フレキシブル線路でレイアウトを製作される方は,ぜひご活用下さい(責任はとれませんが).
こちらで計算できます. ご自由にお使い下さい(責任はおとりできません.また商用でのご使用は禁止いたします).

 (*)大雑把にいうと,レーシングカーがカーブに突っ込んでいくときの軌跡です.
    (横)加加速度一定≒ハンドルを切り込む速度が一定〜〜のときの軌跡なんです.
   ここで,注意したいのは,クロソイド曲線は(横)加加速度をいくらかに指定しないと形状が決まりません.
   その値の設定ノウハウがないので,ノウハウ不要の3次関数をここでは扱います.



 3次関数の緩和曲線を調べてみると次のようなことがわかりました.

 ・半径一定の本来の曲線に合流するとき,約24°向きを変えている.
 ・緩和曲線の全長は,(本来の曲線の)半径の約0.7倍です.


緩和曲線の長さ

 緩和曲線の長さは車両の何台分なのでしょうか. 最小通過半径は車両全長の1.8台分が相場です .その0.76倍が緩和曲線の長さなのですから,大雑把には

   緩和曲線の長さ
 =車両全長×1.8×0.76
 ≒1.4×車両全長

 となるので,緩和曲線の長さは車両の1.4台分です.ちなみに,実物では最急で300Rぐらいなので車両の15台分です.その0.76倍だと11.4両分です.じわじわと曲げているんですね.模型の最急曲線の円一周は,車両約8.5両分です.実物と比較しないほうがよさそうですね.

【私見】TOMIX線路やユニトラックでの緩和曲線

 この節では,私の私見を紹介します.あくまでも私見であり,定説でも確立された技術でもないことを,あらかじめお断りしておきます.

     TOMIX線路やユニトラックでは,フレキシシブル線路がありませんので,私は,半径一定の円で近似してみました.つまり,「緩和曲線の長さ(=本来の曲線の半径の0.7倍の円弧)」で「24°向きを変える」円です.この円の半径を計算してみると,本来の曲線の半径の約1.66倍です.
     したがって,R280の場合,R470になります. TOMIXにはR541が,KATOのユニトラックにはR481ありますので,これが丁度よさそうだと考えました.ただし,角度は15°です. スペースに余裕があれば2本,余裕がなければ1本,と私は考えました.R541の1本の長さは20m級車両の全長の0.95台分ですのでぎりぎり使用可能?といったところですが,私のレイアウトでは,巾方向に余裕がないので,R541の1本使いにしました.

    ここで「巾方向に余裕」についてご説明いたします.代用曲線の計算結果を下図にしめします.なおこの半径は1で表示してありますので,目盛りの「0.1」は「0.1×R」を意味しています.




緩和曲線と代用曲線との線形の違い
図:緩和曲線と代用曲線との比較(縦横軸とも位置をしめす)




    3次曲線緩和曲線にくらべて,半径一定の代用曲線は図の上下方向(レイアウトの巾方向も余裕)にスペースがより必要です.3次曲線の場合,図の上下方向に必要な長さは,半径の0.016倍ですが,代用曲線の場合,半径の0.058倍の長さが必要だからです.


 ・・・・・・・と,このように緩和曲線を考えたのですが,半径一定曲線ですとレイアウトの巾方向のスペースが厳しくなります. メーカーさん,緩和曲線付の30度(もしくは45°)線路を発売してくれませんかねェ〜.


 浅く曲がるカーブの注意点

 蛇足ですが,浅く曲がるカーブ(15°以下)では,R300以下の半径は使うのをやめましょう.
 実物では24°もかかって徐々に向きを変えているのですから・・・.
 ちなみに,私のレイアウトのS字カーブ(15°,30°)ではR541を使っています.




3次関数の緩和曲線の導出法は こちら(とりあえず私の忘備メモレベルです.いずれわかりやすい説明をおつけします)



寄り道コーナー 緩和曲線の種類

 このコンテンツでは3次曲線(3次放物線)を扱いましたが,ほかにクロソイド曲線サイン半波長逓減曲線などがあります.これらの緩和曲線の定義を簡単にまとめておきます.

表  緩和曲線の種類

定義
主曲線部との繋がりの滑らかさ(半径変化率) 直線部との繋がりの滑らかさ(半径変化率)
3次曲線(3次放物線) 地上(レイアウトベース)の長さ方向xと巾方向yとの関係が3次関数(y∝x^3). 半径変化率=0なので非常なめらか
(半径は主曲線と同じ)
半径変化率≠0だが半径は∞なので一応なめら
クロソイド曲 列車が進んだ距離に比例して曲率(=1/半径)が変わる. 半径変化率≠0だが半径は主曲線と同じなので一応なめら 半径変化率≠0だが半径は∞なので一応なめら
サイン半波長逓減曲線 列車が進んだ距離に対して曲率(=1/半径)がSin状に変化する. 半径変化率=0なので非常なめらか
(半径は主曲線と同じ)
半径変化率=0なので常になめらか
(半径は∞)




それらの特色は下表のようになっています.

表    各種緩和曲線の特色
長所
短所
3次曲線(3次放物線) 緩和曲線の設定が容易である.一般によく用いられる. 軌道敷設と保守は困難である.
(計算が複雑なため)
クロソイド曲線 曲線半径の小さい地下鉄の場合に有利なため,よく使われる. 乗り心地はサイン半波長に劣る.
サイン半波長逓減曲 理論値に近いので乗り心地が良く,主に新幹線に用いられる. クロソイドと同じく,敷設・保守が困難.

(出典:天野ほか,図説鉄道工学P43,丸善)

ただし,素人の私なりに3次曲線(3次放物線)の短所を補足しますと,「3次曲線(3次放物線)は22.5°以下の曲線には使えない」ということがあります.




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3次関数による緩和曲線の導出過程