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CLANNAD小説(SS)の部屋
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52    『岡崎家<第5話>』(CLANNAD 汐編アナザーストーリー)
2004.12.13 Mon. 
『岡崎家<第5話>』
 
 毎日のように迎えてくれる声。
 1日として同じ匂いのない、美味そうな料理の匂い。
 俺は、久しく忘れていた心地よさを思い出していた。
 
 −家族−
 
 杏と風子が迎えてくれる音や匂いは、俺が最高に幸せだったあの頃を思い出させてくれた。
 
 渚がいた頃の、このアパートで2人暮らしを始めてからの日々を…。
 
 その日の夕食が終わり、後片付けも済んだ後、風子が突然とある提案をしてきた。
 
 
 「岡崎さん。風子の家族になってくれませんか?」
 
 
 その突拍子も無い言葉に、俺と杏は思わず顔を見合わせていた。
 風子のその一言をキッカケにして、俺たちの関係も変わろうとしていた…。
 
 
 「家族かぁ…。家族ねぇ……」
 少し早めに風子が帰宅し、杏が誰に言うでもなく呟いていた。
 
 風子の突然の提案。
 赤の他人だった俺たちが「家族」になると言う事。
 正直、何の実感も湧かなかった。
 そもそも、俺たちの関係って何なのだろう?
 
 仲の良い友人--。
 確かにそうだ。
 一つ屋根の下、飯を食って遊んで、こんな仲の良い友達が他にいるだろうか?
 
 でも、それ以上の何者でもないはずだ。
 
 「じゃあ、あたし帰るから」
 「おう」
 杏が家路についた。
 
 「汐はどうしたい?」
 寝床に入るなり、俺は娘に訊いた。
 もちろん、風子が家族になることだ。
 考えれば考えるほどおかしな話だったが、クソ真面目にそう訊いていた。
 「…よくわからない」
 「そうか…」
 それもそうだ。
 俺自身が混乱しているのに、わずか4年しか生きていない人間がわかる問題ではないのだろう。
 しかし意に反して、汐はこうも言ったのだった。
 「でも…すごくたのしそう…」
 楽しい…、か。
 「どうしてそう思う?」
 「だって、かぞくがふえたほうがたのしい。ふうこおねえちゃん、たのしいから」
 「そっか…」
 俺は汐と2人きりの生活を始めてから、ほとんどすべてのことを娘のためにと思ってやってきた。
 だから、汐がそう思うのならその思いに応えてやりたい。
 「わかった。じゃあそうしようか」
 「うん」
 明日来たときにでも話してみよう。
 滑稽だけど、汐が望んだことを。
 
 
 次の日。
 晩ご飯を4人で囲んでいたとき。
 俺は昨晩決めたことをみんなに話した。
 
 「…というわけで、風子を家族にすることは俺も汐も異論は無い。
 で、良いのか?風子」
 俺は風子に向き直って言った。
 すると風子は、
 「よくはわかりませんが、これで風子は岡崎さんの奥さんということですねっ」
 
 
 ・・・・・・・・
 
 「へっ?」
 俺は思わずマヌケな声を発していた。
 いや、単に口から漏れただけのようなものだ。
 「い…今なんて言ったの?」
 この声は右隣にいる杏だ。
 俺ほどでは無いにしても、驚きを多分に含んだ声だった。
 「岡崎さん、前に言いました」
 杏の問いを聞いているのかいないのか分からなかったが、風子は続けた。
 「風子に、亡くなった奥さんを重ねてしまう、と」
 「ああ…」
 ほとんど風子に言わされたようなものだったが、渚の面影を少しは風子に感じたのは事実だった。
 「だから、岡崎さんの奥さんです」
 今までの風子の言動と行動からして、ありえない話では無かった。
 が、そこまで暴走しているとは思わなかった。
 要約(?)すると、風子は俺の再婚相手?????
 「岡崎さん。決めた以上は責任取って下さいっ!」
 そんな決意表明をされたが、右隣からは殺気めいた禍々しいオーラが感じられた。
 「と〜も〜や〜ぁ。あんたねえ〜…」
 何を勘違いしたのか、杏が尋常でない怒気を含んで俺を睨みつけていた!
 「まてっ、杏! 誤解だっ!!」
 この場に留まっては、食卓が大惨事になることが容易に想像できたため、
 咄嗟に杏の腕を掴んで、部屋の外へと連れ出した。
 
 「どういうことっ? あんた風子ちゃんに何したのよっ!」
 さっきよりは多少冷静さが感じられる言葉にはなっていたが、それでも怒りが溢れ出ていた。
 「誤解だっ。俺は風子には何もしていないっ!」
 こういう時には、事実を的確に伝えてやるのが一番だ。
 だから俺は、端的に答えてやった。
 「えっ? 何も無いの?」
 この一言で簡単に信じてしまうほうも問題だとは思うが、それでも信じてくれたことで話がしやすくなった。
 
 俺は、事の経緯をかいつまんで話してやった。
 すると杏も納得してくれたようで、
 「まあ、まさか朋也がそんなことするはず無いとは思ったけどね」
 という感じでわかってくれたようだった。
 「取り乱しちゃってゴメンね」
 「ああ。わかってくれたら良いんだが」
 お互い冷静さを取り戻したところで、食卓へと戻った。
 
 「お2人、何をしてたんですかっ」
 戻るやいなや、風子が俺たちによくわからない追及をしてきた。
 「いや…な」
 「…ねっ」
 バツの悪そうに2人で向き合ってしまった。
 俺は説明するのが面倒なだけだったが、杏はあらぬ想像をしてしまったことに対する気恥ずかしさから、
 何も言えないようだった。
 「まあいいです。それより本件です」
 どうやら、風子の追及は終わったようだった。
 「岡崎さんの奥さんになる件、了承していただけますかっ」
 それよりも問題の件が残っていた。
 
 ひとしきり悩んだ後、俺はふと疑問になったことがあったので聞いてみた。
 「風子。お前が俺の奥さんになるってことは、汐のお母さんになるってことでもあるんだぞ?」
 俺は言ってみてから、その光景を想像して噴き出しそうになった。
 精神年齢でいったら大して変わらない二人が母娘なのだ。
 そこまで風子が考えていたとしたら、対して効果の無い一言だったのだが…。
 
 「気が付きませんでした…」
 思わず、俺と杏はズッコケそうになった!
 「風子は、汐ちゃんのお母さんにはなれません…」
 今までの、使命に満ちたような眼差しから一転、視線を下げて明らかに落ち込んでいた。
 「料理も満足に出来ませんし、家事も1人ではこなせません…」
 
 今日までも、風子が1人ですべてを準備していたことは無かった。
 杏がいる時は杏が料理をほとんど作っていたし、いないときは、出来る範囲で下準備をしていたくらいだった。
 それをコンプレックスに感じていたとは思わなかったが。
 
 食卓を、重い空気が流れる…。
 
 その空気を断ち切ったのは、言い出しっぺの風子だった。
 「決めました。風子は、汐ちゃんのお姉さんと言うことで良いですっ」
 まあ、無難な線だった。
 風子と汐の関係は、どう見ても『母娘』というよりは、『姉妹』だったからだ。
 ただそれだと、俺と風子の関係が変わってくる。
 「なら、風子は俺の娘ってことになるけど?」
 同い年の娘ってのは明らかに無理があったが、何故かそっちのほうがしっくりくるから不思議だ。
 「問題無いですっ。杏さんが岡崎さんの奥さんになれば良いのでっ」
 
 ・・・・・・
 
 「え〜〜〜〜っ?!」
 
 驚き、慌てふためく杏を差し置いて、風子は汐に語りかけていた。
 「汐ちゃんはそれで良いですか?」
 「うんっ。すごくたのしそう」
 
<第5話終わり→第6話に続く>
 
ーーーーーーーーーーーーーーー
 
 どうだったでしょうか?
 今回は遊びの部分があまり無く、当初予定していたストーリーを進めるだけ?になりましたが…。
 
 ここまで進んで、ようやくこの連載SSは軌道に乗ってきたと言う感じだったりします。
 
 風子の暴走っぷりと、汐の順応度、朋也と杏の振り回されっぷりを堪能していただけたら幸いですw
 
 また、感想とかあったら、「SS投票ページ」や「掲示板」とかに寄せていただけると嬉しいです。
 2万HITも間近なんで、頑張って更新していきたいですね。

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